1人の男子生徒は学園生活部の一員として『日常』を取り戻したい   作:Kagura_fbk89

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ちょっと時間空きましたが(2)です どうぞ


第11話 3階制圧(2)

 

 

 

 

急いで2人に声を掛けるものの、それは少し遅かったようで 2人がこちらに振り向くと同時に教室から複数体の『奴ら』が飛び出して来るのは同時であった

 

 

『ぅグアぁぁぁっッッ!!!』

 

 

既に扉は全開に開かれ タイミングが悪い事に、先程言ったように扉を開け放ったのと同時に声を掛けてしまったため2人の視線はこちらにむいており 扉のすぐ前にいた『奴ら』に気付くのが遅れたようだった

 

 

そして、不幸は連鎖し 扉に近い位置にいた美紀のほうに奴のタゲが向いたようで

 

 

奴が唸り声を上げ 美紀に襲いかかる

 

 

「ッ?! ちょ! い、いやっ!!」

 

 

美紀は木刀を体の前に押し出し、噛まれまいと抵抗しているが 今にも力負けしそうだ

 

 

「大丈夫か?! 待ってろ、すぐこいつなんざ って!まだいんのかよ!!」

 

 

胡桃がすぐさま助けに入ろうとするが、神の悪戯か もう1体が教室から飛び出して来て、胡桃はそちらに対応しなければならなくなった

 

 

「っ!美紀っ!!」

 

 

すかさず俺は、急いで美紀の元へ駆け出す

 

 

だが…

 

 

 

 

バリィィィンッッ!!

 

 

 

 

「嘘だろッ!?」

 

 

教室の窓から複数の腕がガラスを破り 突き出してくるのは想定外だった

 

 

どうやら俺たちは、この手のゲームや作品で言う『モンスターハウス』ならぬ 『モンスター教室』を引き当ててしまったようだ

 

 

最低でも8、9体近くはいるだろう 突き出ている腕の本数と、ちらっと室内を覗いて確認できた人影からその程度であろうと結論付ける

 

 

「由紀!りーさん!先生!急いで窓から離れて!!」

 

 

美紀の元へ駆け出し、と同時に 非戦闘員の3人に通りすがら急いで窓から離れるように指示する

 

 

10mも無い距離だ、全力ダッシュなら3秒もせずに辿り着く

 

 

3人への声掛けが終わった次の瞬間

 

 

「美紀から!離れんかいゴルァぁ!!」

 

 

走った勢いでそのまま飛び上がり、美紀に覆い被さる奴の横っ腹を蹴っ飛ばす

 

 

「美紀!!無事か?!」

 

 

駆け出した直後 美紀に襲い掛かる奴の口が美紀の右肩へ喰らい付いている様に見え、俺は急いで美紀の状態を確認する…だが

 

 

「せ、先っ 輩、私 肩っ 噛まれてッ!!」

 

 

「ッ!?どこだ!待ってろ すぐ消毒すればまだっ!」

 

 

美紀の口から、1番聞きたくない言葉が出てきた…

 

 

すぐさま壁にもたれ込んだ状態の美紀を、チョッキの後ろ襟部分にある引っ掛けを掴み 床でのたうつ奴から距離を取るべくそのまま引きずる

 

 

その間、美紀が肩を噛まれたと言うため そんなまさかと血の気が引く感覚を覚えつつ、急いで美紀の傷口がどこかを探る

 

 

だが…

 

 

「っ!! 美紀!大丈夫だ!!チョッキの表面で止まってる!! 噛まれてない!!」

 

 

急いで消毒液を取り出しながら噛み傷を探したものの、出血は見られず よく確認してみると、確かに右肩に噛まれた形跡はあるものの それは来ていたチョッキの表面上に小さな歯形を残すだけであった

 

 

「う、嘘っ だって私、い 今!」

 

 

「こんな状況で嘘つくわけ無いだろ!!美紀っ 大丈夫だ!!お前は噛まれてない!!」

 

 

美紀が少し混乱しているのを宥めつつ、先ほどから単騎で戦闘している胡桃はどうかと目をやる

 

 

「離せっ よッ!!オラァ!!」

 

 

…一応、何とかやれているようだ だが、やはり劣勢には変わらない

 

 

「先生!!加勢するんで美紀を任せます!!」

 

 

「き、気を付けてっ…!」

 

 

既に先ほど蹴飛ばした奴は起き上がりこちらへと向かって来ている、美紀が無事な事に内心で胸を撫で下ろしながら 現状ダウンしている美紀を3人に任せ 胡桃の援護に向かう

 

 

「邪魔だっ!!」

 

 

まずは正面の相手に対して、俺は走った勢いでそのまま首元に突きを放ち そのまま左へと切る

 

 

太い血管が切れたのか噴水の如く断面から血を噴き出し ガスマスクのバイザーに返り血が付いたのでグローブで拭う、辺り一帯血の海になったが これで奴の首のうち、3分の2程度が切り裂かれ 左肩に耳が引っ付き、今にも頭が落ちそうだ

 

 

そして俺はそこに、危険を伴うが 奴の落ちかかった頭をぶん殴り…

 

 

そのまま床へと頭が転がり落ちた

 

 

…背後で少し悲鳴が上がったような気もするが…後で謝っておこう

 

 

俺は頭が千切れ飛んだ事を確認し、急いで胡桃の援護に向かう

 

 

今もなお、窓枠からは腕が突き出ており いつまで耐えれるか分からないため、時間との勝負だ

 

 

胡桃もそろそろバテ始める頃だろう

 

 

手始めに俺は、胡桃から見て左正面にいた個体に狙いをつける

 

 

「すまん!遅れた!! 急いで加勢する!!」

 

 

「やっとか この、野郎!!…アタシも、もうすぐ 限界だ! 早いとこやってくれっ!!」

 

 

聞こえて来た胡桃の声には、既に余裕は無さそうだ すでに彼女の足元には2体の骸が転がっており、連戦を続けている事がわかる

 

 

俺は刀に無理をさせる事になるのを承知で、先ほどロックオンした奴の首を骨ごと断ち切ることにした

 

 

「やっぱ、かってぇなぁ!!」

 

 

水平に放った斬撃の直後、刎ねられ宙に舞う首は血を撒き散らしながら数回転し、床へと転がる

 

 

「これで1つ!!」

 

 

無事に首を刎ねることはできたが、その手には衝撃による震えが残っており 更に刀身に目をやると、先ほど斬った際に当たった刃の部分が少し欠けている

 

 

「最後まで持ってくれよぉッ!!」

 

 

そして、刀身の状態に気を使いながら 俺は次の標的を選ぶ

 

 

次は…こちらに背を向けている奴にしよう

 

 

刀を下段に構えた状態で、姿勢をできる限り低くした状態で 間合いに入った瞬間、水平に斬撃を放つ

 

 

刃は奴の膝裏の筋を断ち切り、糸の切れた操り人形のように 膝から崩れ落ちた

 

 

それを見て、俺は太腿のナイフホルダーからシースナイフを抜き…

 

 

「これで2つ!!」

 

 

無防備なその後頭部に突き刺した

 

 

刺した瞬間、またもや返り血がバイザーを赤黒く染める

 

 

そのまま奴の体は数回大きく痙攣を繰り返し 間もなくその動きは完全に止まった

 

 

このペースで行けばなんとかなりそうだ…

 

 

……そんな事を思った矢先

 

 

『…ぅァァァ…』

 

 

美紀達のいる後方から、奴らの呻き声が聞こえて来た

 

 

「まさかっ!!」

 

 

俺はすぐさま後ろへ振り返り、先ほどまで自分が警戒していたトイレの入り口へと目をやる

 

 

すると…

 

 

「っ?! 4人とも!早くこっちに!!急げっ!!」

 

 

男子、女子トイレ合わせて 合計4体が、先ほどからの声や戦闘音に引き寄せられて出て来たようだ

 

 

向こうにいる戦闘員は美紀だけ、だが その当人はダウンしている

 

 

出て来た4体の奴らは、すぐさま近くにいた彼女らに狙いをつけたらしく 普段よりも少し速い速度で迫っている

 

 

「みなさん!急いでッ!!」

 

 

「み、みーくん? 立てる?!」

 

 

先生が指示し、急いで美紀を連れてその場から離脱しようとしている…が

 

 

「お、重いっ…!!」

 

 

美紀は俺と同じ重さの装備を着込んでいるため、その状態で肩を貸すとなるとかなりの力を要する

 

 

由紀ちゃんと、それを見て急いで手を貸したりーさんの2人でなんとか…と言ったところだろう、いずれにせよ その速度は速いとは言えない

 

 

「来ないでっ!ください!!」

 

 

先生が殿として、持っていた箒で抵抗するが 力負けしているのは瞭然だ

 

 

「おい!! 優也っ!また新手だ! 扉の奥から3体!! もうっ 流石に!厳しいぞ!!」

 

 

「ッ!! 撤退だ!!何としてでもこの場を切り抜ける!!」

 

 

廊下には合計で5体、教室から新手で3体 窓枠はもう持ちそうに無い

 

 

命あっての物種だ、俺はすぐさま この現状を見てバリケードまで撤退する事を伝える

 

 

が、ともかく今は4人の援護が最優先事項だ

 

 

「胡桃っ!!不味いと思ったら独断で良いから先に退避しろ!俺は4人の離脱を援護する!!」

 

 

「気を つけろよっ!! っらぁッ!!」

 

 

「当たり前だっ!!そっちこそ武運長久を祈っとくぜ!!」

 

 

「何だよそれっ!!」

 

 

そして俺はその場から駆け出し、援護に向かう

 

 

だが…

 

 

どうやら神は、俺たちを見捨てたようだった

 

 

『ガシャァァァンッ!!!』

 

 

「…うそ、だろ…!!」

 

 

俺が駆け出した次の瞬間 耐久性に不安が残っていた窓枠が、ついに外れた

 

 

さらに、窓枠が外れたと言う事は何を意味するか…それは

 

 

『ぅヴァあァァァっ!!』

 

 

合計で6体が、少し歪んだフレームとガラスの破片と共に廊下へと飛び出して来た

 

 

廊下には胡桃が現在やり合っている1体、先生が抑えている4体 教室から出て来た3体、そして 今飛び出して来た6体の 合計で14体の『奴ら』がいる

 

 

俺はこの場から全員で生存する方法を、頭をフル回転させて考える

 

 

胡桃と俺の2人だけで対処するのは不可能だ、ダウンしている美紀が復帰しても 望みは薄いだろう

 

 

今でさえ、先生が4体を相手してくれているお陰で何とか耐えていたのに 6体もそこに増えたら…対処不可能だ

 

 

今もなおぐったりしている美紀を置いて逃げれば、3人は走って逃げる事はできるだろう

 

 

だが…そんな事、絶対にしない 見捨てるなんて、できるわけがない

 

 

何か手はないか、こいつらをどうこうできる策はないか

 

 

ひたすらに、頭を回転させ 今できる最善策を考える

 

 

その時、首に掛かる1本のスリングが 首の皮膚に擦れる

 

 

 

 

「…あっ…」

 

 

 

 

…その途端、思い出した

 

 

…あぁ、ずっと “あった” じゃないか

 

 

この状況を打破できる、切り札が…

 

 

全員で生き残る道筋が、見えた

 

 

「…ここで使うしかっ!!ないよなぁッ!!」

 

 

そして俺は、自分の首に掛かっていた“それ”を手に取る

 

 

“それ”は 鉄の猛威だった

 

 

“それ”は 力の象徴であった

 

 

そして…

 

 

“それ”は 神と悪魔の発明品だった

 

 

「4人とも!!その場で頭下げろっ!!」

 

 

俺は手に持っていた刀をその場に捨て “それ”を正面に構える

 

 

鈍く黒い光を反射する、重厚感あふれる銃身に 木で形成された、対比するような温かみを有しているフォアエンドとストックを持つ 長年使われ続けている散弾銃『M870レミントン』

 

 

肩と肘でストックを包むように、左手で銃身を抱えるようにしっかりと保持し 両腕を前へ突き出すイメージで、両足を肩幅に開き、上半身を気持ち前へ倒す

 

 

全てを呑み込みそうな漆黒が広がる銃口の先、鋭い光を反射する低倍率の照準器(スコープ)の中心には、先生に手を伸ばす“生徒だったもの”が写りこむ

 

 

ゼロイン調整すらできていないが、この距離なら問題ない

 

 

チャンバー内には既に12ゲージのバックショット弾が込められ装填済み、すぐさま右手の人差し指で安全装置(セーフティ)を解除

 

 

…当たり前だが、銃を使うと大きな音が鳴るだろう 散弾銃となると尚更だ、室内であるとは言え 恐らく、学校周辺の『奴ら』までも引きつけてしまうほどの…

 

 

だが、今取れる最善策は 全員がこの場を切り抜けれる手段は、もうこれしか残されていない…

 

 

…この場に迷いは、必要ない

 

 

引き金に 指を掛ける

 

 

1つ、深呼吸を挟み 指に力を込め、トリガーの遊びを無くす

 

 

…そして、完全に照準の揺れが止まり 狙いがついた次の瞬間

 

 

「…ッ!!」

 

 

俺は 一気に引き金を引いた

 

 

引き金を引いたと同時に落とされる撃鉄

 

 

落とされた撃鉄によって、スプリングで固定されていた撃針が開放され 薬室に込められたシェルの雷管(プライマー)を叩いた、その刹那

 

 

 

 

ズドォンッッッッッ!!!

 

 

 

 

ちゃんと保持していなければ腕が持っていかれそうな肩と両腕に伝わる大きな衝撃と、銃口から噴き出す発砲炎(マズルフラッシュ)、そして 鼓膜を直接ぶん殴られたかと思い紛うような、散弾銃の炸薬量から生じる衝撃派と腹に響くような重い銃声が 学校の廊下という狭い空間の中で反響し、その場の空気を震わせる

 

 

銃口から噴き出す大きな発砲炎を背景に勢いよく飛び出た9粒のペレットは、4体の奴らのうち 先生の1番すぐ側にいた個体の胸部に着弾した

 

 

着弾した部分は大きく抉れ、着弾の衝撃で勢いよく後ろへと倒れ…いや 吹っ飛んだ

 

 

ついでに 吹っ飛んだ際に後ろにいた2体を巻き込んで倒れてくれたお陰で だいぶ猶予ができた…が、未だピンチである事には変わらない

 

 

すぐ側に倒れている 先ほど窓を破って来たうちの1体の頭を半長靴で踏みつけ起き上がるのを阻止しながら、フォアエンドを手前に引くと 排莢口(エジェクションポート)から、未だほんのりと熱を帯びた空薬莢が飛び出し ショットシェルが落ちる特有の音が鳴る、一応ジャム(排莢不良)してないかを素早く確かめた後 そのまま定位置の奥へとフォアエンドを押し戻す、これで2発目が装填された

 

 

「撃っちゃったんですかっ?!」

 

 

「み、耳が〜っ!!」

 

 

と、そこで 手で耳を押さえた状態の先生が 同じく耳を抑える由紀やりーさんに変わり 驚愕するような声で聞いてくる

 

 

「俺の独断で撃ちました!お説教は後でしっかり受けますんで、とにかく今はバリケードの先に急いでください!!」

 

 

「いえっ、怒っているわけじゃ…「早くッ してください!!」っ は、はいぃぃ!!」

 

 

未だ銃声で耳鳴りがするが、俺はそんな事気にせず 先生達の殿に回る旨を伝える

 

 

「あっ、刀拾っておいてもらえると助かります!!」

 

 

「わ、わかりました!」

 

 

しっかり先ほど捨てた刀を拾っておいてもらうよう伝えておく、どうやらりーさんが回収してくれるようだ

 

 

「胡桃!しんどいだろうが後もう一踏ん張りだっ、先頭は任せた!!俺は殿に回る!!」

 

 

「そっちも気張れよ!!」

 

 

「おうっ!!」

 

 

胡桃に離脱する4人の援護を任せ、俺は殿を請け負う

 

 

再び俺は銃を構え、今度は教室の扉から出てくる3体の内 先頭にいた個体に狙いをつけ、引き金を引く

 

 

 

 

ズドォォンッッッッ!! 

 

 

 

 

「っ…!!」

 

 

強烈な反動が肩へ伝わるが、先ほどと同じくこちらも胸部に着弾し 上手いこと後続を巻き込んで倒れてくれた

 

 

再びポンプアクションを行い 最後の弾が薬室へ込められる

 

 

今踏みつけている個体以外の、床に転がる奴らが立ち上がり こちらへと向かってくる

 

 

俺は1番手前にいた奴の、頭に狙いをつけ…

 

 

「チェストッ!!」

 

 

最後の1発を撃ち放った

 

 

3度目の銃声が響き、俺の目の前では 血の飛沫が上がる

 

 

それと同時に 倒れる骸

 

 

目を移すと、そこには胡桃がシャベルでやらかしたときの数倍酷い惨状が目に入った

 

 

グチャグチャになった頭部を始点に、後方へ放射状に広がる血痕と肉片 歯茎 脳味噌、眼球だったもののかけらや 所々に転がった歯の様な物と頭蓋骨の破片…

 

 

「いやエグっ!…まぁやったのは俺なんだけどな!!」

 

 

改めて『銃』という物の恐ろしさを再認識し、内心で 只今頭を吹き飛ばした“元”生徒に手を合わせておく

 

 

これでもう散弾銃は弾切れ、使えるのは太腿のホルスターに収まるナイフくらいだろう

 

 

「俺も引くか…みんなはどうだ?」

 

 

流石に、刀も手元にない状態で複数体を正面から対処するのは無理だ それに、さっきからの銃声で別フロアからも『奴ら』が登って来ているだろう

 

 

俺も撤退する事にし、一旦体の後ろに銃を回す

 

 

一応 何かあった際の応戦用としてナイフを抜き…

 

 

「全力ダァァァッシュッ!!」

 

 

バリケードのある後方へ向けて駆け出した

 

 

廊下をこれまでの速さで駆け抜けたのは初めてであろう、そう思うくらいに 重装備ではありながらも、俺はただひたすらに廊下を突っ走る

 

 

既に他のメンバーは撤退が完了しており 残るは俺だけとなっていた

 

 

尚、通りすがらに 簡易バリケードを設置した中央階段踊り場には、先程の銃声のせいか既に複数体の『奴ら』が押しかけており 突破されるのも時間の問題だろう

 

 

この後の『プラン』は既に立ててある、成功する可能性は不明だが…撃ってしまった以上 成功させるしかない

 

 

なんて考えているうちに、俺はバリケードすぐそこまで辿り着いていた

 

 

「優也っ!!後はお前だけだ!急いで入れ!!」

 

 

「おう!!あと バリケードの再構築は任せていいか?!やらねぇとダメな事がある!!」

 

 

「だったら他の面子を連れて来てくれ!!アタシ1人じゃ厳しい!!」

 

 

「あたぼうよ!!」

 

 

バリケードのすぐ内側には胡桃が待機しており、俺が引いて来たのを確認すると いそいそと崩していたバリケードの部分に机や椅子やらを運んで組み直そうとしている

 

 

俺はこの後の『プラン』を実行するため その作業に参加できない旨を胡桃に伝え 無事その許可を貰い、そのまま俺の代わりに胡桃を手伝ってもらうべく他のメンバーを呼びに行く

 

 

先生一行は生徒会室の中におり 未だ荒ぶる呼吸を整えていた

 

 

「みんなっ!しんどいところすまないが 胡桃のバリケードの再構築を手伝ってやってくれ!!」

 

 

そんな彼女らには申し訳ないがもう少し頑張ってもらおう

 

 

「い、いい ですけどっ 秋乃くんは?」

 

 

「俺は別でやらないといけない事があるんです!終わり次第そちらに向かいます!!」

 

 

「わかりました 皆さん!もうひと頑張りです、行きましょう!!」

 

 

「め、めぐねぇ もう動けないよぉ…」

 

 

「由紀ちゃん 頑張って!もう少しだから」

 

 

先生はまだいける、由紀はほぼダウン、りーさんは辛そうだが何とか…と言った具合だ

 

 

美紀は先ほどと比べて大分マシになっているようだが、未だ部屋の隅で座り込んでいる…まぁ 噛まれかけた、何ならチョッキが防いでくれたとはいえ 本当に噛まれたのだ、無理に立たせ手伝わせるなんて事はしない…本音を言えばすぐにでも動いてほしいが、今くらいはそっとしておこう…

 

 

そして、立ち上がった3人が自分のすぐ脇を通り 胡桃の元へ向かって行く

 

 

そして、俺も先ほどから言っている『プラン』に着手する事にした

 

 

まず最初の行先は 俺と美紀が昨晩使った教室だ、3人の後を追うような形で俺も廊下へ出る

 

 

そのまま行く先の教室へ入り、掃除用具入れであるロッカーの中に“隠してあるモノ”を取り出す

 

 

「…ゼロインすらできてねぇが、やるしかないか…」

 

 

取り出したものは、先日銃砲店で回収していた銃のもう一つ『サベージ220』 そこそこの倍率の照準器が載せられているボルアクション機構のハーフライフル*1

 

 

使用する弾薬は サボット弾と呼ばれる、先ほど使用した散弾とは違い 1発単体の弾頭が打ち出される弾を使用する

 

 

空間制圧能力 至近距離での火力は散弾銃が勝るが、遠距離の目標に対するライフリングによる弾頭の回転から生み出される高精度、威力が着弾箇所1点に集中する特性上 標的に与えるダメージ・衝撃が高く 弾自体の形状も殺傷能力が高いと言ったこれらは 遠距離からの攻撃に特化した弾・銃と言えるだろう

 

 

ガンケースから銃本体を取り出し、すぐ側の棚裏から同じく隠していたサボット弾の箱を取り出す

 

 

1箱につき5発、数としては少ないが それでも、サボット弾自体は20発しかないため 全体として見れば4分の1と、無駄撃ちできない数だ

 

 

「…ま、1箱で終われば上々か」

 

 

既に後戻りはできない、失敗すれば 残されるのは『死』か、終わりを迎える事なく 生きる屍として彷徨い続けるのみ

 

 

しかも、それは俺だけでなく 他のみんなも巻き込んでしまうという、仕方ない発砲ではあったが「仕方ない」で済ませられる事態じゃ済まなくなるかもしれない

 

 

このプランが成功するかしないかによってこの先の全員の生死が決まる

 

 

「……」

 

 

今になってようやく、俺は銃を撃ったことの重大さを認識し始めた

 

 

バリケードを組み直しても耐え切る事ができるかは不明、籠城するにしても食糧が足りない

 

 

正真正銘の“詰み”になるのは何としてでも防ぐしかない

 

 

「…無理じゃない…やるんだ……やるしかないんだ…!」

 

 

時間は有限、1秒でも無駄にはできない

 

 

無理にでも自分に喝を入れ 少し震える手先で弾の箱を開ける

 

 

手近な机に弾を出し、そのうちの3発を手に取る

 

 

コッキングレバーを上へ持ち上げ 手前へ引き、開かれた薬室に1発ずつ…とは言っても2発しか入らないが、2発を弾倉に 1発を直接薬室内に装填し、ボルトアクションレバーを定位置へと戻す

 

 

セーフティは既に外されているため、まだ引き金に指を掛けないよう細心の注意を払いつつ そのまま窓辺へと向かう

 

 

開ける窓は1つだけ、廊下と繋がる扉 窓も全て閉じ、開いてる窓を1つだけに絞る

 

 

理由としては、こうやって銃を用意している事からわかるだろうが これ以上発砲音で学校周辺の『奴ら』を引き寄せないよう この教室だけである程度銃声を封じ込めれるようにするためだ

 

 

まぁ、さっきの発砲も室内だったため そこまで外へ銃声は漏れていないだろうが…念には念を これ以上奴らを引き寄せるのは何としてでも防がなければならない

 

 

そして、俺はできる限り遠くにある“モノ”を探す…それは

 

 

「…あれにしよう」

 

 

銃を構え、スコープの先に映るものとは……車だ

 

 

正確には車の窓、とりあえず1番大きなフロントガラスに狙いをつける

 

 

俺が狙っているのは、車の窓を割った際に鳴る防犯アラームだ

 

 

できるだけ音が反響し 大きな音が鳴りやすいよう、建物の近くに停めてある車にする

 

 

狙うは青色の軽、この位置からは約300m無い程度だろうか

 

 

肉眼で捉えるのも少しキツいこの長距離、風速や環境条件などを加味すると中々厳しいが…やるしかない

 

 

ひとまず ゼロインしていない状態のスコープで撃ってみる

 

 

照準器内の十字線真ん中に 車のフロントガラスを合わせる

 

 

引き金に人差し指を添え ゆっくりと力を加え…

 

 

「当たれっ…!!」

 

 

遊びを無くし 引き金が重く感じる位置から、一気に最後までトリガーを引き切る その直後

 

 

 

 

ズガァァァァァッン!!!

 

 

 

 

散弾銃とは違う、弾けるような 爆ぜるような銃声が、肩へと大きな衝撃を与えると同時に閉ざされた教室の中で反響する

 

 

そして、一瞬だけ目で捉える事ができた 空気の乱れを尾に引きながら照準の先へと飛んでいく1つの黒点…

 

 

放たれた弾丸はライフリングによる回転や 空気抵抗を減らしたサボットの弾頭はそれらの要素により、たかが300mなど一瞬で飛翔する

 

 

そして、その弾の行方は…

 

 

 

 

「…ッ!くそっ!!外れた!!」

 

 

 

 

着弾したのは車の先にある建物の壁だった

 

 

正確な着弾位置はタイヤやすぐ側に落ちているペットボトルなどのサイズから見るにフロントガラスのフレームから5cmほど左上を掠めて着弾している、環境条件などがあれど やはりゼロインをしていないスコープじゃ初弾命中は厳しかったようだ

 

 

俺はそれを確認した後 急いでボルトアクションを行い次弾を装填する

 

 

「左上に5cmズレたってことは…あーもう!!スコープのゼロインってどうやって計算するんだっけか?!」

 

 

狙った位置から5cm程度のズレ…ゼロインを行う上で使用するのがNATOの制定する照準器のゼロイン表記“1MOA”という単位がある、この1MOAが大体100ヤード…大体90mほどになるため 目標までの距離は3MOAちょい、そこから更にスコープの倍率からこの照準器の調整ダイヤル1クリック分の調整幅を割り出さなければならない

 

 

「5cm左上方への誤差だから…3MOAの6倍だろ?……4倍で1クリック0.7cmくらいだから…」

 

 

ここで1つ…俺の苦手な暗算能力が試される

 

 

実を言うと 昔から暗算が苦手だった俺…簡単な足し引き 掛け算程度ならできるが、割り算やらが入ってくると一気に計算の精度が悪くなると言うのが 俺のバッドステータスの1つだ…

 

 

紙を用意しようにも、そのようなものは見当たらず ペンも手元にない

 

 

照準がブレないよう窓枠にハンドガードを乗せて撃っているため、ここから変に動かしたらただでさえこんな状況で行うゼロインが更にやりづらくなってしまう

 

 

俺は再び、今度は風速などを加味してもう一度撃ってみようと引き金へ指をかける

 

 

…が、スコープを覗いたその時 俺は気づいた

 

 

「…くそっ、腕が震えて 照準がブレる…ッ!!」

 

 

先ほどから連続して、散弾銃を3発撃ち サボット弾を1発を発砲している…“今まで1度も銃を撃ったこともない人間が”だ

 

 

経験したことのない局所的な大きい衝撃が、連続して肩や腕全体へかかり続けているのだ 腕が先に限界を迎えるのも無理はない

 

 

こんな状態で撃てば 当たるものも当たらない…

 

 

俺以外のメンバーは手が塞がっているため呼び出すこともできない、万事休すと思われたその時…

 

 

 

 

 

 

ガラガラガラッ

 

 

 

 

 

 

「…ッ?!!!」

 

 

閉ざされていた教室の扉が開いた

 

 

発砲した際の煙と 装着しているガスマスクのバイザーで見えにくい視界の中で 今扉を開けたのは誰かと確かめるべく、扉へと視線をむける

 

 

そして、そこに立っていたのは…

 

 

 

「…先、輩?」

 

 

 

 

 

*1
弾を回転させ安定性や弾道を良くする溝、ライフリングが銃身の半分まで彫られた銃




ってことで、一旦ここまで書いてた分の大半を放出しました

これだけ?と思うかもしれませんが…そこはまぁ なんとかご理解頂けると幸いです

あと、今回から幾つか特殊タグ?の方を使ってみることにしました、何かこれに関してご意見があれば何なりとお声かけください。

誤字脱字報告、ミスの方があればお申し付けください。 

次回の更新、もうしばらくお待ちください…。

“登場させるならどれが良い?”第2回銃器アンケート

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