真・女神転生 オタクくんサマナー異伝:奇妙な旅に終わりはなく   作:黒橋

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ミルメコレオ、小説で登場させた結果気に入ったのでいつか何かの作品で育てたいなぁと思ってます

今回はちょっと長めなのと最後にお知らせがあります


事態は進み、既知は未知に、そして笑い声は響き渡る

 ミルメコレオが仲魔になった後、ダークゾーンから抜け一息ついたモニカ達。

 ダークゾーンのマップ及び出現悪魔情報、何より手に入ったボス悪魔に関する情報を通信によるやり取りで共有していた。

 

 

【なるほどね、贄の吸収が妨害できないのなら贄そのものを台無しにしてやればいい。 ホウ酸団子でネズミを一網打尽するような戦術が効く、と】

「間違ってはないんだがその認識で大丈夫か?」

【大丈夫よ、問題ないわ。 それにジャパンの方だと蛇退治に供物として酒献上した後に酔わせて殺してる逸話があったしそれと同じようなものよ】

「その蛇って八岐大蛇という国を滅ぼしかねないような存在だった気がするんだが……」

【つまり大体合ってるわね】

「そうかなぁ」

【でも良かった。 この情報が正しいならデビルシリーズの増産と仲魔悪魔に状態異常のスキルを持たせばいいから大分時間も短縮できるわ】

「? まだ作戦時間には余裕があったはずだが」

【珍しいわねモニカ、貴方が連絡伝達網の確認を怠るなんて……】

 

 

 そこまで言ってから軽く息を吐きつつ静かに口を開いた。

 

 

【マンセマット様の協力により完成した特殊兵装によってボス悪魔からエルブス号を引き剥がすことに成功したわ】

「なんだと!?」

 

 

 慌てて連絡伝達網を確認するとそこには【セクター攻略部隊より伝達、ボス悪魔からエルブス号の引きはがしに成功】*1の文字が記されていた。

 その成功の知らせ自体は朗報であり、

 

 

「馬鹿な、()()()()! 引き剥がしと討伐は同時進行の予定だったはずだぞ!」

 

 

 事前の取り決めからはかけ離れた情報であった。

 

 

【どうもセクター攻略部隊の独断で行われたみたい。 ……いえ、それ以上に状況が変わったのが大きいわね】

「何があった」

【あのボス悪魔はまだ満足できなかったらしく新しい(食べ物)を欲したのよ。それもエルブス号に匹敵するようなものを、ね】

「まさかレッドスプライト号……!?」

【安心して。 そうなる前にボス悪魔とエルブス号と引き剥がした結果、今ボス悪魔は異界の奥に引っ込んでるわ。 念のために監視を何人か付いてて今逐一情報も送らせてる】

「そうか……」

 

 

 自身を落ち着かせるために大きく息を吸い込み、そして吐き出す。

 デモニカと外部を隔てる遮光版が少しだけ曇るも直ぐに晴れた。

 

 

「それで、今後の予定はどうなっている?」

【変更点はデモニカ内の表示時刻*2[18:00]から[15:30]に時間調整した以外はなし。現在時刻は[14:13]だから約1時間後には総攻撃を仕掛けてボス悪魔を討伐、「ロゼッタ」の回収をするから準備を進めておいて】

「了解、こちらも準備を進める」

【よろしく、通信終了】

 

 

 通信を切り、拾った魔石・宝玉や作成アイテムの確認をしつつ中途半端な弾数になったマガジンを外して全弾入ったものに取り換える

 それが済むとデモニカのデータベースへとアクセスをして調子を確かめる。

 

 

「閲覧は可能……ダークゾーンの時はアクセスできなかったがアレはあの場の特性か? これも一応載せておくか」

「サマナー、ちょっといいかしら」

「ん?」

 

 

 独り言ちながら追記を行いデータベースを閉じつつ、次すべきことを考えていたモニカの耳にハイピクシーの声が聞こえる。

 

 

「どうした?」

「これからどうするの?」

「そうだな、先ずはドッペルゲンガーへ報告が筋だろう」

「それは知ってるわ、私が聞いているのはその後の話よ」

「その後? 確定ではないが前回のセクター同様ボス悪魔の討伐時に横やりが入らないようにするのが主な業務になるかな」

「嬢ちゃん、ハイピクシーが聞いているのはそういうことじゃないと思うんじゃが」

 

 

 周囲を警戒していたドワーフも安全の確認が出来たのか口を挟んできた。

 意図が伝わってないことに気づいたらしく、再度小さな妖精は口を開いた。

 

 

「ドッペルゲンガーをどうするのか、って私は聞いているのよ」

 

 

 


 

 

 side:ドッペルゲンガー

 

 

 ミルメコレオとモニカ達の『世間話』を確認した後、【ワタシ】は初めて彼女(モニカ)と出会った場所に戻った。

 彼女のことだ、おそらく情報をあげたらまっすぐこちらに来てくれるだろう。

 そうすれば私の暇つぶし(モニカのミッション)は終わりだ。

 

 

『終わり、か』

 

 

 そう、終わりだ。

 私は悪魔、本来であるならば人と仲良く手を繋いで歩くわけにもいかない存在。

 故にこそ終わりである。

 だが心配はいらない、モニカがいなくとも他の誰かに化ければいい。

 今までもそうしてきた、これからもそうするだけだ。

 

 

 

「く、来るなバケモノ!」

「人間の姿を真似たところで俺は騙されないぞ!」

「お、お前たちが悪いんだ! お前たちさえいなければ! シュバルツバースなんてできなければ! 俺は、エリートである俺が地獄(こんなところ)に来なくて済んだのに!」

「ぐ、が……! な、何をした! 撃ったのか! やめろ! 来るな、来るな……」

 

 

「来るなァ!」

 

 

『……本当に?』

 

 

 そう呟き(思い)つつ、モニカがいる時は消しているとあるものを取り出した。

 バケツを彷彿とさせる珍妙な形状の兜、確か「デモニカヘルメット」と言うらしい。

 それを静かに被ると『音』が聞こえてきた。

 

 

 

【えーテストテス■……こちらセクター攻■部隊のヤ■シマ■、同■隊の■■ネスと共にボス■魔オ■■スを見■りを継続。 動■なし、どうぞ】

 

【技■班の■ェンからお知■せします、■ビル■リーズの■産拡大、■ス悪魔の取り■きに効■とのこと■ので活用くだ■い】

 

【■制室の■トーより伝達! 今■ちらに他の■クター攻■部隊が向かってい■! 決行■刻まで後■時間! ボス■魔はこ■で仕■めるぞ!】

 

【■療班ゾ■から報■します、医■用ベットの空■が残り■つです、後2時■後に■名復■できますが■理をなさら■ようにお■い■ます】

 

【質問■んだが■悪魔に■って喜ばれ■うなものって知■ないか■ント?】

 

【■ンソニ■、これは■人通信じゃ■くて全体■達網だぞ?】

 

【えっ■ジで?】

 

【■制室の■ィリア■ズより通■……いや命令、ア■ソ■ー今回■作戦が■わり■第管制■に来るよ■に】

 

【誤■です! 話■聞】

 

 

 

 ヘルメットを脱ぎ、消す。

 ノイズだらけで全ての情報を知ることはできないがこのヘルメットを被ると大量の情報が流れてくる。

 もっとも、最初はそんなことはなかった。

 彼女(モニカ)の姿を模倣し続けた結果、何故かこのヘルメットにその機能が備わっていた。

 何故なのかは知らない。

 わかるのはあのブタは相当追い込まれていることくらいか。

 

 いや、わかっている。

 わかっている。

 

 

 外で活動している乗組員の名前と簡単なプロフィール、

 載っている物資の残量、

 破損した船のパーツと補強箇所、

 彼らの目的である「ロゼッタ」、

 医療ベットの空き数、

 足りてないフォルマの中身、

 運用されている悪魔の数と種類……

 

 

 そして何よりもうすぐ彼ら(■■■)はここを離れることがわかっている。

 本来ならもう少し苦戦したかもしれない。

 しかし大天使(ペテン師)の協力、私が流したあのブタの強みであり弱点とも言える悪魔召喚とその対策。

 あのボス悪魔は遠からず死ぬ、多少の死傷者は出るだろうがこれは確定した出来事だ。

 そして「ロゼッタ」とかいう目的の物質を入手し、次のセクターに行くだろう。

 そうなれば、

 

 

『次は……誰を模倣すればいいか……』

 

 

 次?

 次ってなんだ?

 もうここにニンゲン(■■カ)はいなくなるのに?

 まさか悪魔が悪魔を模倣しろと?

 

 

 

『ブオーノ? 何故こんなところに鏡が?』

『……ああ、なんだ。 己の姿も持てぬ半端物ではないか』

 

 

『疾く失せよ、貴様のようなものなぞ口に入れる価値すらないわ』

 

 

 

『ハハハハハ』

 

 

 口から笑い声が漏れる。

 わかりきっていたことだ、何を今更。

 

 

 ああ、ああ

 

 

 それならいっそ

 

 

『……足音』

 

 

 足音3つ、いや追加で羽根音が1つ

 1つは軽く、1つは重く、1つは軽やか、1つは恐らく4つ足?

 歩いてる3体の中で1体は大きく、残り2体は小柄、飛んでる1体はさらに小柄

 

 

 ああ、ああ

 ようやく来たか

 

 

『話の途中で席を外すのはマナー違反だろう?』

 

 

 待ちくたびれたよ、■■■■(モニカ)

 

 

 


 

 

 

『遅かったじゃないか、会うのは2時間と37分とんで10秒振りかな』

 

 

 ハイピクシー達との会話を終え、ドッペルゲンガーのいるであろう場所へと戻るとそこには商品棚に背を預け、笑みを浮かべているモニカに似た誰かの姿があった。

 

 

「また時間を数えて待ってたのか?」

『さぁ、どうだろうな。 それより【豚のような蛇】【飢えたる王】との悪魔交渉は楽しんでもらえたかな?』

「…………色々と大変だったがまぁ有意義ではあったな、うん」

『言い淀まなくても見てたから知ってるぞ、実に災難だったな?』

「口元をニヤケさせながら言う事じゃないと思うんだが?」

『これは大変失礼した、では言い直そう。 実に災難だったなモニカァッハッハッハ!!!!』

「笑いながら言うんじゃない!」

 

 

 会話は弾み、ノリもさほど変わらない。

 謎かけの時と比べても殺気のようなものがなくただひたすら笑みを浮かべている。

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 これはシュバルツバース突入時の初期も初期の頃に悪魔を仲魔にした際の試行錯誤の1つで、『人間に出来ないことができるのなら特殊工作のようなこともできるのでは?』という考えから悪魔にハンドサインや暗号を教え込んだことがあった。

 もっともデモニカの適応速度と悪魔の成長速度が違い過ぎたこと、何より悪魔を強化する手段である悪魔合体によって今まで教えたノウハウが全く引き継がれないという致命的な欠陥があったため破棄されたプランの1つなのである。

 それでも簡単なハンドサインをそこそこの時間を使って仲魔になった悪魔に教えている機動班の隊員は一定数おり、モニカもその中にいた。

 なのでモニカが仲魔達に向けて送ったハンドサインはとてもシンプルなものであり、 

 

 

 『()()()』を意味するハンドサインである。

 

 

 

 

(どういうことだ)

 

 

 モニカにとってドッペルゲンガーという悪魔への印象は複雑だ。

 

 最初は明確な殺意をぶつけてきたにも拘らず何が琴線に触れたのか気に入られたと思っていた。

 2回目はおそらくドッペルゲンガー自身の都合があったとはいえ間接的に協力してくれた稀有な悪魔。

 どちらも殺意を滲ませつつも楽しく話せたはずだし多少は仲良くなれたと思っていた。

 そして3回目である今回、

 

 

 ドッペルゲンガーから殺意が消えた代わりに()()以外何も読み取れなくなってしまった。 

 

 

 違和感のようなものはあった、だからこそまず話を挟んで反応を伺った。

 その違和感が間違ってないことが分かった。

 自身(モニカ)に起こったことを思い返して面白そうに笑う悪魔(ドッペルゲンガー)

 一見するならば楽しそうに笑っているように見えた。

 

 

 しかしモニカは知っているし見ている。

 最初に出会った時、何が面白かったのか破顔して大爆笑するその姿を見ている。

 あの笑顔を知らなければ今悪魔は機嫌が良さそうに見えたかもしれない。

 だがあの時の表情と比べれば今の笑い方は酷く無機質なものにすり替わっている。

 

 

(まるで仮面をつけている人と話しているような気分だ)

 

 

 そしてモニカが警戒をせざる得ないのにはまた別の理由があった。

 

 

【対象悪魔『ドッペルゲンガー』、アナライズ中……更新中……更新中……】

 

 

 無機質にヘルメットの中で響き渡るのはデモニカに登録されているシステムである『悪魔召喚プログラム』。

 ドッペルゲンガーと遭遇して以降せわしなくデータの読み込みが行われ続けている。

 だが『ドッペルゲンガー』のアナライズ自体は他隊員とのデータ共有によって既にデータベースに登録されている。

 であるにも関わらずアナライズが起動している、つまりそれは

 

 

【完了、登録データトノ差異ニヨリアナライズ率『1()0()0()%』カラ『7()5()%』ニ下方修正、データヲ表示シマス……】

 

 

 

\カカカッ/

外道ドッペルゲンガーLV28(+3)耐性:???

 

 

 ドッペルゲンガーの変異を示していた。

 

 

 

 

(耐性が不明になっていることもそうだがこのレベル……今の私と同等だとはな)

 

 

\カカカッ/

人間モニカ・ヴァイスヴィントLV28耐性:銃撃耐性、疾風弱点*3

 

 

 原則的に野良にいる悪魔のレベルは変わらないというのは『専門家』達の話だったはず。

 であるならば今目の前にいる悪魔(ドッペルゲンガー)例外(イレギュラー)ということになるのだろう。

 

 

(これは……()()()()()()()()()?)

 

 

 ここに来る前、仲魔達と話し合ってドッペルゲンガーに対してどうするかというのは決めておいた。問題はそれを今して大丈夫かどうかと言われると悩ましい処か拙いのではないだろうか? という疑問が頭によぎっている。

 そうなるとやるべきことは【世間話(悪魔交渉)】である。

 

 

「ドッペルゲンガー」

『何かなモニカ』

 

 

 ドッペルゲンガーは笑っている。

 

 

「貴公のおかげでボス悪魔討伐の目途が立った、感謝する」

『どうしたしまして。こちらとしても世間話の様子は面白かったし何よりあのブタが死ぬなら清々する、感謝されるほどのことでもない』

 

 

 悪魔は笑っている。

 

 

「いやいや、本当に感謝しているんだぞ私は。何かしら欲しいものはないか? 報酬じゃないが個人的に何か贈りたいんだ」

『ふふふっ、安心してほしいモニカ。私も暇つぶしでやったに過ぎないことだ、暇は潰せたし過剰な報酬は求めないさ』

 

 

 鏡向こうの誰かは笑っている。

 

 

(駄目だ完全にこっちの会話する気がない……)

 

 

 殺意も感じなければ機嫌が良さそうに見える笑顔なため、端から見たら楽しく会話を進めているように見えるかもしれない。

 しかし実際のところは笑顔()を作り歩み寄ってくる気配すらなかった。

 

 

(どうする? ハンドサインで仲魔を呼んで……いや呼び寄せれても会話に参加させるように伝えるのは教えてある簡易ハンドサインでは無理……!)

 

 

 ――――ところで「簡易ハンドサイン」と言っても習得時間も短時間で済むということはない。

 まず数種類のサインを覚え、サインの組み合わせを覚え、そしてとっさに出したサインを分かるように【そこそこの時間】を使って仲魔になった悪魔に教える必要がある。

 故に何が言いたいのかというと、

 

 

「サマナーよ、少しいいか?」

 

 

 訓練を受けていない仲魔(ミルメコレオ)からすれば何一つ伝わらないということである。

 

 

「ッ、なんだミルメコレオ」

「いや何、我も会話に参加したいのだ。その悪魔に用があるのでな」

『私は特に貴公へ用はないよ』

「そうか、だが我にはあるのだ」

 

 

 そう言いつつモニカを見つめるミルメコレオ。

 

 

「良いだろう」

 

 

 しかしこれは考えをまとめるチャンスと思い、許可を出した。

 

 

「悪いな。 ――――初めまして、というべきかドッペルゲンガー」

『初めましてミルメコレオ、用と言っていたが何かな?』

「うむ、感謝を述べに来た」

『……感謝?』

 

 

 笑顔を浮かべているドッペルゲンガーに困惑の色が混ざった。

 

 

「貴様のおかげでサマナーと出会えたことへの感謝だ」

 

 

 

へぇ……(あ゛?)

 

 

 ドッペルゲンガーの笑顔が微妙に引き攣った。

 気が付いていないのか蟻獅子は誇らしそうに語り出す。

 

 

「貴様が居なければ我は今なお飢餓の苦しみの中にいたことは想像に難くない」

『そうかい、それは良かったね』

「あれは初めての体験だった、アレを知らずにいたのは我の眼が曇っていたことの査証と言えるほどだ」

「状態異常になったことをそんな大仰に語られてもその……困る……」

 

 

 ドッペルゲンガーは相変わらず笑顔を浮かべているように見える。

 しかし会話に参加しつつもその変化をモニカは見逃さなかった。

 

 

『ふぅん、随分と仲良しじゃあないか』

「ふっわかるかドッペルゲンガー。 そうとも、サマナーは良いニンゲンだ」

『知ってるよ』

「我のことを重んじてあのような体験*4だけでなく仲魔勧誘までしてくれた」

『……ちょっと待て、貴公が売り込んだのではなくモニカが勧誘した、だと?』

 

 

 ドッペルゲンガーは笑顔を浮かべたままこちらを見た。

 先程のただの笑顔と違い、圧すら感じる何処か凄みのある笑顔だ。

 

 

「まぁその……大体あってるな、うん」

 

 

 より正確に言うと去り際に滅茶苦茶こっちを見てきたので勧誘したのだがそこは割愛した。

 それを聞くと少しだけ顔を俯かせて、

 

 

 

『そうか』

 

 

 

 小さく呟かれた声であるにも関わらず酷くはっきりと聞こえた。

 下がっているように指示を出した仲魔2体(ハイピクシーとドワーフ)ですら異変を察知して更に距離を取ったのは背中越しからでも分かった。

 

 

(これはもしや……()()()()()()なのか?)

「ミルメコレオ」

「む? なんだサマナー」

「すまないが当初の目的を果たしたい、下がってもらえるか」

「ああ、アレか。了解した」

『……目的?』

 

 

 当初の目標を果たすベくミルメコレオを下げ、顔を上げたドッペルゲンガーと向き合う。

 今の彼女*5は先程の壁のような笑顔を浮かべいる。

 どうやら(意図しなかったとはいえ)ミルメコレオの揺さぶりから立ち直っているようだ。

 

 

(出来れば先の状態までと言わなくてもどうにか揺さぶりを掛けれないものか)

 

 

 今の状態で目的を達するのは難しいと判断したモニカはこっそりと背後にいる仲魔達に向けてハンドサインを送った。

 

 

 

 


 

 

side:ドッペルゲンガー

 

 

(なるほど、さっきから妙な動きがあると思ったらハンドサインか。それに先のミルメコレオの言動*6……やってくれるじゃないか■■■■(モニカ)

 

 

 わかっていた(なんで?)、ただ自分に会いに来たわけじゃないだろうということは

 期待がなかったと言えば嘘になる、だがわかりきっていたことだ(どうして?)

 

 

(流石に背中越しでは何のサインかわからないが……甘いぞ、仲魔の表情に出ている)

 

 

 妖精と地霊、それぞれが【何か】――推定ハンドサイン――を見て表情が変わったのがわかる。

 最初は困惑、次は確認、そして決意

 静かに妖精が飛び上ったのが見える、地霊は武器も構えずこちらを見ている、妖虫は寝ている?

 

 

(随分舐められたものだ)

 

 

 1人と2体で十分ということなのか、それとも何かあった時の予備戦力?

 どっちでもいい、どうだっていい

 

 

 ようは敵だ、■すべき敵だ

 向かってくるのであれば何をしたって良い、そういうものだ

 そうすれば■■■■(モニカ)は、ワタシは

 

 

(―――――先手は譲ろう(彼女は違うはずだ)

 

 

 ああそうだ、ワタシは人間と違い野蛮ではない

 何もかも欲するような、自然の理から外れたような、一方的に他者の命を貪るものではない

 これは防衛、そう正当防衛なのだ

 殴られたのならばしょうがない、そうしょうガない

 

 

 奪い取るつもりなら奪い取られたってショウがなイ

 

 

 装備を、

 素材を、

 尊厳を、

 命を、

 

 

 落としてしまってもショウガナイ

 

 

 違ワナイダロウ?

 

 

(妖精ガ動いたカ)

 

 

 高速で羽根を羽ばたかせて空を飛んでいる

 そのまま速度を付けて、

 

 

(しカシ)

 

 

(こノ妖精は何を狙ッテ)

 

 

「このォ――――」

 

 

 

 

「さっさと本題に入りなさいよこの馬鹿サマナァァァ!!!」

 

 

 

 

 その声が大きく響くのと、

 

 

 モニカの後頭部にハイピクシーの飛び蹴りが突き刺さるのはほぼ同時だった。

 

 

 

 

 

『―――――――なんで?』

 

 

 呆けたような声が口から漏れた。

 

 


 

 

 

 モニカが仲魔達に送ったハンドサインは『かく乱しろ』である。

 本当は「今我々は戦闘する意思はないことを示すためになんかやってくれ」と送りたかったのだが簡易ハンドサインで送れる内容などたかが知れているのと事前の取り決めを知っているのであれば多少わかりにくくても何とかしてくれるという思いがあったりする。*7

 

 

 それに対してハイピクシーとドワーフは困惑した。

 事前の取り決めは知っている、なのでハンドサインの意味も正しく伝わっている。

 その上で2体は顔を見合わせつつ思ったのだ、

 

 

((いやどうしろと……?))

 

 

 要はこの修羅場じみた空気を何とかしろ、である。

 しかも下手に動けば戦闘になりかねない程度には相手がピリピリしている状態で、である。

 

 

(おじいちゃんどうしよう)

(儂に言われても……要は空気を読まないことをすればいいんじゃないかの?)

(この状況下で空気読まないことって何よ?)

(うーん……サマナーがピンチになること、とか?)

(ピンチ……そうだ、私に任せてもらっていい?)

(ん、そういうことであるなら儂は周囲を警戒しよう)

 

 

 アイコンタクトではあったがお互いが何をすべきか理解して動き出す。

 

 

 ドワーフは周囲から現れるかもしれない敵の警戒を、

 ミルメコレオを目を閉じて音で周囲から近づく存在がいないかの確認を、

 

 

 そしてハイピクシーは渾身の飛び蹴りをモニカに叩き込んだ。*8

 

 

 この状況下でサマナーに反逆するというあり得ないこと(の思いを汲んだ行動)を仕出かした結果、

 

 

「ごふぇっ!?」

 

 

 デモニカスーツを着てなかったらそのまま首がへし折れてもおかしくないような一撃を受け身も取れないままモロに受け、汚い悲鳴のような呻きをあげながら勢いよく転がっていくモニカ。

 そのまま地面を擦りながら呆然としているドッペルゲンガーの足元で止まった。

 

 

「う、うごごご……く、首が……ハイピクシー、もうちょっとこう……優しく出来なかったのか……?」

 

 

 首を抑えつつモニカが呻く、どうやら大事? には至ってないらしい。

 

 

「はっ! 前にちょっとの衝撃じゃ意味ないって言ったのはサマナーよ! バシッと決めなさいバシッと!」

「いやぁハイピクシー、嬢ちゃんには荷が重いじゃろそれ」

 

 

 周囲を警戒しているドワーフがボソッと溢す。

 

 

「……それもそうね」

「そこは肯定して欲しくなかったなァ!? いだだだだ……」

 

 

 痛みとは別の悲痛な叫びが周囲に響き、ついで蹴られたところにも響いた。

 

 

『あー……大丈夫か? モニカ』

「な、なんとか……」

 

 

 先程から浮かべていた笑顔ではなく困惑した表情で腰に下げていたマシンガンに掛かっていた手を外しつつそのまま差し伸べるドッペルゲンガー。

 その手を取りつつ、モニカは軽く息を吐いた。

 

 

「はー……やはりこういうのは私には向いてないな」

『……何の話だ?』

「なぁに、なぁ貴公、いやドッペルゲンガー」

 

 

 倒れたまま、悪魔の手を握ったまま、モニカは顔を上げて笑みを浮かべていった。

 

 

「私の仲魔にならないか?」

 

 


 

 

 時間は少し遡る。

 

 

「ドッペルゲンガーをどうするのか、って私は聞いているのよ」

 

 

 これはドッペルゲンガーに報告に向かうほんの少し前、手持ち無沙汰になったハイピクシーがふと思いついたように振った話。

 

 

「どうって……勧誘しようと思ってる」

「ふーん、ちなみになんで?」 

「耐性的に見ても非常に優秀だからな、仲魔に出来るなら心強いと思わないか?」

「そうじゃのぉ、もしあの悪魔(ドッペルゲンガー)と戦うことになったら儂は応援くらいしかできんしの」

「それに話していてなかなか愉快なのもあるな」

自分(ドッペルゲンガー)との会話が楽しいのはちょっとどうかと思うんだけど?」

 

 

 朗らかそうに会話が進む、もうすぐボス悪魔との決戦が控えている前の穏やかな会話。

 

 

「それに……」

「それに?」

「戻ったぞサマナー」

 

 

 さらに何か続けようとしたモニカ達の耳に先程までいなかった仲魔、ミルメコレオの声が響く。

 

 

「ん、戻ったかミルメコレ……どうしたその荷物の山」

「布教した見返りだ」

 

 

 そう言って背負っていたものを器用にも床にそっと降ろす。

 そこにはコアフォルマ、魔石、チャクラドロップ、マッスルドリンコ*9、悪魔産のフォルマ等々……となかなかの量である。

 先程までミルメコレオがこの場にいなかったのはデビルシリーズ*10と状態異常に関する布教を自身と同じ野良悪魔へ施しに行っていたからだ。

 その際モニカからいくつかデビルシリーズを貰っていたはずだが一つも持っていない辺り全部使ったらしい。

 

 

「みんな喜んでいたぞ、『新しい世界が開けた!!!』とな」

「開いてよかったのかなぁそれ」

「うわぁ見てよサマナー、アムリタソーダ*11まであるよ?」

「こっちには妖虫のアリ足*12があるんじゃが……どうしたんじゃこれお主らの足じゃろ?」

「起床後にその場で千切って渡してくれたぞ?」*13

「カルト宗教か何か??????」

 

 

 蟻獅子は何処か誇らしげだがモニカ達はドン引きである。

 

 

「まぁそれはともかく聞いたぞ、あのドッペルゲンガーとやらを勧誘するのだな?」

「う、うん。 その予定だな」

「出来るなら我も話がしたいところだができるか?」

「勧誘後にしてくれ」

「了解した」

(他にも色々と気になることがある……だが今はできることをやろう)

 

 

 会話を切り上げながら固まっていた身体を解す。

 ミルメコレオが持ってきた品物も軽い分類に分けた後、腰ポーチやズダ袋に入れておく。

 それらを終えて仲魔達を見ながら改めて宣言した。

 

 

「さて、悪魔交渉と行こうか」

「はーい」「うむ」「おう」

 

 

 モニカと仲魔達は依頼主(ドッペルゲンガー)の元へ歩き出した。

 

 

 


 

 

 

 突然だが量販店の照明をじっくりと観察したことはあるだろうか。

 商品をよりよく見せる、もしくは監視カメラにくっきりと映るようにするために非常に明るくしていることが多い。

 もっともここは量販店などではなくそういったモチーフから生み出された異界なのではないかと言われているが、例に漏れずこの世界の照明(のような何か)もまたかなり明るく周囲の棚や商品のような何かを照らしていた。

 モニカは倒れた状態からドッペルゲンガーの手を握りそんな眩しい照明の中見上げた結果、

 

 

 ドッペルゲンガー(鏡向こうの誰か)の顔が真っ暗になった。

 

 

 無論顔が消えたわけではなく逆光により丁度顔の部分だけが黒く塗り潰されたかのように見えているだけである。

 

 

『なか……魔……?』

 

 

 呆けたような、呻くような、寝ぼけたような、そんな声であった。

 

 

「ああそうだ。 ドッペルゲンガー、貴公を勧誘しに来たんだ」

 

 

 照明が眩しい。 デモニカスーツの遮光版越しであろうが目を焼くような強い光を受けつつもその目は逸らさない。

 

 

『私は、ダーク悪魔だぞ?』

「私の仲魔にはミルメコレオもいる、今更だ」

 

 

 同じ顔をした二人が見つめ合う。

 名前を呼ばれたミルメコレオが何か口を開こうとしてドワーフとハイピクシーが抑え込んだ。

 

 

『私は、貴公ら人間に、調査隊に襲い掛かっていたのだぞ?』

「そうか、だがその程度のことを引きずり続けるような余裕は我々にはない」

 

 

 鏡向こうへ語り掛けるように囁く。

 

 

『私は』

 

 

 

『何者にも成れないぞ?』

 

 

『己の姿も持てぬ半端物ではないか』

 

 

 どんな姿にも成れる悪魔(ドッペルゲンガー)を否定するかのような発言であった。

 

 

「貴公はドッペルゲンガーだ、どうして別の誰か(悪魔)である必要がある?」

 

 

 いつの間にかモニカはドッペルゲンガーによって引き起こされて逆光から解放されていた。

 もっとも目に光が焼き付いているため相変わらずドッペルゲンガーの顔は見えない。 

 

 

『―――なるほど』

『一体それでどれだけの人間を、いや悪魔を口説いたんだ?』

「ひどく人聞きの悪いことを言われている気がする!?」

『ハハハ、安心すると良い。 本気で言ってる』

「そこは冗談じゃないのか!?」

 

 

 そんな軽口を叩いている二人。

 

 

「それでどうだろうかドッペルゲンガー」

『ハハハ、酷い奴だなモニカは』

 

 

 

『私はそこまで情熱的に口説かれて誘いを蹴るような冷血ではないよ』

『まぁ血は流れてないがね』

「そうか……」

 

 

 ようやく視界が晴れてきたモニカの眼にはドッペルゲンガーの顔が、どこか穏やかな笑みを浮かべたのが見えた。

 一安心したところでデモニカのデータベースにメッセージが届いていることに気づき、中身を読む。

 

 

「これは……」

『どうしたモニカ』

「聞いてくれ皆」

「うん?」「なんじゃ?」「どうした」

 

 

「配置が決まったがどうやら我々はボス悪魔との対面から抑えることになるようだ」

 

 

 いくつか理由も添えられていたがどうやら魔人マタドールの撃破が高く評価されたらしい。

 そうなると悪魔は誰をフロントに出すべきか、そう考えていると

 

 

『モニカ』

 

 

 ただ呼びかけられただけなのに酷く重みのある声だった。

 恐る恐る振り返ると、その声の主は笑みを浮かべていた。

 

 

『その戦い、是非とも私を出してくれ。 存分に仕事をしてみせよう』

「あ、ああ。 確かに物理反射耐性は心強いな、よろしく頼む」

『そうか……ああ、今から待ち遠しいなぁ……待ち遠しいよ……フ、フフフ……』

 

 

『アハハハハッハハハハッハハハハハッハハハハハッハ!!!!!!!』

 

 

 先程まで浮かべていた穏やかな笑みは消し飛び、怒りに塗れた暴力的な狂笑が響き渡る。

 その笑い声は周囲のモニカ達を襲わんと潜んでいた悪魔達が身の危険を感じて逃げ出すほど恐ろしい響きを伴っていた。

 

 

「サマナー大丈夫? ちゃんと制御できる?」

「―――いざとなったら止めるの手伝ってくれ」

「嬢ちゃん、儂物理的なことしか出来んから無理じゃぞ?」

「すまないなサマナー、我も同上だ」

「頼むハイピクシー! いざという時は本当に頼むぞ!」

「えっコレ私に命運が握られちゃってる奴? 嘘でしょ?」

 

 

 そんなことを話しつつもモニカ達はボス悪魔との決戦の場に走り出すのであった。

 

 

『待っているがいいあのド腐れブタァ!! あハハッはハはハハっハはハッハハッ!!!』

 

 

 その間、ずっと笑い声が響いていた。

 

 

 


 

 

【EXミッション:鏡向こうの謎掛け】クリア

 

 


 

 

 

・登場人物紹介と伝達網

 

 

 モニカ・ヴァイスヴィント Lv28

 

 シリーズポジション:シュバルツバース調査隊 名無しの隊員(モブ)

                         (真・女神転生 ストレンジジャーニー)

 

 あの交渉内容に後悔していないし間違ってもいないと思っているけど新しく仲魔になった悪魔がどういう思いで笑い続けていたのかわからなくてほんのちょっぴり怖いと思っている。

 この後他の作戦メンバーと一緒に頑張ってボス悪魔撃破に貢献した。

 

 

 外道 ドッペルゲンガー Lv28

 

 シリーズポジション:無し

 

 ドッペルゲンガー本人のコンプレックスを受け止めてくれた上に怒りの対象であった存在への抹殺の機会をくれたことで感情の振れ幅がとんでもないことになってしまい感情の制御が振り切れた結果、感情の大爆発が怒りと笑いの混ざり合いによって顕現した。

 ちなみに作戦会場に近づくそこそこ前に笑うのをやめたので()()()()他の調査隊メンバーからは不審な目で見られることはなかった。

 

 

 

 レッドスプライト号の連絡伝達網より:

 

・セクター攻略部隊より伝達、ボス撃破と「ロゼッタ」の確保に成功、これより帰還する。

 また怪我人多数、ベッドの準備を頼まれたし。

 

・1階層にて奇妙な笑い声が響いていたものの詳細は不明、注意されたし。

 

・管制室より伝達、アンソニー並びにデント、以下2名は管制室まで来られたし

 

「だーかーら! 可愛い女の子悪魔への贈り物についての相談だったんだよ! なんかここのことも知ってそうだから連絡したのであって今回は真面目な話だよ!」

「んなこと俺に愚痴んなよ。つーか女悪魔? 可愛いってことはモー・ショボー辺りか?」

「ちげぇよ別の悪魔だよ!」

「ああ? それ以外の女悪魔っていうと……まさかモニカの連れてる悪魔でも口説いたのか?」

「おっま流石に同僚とほぼ外見一緒の悪魔は口説くわけねぇだろうが!」

「はいはいわかったわかった、大人しく報告書と始末書書こうな」

 

(始末書を書く2名の呟きを記録した音声データより)

 

*1
前話のレッドスプライト号の連絡伝達網より

*2
シュバルツバース内では昼や夜等の時間基準になるものが存在しないため、

事前に決められた時刻設定で行動している オリジナル設定

*3
ガスタブルベスト(SJシリーズ)装備時の耐性

*4
麻痺・毒・眠りの状態異常フルコース、常識的に考えてただの拷問である

*5
元の性別はさておき化けている姿がモニカなので女性判断

*6
※そっちはミルメコレオが勝手にやった

*7
ひょっとしなくても:無茶振り

*8
無論無茶振りに対する怒りも込めた

*9
味方単体のHPを小回復する代わりに副作用あり。

カリーナで手に入るアイテムの一つ

*10
前話で登場した状態異常付与アイテム

*11
味方単体の死亡以外の状態異常を回復する

*12
妖虫ミルメコレオが落とすフォルマ

*13
その辺にいた野良ミルメコレオ(布教済み)の行動である




 というわけでいくつかの謎を残しつつシュバルツバース編は一旦終了となります。

 実はここまで長くなる予定ではなくもっと早い段階で現代編の話に行こうとしたんですが思った以上に話の調整が難航したのが原因です。

 次からは学園闘争付近の話になるかと思います。
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