真・女神転生 オタクくんサマナー異伝:奇妙な旅に終わりはなく   作:黒橋

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話を聞きに行くだけのお手軽なミッション(欺瞞)
ちょっとした独自解釈があります


報告・連絡・相談、そして暗闇の中へ

 チョトンダと別れた後、モニカ達一行はフォルマ集めを再開……していなかった。

 商品棚を背に向け、周囲の警戒をハイピクシーとドワーフ任せてデモニカの通信システム(修理済み)で手に入った情報を報告、次いで今後の相談をしていた。

 

 

【先ずはお手柄よ、と言うべきかしらねモニカ。 同じ女性隊員として鼻が高いわ】

「生憎私は大したことはしていないぞゼレーニン、ただ情報を送っただけだ」

【本当に謙虚ね貴方、何処かの分からず屋も見習って欲しいところよ】

「貴公ら、仲良くしろとは言わないがもう少し何とかならないのか……?」

 

 

 会話の主はゼレーニン。 シュバルツバース関連の知識を持つ科学調査士官でありエルブス号の乗組員であったが、突入直後に乗っていた探索艦もろとも行方が分からなくなりセクターB【ボーティーズ】にて救出された人物。

 その際、セクターBのボス悪魔の行う凄惨な【実験】を目の当たりにした結果、悪魔という存在そのものに恐怖とトラウマを刻まれてしまった。

 ちなみにセクター攻略部隊に所属するとある人物と非常に仲が悪いことで知られている。

 

 

【そんなことはどうでも良いわ。 それより他のフォルマ回収部隊やセクター攻略部隊に情報を集めてもらったのだけれど既に『ボス悪魔がブタの悪魔を呼び出して食らっているところを見た』という類似報告がいくつか挙がってるのよ】

「流石の手際だな、しかしそうなるとますます私は大したことはしていないと思うのだが」

【言ったでしょ、『類似報告』よ。 今のところ貴方が挙げた『贄』に関する情報はないわ】

 

 

 淡々と情報を整理しているように聞こえるが悪魔に関する情報というだけで多大なストレスがかかっていてもおかしくはない。

 それでもなお向き合うことができているのは彼女を助けたらしい大天使(悪魔)の影響が大きいのだろう。

 

 

【セクター攻略部隊にいる『専門家』がまだ帰還してないから情報のすり合わせはできてないのだけれど軽い見解は既に貰っているの。 『簡易的な儀式の再現じゃないだろうか』、だそうよ】

「……悪魔を食すことが何の再現になるんだ?」

【モニカ、マヤ文明の儀式に関する文献を読んだことは?】

「ここに降り立った後に一通りの神話や悪魔の文献には目は通しているが……確か人の心臓を捧げることで太陽に活力を取り戻させるというアレか?」

【そうよ、要はそれに近いことをあのボス悪魔は行っているんじゃないかと私達は睨んでいるわ】

 

 

 『贄』という単語からここまで情報を導き出せるのかと感心する一方、モニカはふと思いついた疑問を口にした。

 

 

「そうなるとボス悪魔はマヤ文明の誰かなのか?」

【いいえ? 接触した攻略部隊の話やボス悪魔の造形から察するにおそらく違うわ、マヤ文明を引き合い出したのは『見立てによる再現』の例え話よ】

「見立てによる再現……?」

【マヤ文明においては太陽に人の心臓という贄を捧げることで再び偉大な輝きを取り戻すと信じられていた、ここまでは良いわね?】

「それはまぁわかるが」

【だからあの悪魔は自身(太陽)ブタの悪魔(人の心臓)という贄を捧げることで力を取り戻そう(偉大な輝きを取り戻す)としているんじゃないか、というのが『専門家』の見解ね。 現に『ブタ』の悪魔というのもブタ自体が捧げ物としてはメジャーなのと】

「ちょっと待て」

 

 

 さらに続けようとするゼレーニンの言葉を遮るモニカ。

 どうやらモニカと会話をしつつ器用にも『専門家』との情報共有も行っていたらしい。

 

 

【何か気になることでも?】

「気になることどころかその理論だと太陽自身が贄を用意して自身に捧げていることになるぞ! そんな無茶苦茶な話が通るのか!? ただのマッチポンプじゃないか!」

【そうね、物理学者の私からすればこんなの質量保存の法則に中指を立てているのと大差ないわ】

「だったら!」

【でもこれは物理学の話じゃないわ、見立てによる再現された儀式という神秘の話】

 

 

【『捧げられた贄によって、大いなる存在は力を取り戻す』、簡易的とはいえ儀式が成立している時点でこの可能性を否定する材料は私達にはない】

【貴方が『贄』という情報を持ち込んでくれなかったらこの事実に気づけたかどうか怪しい】

 

 

 だからこそお手柄なのよ、と呟くゼレーニン。

 そこまで言われてはモニカとしては黙るしかない。

 

 

「……わかった、賛辞は受け入れよう」

【理解いただけたようで何より】

「それとこれからの予定についてそちら側の意見を聞きたい」

【作戦班はこれから複数人の機動班、即ちセクター攻略部隊及びフォルマ回収部隊を交えた対策会議、それと資材班に色々と意見を出して対ボス悪魔への兵器の製作をお願いしているところね】

「兵器の製作? かの大天使と協力して作ったというものは?」

 

 

 セクター攻略部隊の方でそういう動きがあったことを思い出し言及する。

 

 

【マンセマット様から与えられた知識と素材を基にした兵器のことなら違うわ、あの兵器は飽くまでもボス悪魔からエルブス号を引き剝がすのが目的。 今作っているのはボス悪魔が(ブタの悪魔)の摂取を妨害するためのものよ】

「進捗状況は?」

【情報入手の時期が直近過ぎるのとフォルマ・資材の在庫を考えると芳しくはないわ、今のところ使えそうな案はボス悪魔の口に向けて粘着弾を撃ち込む新兵装くらいのものね。 ちなみに私も案は出したわ、ナパーム弾を常時展開して出てくる贄をその場で焼き殺せばいい】

「……なぁ、それってその場にいるセクター攻略部隊にも被害が出ないか?」

【鋭いわねモニカ、作戦班・資材班の両方にも同じことを言われて却下されたわ】

「当たり前だ!」

 

 

 口元が引き攣りながらもツッコミを入れるモニカ、どうやら大天使のメンタルケアをもってしてゼレーニンの悪魔への嫌悪感については一切改善してないようである。

 

 

【ああ、それとこちらでまとめた情報をデモニカのデータベースにあげるから確認してほしいのと……貴方含めた幾人かは引き続き情報収集とフォルマ回収の業務をするように】

「戻って会議に参加しなくてもいいのか?」

【会議室で頭を捻るよりも足で稼ぐ方が性に合っているでしょう? それにどうやって『贄』の情報に辿り着いたのか私は知らないけど、その手腕を会議室で腐らせることは私は勿論作戦班も望んではいないわ】

 

 

【だからお願い、何かしらの手がかりを見つけて頂戴】

「――――了解、通信終了」

 

 

 

「ふぅ……」

 

 個人通信を切り、そのままデモニカに内蔵されているデータベースにアクセスするといくつかの情報が増えているのが確認できたのでそのまま追加されたデータを閲覧。

 ついでマッピングデータと周囲に出現する悪魔情報を洗う。

 

「嬢ちゃん、話は終わったかの?」

「ああ、問題なく……いやいくつか別の問題も浮上したがなんとかな。 二人も周辺警戒ありがとう」

「どーいたしまして」

「これからはどう動くつもりじゃ?」

「情報収集の継続、もといドッペルゲンガーのミッションを進める」

 

 仲魔と会話しつつ情報をチェックしていくとボス悪魔が呼び出す「ブタの悪魔」についての言及もあった。

 

 

\カカカッ/

魔獣カタキラウワLV9耐性:破魔弱点、呪殺無効

特筆情報:呪殺魔法【ムド】使用悪魔

 

 

 カタキラウワ自体はそこまで強い悪魔ではない、が【ボーティーズ】出現悪魔において危険悪魔として周知されている悪魔の一体である。

 その理由は呪殺魔法の【ムド】、即ち即死呪文を使ってくることが大きい。

 この情報が共有されるまで何人かの犠牲者を出し、何より遭遇率の高さから強さ以上に恐れられた存在である。

 そしてこの【ムド】、あのドッペルゲンガーの弱点の一つなのである。

 

「恐らく目撃情報から外見、レベルを加味しての特定だろうが私も同意見だな」

「ドッペルゲンガーが勝てないと言っておったのはこういう事だったんじゃな」

「でも呼び出す悪魔は本当にカタキラウワなの? 他にも候補がいたりしない?」

「まぁ豚の悪魔は他にもいないわけではない……が、おそらくカタキラウワで間違いないな」

 

 データベースを閉じながらが口を挟む。

 

「ほう、嬢ちゃんがそこまで言うのは何かしら理由があるんじゃな?」

「簡単に思い浮かぶだけでも2つあるな」

「へー、ちなみにどんな理由?」

「まず1つ、ドッペルゲンガーへの有効打がない」

 

 ここのボス悪魔のレベルは不明、しかし目安になりうる悪魔が存在している。

 道中モニカが遭遇した【魔人マタドール】、測定レベル30。 

 少なくともボス悪魔はそれ以上に高いであろうから、それ以下で呼び出せそうな豚の外見をした悪魔はわかっているだけでも計3体。

 

【神獣 カマプアア 】 Lv24 【邪龍 チョトンダ 】 Lv15 【魔獣 カタキラウワ 】Lv9

 

 カマプアアはセクター攻略部隊の一人が運用している悪魔であり、レベルだけ見るならば該当しそうであるがこの悪魔は物理型で尚且つ呪殺・破魔系統のスキルは持っていない。

 

「そうなると候補はチョトンダとカタキラウワになる」

「チョトンダは有効打持ってないの?」

「一応氷結魔法の【ブフ】は使えるな」

 

 先程確認したチョトンダのデータを思い出しつつ言葉を紡ぐ。

 

「使えるなら候補じゃないの?」

「確かに有効打があるので候補としては残るが恐らくは違う」

「それが2つ目の理由じゃな?」

「うむ、これもチョトンダが言っていたな、『呼び出したブタをあっさり食べていた』と」

「……あっさり食べれるくらいレベル差があるってこと?」

「そういうことだ、他の2体だと易々と食べるのは難しいだろう? 少なくともチョトンダは暴れたらボス悪魔が違うことに気づいたからな」

 

 悪魔召喚プログラムで示されるレベル差というのは非常に重い。

 仮にレベル差が1でもあるだけでも厳しいというのにそれが20も違ったのならば一切反撃なぞ出来ぬまま殺されてしまうのは目に見える。

 そして召喚されたブタがカタキラウワであれば容易にそれができるだろう。

 

「ま、それはともかくとして【飢えたる王】を探さねば。 こっちも何か情報を持ってるはずだ」

「『持ってる』ときたか、その根拠は何じゃ?」

「ドッペルゲンガーが暇つぶしのために無作為に悪魔をチョイスした、のではなく『ボス悪魔について何か知ってる悪魔』をチョイスしたんじゃないかと思うんだ」

 

 調査隊もフォルマ回収とセクター攻略の一環としてボス悪魔を倒すことだけに注力していた訳ではなく、本来の目的であるこの地に関する調査も並行して行っている。

 それはここセクターCでも変わりはなく、これはセクター攻略部隊もフォルマ回収部隊という二つに分かれている機動班の責務なのだ。

 その上で出てこなかった情報を持つ悪魔との『世間話』を促してきたのは偶然とは思えない。

 

「それは……その……う、ううん……」

「あ奴、一体何が目的なんじゃ……?」

 

 もっとも狙いが不透明なため、不気味さの方が勝るのか呻く2人。

 

「まぁあの悪魔は何か恨みがあるのは間違いなさそうだが……どちらにせよ我々の持つ情報でボス悪魔に繋がりそうなのは『【飢えたる王】との世間話』くらいしかない、探索を続行する」

「わかったわ」

「おう」

「後はなるべく早く見つかってくれると良いのだが……」

 

 モニカはドッペルゲンガーと再会する前の時間を思い返した。

 

 


 

 

【19時間】

 

 

 これはドッペルゲンガーと約束をして別れた後レッドスプライト号へ戻り、そしてまた出会うまでの凡その時間である。

 より正確に言うのであればいくらか違うのであるものの、あまり今回の話には関係がないので割愛。 問題は何故ドッペルゲンガーとの邂逅が【19時間】も時間が空いたのか。

 それは激戦に次ぐ激戦を経たモニカの休息の為に『レッドスプライト号の乗組員が気を利かした』のような慈悲に溢れた理由などではなく、調書と会議、もっと言えば「フォルマサーチから出現した悪魔」への聞き取りとその対策のためである。

 

 実のことを言えば「フォルマサーチから悪魔が出現した」*1の報告自体は過去のセクターの時点で既に報告された事案であったりするものの、出現する悪魔は【珍獣】というカテゴリの悪魔が大半であり、レベルこそ該当セクターで見るならそこそこ高いものの脅威としての評価は低く、

 

「わざわざこれの為にフォルマサーチを改造する必要はあるのか?」 

「そもそもそういう改造をするほどの緊急性はあるのか?」

「単純に手が足りん!」

 

 という観点から先送りされた問題の一つであり、後々改善すればいいだろうと考えられていた。

 

 

 

「フォルマサーチから【魔人】が現れた」という報告がなければ、だが。

 

 

 

 【魔人】、その存在はセクターBでも確認された種族の悪魔。

 当時フォルマ回収部隊14名及びセクター攻略部隊6名、計機動班20名。

 合計20名が各々のやるべきことを成し遂げ、重軽傷者こそ出たものの蘇生が間に合ったために最終的に死者を出さず、撃破に成功。

 その後発生した別の事例による偶発戦での被害の方も大きかったが『ボス悪魔以外での注意すべき危険な存在』という最初の事例で登録されたカテゴリ種族【魔人】。

 

 そんな【魔人】がまたしても出現、それもフォルマサーチからというのはレッドスプライト号としては聞き逃せない報告であったが、最初その報告はかなり懐疑的に受け止められた。

 何故かと言えば「被害があまりにも軽微過ぎる」という点が大きい。

 

 確かに被害として見れば「接敵した隊員*2の仲魔が全損*3と手持ちのアイテムがほぼ尽きる」というものの、「単独で倒すことができた」というのは先のセクターBでの魔人戦と比較してもいくらなんでも弱すぎる、という意見が出たからだ。

 

 故に会議は踊る……ことはなかった。

 理由は会議参加者の中に先の魔人討伐に貢献した人物がいたからである。

 

『……おいおい、こんなの時間の無駄だ無駄』

『今回俺達が話し合うことは魔人の考察か?』

『まぁ確かに俺はあの時いた面々と一緒になってあの魔人、デイビットを倒した』

『つっても、あの魔人について知ってることなんて精々恐ろしく強い悪魔、ってことくらいだ』

『ヴァイスヴィント……軍所属なら階級もつけた方がいいか? 別に良い? なら続けるぜ』

『フォルマ回収部隊隊員1人の仲魔が全損』

『重く見るべきはそこだろ?』

『この問題の放置は【フォルマ回収が滞ること】、即ちセクター攻略の物資が危うくなる点だ』

『ならやるべきことなんてもう決まったようなもんだと俺は思うがね』

 

 乱暴ながらも核心を突く言葉もあり、フォルマサーチの改修と魔人出現の全体周知が図られることとなった。

 

 この決定に不服というか割を食ったのは技術班であり、只でさえ立て込んでいるにも拘らず仕事が増えたことに技術班のトップが怒りを露にする場面もあったものの、モニカの持ってきた魔人由来のフォルマに目を輝かせ直ぐに機嫌を直し、周囲の人間を呆れさせる程度で留まるのであった。

 

 その後モニカはベットへ倒れ込むように休憩を取り、目が覚めると食事という名の栄養補給を行い、仲魔の蘇生と回復薬及び弾薬・消耗品の補充に装備の修繕、そして技術班からアプリの試運転を頼まれた後にドッペルゲンガーの元へ行ったのである。

 

 


 

 

「本来であるなら新しいアプリの試運転とフォルマ回収をしていたはずだったんだけどなぁ……」

 

 そんな愚痴を溢しつつモニカ達はレッドスプライト号のある1階から地下1階へと移動していた。

 その間新しくなったフォルマサーチ及び隠れた悪魔を捉えるエネミーサーチを併用しつつ周囲の探索。 接敵した悪魔をやり過ごし回収したフォルマをズダ袋に入れ、エネミーサーチに反応があった何かは解析は行わずに反応箇所のデータはレッドスプライト号へ送信、順調であった。

 

【飢えたる王】らしき悪魔が見当たらないこと以外は。

 

「で、どうするんじゃ嬢ちゃん。 結局【飢えたる王】とやらは見当たらんが」

「実のことを言うと先程貰った情報の中に1階と地下1階のマップの探索完了エリアでの悪魔の出現データがここにある」

「なーんだ、そんなのがあるならどの悪魔か見当はついてるんじゃない」

「さっきも言ったが見当はついてないぞ」

「なんでじゃ、どんな悪魔が出るのかわかってるんじゃろ?」

「現状わかっている出現悪魔の中に【飢えたる王】らしき悪魔がいないからだ」

 

 

【妖樹 サンショウ】*4【邪龍 チョトンダ】*5【魔獣 イヌガミ】*6【妖獣 ライジュウ】*7

【龍王 ノズチ】*8【悪霊 マカーブル】*9【妖魔 カラステング】*10【妖鬼 モムノフ】*11

【地霊 ドワーフ】*12【悪霊 インフェルノ】*13

 

 

 1階及び地下1階での出現が確認されている計10種類の悪魔。

 だが、この中に【飢えたる王】という表現が似合う悪魔がいないのである。

 

「無理にそれっぽいのをこじつけるなら『龍王』ノズチにはなる……が」

「『王』であるけど『飢えたる』に当てはまらない、と」

「ならまた振り出しかの」

「ところがそうでもない」

「「えっ」」

「理由はドワーフだ」

「儂?」

「おじいちゃんが?」

「あ、いや、ドワーフはドワーフでも貴公でなくこのセクターでのドワーフの出現箇所だ」

 

 そう言いつつ地下1階のある場所へ足を進める。

 

「というか儂の同胞が居ったんじゃなこの異界」

「意外よねおじいちゃん……でも今まで1度も見たことない気がするんだけど」

「だろうな、この悪魔が出現する場所は唯一探索が完了してないエリア」

 

 足を止め、とあるエリアに繋がる扉の前に立ち止まった。

 

「何も見通せぬ闇の空間、通称ダークゾーン」

 

 デモニカに内蔵されたアプリ、『ダークスキャナー』を起動させつつ扉の中へ入っていく。

 

「最も何も見通せなかったのはついさっきまでだ」

「技術班に感謝しなければ」

 

 目の前に広がる簡易的ながらも見えるようになった道を頼りにマッピングと【飢えたる王】の探索を開始した。

 

 

 

 

「【幽鬼モウリョウ】*14、【地霊ドワーフ】、そして【妖鬼ヤマワロ】*15……」

 

 ダークゾーンでの探索は比較的順調に進んでいた。

 モニカの睨んだ通りダークゾーンでの悪魔の分布は他エリアと比べて異質であったことだ。

 出現する種類こそ少ないものの地下1階や1階、それどころか探索の進んでいるはずの2階と3階ですら見ないような悪魔を確認、これはかなり大きな情報である。

 

「確か3階層にも探索の進んでないダークゾーンはあったな。 このアプリと出現データはセクター攻略部隊でも重宝するはず」

「そうね、ところでサマナー」

「なにかな?」

「【飢えたる王】は?」

「…………」

 

 機嫌良さそうなモニカの口が止まった。

 

「儂の同胞は無論、他の二体も王とは言い難いしのぅ」

「そうねおじいちゃん。 で、どうするの?」

「と、とりあえずこのダークゾーンの探索を終わらせることから始める」

「その後は?」

「……ドッペルゲンガーにヒント貰いに行く」

「まぁ、そうなるわね」

「最初からそうしたほうが良かったんじゃないかの?」

 

 そう、ドッペルゲンガーの依頼たる悪魔はまだ見つかっていない。

 当てが外れて若干肩を落とすモニカと呆れた風の仲魔2体。

 

「────2人共」

「はぁい」

「わかっとる」

 

 もっとも、そんな空気が流れようが悪魔は襲い掛かってくる。

 1人と2体が態勢を整えると、【ソレ】は現れた。

 

 

 

 

 

 ──────────────それは実に奇妙な姿の悪魔であった。

 

 先ず上半身は立派な獅子の姿である。

 ふさふさとした鬣に獰猛な牙と鋭い爪のある前足、雄々しい顔立ちのライオンであり、もし襲われでもした場合その牙か爪によって絶命しかねないだろう。

 

 対する下半身は蟻である。

 体はおおむね円筒形で細長く、胸部、腹部のそれぞれの間がくびれ、それぞれの胴体から細長い足が伸びている。

 あり得ない姿、絵合わせで組み合わせを間違えてしまったかのようなその悪魔の名は、

 

 

\カカカッ/

妖虫ミルメコレオLV22耐性:???

 

 

 


 

・人物紹介

 

ゼレーニン:

 

 少し前までトラウマを抑え込みつつ前線で情報収集を行っていたがではあるがマンセマットとの会談により、自身の役割を再認識して後方での情報精査と文献調査を一手に担っている。

 また後方支援についたのは機動班所属のとある人物となるべく顔を合わせないようにしているのでは? との声もあるが、本人はその件に関して無言を貫いている。

*1
 第2話『2.ミッションと暇つぶし、それと謎かけ』にて言及。

 この世界ではフォルマと悪魔のサーチが同様の扱いになっていた。

*2
無論モニカのこと。

*3
後にレッドスプライト号の設備によって全員蘇生。

*4
瓜の頭に胴体が付いたような妖怪

*5
前回登場した【豚のような蛇】

*6
紐のように細長い犬

*7
全身が電気で出来た獣

*8
象の鼻がついた妖怪、一説ではカヤノヒメの別名とも

*9
大鎌を持った道化師

*10
羽が生えた全身黒子の修験者

*11
槍を持った古代の武人

*12
ハンマーを持った小柄な爺

*13
全身が炎に包まれている人型の亡霊

*14
漂っている霊魂、本来なら人を襲うような存在ではない

*15
全身が毛に覆われた妖怪、もしくは山に入ったカッパ

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