ミカ「留学?」   作:森竹

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 投稿が遅れて申し訳ありません。

 本編書き進めていたとき、あれ? 長期出張のため、先生不在の件を各学校に連絡する描写を書いていなかったなぁと気づき、いっそその話をそのまま書いてみようと思いました。ただ、本来書く予定のものに盛り込んでしまい、いつもよりも長くなってしまいました。

 手軽にサクッと読めるように書いていたのですが、どこで切るか迷った挙句、そのまま投稿することにしました。

 いつもよりも長くなってしまいましたが、よろしくお願いします。



???「先生がいない?」

 ミカはベッドで横になりながら、今日の出来事を振り返っていた。

 

 「今日はとっても良い日だったなぁ。先生に抱きしめてもらったり、新しい友達も出来ちゃった。ここがゲヘナじゃなければ最高なのに……」

 

 ゲヘナに居るからと言って、ゲヘナが好きになるわけもなく、ミカの心情を悪くするには充分過ぎるのだが、それよりも得たものが多いため上機嫌になっている。

 

 「……あ、イロハちゃんに聞くの忘れちゃったけど、私って明日から何をすればいいんだろう?」

 

 うーん……と唸りながら考えたあと、まぁいっか☆ とすぐに思考を放棄した。

 

 一瞬、遠くの方で大きい爆発音が聞こえたが、まぁゲヘナだからと気にしないことにした。

 

 「ん〜、だんだんとゲヘナに馴染んできてるって感じがしてちょっと複雑かも……」

 

 少し顔をしかめたが、すぐに気を取り直し目を閉じる。

 

 「明日は何があるのかなー?」

 

 期待に胸を膨らませ、ミカは目を閉じた。

 

 

 

 時は遡り、ミカたちが先生の部屋で仕事を始めていた頃、シャーレの執務室に1人の生徒が訪れていた。

 

 「先生、少しお時間よろしいですか? ……って、誰もいないじゃない。部屋の明かりも付けっぱなしだから、コンビニにでもに行ったのかしら?」

 

 先生に会うため、ノアに適当な理由をつけてシャーレに立ち寄った早瀬ユウカは、いつもなら笑顔で出迎えてくれる先生の姿が見えず残念そうにしている。

 

 「……まさか、また限定版だからー! とか言って、私に黙って無駄使いしようとしてないですよね〜? 先生ったらすぐに私に黙って無駄遣いするんですから!」

 

 愚痴をいいながら、先生のことを考え始める。

 

 「はぁ……先生がこの先ちゃんと生活出来るか少し心配だわ……でも、私といっしょに同棲するなら、私の投資のリターン分で問題なく生活が……って、私ったら何考えてるのよ!」

 

 そんな雑念を払うため頭を振り、緩んだ気持ちを引き締めて先生がどこへ向かったのかの手掛かりを探し始める。

 

 先生の机に目を向けると『シャーレに来た生徒たちへ』と書かれた書置きが見つかった。

 

 「これって、先生が書いた字よね? どれどれ……」

 

 『シャーレに来た生徒たちへ。今月は出張のため留守にします。せっかく来てもらったのにごめんね。でも、何か相談事があれば、遠慮なく連絡してね。みんなの先生より』

 

 「先生は出張に行ってるのね。せっかく会いに来たのにちょっと残念……って、部屋の明かりもつけっぱなしで長期不在だなんて! それにどこに行くのか書いてないじゃない! ……このままだとシャーレに来た他の生徒たちが心配するから、誰かが先生の居場所を確認しないといけないってことよね? まったく、ホント私がいないとダメなんですからっ」

 

 最初は怒った様子だったが、先生に連絡する大義名分を手にすることが出来たと、どこか嬉しそうに笑みを浮かべる。

 

 モモトークでどこにいるのか聞くために文字を入力していた時、シャーレの扉が開いた。

 

 「うへぇ〜、先生〜こんな時間までお仕事頑張ってるの〜? ……アレ? 先生いないのかな~?」

 

 ピンク髪で特徴的なアホ毛を持つ、眠たげな表情で全身に武装を装備した生徒が入室してきたが、先生がいないことに気づくと周りをキョロキョロと見渡しながら辺りを探している。

 

 (あの子、ちっちゃくてかわいい……どこかでチラッと見たことがあるような……)

 

 ユウカがピンク髪の生徒を見ていると、その生徒がユウカの視線に気づいて近づいてくる。

 

 「あれ、先客がいたんだー。ねぇねぇ? 先生がどこに行ったか知らない~?」 

 

 「あ、先生なら、出張に行ったみたいですよ。私はミレニアムサイエンススクール、セミナー所属の会計、早瀬ユウカです。えっと、あなたは? その学生証、アヤネさんと同じ校章みたいですけど……」

 

 「アヤネちゃんのお友達〜? おじさんはアビドス高等学校の3年生で小鳥遊ホシノって言うんだ〜。よろしくね〜。でもそっかぁ、先生いないのかぁ。それじゃ、おじさんはアビドスに帰ろうかな〜。会計ちゃんはどうする?」

 

 (こ、この見た目で3年生!? それに会計ちゃんって……ま、まぁいいわ。それよりも、小鳥遊ホシノ……前にリオ会長から聞いたことがあるわね。それに、虚妄のサンクトゥム攻略戦の時、マキからすごく強い生徒だって聞いていたけど、実際に会ったら、まさかこんなに小さくてかわいかったなんて……)

 

 「えっと、書置きに出張先を書いていなかったので、これから先生に聞こうと思っています。シャーレに来たのに、先生がどこにいるかわからなくて困る生徒が居るかもしれないですからね。まったく、先生ったら抜けてるんですから……」

 

 困ったような顔で説明するユウカだが、それを聞いてホシノは少し目を細めて、ニヤリと笑みを浮かべる。

 

 「……もしかして会計ちゃん、先生のことが好きなのかなー?」

 

 「なっ! ななな、何言ってるんですか急に! べ、別に先生のことなんてなんとも思っていませんから……」

 

 (うへぇ〜、会計ちゃんお顔真っ赤だ〜。この素直じゃない感じ、セリカちゃんとは違うけど、ツンデレってヤツなのかな〜?)

 

 「会計ちゃん。ここで会ったのも何かの縁だし、先生の居場所がわかったら、いっしょに会いに行かない〜?」

 

 「え、私もいっしょに、ですか? ……良ければ理由を聞いてもいいですか?」

 

 「おじさんさ〜、ずっとアビドスにいたから、他の学校のことよく知らないんだよねぇ〜。だから、おじさん1人だと迷っちゃうかもしれないし、会計ちゃんみたいな優秀な若い子といっしょだったら助かるなぁ〜?」

 

 「若い子って、ホシノさんも生徒だし、私とそんなに変わらない年齢ですよね?」

 

 (まぁ、悪い人ではなさそうだけどね。それに、ホシノさんの道案内をすることで、私も自然に先生に会いに行ける。うん、我ながらかんぺき〜な計算ね)

 

 少しだけ思案した後、ユウカはホシノの方へ向き直り答える。

 

 「わかりました。そういうことなら、私もご一緒します。まずは先生に連絡をしますね」

 

 そう言うとユウカはモモトークを起動し、先生にメッセージを送信する。すると、すぐに連絡が返ってきた。

 

 「あ、先生から返事が来ました。えっと『出張先書いてなかった? ごめんね。私は留学生の付き添いでゲヘナ学園にいるから、書き足しておいてくれる?』ですって」

 

 「うへぇ〜、ゲヘナ学園かぁ〜。ヒナちゃんにもまた会いたかったし、ちょうど良かったかも〜」

 

 (喜んでるところもかわいい……この人、本当に先輩なのかしら?)

 

 ホシノの喜ぶ姿を見て、微笑ましい気持ちになっていたが、ユウカは心配していることがあった。

 

 「でも先生、よりにもよってゲヘナ学園で長期出張なんて大丈夫かしら……? 頻繁に爆発が起きるぐらい治安が最悪な場所だから少し心配ね。先生は銃弾1発で瀕死になってしまうのに、留学生について行って、それもずっと一緒だなんて、その生徒さんが大事にされてて羨まし……じゃなくて! 先生は無事でいられるのかしら……?」

 

 先生の書置きに『先生はゲヘナ学園にいます』と書き加えながら、チラリとホシノを見ると、さっきまでの緩い雰囲気から一変し、まるで別人のような真剣な顔つきになっていた。

 

 「……会計ちゃん? ゲヘナ学園って、あんなに強いヒナちゃんが風紀委員会で頑張ってるのに、そんなに危ない場所なの?」

 

 「ゲヘナ学園と言えば『自由と混沌』を校風に掲げていて、血の気の多い生徒がとても多いです。それに温泉開発部や美食研究会ってテロリストがいるぐらい治安は悪くて、あちらこちらで爆発が起きたりしているそうですよ。その影響もあって風紀委員長は常に忙殺されているって聞いたことがありますけど……あの、ホシノさん? さっきと雰囲気がかなり変わっていませんか?」

 

 「そっか。……わかった。私は今からゲヘナ学園に向かうね。色々教えてくれてありがとう会計ちゃん」

 

 「い、今からですか!? ちょ、ちょっとホシノさん!? 今何時だと思っているんですか!? 電車で行ったって、ゲヘナに着く頃には深夜ですよ! 先生にも迷惑が掛かります!」

 

 突然のことに動揺しながらも、ユウカがホシノを止めるが、ホシノの意思は固く、スマホを取り出し電話をする。

 

 「あ、アヤネちゃん? 私、今日はアビドスに帰らないから、明日は委員会に遅れると思う。今から先生の所に行ってくるから、みんなにも伝えておいてくれないかな? 大丈夫、今度は無茶はしないから安心して? それじゃあね」

 

 一方的に話した後、ホシノはすぐに電話を切り、執務室の出入口へと向かった。

 

 ユウカは慌ててホシノに問いかける。

 

 「ちょっと待って! 今から行って、帰りはどうするのよ!? もし行きの電車はあったとしても、帰りの電車の時間がなくなったら、今日中に帰れないじゃない!」

 

 敬語を忘れるくらいに焦ったユウカが必死に引き止めるも、一度決めたホシノは止まらない。

 

 「着いてからどうにでもなるよ。先生の安全確保の方を優先したい。もしどこにも泊まれる場所がないなら、先生の部屋に泊まればいいし。それじゃ、私はもう行くね」

 

 シャーレの執務室から出たホシノの言葉に、顔を赤くして驚くユウカ。

 

 「そ、それって先生といっしょに寝るってことですか!? そ、そんな不健全なこと認められません! わ、私も行きますから! 変なことはさせませんからね!」

 

 そう言うと、ユウカもシャーレを飛び出し、2人でゲヘナ学園行きの電車に乗り込むのだった。

 

 

 

 

 一方、トリニティ総合学園内では、ゲヘナ側の交換留学生である羽沼マコトの元に、京極サツキ、元宮チアキが集合し、作戦会議の最中であった。

 

 「キキキッ、トリニティ内部に入り込むことに成功した。見張りについても想定範囲内だ。あとは情報部員経由で情報を収集するだけ……交換留学と言うのは実に便利だな!」

 

 不敵な笑みを浮かべながら、マコトはさらに言葉を続ける。

 

 「それにトリニティ側の留学生、聖園ミカが我ら万魔殿の傘下となった今、トリニティ側のスパイ行為を気にする必要もない。念の為、イロハを監視に付けているし憂いは一切ない。つまりこちらが一方的に情報を手に出来るわけだ! こんな簡単なら、もっと早く仕掛けるべきだったなぁ! キキキッ!」

 

 マコトの策略通りに事が動き、サツキも笑みを浮かべている。

 

 「ふふっ、マコトちゃん楽しそうね。トリニティの見張りたちは私たちに気を取られているから、交換留学が始まる前にあらかじめ配置しておいた情報部員にはきっと気がつかないわ」

 

 「あぁ、まさかこのマコト様が囮になるとは、トリニティの連中、夢にも思っていないだろうからな!」

 

 そこまで聞いて、チアキが提案がありますと手を挙げてアピールする。

 

 「はいっ! マコト先輩! 集めた情報の中に特ダネがあったらトリニティでも週刊万魔殿を発刊してみるって言うのはどうですかー? 記事を読んで上層部の真実を知り、混乱に陥った生徒たちがページを進めると、そこにはイブキちゃんの特集がっ! イブキちゃんのかわいさで、癒しを求めるトリニティの生徒を骨抜きにすること間違いなしです!」

 

 「なるほど、それもいいなっ! よし! サツキ、チアキ、明日から忙しくなるぞっ! キキキッ!」

 

 マコトが満足そうに笑っていると、チアキはふと思い出したように話し始める。

 

 「あ、そうだ。マコト先輩。トリニティには『魔女』がいるらしいですよ。さっきそんな話をしている生徒がいました」

 

 「『魔女』? なんだそれは? 通り名が付くぐらい強力な生徒ということか? トリニティで強者と言えば、剣先ツルギ……いや、ヤツはそのような二つ名ではない。だが、正体を知らずにいて、我々の障害になっても困るからな。……よし、サツキ! 情報部員に『魔女』の詳細を調査するよう指示を出せ!」

 

 意気揚々と声を上げるマコトだったが、この時はまだ、それがきっかけで起きる騒動を誰も知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 翌朝、スマホに設定していた目覚まし用のアラームが鳴り響き、ミカは目を覚ますが、まだ少し寝ぼけている様子。

 

 「うーん、もう朝ぁ? 奉仕活動の準備しなきゃ……」

 

 眠たい目を擦りながら、顔を洗いに行こうとしたところで気づく。

 

 「あ、そっか、私昨日からゲヘナにいるんだった」

 

 用意されたゲヘナ学園の制服を見つめながら、ふと考える。

 

 「……今先生のところに行けば、時間までお話出来るかな?」

 

 そう考えたら居ても立っても居られず、しっかりと身支度を済ませ、先生のところへ向かうことにした。

 

 「先生、もう起きてるかな〜? 朝から先生に会えるかもって思うと、すっごくワクワクするな〜♪」

 

 期待に胸を膨らませながら、玄関のドアを開けると、先生の部屋の方がなんだか騒がしい。

 

 視線をそちらに向けると、玄関のドアの前にいる先生と、先生の腕を引くピンク髪の小柄な生徒、その生徒を止めようとする生徒がいた。

 

 「やっと見つけたよ先生! ヒナちゃんに場所を聞いて正解だった。早くゲヘナから出ようよ! 先生みたいなキヴォトスの外から来た人が、ゲヘナで住み込みだなんて、命が何個あっても足りないよ!」

 

 「ほ、ホシノ? ユウカもいるの? 珍しい組み合わせだね? それより、そんなに急にどうしたの? 私は大丈夫だからそんなに強く引っ張らないで! 確かにみんな少しだけやんちゃなだけど、話せばわかってくれる良い子なんだよ?」

 

 「やんちゃで済む話じゃないでしょ! それで先生に何かあったらどうするのさ! 先生にはゲヘナは危険過ぎるよ!」

 

 「ほ、ホシノさん! いきなりそんな話をしたって、先生だってお仕事で来てるんですから、困ってるじゃないですか! 心配なのは私も一緒ですけど、まずは一旦落ち着いて!」

 

 状況はよく飲み込めないミカだったが、ひとつだけ理解したことがある。

 

 (……ふーん? あのホシノって子、私の先生を連れ去ろうとしてるんだ? そんなこと、させるわけないじゃんね☆)

 

 ミカは瞬時に3人に近づき、ホシノの腕を軽く掴んだ。

 

 「誰だか知らないけどさー? 先生嫌がってるでしょー? それに、先生には私が付いているんだから、何の危険もないよ?」

 

 「つっ……!」

 

 軽く腕を掴まれただけ、それだけのはずなのだが、まるで破砕機に潰されるかのような、とてつもない力で腕を掴まれたホシノが、ミカの腕を振り払うように距離を取る。

 

 (何? 攻撃された? いや、ただ腕を掴んだだけ? 軽く触れられただけでこの痛み……こんな危ない子がいるゲヘナに、先生をおいておけない!)

 

 「どこの誰かは知らないけど、いきなりご挨拶だね。それなりに強いみたいだけど、怪我したくないなら、すぐにここから離れた方がいいよ。もうこれ以上失いたくないから、誰が来ても退けてみせる」

 

 鋭い目付きで睨みながらホシノが言うと、ミカはニコリと笑みを浮かべる。

 

 「あははっ☆ なになにー? そんなに力入れてなかったけど、もしかして痛かったー? ごめんねー?」

 

 笑顔で話すミカだったが、明らかに目が笑っていない。

 

 「でも、次こそ大ケガしちゃうかもしれないよ? だから、先生のことは諦めてくれるといいんだけどなー?」

 

 「ちょっとあなた! 急に出てきて何挑発してるのよ! ホシノさんも、そんなところで暴れたら先生が巻き込まれちゃうから危ないでしょ!」

 

 一触即発の空気の中、ユウカが慌てて制止しようとするも、2人の視線は互いを捉えている。

 

 「……その制服、君はゲヘナの子かな? あんまりおいたが過ぎるようだと、少しだけ本気出しちゃうよ? もう同じ過ちは繰り返したくないから……」

 

 少しでも動けばそのまま戦闘開始となるだろうその時。

 

 「ミカ! ホシノ! ダメだよっ!」

 

 声のした方を見ると、先生は今までにないくらい怒った様子だった。

 

 先生の表情に驚き、動きが止まる2人に対し、先生は腕を組みながら続けて話す。

 

 「2人とも、そのままどうする気だったの? まさかケンカしようとしてた? ダメだよ。2人がケンカしたら、ケガじゃ済まないんだからね。まして私なんかが原因で生徒同士がケンカするなんて絶対にダメ」

 

 や、やり過ぎちゃった……とミカはシュンとしながら頭を下げる。

 

 「ご、ごめんね先生? 先生が連れて行かれそうだったからつい……もうしないから、許してくれる……?」

 

 ホシノを見ると、さっきまでのピリピリとした雰囲気ではなく、いつもの緩い雰囲気に戻っていた。

 

 「うへ〜……ごめんね先生。おじさん、ちょっと色々思い出しちゃって、少し焦ってたかも……」

 

 謝る2人だったが、先生は首を横に振る。

 

 「謝る人が違うよ。ちゃんとお互いに謝ってね? ミカ、ホシノの腕が赤くなってるでしょ? めっ、だよ。 それにホシノ、ミカに暴力はしてないけど、ケンカしようとしてたのはダメだよ。あと、ユウカにも謝ろうね? ずっと止めてたのに、まったく聞いてなかったでしょ?」

 

 先生に促され、お互いの方を向くが、先ほどのやり取りもあり、双方気不味さを感じている。

 

 (う〜、謝りにくいよぉ……でも、痛くしちゃったし、謝らないとだよね……)

 

 躊躇していたミカだったが、意を決して話し始める。

 

 「あの……私、そんなに強く握るつもりじゃなかったんだ。ホシノちゃんって言ったよね? その……ごめんね? ……私はトリニティの聖園ミカ。今は留学中なんだ」

 

 (聖園ミカって……あのゲヘナ嫌いで有名な元ティーパーティーの1人じゃない!? なんで彼女がここに!? 下手したら学校間での大きな確執になりかねない……あぁ、なるほど。それで先生がストッパーとして付きっきりで行動しているってことね。……ちょっと羨ましい)

 

 ミカの自己紹介に、思案を巡らせるユウカであったが、ホシノは特に気にする様子も見せず、いつものように話し始める。

 

 「うへぇ〜、トリニティってことは、ヒフミちゃんと同じ学校なんだ〜。ミカちゃんはお嬢様なんだね〜? おじさんはアビドスの小鳥遊ホシノって言うんだー。おじさん、少し焦ってたみたいで、よく考えたら先生はもう何度もゲヘナ学園に来てるから、危ないことなんてなかったよね〜。ごめんねミカちゃん」

 

 ミカに謝ったあと、ホシノはユウカの方に身体を向け、申し訳なさそうに謝る。

 

 「それに会計ちゃん、いや、ユウカちゃん。おじさんに付き合わせちゃってごめんね? たまに周りが見えなくなる時があってさ〜」

 

 「やっと名前で呼んでくれましたね? まぁ、ホシノさんに付いてきた私にも落ち度が無いとは言えないですが、あのまま暴れられたら、学校感の大きな問題になるところでしたよ。……なので、今後ミレニアムで何か問題があった時に、ホシノさんが手助けをしてくれるって条件を飲んでくれるなら許してあげます」

 

 「うへぇ〜? そんなことでいいの? 良かった〜。ウチの学校、借金がすごくてさ、お金は渡せないから助かったよ〜」

 

 「ここに来るまでの間、近くで見させてもらいましたが、ホシノさんの戦闘能力は、間違いなくキヴォトスでも最高峰です。金銭での解決も魅力的ですが、それよりもコネクションの方が重要ですから」

 

 ユウカが話したあと、先生は改めて2人を見る。ホシノもユウカもボロボロで、ここまで到着するのに相当苦労したことが見てわかる。

 

 「それにしても、2人ともすごいボロボロだね。いったい何があったの?」

 

 「ゲヘナ学園行きの電車に乗ったら、アビドスを襲っていたヘルメット団の子たちと乗り合わせちゃってさ〜。あの時の恨み! とか言って襲ってきたから返り討ちにしたんだけど、車両に大きな爆弾があって、乗ってた電車ごと爆発しちゃったんだ〜」

 

 ホシノの話を聞いて、あぁ寝る前に聞いた爆発音って、その時の音だったのかな? とミカが考えていると、先生は少し悲しそうな顔をして、2人に近づく。

 

 「……心配してくれたのは嬉しいけど、私なんかより自分自身のことを大事にしてほしいな。もうこんな無理はしないでね? 2人に何かあったら悲しいからね」

 

 そう言うと、先生はホシノたちの頭を優しく撫ではじめた。

 

 「う、うへぇ〜? 急にどうしたのさ〜? 今汚れてるから、先生も汚れちゃうよ〜?」

 

 「せ、先生!? よ、汚れもそうですけど、汗もかいてますので、その……」

 

 (2人ともいいなぁ、私もしてほしいなぁ……)

 

 急に撫でられたため、2人が慌てていることに気づくと、先生はすぐに手を離す。

 

 「……あ、そうだよね。急に撫でられるのは嫌だよね。ごめんごめん。あ、そうだ。良かったら私の部屋でシャワーを浴びていいよ。……あ、着替えは用意してないから、男物で悪いけど、私の服でも良ければ使っていいからね?」

 

 「ありがとう先生〜! おじさん、もうクタクタだから助かったよ〜」

 

 ホシノは嬉しそうに礼を言うも、ユウカは少し恥ずかしそうにしていた。

 

 「せ、先生の部屋で、ですか!? 先生はその間どうされるんですか……?」

 

 「あ、私は席を外すから安心して? ……ねぇミカ? まだ通学するには早い時間だよね? ちょっとだけミカのお部屋にお邪魔させてもらってもいいかな?」

 

 「うぇ!? 私の部屋に? う、うん。いいよ……? それじゃあ先生、行こっか?」

 

 顔を赤くしたミカが、先生の横にくっつき、先生を部屋に招き入れようとしたとき、ホシノたちが苦言を言い始める。

 

 「うへぇ……先生? それは良くないんじゃないかな? 早朝に生徒の部屋から出てくる先生って、絵面が良くないっておじさんは思うんだけどなー?」ジトー

 

 「そうですよ先生! そもそもどっちの部屋で待つとしても、生徒と2人きりだなんて、い、いかがわしいです!」

 

 「……なるほど、人数の問題なのね? そしたら、こうしたらどうかな?」

 

 

 

〜数分後〜

 

 

 

 「……それでホシノたちがシャワーを浴びている間、監視役兼先生の話し相手になるため、私が呼び出されたというわけね?」

 

 先生はヒナを呼んで、ミカと3人で話しをしながらホシノたちを待つこと

にした。

 

 「急にごめんねヒナ。ミカの部屋で待ってるからって言ったんだけど、なぜかホシノたちが嫌がってしまってね。私みたいなおじさんの部屋で申し訳ないけど、私に付き合ってくれるかい?」

 

 「別に私は構わないわよ。それに朝から先生とお話しが出来るなんて、そうそうないことだから嬉しいもの」

 

 「それなら良かった。私なんかのお話で喜んでくれるのならいくらでもしてあげるよ」

 

 ホシノたちがシャワーを浴びている間、先生がヒナに連絡をして来てもらうことにした。ヒナと先生はすぐに仲良く話し始めたが、それを見せつけられたミカは頬を膨らませていた。

 

 「……ねぇ、2人だけの世界みたいな空気にするのやめてくれない? 私もいるの、忘れてないんだよね?」

 

 「もちろん、忘れるわけないから安心してね。ミカも私に付き合ってくれてありがとう」

 

 先生は笑みを浮かべながら、ミカの頭を優しく撫でながら感謝を伝えると、途端にミカが先ほどまで抱えていた苛立ちが消え、思わず顔が綻んでしまう。

 

 「えへへ……」

 

 翼を羽ばたかせながらミカが喜んでいると、珍しくムスッとした表情のヒナが先生に近づき、頭を差し出してくる。

 

 「えっと、ヒナ? これは?」

 

 「……ミカにだけするのはズルいわ。それに、私は今日、先生のお願いを聞いたのだから、その……私にもしてほしい……」

 

 「うん、わかった。満足するまで撫でてあげるね。……さっきホシノたちを撫でたら嫌がってたけど、ミカたちは嫌じゃないの?」

 

 「「……」」ジトー

 (先生、それ本気で言ってる?)

 (ホント、鈍感なんだから……)

 

 「……ねぇ、なんで2人とも黙ってこっちを見てるの?」

 

 内心呆れた表情をしながらも、先生に撫でられる2人だった。




 次回も少し投稿が遅れるかもしれません。。。
 4周年記念ガチャが近いので……

 Q.なんでミカinゲヘナSSにユウカがいるの?
 A.前書きに書いた話を作ろうとしたとき、シャーレに来てくれる子がいた方が話進められるかな~と考えたとき、ユウカが思い浮かんだからです。カズサも考えましたが、トリニティ生以外にしようかなと思ったので今回はユウカにしました。

 Q.じゃあホシノがいるのはなんで?
 A.私が好きだからです。好きな子って、出したくなりませんか? もちろんユウカも好きです。

  
 あ、皆さんはセイアちゃん、引けました? 私は200連して交換しました……
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