真・女神転生 オタクくんサマナー異伝:奇妙な旅に終わりはなく   作:黒橋

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 前回の続きになります

 それと前話での最後の擬音を修正しています


名の意味と雑談、そして性癖破壊

 モニカは現在、聖華学園からとある依頼を定期的に受けている。

 

 内容は「生徒との模擬戦と反省会の主催、相談等」である。

 本来であればとある生徒一人を対象としたものであったのだが彼女をここに呼び寄せた法山の追加注文によって範囲が広まったのだ。

 

 

「すまんけどセイトだけ鍛えるのは勿体ないから他の生徒の指導も手伝ってくれない? その分賃金出すからさ」

「私、指導はそこまで得意じゃないんだが……」

 

 

 そんなやり取りがあったのかどうかはさておき、現在モニカは聖華学園の外部委託班の一人ということになっている。

 委託班、ということからわかるように他にも幾人かの聖華学園外のDB関係者が所属しており、その多くは先の学園闘争で参加していた面々。

 

 そもそも学園闘争が「『外』の環境でも自分(生徒)達はやれるという認識を正しく理解してもらう」ことが目的のレクリエーションの一環のようなもので少し問題*1があったものの参加した多くの生徒は自分の立ち位置を改めて理解することになった。

 しかしただ「理解させた」だけで終わらせては学園としては意味がなく、理解できたのであればそのギャップを埋めるべく鍛錬と見直しを行い、身内と身内による内部完結によって空気が淀まぬように定期的に外からDBを招いて空気を入れ替えるサイクルを形成することになったのだ。

 それぞれのDBが受け持てる人数が限られていることもあって学園内部では委託班の定期戦を「レイド戦」と揶揄する声もあったりするが実際それくらいの凶悪さを誇るDBもいるので否応なく活気づいているのでご愛敬と言ったところだろう。

 

 ちなみにモニカとの戦いはレイド戦と言われていない反面「初見殺し」「盤面詐欺」「とりあえず見知らぬ悪魔から潰せ」「特に餓鬼は即殺せ」などと評されているのだがこれは彼女は知らないことである。

 

 

 閑話休題(話が逸れた)

 

 

 学園での受付を済ませ、待機スペースとも言える休憩所*2でのんびりしていると学園の奥から見知った顔の男がやってくるのが見えた。

 

 

「こんにちは雨柳殿」

「ん? ……誰かと思ったらモニカさんか、今日も指導を?」

「はい、どうにか愛想は尽かされていないようで」

「学園闘争での映像見ましたけどそうそう簡単に愛想尽かされるような腕じゃないと思うんですが……」

 

 

 男の名は雨柳巧(うりゅうたくみ)、帝都ヤタガラスの誇る精鋭の一人。

 少し前まではほぼ隠居していたという話もあるらしいのだが、そう言われたとしても冗談だと思わざるを得ないような剣術や立ち回り、そして使役する悪魔も最前線相応という猛者である。

 キリギリス掲示板において【くぅん】という名前で活動しているのが認知されており、上の情報と掲示板での立ち振る舞いとのギャップが激しいことでも有名。*3

 ちなみに二人の出会いは受付したは良いものの、何処で待機すればいいのかと悩んでいたモニカを私用で学園を訪れていた雨柳が声掛けしたのがきっかけである。

 

 

「そういう雨柳殿は学園にどのような用事で?」

「ちょっと仕事終わりに寄っただけですよ、最近どうにも物騒ですからね。 見回りの一環、そんなところです」

「貴公程の人物が見回りとは……」

「性分ですよ性分、この界隈にいる期間だけは長いですからね俺」

 

 

 それからは出会ったら雑談をする程度には仲良くなっていた。

 

 

「と、そういえば雨柳殿」

「なんです?」

「『龍殺し』という銘の剣を聞いたことはありませんか?」

 

 

 ふとモニカは『もしかしたら知ってたりしないだろうか』という軽い気持ちで『龍殺し』の話題を振ってみた。

 

 

「りゅうごろし? どのような字です?」

「これです」

 

 

 持っていたメモ帳に書き込んでおいた『龍殺し』の文字を見せる。言葉で説明できなくはないものの、こういうのは見て分かりやすい方が良いだろうというモニカなりの配慮だ。

 メモ帳をじっと見つめた後に何か思い出すように目を瞑り、それから少しして首を横に振った。

 

 

「すみません、ちょっと心当たりは……」

「ただの雑談ネタのようなものですので大丈夫ですよ」

「珍しいのですし何かあったら思いつくんですが心当たりがないもので」

 

 

 メモ帳を仕舞おうとした手が止まった。

 

 

「失礼、『珍しい』とは?」

「へ? いやまぁ大したことじゃないんですけど」

 

 

 そう言いつつポケットからスマホを取り出して何か打ち込んでから画面を見せる。

 そこには「竜」と「龍」の文字が入力されていた。

 

 

「このようにドラゴンを表す漢字は二種類あるんですよ」

「存じております」

「それでこの漢字、実は使いどころが微妙に違うんですよね」

「微妙に違う?」

「先ず『竜』の方は主に西洋で見受けられる蜥蜴や恐竜のような……悪魔で例えるならアイトワラス*4やファフニール*5のような造形が該当すると考えてもらえれば良いかと」

「俗にいう胴体から羽根や手足が生えて、火を吹くようなタイプであると?」

「はい、よく漫画やゲームの題材で悪役として登場するドラゴンもこのタイプが多いんですよ」

「では『龍』の方は?」

 

 

 そう聞きつつ手元のメモ帳に書き込んでいく。

 

 

「そちらは東洋由来のドラゴンに使われることが多いんですよ、セイリュウ*6やコウリュウ*7なんかが有名所です」

「なるほどなるほど……では珍しいというのは一体?」

「神話に始まりそれらを題材にしたアニメや漫画等でのドラゴン退治なんかだと基本的に西洋タイプの『竜』を討伐する話なんかが多いので『竜殺し』はよく見かけるんですけど『龍殺し』はちょっと珍しいなぁ、と思っただけで……揚げ足を取るような内容ですいません」

 

 

 そう語り終えると何処か申し訳なさそうに呟く。

 

 

「いえ、先程も言いましたが飽くまでも雑談ネタですし何より―――」

 

 

「興味深い内容でした」

 

 

 メモ帳を仕舞いつつそう言う。

 かつてと言うほど前の話ではないが迂闊にキリギリスの掲示板で情報を無作為に集めようとした結果、モチーフを同じとするであろうアニメや漫画、小説等々のオタ知識を流し込まれた経験があった。

 あまり関係ないだろうというのは分かってはいたものの、万が一があったら困ると思ったので1つ1つ虱潰しのように調べて回り、やはりあまり関係ない情報しかなかった。

 

 その過程で『龍殺し』という表現が少なかったのが少しだけ気掛かりになっていたのだが、その答えを今知った。

 

 

(一般的には『竜殺し』という表現を使った方がある程度の汎用性があるということになる)

(そうなるとわざわざ『龍殺し』にしたのは何故だ?)

「あはは、そう言ってもらえると幸いです」

「本心なのですが……」

 

 

 そんな思考をおくびにも出さないようにしつつ、二人の雑談は呼び出しがかかるまで続いた。

 

 

 

 

◆ □ ▼ ○ ◆

 

 

 委託班の定期戦、と書くとバチバチに仲魔を揃えての殴り合いだと思われるが実際はそうでもなかったりする。

 というのも外部の空気に触れる必要があるのは実力の上も下も関係なく、ガチの戦術戦だけでは敷居が広がりにくくなるのである。

 なので時折レクリエーションめいた特殊戦というものも開催されている。

 

 

\カカカッ/

龍王ユルングLV50耐性:???*8

 

\カカカッ/

軍神ガネーシャLV57耐性:???*9

 

\カカカッ/

神獣バロンLV60耐性:???*10

 

\カカカッ/

魔獣ケルベロスLV64耐性:???*11

 

 

 今回開催された特殊戦は外部DBの仲魔の内1体をチームを組んで倒すというもの。

 かつての学園闘争では各個撃破された生徒も少なくはなく、繰り返さないためにもチームを組んでの対応を身に着ける必要がある。

 ある程度のレベル差があってもうまく立ち回れば倒せない相手でないということの学び直しであり、もし撃破できれば格上の経験値によるレベルアップだって夢ではない。

 そう士気を高める生徒達は撃破対象の中に混ざるよくわからないナマモノの存在を気づいた。

 

 

『状況把握、戦術は?』

「【毒】にしたら後は流れで」

『【毒】が効かない相手は?』

「物理攻撃は効くだろう? ソレで只管殴れ」

『無効以上の場合は?』

「最終手段の行使を許可する」

『りょ、行ってくる』

 

 

 そうモニカと話をしていた悪魔が待機ゾーンに向かって跳ねるように(ポインポインと)移動していく。

 漆黒の髪に艶やかな黒の肌、小柄な体型に服らしい服は身に着けておらず必要最低限の前張りだけで恥部で覆っており、爛々と輝く金色の瞳を持った少女のような悪魔。

 しかしよく見ればそれは少女などでなく、不定形の黒い粘液が少女の姿を模しているだけだと理解できるだろう。

 

 

\カカカッ/

外道ブラックウーズLv70耐性:???*12

 

 

「なんだあの悪魔」「見たことない悪魔だけど可愛いな」「(COMPアナライズ)……外道、ブラックウーズらしい……ぞ……?」「えっブラックウーズ?」「黒い粘液の?」「確かあんまりレベル高くなかったよね、挑む相手はあの悪魔にしようかな?」「なぁ俺のCOMP故障したかな、Lv70とか見えるんだけどバグ?」「70!?」「あっちのケルベロスよりレベル高いのかよ!?」「今回の最高レベルっぽいな」「ブラックウーズってそんな高レベル悪魔だっけ……?」「俺が知ってるブラックウーズはLv33っスね……」「こわ……」「いや餓鬼に比べればまだわかんなくも……」「冷静になれ、餓鬼を49まで育てるのとブラックウーズを70まで育てるのどっちがやべーよ?」「どっちもやばくね? 育ててる人同じだし」「正論止めて?」「その話は餓鬼育ててる俺にも刺さるからやめよ?」「そうだねメスガキ性癖持ち」「違うって言ったよな俺!?」「アレ? そういえばあの悪魔、前の学校行事(学園闘争)の時に見たことあるな」「マ?」「マ、確かどっかの教室にポツンといたはず」「あ、それなら私も見たことある、攻略に関係ないと思ってスルーしたよ」「じゃあ何ですか、雑魚だと思って殴りかかったらLv70が襲い掛かってきた可能性があるんです?」「多分そうっスね……」「聞いてる感じだと交戦した人はいないっぽいな」「なんでもう終わった学校行事(学園闘争)の地雷が今掘り起こされてるの???」「レベル70がポツンとかレトロゲーのミュウツー*13かよ!?」『『『『『『はうっ』』』』』』「急に外部DBの方々が胸を押さえて倒れたぞ!?」「なんでや! 誰か呪殺でも使ったんか!?」「えっ、呪殺って貫通する奴あるの?」「いやぁ……若いって残酷だねぇ……」

 

 

『あ~……太陽が眩しい……』

 

 

 そんな周囲のひそひそ話や喧噪に気づいていないのか、のんびりぼんやりと太陽を見上げて目を細める漆黒のスライム娘(ブラックウーズ)

 暫くすると何人かの生徒が彼女?の元へと足を進め、それに気づいたブラックウーズが伸びをしてから顔を向けた。

 

 

『戦闘希望?』

「は、はい! 4名で1チームですがよろしくお願いします!」

『りょ、掛かってくると良い』

 

 

 そうして各々の模擬戦が始まった。

 

 

 

 

 

「知ってたけど! 知ってたけどさ!」

「そうだよねモニカ先生の悪魔って一癖二癖じゃすまないのは知ってたけどさ!」

 

 

「「「「なんなんだこの悪魔ァ!」」」」

 

 

 

『ブラックウーズだけど?』【火炎無効】【破魔反射】

 

 

 

「何処の世界に火炎が効かなくて破魔跳ね返す外道(ブラックウーズ)がいるんだよ!」

『此処に居る、隙あり』

「しまっ」

 

 

【エナジードレイン】*14敵単体のHPとMPを吸収する、万能属性スキル

 

 

 前衛の生徒がブラックウーズの内部へ取り込まれ、【エナジードレイン】の犠牲になった。

 そして体力を吸収し終わったのか、吐き出されるように地面へと転がされる。

 

 

「うっ……すまねぇ皆……俺はここまでだ……」

「マサヤ! くそっ【物理無効】の耐性持ってるから優位に進めると思ったのに……!」

「皆、これだけは知っておいてくれ……スライム娘の丸呑みプレイ(エナジードレイン)は良い……ぞ……DEAD(リタイア)

 

 

 

「誰か! 誰かパトラ水持ってきて! 全身漬けれるくらいのパトラ水を持ってきて! マサヤ(の性癖)が手遅れになる前に!!」

 

 

 

「どう考えても手遅れだ、マサヤの性癖(こと)は諦めろ」

「せやな、アイツがあんなに安らかな顔してるの初めて見たぞ俺」

『うむ、悪くないMAG……御馳走様……』

 

 

 そんな生徒達を尻目に何処か満足そうに指を模した粘液をこれまた口を模した部分で舐める様な仕草を取る問題児(ブラックウーズ)

 

 

「【飛山(ひやま)マサヤ】、【物理無効】をスキルとして持ち物理系の攻撃スキルもそれなりに揃っている……先の学校行事(学園闘争)では他メンバーを逃がすために殿を務めて脱落……その耐性故に前に出過ぎて孤立しやすい……特定の誰かと組ませることにより生存率を上げるのを目標……」

 

 

 手元の書類を捲りつつ気になったところを書き足していくモニカ。

 ビデオカメラで映像を記録して後に見返して反省会をしてもいいのだがそれだと時間が掛かり過ぎるためにこうやって対戦している悪魔の持ち主がそれぞれ気づきをメモして生徒へ渡すようにしており、また外部DBからすれば自身の悪魔の欠点や改善点を見つけれるので双方winwinなレクリエーションであると言えよう。

 もっとも、対戦悪魔次第では多少の犠牲(性癖破壊)が発生するかもしれないが許容範囲(コラテラルダメージ)という奴である。

 それから暫くすると戦闘が終了したので戻ってきた生徒達に戦闘での動きへの気づきと評価を書いた紙を渡しつつ話をする。

 

 

「モニカ先生、模擬戦とはいえレベル70の悪魔で【不屈の闘志】*15覚えているのを出すのはどうかと思うんですが……」

「そうか? 相手の立ち回りさえ理解すればもう一度倒すのは難しくもないし、何より一方的に潰し潰されてではお互いに面白くないし経験にもならないだろう?」

「それはまぁ……なら別の悪魔とか」

「……実はかく乱戦の特訓と考えてガキを出そうとしたんだが法山に止められて」

「ありがとう薬師丸先生!」

イイッテコトヨー>

 

 

 そんな心温まるやり取りをしながら生徒達を救護所へ歩いていくのを見送る。

 

 

「ふぅ……」

「お疲れ様です」

 

 

 一息付くのと同時にスッと差し出される水の入ったペットボトル。

 

 

「北竜か、有難いんだがまだ休憩時間じゃないぞ」

「それでしたら生徒と委託班の間でお互いに作戦会議の時間が欲しいとのことでしたので20分ほど時間を取るそうですよ」

「おや、そうだったのか。 そういうことなら頂こう」

 

 

 ペットボトルを受け取りながら周囲を見渡す。

 言われてみると確かに生徒や委託班の面々が固まって何かしら話し込んでいるのが見えた。

 

 

「貴公も参加したのか?」

「はい、ガネーシャのところで一戦し合わせてもらいました」

「ガネーシャか、アレは物理も魔法も使える手広い悪魔だがどうだ?」

「補助魔法を軸に腰を据えて物理で仕掛けてきましたね」

「補助に振り切った物理タイプだったか、【デカジャ】及び【デクンダ】は?」

「同じチームの人で持ってる方が居りましたので何とか」

 

 

 そのまま会話を続ける少年の名は北竜久緒(きたきみひさお)、彼もまた学園闘争でモニカと戦いそして餓鬼に事故ってし(ハードラックとダンスち)まった生徒である。

 餓鬼にしてやられたのが余程ショックだったのか、はたまた次に生かそうという判断なのか委託班の定期戦にも積極的に参加しておりモニカともちょくちょく顔を合わせることが多い生徒だ。

 

 

「それに多少は先の学校行事(学園闘争)で理解しているつもりでしたが自分の未熟さを感じる結果になってしまいました」

「うん? 確かに貴公はサマナーであるが剣士でもあるだろう? 今更戦うメンバーが多少変わった程度で足踏みするとは考えにくいんだが」

「その、中々無い機会ですし色々と試している最中で……」

「ふむ」

 

 

 ざっと目を凝らす。

 

 

「―――なるほど、武器を変えたのか」

「はい、慣れてないのがバレてしまったのかそこを付かれまして」

「まぁそういうこともある、その剣の使い心地は?」

「うまく言えないのですが自分の求めているものと違うような気がします」

「刀剣の良し悪しなら法山に相談してみると良い、私でも多少は言えなくはないがあ奴と違い参考程度のことしか言えん」

「参考……あ、そうだ」

「ん?」

 

 

 モニカはペットボトルを傾けてつつ話を聞いていた。

 何を聞かれるのかと水を飲みこもうとして、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところでモニカさん、【龍殺し】という剣を御存じですか?」

「ゴップッパッッポォ!?」

「モニカさん!?」

 

 

 想像もしない文言が飛び出したので思いっきりむせた。

 

 

「す、すまな……気管に、み、水……」

「落ち着いてください! 僕ができる事ってありますか!」

「せ、背中を、さすって……」

「背中ですね!」

 

 

 ――――北竜久緒は小柄である。

 同世代の男子は勿論相手によっては女性よりも背が低いことがあったりする。

 そんな少年が自分より年上であるのは間違いないけど自分より遥かに小柄な女性(モニカ)の背中をさするとどうなるのか。

 

 

(や、柔ら……いけない! 素数、素数を……2、3、5、7、11、13……17、19、23、29、31、37……41、43……47……53、59……61……67、71……)

 

 

 その答えは紳士的対応である。

 苦しんでいる女性の背中を堪能しようという心持なぞ一切なく只管無心に背中をさすり続けた。

 

 

「ふ、ふう……助かったもう大丈夫……」

「にひゃくにじゅういち……にひゃくにじゅうさん……」

「北竜?」

「にひゃくにじゅうなあっはい! それは良かったです!」

 

 

 ぱっと手を背中から退ける、その反応は素早かった。

 

 

「ふう、まさか地上で溺れかけるとは思わなかった」

「ごめんなさい、僕がダメなタイミングで話かけたばっかりに」

「気にしないでくれ、それで何の話だったかな」

 

 

 汚れた口元をハンカチで拭いつつ、あたかも『むせたせいで何と言ったかちゃんと聞こえなかった』という風に偽りつつ話を戻した。

 自分の聞き間違いだったのではないか、そういう疑念が頭をよぎったからである。

 

 

「あ、はい。 【龍殺し】という剣について御存じないかな、と」

「りゅうごろし……りゅうと言うと貴公の名にある立が頭についていて下が甲のような漢字の【竜】で【竜殺し】かな?」

「いえ、その【竜】じゃなくて画数が多い方の【龍】です」

「…………悪いが知らないな」

 

 

 少しだけ考えるような素振りをしつつそう答えた。

 嘘は言っていない、現にモニカ自身も『エクスカリバーの破片が使われたらしい』以上の情報は持ってないので実際にどういう剣なのか知らないのである。

 

 

「そうでしたか……」

「すまない、そもそもどういう剣なんだその『龍殺し』は」

 

 

 幸い今の時間は休憩時間、さり気なく雑談(じょうほうしゅうしゅう)を続けても何も可笑しいことはない。

 

 

「それが僕も『非常に強い剣』ということしか知らなくて……」

「装備更新の一環も兼ねて……か。 ちなみに誰から聞いたんだ?」

「え、学校にいる漂流者(ドリフ)の生徒と話してたらそういう話題が出ましたよ」

「ほう、学内の噂話か」

 

 

 会話を続けつつかなり意外なところの発信であることに内心驚くモニカ。

 

 

 漂流者(ドリフター)、別世界からこの世界にやってきた来訪者。

 ……というのが世間一般的な認識であるがモニカは地獄(シュバルツバース)での経験から別世界とは恐らく何らかの理由で滅んだ過去世界のことではないかと推察している。

 故に情報収集するには齟齬が多すぎると調査からあえて弾いていたのがどうやら今回はそこが関係しているらしい。

 

 

「モニカせんせー、悪魔準備の方をお願いしまーす!」

 

 

「わかった! 今そちらに行こう!」

「すみません、長々と引き留めてしまって」

「いやいや、とても楽しい会話だった。 また機会があれば悪魔談義でもしようか北竜」

 

 

 笑顔を浮かべつつ手を振って呼ばれた場所に向かうモニカ。

 そんな後姿をじっと見つめ、それから視線を落として自分の右手を眺める北竜。

 先程まで彼女の背中をさすってた手であり、女性特有の甘い香りと柔らかさを覚えていて、

 

 

 それを振り払うように柏手を打ち、それから自身の顔面に張り手を叩きつける。

 

 

「軟弱な……伊予島さん……」

 

 

 静かに自身の思い人の名を口にする。

 

 

 

 

 

 

 

 偶々近くにいた何人かの生徒がそっと目を逸らしたことに気づくことはなかった。

 

 

 

 


 

・登場人物・悪魔紹介

 

 モニカ・ヴァイスヴィント

 仕事で学園にやってきたら『龍殺し』の情報やその意味を考えることになった人。

 なんやかんや刺激を受けることが多いので学園での仕事はとても気に入っている。

 

 

 雨柳巧

 『真・女神転生オタクくんサマナー外伝 -アナザーキリギリス-』からのゲスト。

 最初はモニカを国外から来た詳細不明のサマナーということで警戒していたものの、ある程度の顔合わせと雑談で人となりを掴めたので今は普通に話せる友人ポジに収まった。

 恐らく学園闘争でのガキの映像を見て困惑したと思われる。

 

 

 北竜久緒

 『真・女神転生オタクくんサマナー外伝 -アナザーキリギリス-』からのゲスト。

 このレベル帯になって餓鬼に負けるというある意味貴重な体験をする羽目になった少年。

 急速に上がる環境とのギャップを埋めるべく定期戦へ参加・装備に更新等向上心のあり今後が楽しみである一方、その恋心の行く末がどうなってしまうのか物凄く心配になるところも。

 

 

 飛山マサヤ

 本日の犠牲者。

 友人の要請通り全身が浸かるくらいの【パトラ水】を処方をされた結果、「大丈夫、俺は正気に戻ったよ」と涼し気な笑顔を浮かべる。

 授業後、普段は使ってないCOMPに【ダーク・マン】*16をインストールする姿が目撃された。

 

 

 外道 ブラックウーズ

 モニカの仲魔で本編でも顔を出している悪魔、仲魔にした当初はちゃんとその辺にいる粘液っぽい姿をしていたが今は前張り痴女もといどこか蠱惑な少女っぽい姿になっている。

 また元が元なので声は低め、どこぞのショタ童話作家くらいには低い。

 ちなみにモニカもどうしてこの姿をなったのか把握しておらず、過去に聞いたことがあるが渋面を浮かべたブラックウーズが無言でドッペルゲンガーを指差した以上の情報は持ってない。

 

 

 

オマケ:外道 ブラックウーズのステータス情報

 

外道ブラックウーズLV70(33)アライメント:CHAOS

出典真・女神転生Ⅴ

ステータス*17力:92 魔:72 体:94 速:57 運:81

耐性物理耐性、火炎・破魔弱点(火炎無効・破魔反射)

混乱・幻惑・魅了に弱い

保有スキル◎毒の液+9 ◎エナジードレイン+5 ◎ベノンザッパー+5

◎ベノンハント+5 ◎猛毒使い ◎破魔反射 ◎火炎無効 ◎不屈の闘志

 

 コンセプト:

 タンク兼毒の専門家。

 属性弱点を全て潰し【猛毒使い】により威力の上がった毒を特化させた変わり種、【毒の液】【ベノンザッパー】で毒状態から【ベノンハント】で一気にダメージを加速させる。

 欠点は状態異常にとても弱い点、そして何より毒に特化させているので状況がハマりさえすれば仕事はできる、ハマらないなら仕事はなく、毒無効があるとその時点でほぼ機能不全に陥るピーキー性能であること。

 一応強化した耐性と【エナジードレイン】【不屈の闘志】でタンクの真似事もできる、できるがそれをするなら別の悪魔でも良いところはある。

 モニカは捕縛対象の相手にぶつけて遅延戦術を取る際に運用している、毒状態でないなら火力が低いので抑え込み用としては悪くないのだとか。

 ちなみに本来の実機データではレベル99なので少し弱体化している。

 

*1
※本編参照 具体的に言うとイアイアなアレ

*2
※自販機及び喫煙スペースも完備

*3
※ひょっとしなくても:脳破壊

*4
※真5 邪龍 Lv17

*5
※真5 邪龍 Lv60

*6
※真5 龍神 Lv45

*7
※真5 龍神 Lv78

*8
※真5

*9
※真5

*10
※真5

*11
※真5

*12
※真5、元のレベルは33

*13
※ポケットモンスター赤・緑

もしくはファイアレッド・リーフグリーンにと登場するハナダシティ近くの洞窟

*14
※真5

*15
戦闘中1度だけ、HPが0になる攻撃を受けた時に耐え、HPが全回復する 真5

*16
インストールソフトの一つ、ダーク属性の悪魔との交渉が可能になる 出典:ソウルハッカーズ

*17
真5のステータス最大値は999だが100を超えていればその時点で強い




 短いですが今回はここまで、次は本格的な【龍殺し】の情報収集になると思います
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