1人の男子生徒は学園生活部の一員として『日常』を取り戻したい   作:Kagura_fbk89

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…ちくせう

土日の内に投稿したかったなぁ…


…はい、ってことで こんな時間ですが更新になります…ちくしょうあと5時間で学校じゃねぇか!!
なんだかんだ眠気と「書き上げなきゃっ…!!」という使命感の元 何とか完成させたものになるので、誤字脱字いっぱいあるかもしれませんがご容赦ください…(報告あれば修正します)


では、お待たせした14話です…どうぞ












第14話 優しさ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「___ッ!後ろだっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

 

すぐさま俺は床を蹴った

 

 

「くそっ!!」

 

 

「ちょっ?!」

 

 

何すんだと、未だに何が起きているかわからない胡桃の首根っこに腕を回し とにかく急いで手前側へと引っ張る

 

 

なんとか間一髪と言うところだろうか、大口を開けて胡桃へと噛みつこうとしていた奴の牙は獲物を捉えることなく空を切った

 

 

後ろ首に腕を引っ掛けていた状態であったことからすぐさま胡桃を後方へ投げ飛ばし、急いでマチェーテの切先を体の正面へ向けようとする が

 

 

「ッ!! 放せっ! よっ!!」

 

 

伸ばそうとした俺の腕に反応したのか、奴はこちらに飛び掛かってきた

 

 

そのまま俺は壁に叩き付けられ、こちらを喰らおうとしてくる奴と取っ組み合いとなる

 

 

マチェーテは衝撃で手の中から抜け落ち 突き刺して離すことができない

 

 

「…!!こんな力っ…どっから 出てんだよッ?!」

 

 

そのまま取っ組み合いとなり、左手で自身の肩を痛いくらいに強く掴んでいる腕を離そうと抗い 右手で噛みつこうとしてくる奴の肩を押して抵抗する

 

 

…が、ある程度休憩を挟んでコンディションが整った自身の全力を持ってもじわじわと追い詰められるほど 奴は馬鹿力を持っていた

 

 

どこからその力が出ているのかと疑問に思うが、そんなことは後だ

 

 

眼前でガチガチと歯が触れ合う音と呻き声をbgmに、掴まれる肩に走る鈍痛に顔を顰めながらもひたすらに耐える

 

 

「ッ!優也っ!!」

 

 

すると、後ろへ投げ飛ばした胡桃がこちらの状況を把握したのか こちらへ駆け出そうとする…が、不幸は連続する物で…

 

 

「今っ…!!シャベルが!どこだっ?!」

 

 

どうやら先ほど投げた拍子にシャベルも一緒に飛んでしまったようで その事実と目の前の現状で胡桃の判断を鈍らせ、予備で持って来ていた鉄パイプを取り出すという判断が遅れてしまう

 

 

その間にも俺と奴の距離は縮まり続け、押している腕も限界寸前と言ったところ 右手の筋や骨が悲鳴を上げている

 

 

「優也ぁぁぁぁッ!!」

 

 

胡桃は後ろに回していたパイプを手に取り、今度こそと駆け出す

 

 

だが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁっ!!…」

 

 

 

 

 

 

それと、先程から拮抗していた状況が崩れるのは同じタイミングであった

 

 

限界を迎えた右腕が一気に押し込まれ、先程まででも十分近かった距離がほぼゼロ距離となる

 

 

そのまま『奴』が俺の首元へ喰らいつく…その寸前

 

 

「噛まれて、堪るっ かッ!!」

 

 

先程まで抑えていた右手が、運が良いのか悪いのかフリーになったため、痛みと引き攣るような感覚を無視して無理やり首元へ腕を持ってくる

 

 

そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!!いっ、てぇ な!!…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ついに、奴の牙は俺の腕に突き立てられた

 

 

「嘘だろ?!…こんの、死に損ないがぁっ!!」

 

 

胡桃がそれを見て慌てたのか、大きくパイプを振り上げるのが視界の端に映る

 

 

だが…

 

 

「由紀に、感謝だなっ!!」

 

 

それは、3階制圧の前で由紀の提案により 腕に巻いていたダンボールとガムテープの複合装甲のおかげで、突き立てられた牙は腕の肉を切り裂くことはなかった

 

 

…まぁ、局所的に掛かる強い圧力は痛いことに変わりはなく 顔を顰めてしまう俺であった

 

 

そうして、噛みつかれたと思えば その次の瞬間、フルスイングされた鉄パイプが腕に喰らい付いていた奴の頭を直撃し あっけなくその口は腕から離れた

 

 

腕に走る痛みから解放されてホッとすると同時に、吹き飛んだ奴の方を見ると…

 

 

「くたばれッ!!こんの野郎っ!!」

 

 

…転がったところを胡桃によってボコボコに殴られ、たった今頭が粉砕したところだった

 

 

大丈夫そうだと感じた俺は自身のダメージを把握するべく確認作業を始める

 

 

「右腕は…噛まれたところ、内出血してるよなこれ…腕の筋も骨も…筋肉痛で済めば良いが……肩の方も青アザできてるよなぁ…」

 

 

壁に打ち付けられた事で所々打撲みたいな痛みもある事から 購買で湿布と軟膏の位置は何処だったかと考えつつ、そのまま俺は壁伝いにその場へ座り込む

 

 

「優也っ!…」

 

 

だが、その所作が胡桃の心配を増長させてしまったようで 血濡れたパイプを片手にこちらへ青い顔をしながら駆けてくる

 

 

「優也、傷は?…さっき、噛まれて…他も 大丈夫…じゃないよな…」

 

 

「まぁ、噛み傷は大丈夫だ…由紀の発案が役に立ったな…それ以外、肩と右腕は色々とやばいが…感染してないだけで儲け物さ」

 

 

そう言って、肩は痛いが 比較的無事な左腕でサムズアップする

 

 

それでも、胡桃の表情は暗いままだ

 

 

「…すまん、私の注意不足だった…どっかで見落としてたんだ…」

 

 

「謝らなくて良いさ…それより、胡桃も大丈夫か?さっき投げ飛ばしちまったが…」

 

 

「ぁ、ああ…綺麗な投げ方だったから、ちゃんと受け身も取れた」

 

 

「そうか…なら、良かった……ほい」

 

 

そして、俺は胡桃に向かって左拳を突き出す…まぁ、いわゆるグータッチってやつだ 3階でもやったやつだな

 

 

胡桃はそれを見て一瞬戸惑ったように見えたが、そのまま拳を突き出し タクティカルグローブ越しではあるがぶつかる感触が伝わる

 

 

「…まぁ、そんな浮かない顔すんなよ」

 

 

「…ああ、わかった…言い遅れたが ありがとうな、さっきは」

 

 

「それで良い…どういたしまして」

 

 

そう言い、俺はその場から立ち上がる

 

 

胡桃がそれを支えるようにそばで立ち添ってくれている…良いやつじゃないか、さっきからも思ってたが

 

 

「…じゃ、そろそろお目当ての物資集めと行きますか」

 

 

「おうよ」

 

 

そのまま俺は落としたマチェーテを拾い上げ、鞘に納めると 背負っていた背嚢を正面に抱えて歩き始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふぅ…こんなもんか」

 

 

「こっちも、中々に集まったぞ」

 

 

あれから、購買で物資集めを行なっていた俺たち 

 

 

腕と肩にダメージがある俺が比較的軽い物、それこそ着替えの制服やら菓子パンやらスナック菓子やらを文字通り背嚢の限界まで詰め込んだ

 

 

逆に、胡桃は洗剤*1やらボディーソープに洗髪剤等々に加えてジュース系に缶詰などと、重量のある物を中心に詰めている

 

 

あと、先程までの違いと言えば…

 

 

「なぁ、そのテーピングキツくないか?急いで巻いたから上手く調節できてないと思うんだが…」

 

 

「全然、キツくないぞ…流石陸上部だ、テーピングの腕も中々…」

 

 

それは肩周りと右腕の全体にわたって巡らされた補強テープと小さめなギプスだろう

 

 

いざ物資集めだと、初っ端から飲料系を背嚢の底に詰め込もうとしていると 胡桃から

 

 

 

 

「ちょ 待てよ」

 

 

 

 

…とお声が掛かり、急いで入り口近くの医療品ゾーンまで連れていかれ 陸上部で鍛えられた胡桃のテーピングによって応急処置されたのだ

 

 

って訳で、何も知らない人からしたら腕と肩に雑誌で代用した簡易ギプスとグルグルのテーピングが施された怪我人…くらいにはボロボロな格好をしている

 

 

「本当は湿布とか貼ったほうが良いんだが…帰ってからだな」

 

 

まぁ 怪我をしているとは言え行きとは違う、重さを主張してくるぎっしりと中身が詰まって膨らんだ背嚢に満足感を感じながら 駄菓子の棚を物色する

 

 

「確か…この辺だった気がするんだが…おっ、あったあった」

 

 

「何探して…って、あーね…」

 

 

「言われてたからな」

 

 

そう言って、俺が手に取ったのは…板チョコだった

 

 

その銘柄というのも美紀からお使いを頼まれていた物である

 

 

ひとまず棚に並んでいる分全てを背嚢の1番上へ乗せて 割れないよう慎重に開口部を閉める

 

 

「…これでミッションコンプリートだ」

 

 

「じゃ、戻るか」

 

 

「ああ、ただ 来る時も言ったが1階の防火扉を閉めてからだな」

 

 

「…そういえばそうだったな、わかったよ パパッと終わらせて3階に戻ろう…安全化されてない場所にいるだけでSAN値が擦り切れちまう」

 

 

「いや、SAN値ってTRPGかよ」

 

 

そして、話しながら入り口へと向かう俺と胡桃

 

 

「…結局、カウンターにバックヤードの鍵無かったな」

 

 

「多分、職員室の鍵入れ漁ったらスペアくらいあるだろ」

 

 

先程物色のついででカウンター周りも見たのだが、結局バックヤードの鍵は見つからず そのままカウンターの横を素通りしていく俺達

 

 

すぐ扉には辿り着き、左手で再びマチェーテを鞘から抜く

 

 

「…優也、帰りは 無茶すんなよ…」

 

 

その様子を見た胡桃は少し不安げな目でこちらを伺い、その手元ではシャベルを握り込むのが見えた

 

 

「…じゃ、帰りに戦闘があるなら 胡桃に任せようかな」

 

 

なんて、冗談混じりに言ってみると…

 

 

 

 

 

 

「…ああ “任せろ” 」

 

 

 

 

 

 

なんだか、胡桃の顔に浮かぶ雰囲気は別物に変わっているように思えた

 

 

そして、その直後 開かれる扉

 

 

すると、前へ躍り出る胡桃の姿

 

 

胡桃は廊下へ出ると、こちらに振り向き…

 

 

 

 

 

 

 

 

「離れるなよ…私が エスコートする」

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言ってこちらに差し伸べられた手

 

 

……いや、イケメンかよ

 

 

なんて思いながら…

 

 

「…ああ、任せたぞ 護衛(ナイト)さん」

 

 

握った彼女の手は、グローブ越しでもわかるほど 頼もしい物だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よい…しょ、っと」

 

 

音を立てないよう、繊細に閉じられた両開きの鋼鉄戸…

 

 

厚さ220mm、鉄筋コンクリートと鋼板で構成された巨大な防火扉

 

 

この学校や公共施設において火の手から人々の命を守るために設置されたこれは、本来想定されていた使われ方ではないが「誰かの命を守る」と言う目的では十分に役目を果たしてくれるだろう

 

 

すると 自分のいる位置とは逆の方面で、扉上部に設置された油圧装置が微弱な音を立てて 先程閉じた方とは逆の戸が閉まり始める

 

 

そちらに目をやると胡桃の姿が視界に入り 戸が閉まって行くと同時に見えなくなる1階フロアの光景

 

 

そして…

 

 

 

 

 

 

ガチンッ

 

 

 

 

 

 

2つの扉の接合部で、ロックされる音がした

 

 

「…これで良いのか?」

 

 

「完璧だ」

 

 

こちらを伺ってきた胡桃にサムズアップで返す

 

 

「…これで、校舎西側から入ってくる奴らの数も減ると良いんだが」

 

 

「まぁ、少なからず効果はあるだろ」

 

 

ひとまず、これでやりたい事は全て達成した

 

 

「…じゃあ、戻るか」

 

 

「おう…帰ったら 優也の手当てもしないとな……それ、結構キツいだろ?さっきから大丈夫そうに装ってるみたいだが…バレバレだ」

 

 

「…結構普通に振る舞ってたつもりなんだがな」

 

 

「…ふんっ、私がそれだけ無茶する後輩どもの面倒見てたってことだよ 痛み隠してるヤツとか結構いたんだ」

 

 

そして 話しながら階段を登り、2階に戻っては3階の階段を登り始める

 

 

…だがその時

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぉっと?!」

 

 

 

 

 

 

 

 

まさかのここで足をすべらせる俺…1日分の疲労がここで効いてきたのか 瞼や頭も若干重たい

 

 

そして…

 

 

「いっ、て…くっそ、足挫いた…」

 

 

「まじか…歩けるか?」

 

 

足滑らせて転落…なんて事故は避けるため 多少無茶して踏ん張ったのが仇となり、今では右の足首に鋭い痛みが走っている

 

 

胡桃の歩けるか否かの問い掛けに対し「大丈夫だ」と返そうとするが…

 

 

「大丈…___っ!…」

 

 

…無理だった

 

 

「…肩貸すぞ」

 

 

「…すまんな、迷惑かける」

 

 

「ばっか、これくらい 購買の恩と比べたらどうって事ないさ」

 

 

そうやって、胡桃の肩を貸りて一歩一歩 3階に続く階段をゆっくりと登り…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ!胡桃ちゃん!!ゆーくん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2階と3階の間の踊り場に辿り着いたとき、見張り番に立っていたのか バリケードに掛けられていたブルーシートの隙間からこちらを伺っていた由紀が飛び出して来た

 

 

2階へと降りて1時間ほどだろうか、短いようで意外と短い時間 ずっと帰りを待っていたのだろう

 

 

ここからでもわかるほど由紀の顔には満面の笑顔が映っている

 

 

しかし…

 

 

 

 

 

 

「…えっ」

 

 

 

 

 

 

突如として、その顔が冷めた物へと変わる

 

 

それどころか だんだんと彼女の顔は青ざめた物へと豹変して行く

 

 

…理由は、言わずもがなではあるが…

 

 

 

 

 

 

「ゆ、ゆーくん!…怪我したの?!…腕と肩が、足だって…待ってて 今すぐここ開けるから!! みんなー!?急いで来て手伝って!!」

 

 

 

 

 

 

そう言って、急いで由紀はすぐそばのバリケードを崩し始める

 

 

こうやって慌てているのも…十中八九この見てくれのせいだろう

 

 

「…予想はしていたが、やはり申し訳なく感じるな 人にここまで心配を掛けさせるのは」

 

 

たった今、ヘマして足を挫き 胡桃に肩を借りて脚を引きずっている様子も、その不安を増長させてしまっただろう

 

 

「…無茶させたのはアタシに落ち度がある…事情は私が説明するさ」

 

 

そうして、次第に聞こえてくる複数の足音…

 

 

それはどんどんと近づいて来て、見えるところまでもうすぐだ

 

 

「どうしたの由紀ちゃ___ッ!? あっ、秋乃くん?!」

 

 

先頭を佐倉先生に、その後ろに他の面子が揃ってやって来た

 

 

そうして、先生と目が合った直後 悲鳴に近しい先生の声が耳に入る

 

 

後に続く面々の反応も似たような物であった…が

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

特に、美紀の反応と言えば その中でも1番と言っても過言ではなく

 

 

「___っ!先、輩!!」

 

 

こちらを見るや否や 前の面子の横を駆け抜け、急いでバリケードに取り付くと俺たちが通るのに必要な隙間を確保しようと作業を開始する

 

 

と言っても、そんなの2人でやればすぐ終わり…

 

 

「だっ、大丈夫ですかッ?!…今すぐ、ちゃんと手当をっ…!!」

 

 

血相を変えた顔で、たった今空いた隙間からこちらに出て来ては 胡桃とは逆側の肩に腕を回し支えようとしてくれる

 

 

「美紀…すまん、ちょいとしくじっ__」

 

 

「そんなの後でいいです!…先生! 手当の準備をッ!!」

 

 

「ぇ、ええ!! とにかく、急いでこちら側に!!」

 

 

そう言って、俺には話す間も無くそのままバリケードの向こうまで連れられる

 

 

その間も騒然としたこの場の雰囲気は皆の不安感を募らせて行くばかりであった

 

 

「ゆっくり…合わせるので、このまま教室に…!」

 

 

「ああ…助かる」

 

 

胡桃と美紀の肩を借りて、一歩ずつ教室まで歩みを進める

 

 

その間も、皆悲壮な顔持ちであるが ひとまず崩したバリケードの組み直しを始めている

 

 

そうして、辿り着いた教室の奥では先生が慌ててテーピング用のテープやら 小さいながらもちゃんとした補強用のギプスを用意していた

 

 

「こっちです…ここに座って…」

 

 

「…迷惑かける」

 

 

そのまま、美紀に促されるまま 1番すぐそこにあった椅子に座らされ、同時に美紀によって背負っていた背嚢を回収される

 

 

「先生、見たらわかると思いますが…すいません、ヘマしました…でも、噛み傷や外傷は無いのでそこは大丈夫です」

 

 

「そ、そうですか…良く、は 無いですが…そうですか……そこは安心しました…とにかく、応急処置だけでしょう?…急いでちゃんとした処置をしましょう」

 

 

「あ、めぐねぇ それだったら湿布とか軟膏とか取って来たからそれ使ったらどうだ?」

 

 

「助かります、胡桃さん…あと、テーピングを手伝ってもらって良いですか?多分 あなたの方が上手に巻けると思うので」

 

 

「わかった」

 

 

そうして、着々と進んでいく手当の準備

 

 

これら全てが自分のせいで引き起こされた事だと思うと やはり申し訳なく感じる

 

 

そうやって座った椅子で感傷に浸っていると

 

 

「先輩、その…服 脱いでください」

 

 

「ああ、わかった…」

 

 

そう言われると、俺はまず鉄帽から外し始める

 

 

これは少し顎紐を緩めるとすぐ外れ、首に掛かっていた重量感が消える

 

 

次にマスク、まぁ こいつに関しても頭に引っ掛けているバンドを緩めて外せば完了

 

 

ついでに、腕と肩を覆っていた応急処置のテーピングも外しておく

 

 

そして 次に防弾チョッキだが、こいつも結構簡単に外せて プレートが入っている内側を右に、それを覆っている外側を左に開けば外せる

 

 

ここまで来ればもうおしまいだ

 

 

由紀作の追加装甲を外し、最後に戦闘服のボタンを外して行く

 

 

そして、肩と腕の痛みを耐えながら下に着ていたグレーのシャツを脱げば…

 

 

「…これで良いのか?」

 

 

残るはインナーの黒いタンクトップだけと、随分とまぁ薄着になったもんだ

 

 

そして、俺は若干顔の赤い美紀にこれで良いかと尋ね

 

 

「…あっ、はい 十分です…」

 

 

…問題ないようだな

 

 

すると、胡桃が俺の事…正確に言えば俺の体をまじまじと見つめ…

 

 

「…お前、さっき下で応急処置した時にもなんとなく思ってたんだが……筋肉すげぇよな、インナーの上からパッと見ても 腹筋割れてんだろそれ…ジムとか行ってたのか?」

 

 

「いや…特には…結構この年代の男子じゃ普通だと思うぞ?これくらい…」

 

 

突如、筋肉を褒められた

 

 

俺としては、毎日大好きな鶏肉*2を食べてはバイトで品出しを全力*3で取り組み 土日にツーリング*4を兼ねたサバゲー*5に出掛けていただけなんだが…

 

 

 

 

 

 

 

 

………いや、十中八九これだな

 

 

 

 

 

 

 

 

胡桃から「お前みたいなのが普通だったらこの国のスポーツもっと強いわ!」…と、ツッコミをいただいたが その手には医薬品が抱えられいる

 

 

「じゃ、まず痛いとこがどこか言ってくれ」

 

 

「えっと…まぁ色々あるんだが…____」

 

 

まずは左肩に右腕全部、噛まれたところの内出血や壁に打ちつけられた時の打撲箇所として両腕の肘と左手首に加えて挫いた右足首など…

 

 

「まぁ、これくらいかな」

 

 

「…結構、ボロボロじゃねぇか」

 

 

「まぁ、胴体に関してはチョッキのプレートと一緒に挟んでた緩衝材のおかげで大丈夫だったのが救いだな」

 

 

そして、早速手当が始まる

 

 

「腕…内出血してるところに軟膏を塗ります、ちょっと失礼しますね」

 

 

「じゃ、肩に湿布貼ってテーピングするぞ」

 

 

「私は湿布とテープのカットをします」

 

 

先生が腕を、胡桃が肩を、美紀が補助を行い 着々と俺の体が湿布とテープに軟膏で覆われて行く

 

 

まぁ、負傷した箇所も局所的な物ばかりだったため手当はすぐに終わる

 

 

応急処置の時とは違い、患部に塗られた軟膏や湿布のスッとした薬品の効果と 丁寧に巻かれたテーピングがあるおかげで、腕と肩は随分と動かしやすくなった

 

 

恐らく2、3日もすればきっちり治るだろう

 

 

「…どうですか?優也くん…あまり、この手の怪我は対処した事がなくて…」

 

 

「大丈夫です、むしろこれで不慣れだなんて 驚きました」

 

 

「まぁ 教師ですので、ある程度怪我の手当はできるようにはしていましたが…そうですか、それなら良かったです」

 

 

先生が心配そうに調子を問いかけてくるが 問題ない旨を伝え大丈夫アピールとして軽く腕を回しておく

 

 

 

 

 

 

 

 

「___先輩」

 

 

 

 

 

 

 

 

すると、先生のすぐ横に出てきた美紀が 曇った表情を浮かべながら話しかけてくる

 

 

まぁ 緊急性があった応急処置が済んだ以上、彼女が聞きたいであろうことは1つしかない

 

 

 

 

「…何が、あったんですか…」

 

 

 

 

そう言ってこちらを見つめる美紀の眼差しには、驚愕と不安に加えて 僅かな怒りの色が含まれていた

 

 

「美紀、それはアタシから説明する…いや、説明させてくれ」

 

 

そこで胡桃が俺と美紀の間に入る形で出てくる

 

 

加えて…

 

 

 

 

 

 

「それ、私達も聞いて良い?」

 

 

 

 

 

 

「あぁ…りーさん達も気になってるだろうしな」

 

 

すると、バリケードの組み直しが終わったのか りーさん達が開いた教室の扉から入室し、その会話に参入してくる

 

 

もちろん、それを拒む理由も無いので胡桃はそれを容認する

 

 

これで、全員が集まった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…じゃあ、何があったかだが…______」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして、胡桃は3階を出発し 戻るまでに一体何があったのかを話し始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

…と言っても、実際起きたことの内容なんて 1時間にも満たない時間の間で起きた物なんだからすぐに話し終える

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ってのが、ここに至るまでの流れだな…」

 

 

「…なるほど、そんな事が……大変、でしたね」

 

 

「……まぁ、足に関しては俺が足滑らせただけなんだよね 実は」

 

 

そして、話が終わり何があったのかを理解した先生からは労りの言葉を貰い

 

 

「…どうして胡桃先輩は奴が後ろに居たのを気付けなかったんですか?気付いてたら、先輩は…」

 

 

一方で、胡桃は美紀からは少しお言葉をもらっていた

 

 

だが、誰もその発言に異論を唱える者はいない

 

 

まぁ やはり少なからずとも、みんなそこに思うところはあるみたいだ

 

 

「…それに関しては、完全に私の落ち度だ…返す言葉も無い…」

 

 

そう言って、拳を握り締め俯く胡桃の姿

 

 

「…まぁ、あの環境じゃ仕方なかったとしか言いようがない…俺でさえ 胡桃が“噛まれる寸前”でようやく存在に気付けたんだしな」

 

 

「…優也」

 

 

だが、それを黙って見ているだけの俺じゃない

 

 

このまま全員のヘイトを受けて、仲間内での不和に繋がったら洒落にならないし そうやって弁明しようがない己のミスで胡桃が抱え込んでしまう…なんて見ていられない

 

 

そう思った俺は胡桃への援護射撃を行う

 

 

「…それに 俺が負傷してからの面倒ごとは全部胡桃がやってくれたんだぜ?胡桃のバックの中見たか?あんなに重たい物持って俺のエスコートまでしてくれたんだ…それだけで十分、胡桃は自身の犯したミスの贖罪を行ったと 俺は思うがな」

 

 

「…わかりました、そこまで先輩が言うなら 十分です…すいません、胡桃先輩……少し意地悪なことを言いました」

 

 

「いや、全然…わかってくれるってだけで十分だし、アタシのミスってことには変わりないしな」

 

 

そう言って、お互いに頭を下げる2人…

 

 

…どうにかなったみたいだ

 

 

「…じゃ、この話は終わりかな?」

 

 

「ええ…そうしましょう…とにかく、こうやって戻って来てくれただけで先生は十分です…よく頑張りましたね 2人とも」

 

 

そうして、胡桃と俺の手を握る先生

 

 

その手はとても温かく、先生の目と同様に慈愛に満ちているように思えた

 

 

「…じゃ、早速回収した物資のお披露目と行こうぜ!めっちゃ重たかったんだからなこれ!!」

 

 

「おう……美紀」

 

 

そして、いよいよ始まる 物資のお披露目

 

 

胡桃がテーブルに置いていた自身のリュックと俺の背嚢を運んでくる

 

 

そこで俺は、すぐそばにいた美紀を手招きして呼び寄せる

 

 

「どうしたんですか?…」

 

 

「どうしたも何も…」

 

 

そして、頭上にハテナを浮かべた様子も美紀がすぐ隣までやって来たのを確認し

 

 

 

 

 

 

 

 

「…はい、これ ご所望のチョコレート」

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言って、開けた自身の背嚢から 美紀から言われていた板チョコを取り出し美紀へと差し出す

 

 

 

 

「えっ」

 

 

 

 

それを見た美紀は驚いた顔をして固まる

 

 

だが

 

 

 

 

「…フフッ」

 

 

 

 

美紀は、少し笑ってから その差し出されたチョコを手に取り

 

 

 

 

 

 

()()()()()()……ありがとうございます!!」

 

 

 

 

 

 

そう言って、良い笑顔を浮かべた

 

 

 

 

それはもう、本当に良い笑顔で…

 

 

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

 

 

「…“でも”…先輩」

 

 

 

 

 

 

「…ど、どうした?美紀…」

 

 

すると、美紀はその()()()()のまま淡々と言葉を連ねる

 

 

()()()()()()()は、どうしたんです?」

 

 

「………」

 

 

…笑顔の奥から感じるとてつもない圧

 

 

「……その腕とか、肩とか、足とか…どうしたんです?ほら 言ってみてください?」

 

 

わかった上で聞いているのが確定な質問が出たが、返答する

 

 

「…こ、これは最近流行りのダメージ加工的な__「無理ある言い訳はよしてください」…はい」

 

 

…流石に無理だった

 

 

「何ですかダメージ加工って…加工どころか、しっかりとリアルダメージ入ってますよね?」

 

 

「…はい」

 

 

淡々と詰められる俺

 

 

「……帰ってきた先輩の様子を見た私の気持ち、わかります?」

 

 

「…」

 

 

「…どれだけ、心配したか どれだけ驚いたか…わかります?…」

 

 

「……美紀?…」

 

 

だが、だんだんとその気迫が弱まってくるのを俺は感じた

 

 

ふと見ると、チョコを持つ美紀の手は震え 目元は少し潤んでいる

 

 

…こりゃ、本当にやらかしちまったなぁ…

 

 

そう思った次の瞬間、胸元に感じる衝撃

 

 

…そう、美紀が飛び込んできたのだ

 

 

瞬時にそれを理解した俺は、後ろに倒れないよう踏ん張ろうとしたが その必要はなかった、やはり怪我している分 そこは美紀もわかっているのだろう

 

 

だが…

 

 

 

 

 

 

「…バカ、バカ、バカ…!…先輩の嘘つき…!!…」

 

 

 

 

 

 

「…美、紀…」

 

 

 

 

 

 

「…無事で帰るって、言ったじゃないですか…!なのに、そうやって…いっぱい怪我して…!」

 

 

 

 

 

 

「…ごめんなぁ…本当に…」

 

 

飛び込んで来たと思ば、俺がそこそこな怪我をしてしまったせいで 泣き出してしまった美紀…

 

 

恐らく、ここまでずっと堪えていたのだろう

 

 

約束すら守れず、挙句の果てに年下の女の子まで泣かせてしまうこの始末…

 

 

「…美紀……本当に、ごめんな…」

 

 

こんな自分にできるのは、ただひたすらに謝ることと 目の前の少女の背中をさする事ぐらいで…

 

 

『………』

 

 

教室には、俺の謝りの言葉と 少女の小さな泣き声がただひたすらに響き続ける

 

 

そして、5分が経ったかそれくらいの時間が過ぎ ようやく落ち着いて来た美紀の様子

 

 

 

 

「…美紀…本当に、ごめんな…」

 

 

 

 

さっきからずっと、同じ言葉しか言えない自身に腹が立ちながらも ひたすら謝罪を続ける

 

 

…すると

 

 

「……本当に、そう 思って、ますか?…」

 

 

「…ああ、本当だ」

 

 

俯いたままだが、美紀から 先程からの言葉の真意を問われる

 

 

もちろん、その言葉に嘘偽りは断じてないため 肯定の意を返す

 

 

「…なら、良いです」

 

 

そして、ようやく顔を上げた美紀

 

 

目元を赤く泣き腫らして 頬には未だ少しの涙が伝っている…が

 

 

 

 

 

 

 

 

「…帰って来てくれて、よかった…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

その顔には、目一杯の()()が浮かんでいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…さて、全員の前で熱い抱擁交わした2年と年下の女の子泣かした3年?今のお気持ちは?」

 

 

 

 

 

 

「「……っっッ!!////」」

 

 

 

 

 

 

「こらこら胡桃さん、2人のこといじめたらダメですよ?」

 

 

「あー!うんまい棒のコーンスープ味だ!ゆうくんナイスチョイス!!」

 

 

「コロッケパン、結構賞味期限長いのな…まだ全然食えんじゃん」

 

 

「あそこの購買って洗剤とかも置いてたのね…」

 

 

あれからおよそ10分ほど、無事仲直りできた俺と美紀だったが…それまでのプロセスのせいで 絶賛胡桃のニヤニヤが炸裂しているところであった

 

 

他の面子は回収して来た物資の内訳確認やらを行っており、各々欲しい物などを吟味している

 

 

まぁ、ずっと美紀と蹲っているのもあれなので 俺は頬を1回叩いて立ち上がり…

 

 

「…美紀、立てるか?」

 

 

「…は、はい」

 

 

美紀に手を差し出し 一緒にその場から立ち上がる

 

 

「…今は、16時か…飯にしちゃ少し早いな」

 

 

「…休んでてても良いんですよ?先輩 今怪我人なんですし」

 

 

立ち上がり、ふと時計を見るが その針が刺す時間はまだ夕食には早い時間であった

 

 

「…じゃあ、少し寝るかな」

 

 

「ええ…そうしてください」

 

 

ってわけで、夕食の時間帯になるまで 少し休息代わりの昼寝をすることに

 

 

元々生徒会室であった事から部屋にソファがいくつか置かれており、その内1つを使って良いかと先生に確認を取ってから そのまま俺は半長靴を脱ぎソファへ倒れ込む

 

 

やはり、階段の時の時点で午前からの疲れが効いているのがわかっていたのもあってか すぐに瞼は重たくなってきた

 

 

段々と意識が朦朧としてくる中で ふと上半身に何かが掛けられる感覚がした

 

 

色合いや重量的に 先程脱いだ戦闘服あたりだと予想する

 

 

段々と周囲の声も聞こえずらくなって来て、眠りに入るまで秒読みだろう

 

 

すると突然、顔に掛かる影

 

 

そしてその直後 頭に乗せられる…誰かの手だろうか

 

 

ゆっくりと頭を撫でる、優しくて温かいその手の平は 少し驚いたものの、俺を眠りに落とすのには効果抜群で…

 

 

 

 

 

 

…意識が沈み切る直前、耳に入る1つの声があった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…本当に、よく頑張りました…しっかり休んでくださいね……()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
学校終わりや部活終わりの生徒がついでに買えるようこの手の日用雑貨など手広く販売されている

*2
タンパク質摂取

*3
上下の棚における品出しを行うことで上下運動によるスクワット&商品運びで腕のトレーニング

*4
ワインディングで腹筋のトレーニング

*5
走・筋持久力のトレーニング







はい、ってわけで いかがでしたでしょうか?第14話。
最後駆け抜けるみたいな風になっちゃったのと、美紀のくだりとかは書いてて楽しくなってすぐ書き終わったんですが、いかんせんその他がどうか…不安が残ります。
ひとまず、これである程度書き溜めていた分全部使い切りました。
次回の更新は「早い」か「遅い」かの2択になりますので どっちになるかは分かりませんが気長に待って頂けると幸いです、それでは私はもう寝ますので…おやすみなさい。



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