第72話 小泉紅子の初めての定例集会①
第72話
今日はお母様から家の威厳を示す為に、わざわざ古い付き合いのある術師と言う、東洋魔術の使い手達が集って、話し合いなどを行う《定例集会》に参加する為に、家の者の中でも優れた召使いを引き連れて赴いているところよ。
(へぇこれが定例集会に集う東洋魔術の使い手達なのね、何か見たところ実力は素人に毛が少し生えた程度の連中ばかりね、この程度に興味を向けることすら値しない期待外れ者ばかりだわ)
と周囲で私のことを興味深げに眺めながら談笑している東洋魔術の使い手達こと術師の実力を観察して見た感想は、この程度の連中が私と同じ界隈で、活動している同業者なのかと、内心深く期待外れだと抱く。
(まぁ私の家と同じ五大家や、特殊な血筋を有する家以外の実力なんてないだろうって、家庭教師から術師界隈について学びながら思っていたことだけど)
と私は最初からそこまで期待も興味も無かった存在が、自身の予想よりも実力が低く酷かっただけだと、この場に居る格の低い術師達を見下しながら、今回の定例集会が行われる会場となった土御門家が管理する屋敷内へと、召使い達を引き連れて入る。
会場となった屋敷内の内装などは、古き日本の伝統と格式を有した貴賓を誇っており、見える範囲でも綺麗に整備された木製の廊下沿いには、様々な品が飾られており、その中には特殊な力を宿した品などもあることに気づき、興味深くその内の一つへと近づいて観察する。
(この飾ってある壺って、間違いなくアーティファクトよね、見たところ宿っている力の性質は浄化で、悪しき存在が近づくだけで祓い清められる程の力があるね、少なくとも上級妖怪程の存在でもないと近づくことすら不可能ね、まさかここまでの品を有しているなんて、流石は我が家と肩を並べている家柄ね)
とまさかこれほど高価なアーティファクトを有し、そしてこう言う場にて展示することができる土御門家に対して、流石は我が家の同格として肩を並べる値する家柄だと、内心下がっていた術師への評価を改めることにする。
そんな風に思いつつ、私は興味深く展示されている浄化の壺を眺め続けていると、中々の力を有した者が近づいて来る気配を感じ取ったので、振り向いてみる。
「おやぁ~もしかしなくても、その天夜叉の壺を興味深々に見ておりますんは、小泉家の紅子はんではあまへんか?どうぞお越しになられましたなぁ」
と私に京都弁訛りな言葉で話かけて来たのは、おかっぱの茶髪で、黒い丸眼鏡を掛けた、大正和服姿の女性であり、一瞬誰なのかと思考を巡らせてから、今私国話しかけて来たこの東洋魔術の使い手は、定例集会の会場となる屋敷を貸し出している土御門家の次期当主である《土御門天子》だろうと思い至る。
「えぇどうも初めまして土御門天子様、私のことをご存じでしょうが、赤魔術の正当なる後継者である小泉紅子と申しますわ、今後も仲良くご贔屓に付き合っていきとうございますわ」
と私は他愛もない愛想を浮かべながら、自身の自己紹介をしつつ、さりげなく相手の肉体情報などを見破ることが出来る、赤魔術の【看破の魔眼】を発動させてから、土御門天子がどの程度の実力を有しているのかを探り始める。
(へぇ流石に次期当主に選ばれているだけあって、そこらの術師よりも遥かに強いようね、しかも看破の魔眼で見た感じこの人は式神の制御と育成に秀でているようね、漂っている僅かな霊気の中に式神特有の気がって、あれえぇぇぇ!????)
と私は土御門天子が式神の制御と育成に秀でていることを看破の魔眼にて理解し、少し興味本位でどの程度式神を使役しているのかと、僅かに表面に纏っている霊気の流れを分析して、その保有数を探ってみた結果、表面上だけでも凡そ百を超える気配を感知してしまったことで、私は思わず戸惑いと驚きを抱き、固まってしまう。
(えーと確か、式神って言うのは術者の精神を接続することによって、自由自在に術者の命令で動かせる便利な下僕よ、だけどそれを複数体接続すると言うことは、それだけ精神を摩耗させてしまうのよね?)
と私は信じられない者を見た結果、自身の家庭教師から学んだ、東洋魔術では式神をどのように使役するのかについての方法と、多くの式神を使役することによって引き起こされる精神の摩耗についての話を思い浮かべながら思考を巡らせ考え込む。
(だから式神を使役しすぎることは精神崩壊へと繋がる危険こと、だから東洋魔術では多くても8体までが安全に運用できる限界だと学んだわ、なのにこの人は限界とされる数の約十倍を使役しているなんて、一体どんな裏技を使ったというのかしら?)
と私は限界と定められた数よりも多く超える式神をその身一つの精神で使役している土御門天子に対して、どのような術を用いて可能にしているのかと興味を覚えるが、余り他家の術などに探りを入れるのは礼儀知らずと言える行動なので、優雅さと気品に満ちた私としては見なかったことにしようと気持ちを切り替える。
「それにしてもこの天夜叉の壺ですけど、中々強力な浄化の力が宿っているようですが、何か曰く付きの品なのかしら?」
「おぉ流石は小泉家のお嬢様でんな、この天夜叉の壺に宿る力にお気づきになられて、まぁ中々の《観察眼》を有しておりんすのぁ」
「おほほほ、えぇこの程度の《観察眼》は有していて当然ですのよ、何せ我が家では基礎的な《教養》として教えられていますのでぇ」
と私はとりあえず気分転換の為に、先程まで眺めていた浄化の壺こと天夜叉の壺について、何か曰く付きの品なのかと試しに問いてみると、土御門天子は天夜叉の壺に宿っている性質を理解していることに感心しているような声色を作りながら、わざとらしく《観察眼》と告げながら暗に看破の魔眼に気付いていることを強調しつつ、睨んで来る。
私は少し抑えめの高笑いを交えながら、暗にこの程度で見破られるお粗末な術を省みよと言う含みを込めて、小泉家では基礎的な魔術でしかないことを告げると、土御門天子は少し苦笑いを浮かべながら、あまりその《観察眼》で人を見るのはやめておいた方が良いと、京都弁でそう告げながら、定例集会が行われる大部屋の方へと相手行ってしまう。
土御門天子か、中々に侮れない東洋魔術使い手ね、それにしても最後の文言は警告なのかしら?それともただの負け惜しみかしら?よくわからないけど、まぁ看破対策をしていない方が悪いと思うのだけど。
「紅子様、そろそろ定例集会が行われる大部屋に向かった方がよろしいのでは?」
「あーそうね、もう少しここに飾られている品を見て行きたかったのだけど、ここは余裕を持って大部屋に行こうかしら」
と召使いの1人がそろそろ定例集会が行われる大部屋に向かわれた方が良いのではと告げて来たので、私は飾られている品々を見て行きたい欲を抑えながら、ここは余裕を持って大部屋に行った方が良いかと考え、その事を召使い達に伝えながら、大部屋の方へと向かって屋敷内の廊下を歩いて行く。
と言ったところでここまでです。
次回で定例集会が行われる大部屋に移動しますが、とりあえず小泉紅子から見た術師と言う存在に関することを書いていく所存です。
それと今回小泉紅子が遭遇した土御門天子とは、《大江山での鬼探し編》で登場したキャラであり、あんまり登場させられる機会が中々来ないので、今回小泉紅子に出会わせました。
ちなみにどうでも良い設定として、土御門天子が式神を百体以上保有出来ているのは、本人の才覚と、安部清明が安部家に残した術を受け継いだ土御門家が、その術に独自に改良のを使用しているからと言うのがあり、今後その術を話題にしたオリ回を作る予定です。
それと土御門天子が百を超える式神を保有することにした原因は、菅原家と土御門家の模擬試合にて、土御門天子の対戦相手となった菅原傑に、十数匹の式神全てを投じて挑んだ結果、まぁ可哀そうなくらい、酷い蹂躙されたトラウマが原因です。
最後にですが、次の投稿は思ったよりも遅くなりそうです、ちょっと話の構成が長くなったので、とりあえず7月の終わり頃までには、投稿できるかも。