※間違えて同名のタイトルを投稿してしまいましたので、
そちらは消しております。
失礼しました。
現場に到着したミカは、思わず自分の目を疑った。
砂煙が立ち込め、そこら中穴だらけのグラウンド。
掘削機や爆弾を使いながら地面を掘る生徒たち。
「ハーッハッハッ!」と高笑いをしながら指示を出す生徒。
彼女たちの作った穴に落ちてしまった銀髪のツインテールの生徒。
その生徒を救い出そうと風紀委員と書かれた腕章をつけた生徒たちが必死に引っ張り上げようとしている。
「……やっぱり、ゲヘナって治安悪過ぎじゃないかな? イロハちゃんもイブキちゃんも、トリニティに転校しない? 今ならナギちゃんのロールケーキも毎食付いてくるよ☆」
「いえ、お気持ちだけ受け取っておきます。トリニティだとサボ……休憩が取りにくそうですし。……毎食ロールケーキって、飽きるし太りますよね?」
「わー! イブキ、トリニティに遊びに行きたいな! イブキもロールケーキ食べたーい♪」
『何を呑気に話をしているんですかっ! 協力すると言ったのはあなたたちなんですよ! 早くイオリを穴から救出して、温泉開発部のテロ行為を止めてくださいっ!』
ギャオンとアコが叫びながら苦言を呈すると、ミカは「え〜?」と不満気な表情になる。
「アコちゃんって言ったよね? あのさ〜? 手伝うとは言ったけど、そんな風に言わなくてもいいんじゃない? せっかく助けてあげようってのにさー?」
そう言いながら、ふわりと身を翻しながら、温泉開発部部長、カスミの方を向いて指を差す。
「要はあの子を止めればいいんでしょ? それなら、私だけでも何とかなるよ。」
そう言いながら、後ろにいる先生に目を向ける。
「先生も見てくれてるからね☆」
当の本人である先生は、スマホのカメラをミカに向け、「え? 私?」みたいな顔をしている。
「……先生、撮るのやめてね?」
「で、でも、ナギサたちに活動報告をしないといけないから……」
ゲヘナに着いてから、度々写真を撮っていたのはそれが理由だったのかと少し納得したミカは、渋々ながら返答する。
「……じゃあ、1枚だけね?」
照れているのか、少しだけ頬を赤くして、戦闘態勢に入る。
「それじゃ、いっくよー!」
掛け声とともに、ミカは駆け出す。
『あっ! ちょっとミカさん!? もうっ! 今から戦闘データを送りますから、イロハさんも手伝ってください!』
「なんで私まで……はいはいわかりましたよー。」
「イブキも悪い子たちをやっつけるお手伝いする!」
イロハたちはミカの後を追うように戦闘に向かい、アコが端末を操作しながら、ミカたちのサポートをしつつ、先生に話しかける。
『先生! そこにいるなら指揮ぐらいしてくださいっ! こっちも手一杯なんですからっ! それにミカさんを1人で行かせるなんて無茶ですよっ!』
しかし、先生はミカにカメラを向けながら冷静に答える。
「大丈夫だよアコ。ミカはね、誰かを守ったり、助けたいって頑張ってる時、負けたところを見たことないから。」
先生は、ふっと微笑を浮かべながら続ける。
「むしろ、カスミの心配をしたほうがいいかもね。」
温泉開発部員を蹴散らしながら、カスミの元へと迫るミカ。
イロハたちも応戦しているため、温泉開発部員たちはカスミの応援に行けず、ミカとカスミの一騎打ちとなった。
ミカは、笑顔で告げる。
「あなたが部長さんだよね? もう逃げられないよ。」
「おっ? ここらで見ない顔の可愛らしいお嬢さんだ! 少しは出来るようだが、邪魔をするというのであれば、どうなっても知らないぞ? ハッハッハ!」
カスミは手元のスイッチを押し、爆弾を起爆させながら、逃げ場を奪うようにして、そこに巨大なドリルを突っ込ませる。
「どうだ? これは避けられないだろう? ハーッハッハッハ!」
勝利を確信し、高笑いをするカスミの耳に、ガァン! という鈍い音が聞こえた。
「ん? 何の音だ?」
そう言いながら、音の聞こえた方を見ると、爆発やドリルの余韻で砂埃が起きている方向だった。
目を凝らして良く見ると、砂埃の中から、ミカが姿を現す。
「も〜急に爆発なんてひどくない? あのドリル、そんなに硬くなくて良かった〜☆」
「な、なんだとっ! い、いったいどうやって切り抜けたと言うんだっ!」
「えっ? ちょっと叩いただけだよ☆」
ミカは右手で小突くような仕草をする。
その瞬間、カスミは悟った。
目の前の可愛らしいお嬢さんは、ヒナ委員長レベルの化け物だと。
「……」
「あ、あれ? どうしたの?」
急に黙ってしまったカスミを見て、ミカは少し慌てた。
(もしかして、何かまだ秘策があるのかな?)
身構えながら、カスミの動きに注視していると、カスミが震え始めた。
「え? ほ、本当にどうしたの?」
ゆっくりと近づき、カスミの肩にそっと手を置く。
瞬間、カスミは声を発した。
「ひ、ひ、ひぇぇぇえええ!!!」
プルプルと震えながら、その場に座り込んでしまうカスミ。
「私、泣かせちゃった? どうしよう……でも、悪い子だし、とりあえず、捕まえておいた方がいいかな?」
困惑しながらも、ミカはカスミの背後に回り、ぬいぐるみを抱くように、両腕でカスミを抱き上げる。
「ひぃっ!?」
短く叫ぶと、小刻みに震えるだけの生き物になってしまった。
その光景を見ていた温泉開発部員が叫ぶ!
「カスミ部長が捕まった!」
「なんか人形みたいに抱きかかえられてる! もうダメだ! 逃げよう!」
そう言いながら、蜘蛛の子を散らしたように逃げ出す温泉開発部員たちを尻目に、ミカはカスミを抱えたまま、先生たちの元に戻ることにした。
「この子、ずっと震えるけど、大丈夫かな?」
腕の中に収まるカスミの反応を心配しながら、先生のところへ向かう。
先生はスマホでミカたちの写真を撮ったあと、ミカを笑顔で出迎える。
「お疲れ様、ミカ。お手柄だね。」
先生がスマホの画面を見せると、笑顔でカスミを抱きかかえるミカの姿があった。
「ただいま先生。……それ、ナギちゃんとセイアちゃんに見せるんでしょ? 変な映り方してない? ちょっとよく見せて?」
ミカがよく見ようと近寄ると、先生はバツが悪そうに答える。
「ごめん。今日撮ってた分も纏めて、もう送信しちゃった……」
「えー!? 送っちゃったの!? ……ちょっと待って? 今日撮った分? 私、消してって言ったよね!? 何の写真送ったの!?」
狼狽えるミカの元に、イロハたちが集まってくる。
「ミカさん、お疲れ様でした。……強いと聞いていましたが、ドリルを殴り飛ばすなんて想像もしてなかったですよ。凄まじいフィジカルですね。」
「ミカお姉ちゃん、すごーい!」
「イブキちゃんたちもお疲れ様っ☆ ……イロハちゃんのは褒めてるんだよね?」
2人がミカに声を掛けたあと、アコは通信越しにミカを見て、驚愕する。
『あの温泉開発部の部長がこうも大人しくなるなんて……ミカさん、先ほどは失礼いたしました。……ところで、提案なのですが万魔殿ではなく、風紀委員として活動するというのはいかがでしょうか?』
「アコ先輩、ダメだよー! ミカお姉ちゃんは万魔殿のメンバーなんだから! ねー?」
そう言いながら、イブキはミカにしがみつき、ミカに同意を求める。
まさかゲヘナの生徒に謝罪とスカウトを一気に受けるとは思っておらず、少し驚くが、ミカの気持ちは既に決まっていた。
「ごめんね。もう議長さんに頼まれてるから。でも、手伝いくらいなら、たまにしてあげてもいいよ☆」
『くっ……! あのタヌキ……! 私よりも早くミカさんと接触していたなんて……! ですが、想像と違い、穏やかな方で幸いでした。ミカさん、本日はご助力ありがとうございました。』
アコちゃんはちょっとヒステリックなところがあるけど、思ったよりも悪い子じゃなさそうじゃんね? と考えながら、ふと思い出したことをアコに聞く。
「あの穴に嵌った子、助けてあげたほうがいいよね?」
『そうして貰えるとありがたいのですが……よろしいのですか?』
遠慮がちに尋ねるアコに、ミカは「別にいいよー」と答え、風紀委員の生徒たちに、すっかり静かになったカスミを引き渡した。
カスミから離れる前に、ミカは耳元でそっと告げる。
「おいたしてるところを見かけたら、また遊んであげるね?」
笑顔のまま言うと、カスミは小さく呻いたあと、プルプルと震えることしか出来なかった。
ミカのゲヘナ留学中、ゲヘナ校内における温泉開発部のテロ行為が著しく減少したという話はまた別のお話。
次回は今回の続きで、イオリとのお話になると思います。
しばらく3000文字くらいの更新が続くと思います。
ご容赦ください。
個人的な内容で恐縮ですが、昨日一瞬だけ新作ランキングに載りニヤニヤしております。
皆さま、ありがとうございます。