ミカ「留学?」   作:森竹

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もし、他の方のSSと被っていたらすいません。
あと、同じSSがピクシブにも上がってます。


ミカ「留学?」

「う〜、暑いなぁ……。」

 

照りつける太陽の下、トリニティ学園の郊外にある人気のないグラウンドで、聖園ミカは草むしりをしていた。

 

「もう草むしり疲れた〜!うー、身体中汗でべたべた……せっかく先生に買ってもらった体操服なのにー!」

 

奉仕活動として、早朝から草むしりをしていたミカだが、3時間が経過した今、暑さと疲労にやられていた。時折ボヤきながらもミカは草むしりを続けるも、そろそろ体力の限界であった。

 

「も、もうだめ〜!ちょっとくらい休憩してもいいよね?」

 

グラウンドを見渡したところ、ちょうど日陰になる場所にベンチがあったので、そこに座ることにした。

 

この場にはミカ一人、休憩中にただ座っているだけなのは退屈だった。

 

「一人で休んでても、つまんないなぁ〜。」

 

うーんと唸りながら、この退屈を解消する手段を考えていると、ふとアイデアが浮かんだ。

 

「あっ!そうだ!先生にモモトーク送っちゃおー☆……でも、先生忙しいから、迷惑になっちゃうかも……はぁ~先生に会いたいなぁ……今なにしてるのかなぁ。」

 

そんなことを考えていた時、背後から声が聞こえてきた。

 

「あら〜?皆さん、こんなところに『魔女』がいらっしゃいますよ~?」

 

「……!」

 

振り向くと、ミカにいつも嫌がらせをしていた生徒たちがそこにいた。人数は3人、ニヤニヤと笑みを浮かべながらミカの方へと近づいていく。

 

「あんた、ナギサ様とセイア様に奉仕活動を命じられてたよね?なのに何もしていないじゃん。もしかして、サボってるの?」

 

「はぁ〜やだやだ。これだから『魔女』は嫌ですわねぇ……あれだけのことをしておいて、普通なら到底許されないはずですわ。そんなあなたに、ナギサ様たちは、寛大な御心遣いで大きな処罰をお与えにならなかった。にも関わらず、あなたにはその恩義に報おうという心すら持ち合わせていらっしゃらないんですの?」

 

人気のない場所だったからか、いつもより強い言葉で罵倒をする彼女たちに、戸惑いながらミカは話す。

 

「あ……えっと、ここでずっと草むしりしてたから、ちょっとだけ休憩してたんだけど……。」

 

「は?なに?まさか、口答えしてんの?『裏切者』の分際で、よくそんなこと言えるよね!なんで手を動かしていないんですかー?って聞いているんですけどー?」

 

「ティーパーティの『お姫様』に、草むしりは難しかったのでしょうか?……あ、『元』でしたっけ?アハハッ!」

 

本来のミカであれば、この程度の相手など一人でも簡単に倒すことは出来る。しかし、ここで問題を起こせば、ナギサたちに迷惑がかかるだろう。そう思うと、ただただ耐えるしかなかった。

 

そんな様子を見て、何もしてこない今のミカなら怖くないと彼女たちはさらに続ける。

 

「あらあら〜?やっぱりまだみたいですわね?だって、ほら?こんなに汚れていますもの!」

 

そう言いながら、綺麗にしたばかりのグラウンドに、抜いた草をまとめていた袋をぶちまけ始める。

 

「あっ!今そこ、キレイにしたばっかりなのに……。」

 

「へー?これがキレイに見えるの?今どうなってるか良く見て答えてくれる?どう見ても汚れてるよね?それなのに掃除もしないで休んでるなんて、サボってるってことじゃん?これはもう、ナギサ様とセイア様に報告しないとダメなんじゃない?『魔女』は全然改心なんてしていません!ってさ!」

 

「……」

 

理不尽な言い様に、思わず彼女たちを睨みつけるミカ。その様子に一瞬ギョッとするが、何もしてこないのを確認すると、思惑通りといった顔をする。

 

「んー?なんですかー?その目は?何か文句でもおありなんですかー?」

 

「まったく、これは少し『おしおき』が必要みたいですわねっ!!」

 

ニヤニヤとした笑みを浮かべながら、彼女たちはミカに銃口を向ける。

 

あぁ、これからあの子たちが満足するまで痛めつけられるのか。先生に買ってもらった体操服、またあの子たちにボロボロにされちゃうと、目尻に涙を浮かべた顔を伏せ、自分に襲いかかるだろう衝撃に備えた。

 

 

「そこまでだよ。」

 

聞きなれた、大好きな人の声がした。

 

「「「えっ!?」」」

 

「せ、先生、来てくれたんだ……。」

 

ミカが顔を上げると、かつて自分を救ってくれたシャーレの先生がそこにいた。

 

「やぁ、こんにちはミカ。その姿を見ると奉仕活動頑張ってたみたいだね。そして、そこにいる君たちは、今ミカをいじめてたよね?」

 

「い、いじめてなんておりませんわ!?わたしたちはただ、ミカさんがサボっていられるので、注意していただけですわ!」

 

「そ、そうだよ!それの何が悪いってのさ!」

 

「見てくださいな!このゴミの量!これこそ『魔女』がサボっていたという証拠ですわ!」

 

「君たちがその足元のゴミを散らかしてるところ見てたからね。それに、今ミカに暴力を振ろうとしてたよね?」

 

そういうと、先生はミカを庇うように前に立つ。あの時、自分を救ってくれた時のように。

 

そして、先生はいじめっ子たちに顔を向ける。

 

「「「……っ!」」」

 

先生の顔を見た生徒たちは、思わず息を呑んだ。

 

後ろ向きのまま、先生はミカの方に少しだけ顔を向けると優しい口調で話し出す。

 

「ミカ、悪いけどちょっと待っててね?この子たちに話をしないといけないから。」

 

そして、いじめっ子たちに再度顔を向けると、彼女たちは動揺し始めた。

 

「ちょ、ちょっと、シャーレの先生、顔ヤバくない!?めちゃくちゃ怒ってるんじゃないのアレ!?」

 

「どう見ても怒っていますよ!ど、どうしましょう!?今日の計画を最初にしたのは貴方でしょう!?」

 

「そんな!私だけのせいにしようとしないでくださいな!!お二人だって乗り気だったじゃないですの!」

 

責任転嫁をし始める彼女たちを見て、先生はふぅとため息を漏らした。

 

「……うん、君たちには少しお説教が必要みたいだね。ちょっとそこに並ぼうか。」

 

「なっ!お説教だなんて!なんで私たちがそんなこと!」

 

いじめっ子の一人が文句を言うが、先生は彼女たちから視線を外さない。

かなり怒った表情をしているようで、彼女たちの一人からヒッ!と小さく呻く声が聞こえる。

 

これは不味いと思ったのか、リーダー格と思われる子が声を上げた。

 

「……あらいけない!私、これから火急の用事があったんでしたの!ではごきげんようー!」

 

「あ、ちょ、ちょっと待ってよー!」

 

「お、置いてかないでくださいー!」

 

そんなことを言いながら、蜘蛛の子を散らすように彼女たちは逃げていった。

 

ふぅ、とため息をつき、先生はミカに申し訳なさそうな顔を向ける。

 

「ごめんねミカ。私がもっと早くこれたらミカが嫌な思いをしないで済んだんだけど……。」

 

「ううん、気にしないでよ先生。また、助けてもらっちゃったね。ありがとね先生。」

 

「私はミカの先生だから。これぐらいなんてことないよ。あ、このゴミ、片付けちゃうね。ミカは疲れてるだろうから、座っていいからね。」

 

「ううん、私も手伝うよ!」

 

「ありがとうミカ。じゃあ、2人ですぐに終わらせようか。」

 

 

〜数分後~ ※ミカ視点

 

 

「だいぶキレイになったね。ミカ、手伝ってくれてありがとう。」

 

「ううん、大丈夫だよ。それに、そもそも私が悪い子なのが原因だから……。」

 

「そんなことないよ。確かにミカはいろんな人に迷惑をかけたかもしれない。でも今はその反省のために奉仕活動をしてるんだから。それに、何があっても暴力なんてあっちゃいけない。」

 

「先生……」

 

そう言いながら、私に微笑みかけてくれる先生。さっき私が感情に任せて暴れていたら、私が先生に怒られるところだったかも。ホントにガマン出来て良かった。

 

「あ、ごめんねミカ。差し入れを持って来てたの忘れてた。スポーツドリンクだけど良かったかな?」

 

「ホント?やった〜☆ありがとう先生!……う~ん、冷たくておいしー♪」

 

「ナギサに聞いておいてよかったよ。今日はこの辺りにいるって教えたからすぐに来れて良かったよ」

 

……少し胸がズキリとした。

 

私に会いに来てくれたのは、ナギちゃんたちの『ついでに』ってことなのかな……

 

「へー?今日はナギちゃんたちに会いに来たの?それともセイアちゃん?」

 

「えっと、確かに、ここに来る前にナギサとセイアにも会ってきたけど、今日はミカにお願いしたいことがあって、その交渉をしにトリニティに来たんだ。」

 

「え!わ、私に?」

 

予想してなかった返事に驚いちゃった。先生、私に会いに来てくれたんだ。ちょっと、ううん、すごく嬉しい。

 

「うん、だからミカ、良かったらちょっとだけ時間もらってもいいかな?」

 

「うん、いいよ!でも、先生のお役には立てないかもしれないよ?今の私には出来ること少ないし。」

 

「そんなことないよ。お願いというのは、提案をしたくてさ。ミカはこんな募集があるって、聞いたことあるかな?」

 

「『エデン条約調印記念交換留学生募集案内』?ふーん、ゲヘナの子がトリニティに来るんだ。あ、もしかして、私がゲヘナのこと嫌いだから、心配になって来てくれたのー?私のことなら大丈夫だよー?相手にしなければいいだけだからね☆」

 

「いや、そうじゃないんだ。」

 

「……そうじゃないって、どういうこと?」

 

「実は、ミカが参加してみるのって、どうかなって思ってさ。」

 

え、先生、今なんて言ったの?

 

私の聞き間違えかな?

 

私に対して、ゲヘナに行かないかって言ったの……?

 

「……え?まさか先生、私に角付きの学校に行って、あいつらといっしょに勉強をしろって言ってるの?もしかして、私がゲヘナ嫌いってこと言ってなかったかな?」

 

「ううん、知ってるよ。それでも、ミカにお願いしたいと思ってきたんだ。ミカって、ゲヘナ学園の生徒たちのこと嫌いみたいだけど、ゲヘナ学園の生徒のこと、ミカは良く知ってる?」

 

「そんなの考えるまでもないよ。粗暴で、下品で、角まで生えてて、野蛮なやつばっかりなんだから。いくら先生のお願いでもゲヘナの子たちと勉強なんてぜーったいに嫌だよ。あー想像しただけでムカついてきちゃったなー。」

 

「それはゲヘナの子と話しをしててみて、その上でそうだったってことかな?」

 

「……あのね先生?私、ちょっと前まではティーパーティーの一員だったんだよ?一部の子とは会議で話ぐらいしてるんだからね?その時だって、嫌な感じの子たちばっかり。それにゲヘナ結構な数の生徒がテロリストなんだよ?そんな角付きの子たちに話なんて通じると思ってるの?」

 

「もちろんだよ。みんなちゃんとわかってくれるし、すごく頼れる子たちなんだよ。」

 

胸がモヤモヤとする。私を助けてくれた大事な人が、他の生徒の、それもゲヘナなんかの話をしてるのは、すごく嫌だな……

 

「……先生って、ゲヘナのことが好きなの?」

 

「ゲヘナだからとか、そういうことは関係ないよ。キヴォトスにいるみんなは、みんな私の生徒だし、みんな大好きだよ。確かに、ゲヘナ学園の子たちは、自分の好きなことや、やりたいことに正直な子が多いから、誤解を受けやすいのかもしれない。でも、いい子だっていっぱいいるんだ。ミカには自分の目で見て、話をしてみて、実際に経験してみてほしい。ゲヘナの子たちを嫌って関わらないようにするのは、それからでも遅くないんじゃないかって思うんだけど、どうかな?」

 

先生の言いたいことは、なんとなくわかった。でも、なんで私なんだろう?そう考えていると、悪い方ばっかり考えて、嫌なことがよぎっちゃった。

 

「……先生、もしかして、私をゲヘナに追いやりたいの?先生も『魔女』はトリニティよりもゲヘナがお似合いだって言いたいの?」

 

恐る恐る口にしたら、先生はポカンという表情をしたあと、さっきより真面目に話し始めた。

 

「え?ううん、違うよミカ。誓ってミカを蔑む目的でこの話をしているわけじゃないよ。」

 

先生は私の手を取りながらそんなことを言った。いつもなら嬉しくなるんだろうけど、今はそんな気分になれなかった。

 

「……信じられないよ。」

 

「ねぇミカ?あの時のこと、覚えてる?ほら、サオリたちのこと。」

 

「……うん。忘れるわけないよ。」

 

「あの時、サオリを追い詰めた後、怒りに任せてその手を振り下ろすことも出来たはずだよね?でも、ミカはそれをしなかった。それだけじゃなく、あの子たちのため、ボロボロになりながらも懸命に戦ってくれた。私は、あの姿をよく覚えてるよ。」

 

「……先生はそう言ってくれるけど、私はそんな優しい娘じゃないよ。サオリの話を聞いちゃったから、その上であの子たちに何かしちゃったから、私自身が救われないことを証明するだけ。だから、出来なかっただけだから……。」

 

「そんなことないよ。憎しみに飲まれず、あの子たちを許してくれたミカだったら、本当は誰よりも優しく、誰かのためなら傷つくことも厭わずに立ち向かえるミカだったら、ゲヘナの子たちとも分かり合える。そう思うんだ。」

 

先生は、本気で私とゲヘナの子が仲良くなれるって信じてるみたい。そんなこと出来るのかな?

 

私自身ゲヘナを相手になんてそんな気はまったくしないんだけど、先生が言うんだったら、ほんの少しだけだけど、信じてみてもいいのかって思えてくる。

 

「……でも先生?私は悪い子なんだよ?知ってるでしょ?だから、私を選んだ先生に迷惑がかかっちゃうかもしれないよ?ゲヘナの子たちを見たら、ガマン出来る自信なんてないもの……それでも、いいの?」

 

「うん。大丈夫だよ。もし何かあっても、生徒の責任を取るのが先生としての、『大人』としての責任だからね。でもね、私自身そんな心配はする必要ないと思ってるよ。ミカなら大丈夫だって、信じてるからね。」

 

そういうと先生は微笑みを浮かべ、私の頭を撫でてくれた。そういう不意打ちは卑怯じゃんね……

 

「……でも、それでも何かやっちゃうかもしれないよ?」

 

「そんなに心配?じゃあこうしよう。ミカの留学期間中、私もゲヘナ学園にいるね。ずっと一緒は難しいかもしれないけど、留学中はミカと一緒に行動するよ!……あ、ミカが良かったらだけどね?」

 

「……先生といっしょにいれるのは、ちょっとうれしい、かも……。」

 

「そう言ってくれるなら嬉しいな。あ、今回の留学は調印後に行われる2校の間で行われる最初の行事だからね!トリニティ、ゲヘナ双方にとって大きな意味があるんだ。それで、留学の後に書いてもらうレポートの内容が良かったら、ミカの奉仕活動を免除してくれるってナギサとセイアが言ってたよ!」

 

「え、免除?……でも、うーん……私、いろんな子にいっぱい迷惑かけちゃったし、それでみんな許してくれないんじゃないかな?」

 

「大丈夫!あの二人を信じて!……あ、もうこんな時間だ。私はもう帰らないと。それじゃあミカ、返事を楽しみにしてるね!あ、体調には気をつけてね!」

 

「あ、うん、じゃあね先生。」

 

そういうと、先生はシャーレに帰ってしまった。

 

「留学かぁ……それも、ゲヘナになんて……。」

 

以前の私なら、最後まで話を聞かずに断ってたよね。

 

……うん、私自身、一番驚いてる。

 

「期間は……1か月なんだ。」

 

「今でもゲヘナのことは嫌いだけど、ホントに大丈夫かな……。」

 

「……うん、先生のこと、信じてみようかな☆」

 




次回はゲヘナ学園編になります。
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