わからない。気が付いたらここにいたのよ。
だったらあなたは、どこからきたの?
宇宙よ。
え、宇宙?
そう、宇宙。わたしね、宇宙人なの──。
1
懐かしい夢を見たような気がして、女の子は目を覚ましました。女の子はあたりを見渡して、ここが、自分の暮らす町であること……そして、どうしてか人が一人もいないことに気付きました。自分が倒れていたすぐ隣に水溜りがあるのを見つけて、女の子は顔を顰めました。
おかしいな、と、女の子は首を傾げます。この町で暮らしていたはずなのに、その名前が思い出せません。それだけではありません。自分の名前も、お母さんや、お父さんの名前も。大切なことを全部、忘れてしまっていたのです。
記憶喪失? 女の子は首を横に振りました。だって、この町で暮らしていたことは覚えていたんです。それに、他にももっと、いろんなことを、覚えて──。
「……エリー?」
エリー。女の子はどうしてか、それが自分の名前だと思いました。女の子──改め、エリーがすぐ隣を見下ろすと、そこにあった水溜りの中には、とても可愛らしい女の子がいました。
いいえ、違います。その可愛らしい女の子こそが、エリーだったのです。エリーはびっくりしましたが、すぐににっこりと笑いました。
わたしって、こんなに可愛かったっけ?
全く覚えていませんが、ここに写っているということは、きっと、エリーは目覚める前からずっと可愛かったのでしょう。
それからエリーは、本当に誰もいないのか、いろんなところを歩いてみることにしました。そのうちに、段々と記憶が蘇ってきます。
わたし、もう、中学生になったんだっけ。なのに宇宙人を信じてるんだって、変なのって、言われたなあ。でも、ここにはわたし以外誰もいないみたい。だったら、まだ誰も見つけてない宇宙人がいても、おかしくないよね。
宇宙人って、どんな形なんだろう。想像するだけで、エリーは笑顔を隠しきれません。虫のような形なんでしょうか。それとも、みんなが想像するように、たこみたいな形なんでしょうか。もしかしたら、本当は、すごく大きいのかも。
「出会えたら、いいなー。」
でも、簡単に出会えるわけがないと、エリーはわかっていました。それに、もし出会えたとしても、誰に言いふらすつもりもありません。だから別に、急いで見つける必要はないのです。
「ねえ、あなた。」
あれ? エリーはまた、首を傾げます。どこからか呼ばれたような気がしたのに、どこを見ても、エリーを呼んだ人はいません。エリーよりも少し年下の、女の子の声だったように聞こえました。
「無視しないでよ。」
今度ははっきりと聞こえました。聞こえてきた場所は──すぐ後ろです。
「まったく、人がこんなに呼んでるのに、無視するなんて。あなた、サイテーよ。」
エリーは振り返って、思わず「あ!」と叫びました。そこにいたのは、金色の髪の毛がきれいな女の子──そう、エリーだったのです。
エリーの声を聞いて、女の子はもっと、嫌そうな顔をしました。
「なによ、わたしがいたら悪い?」
「別に、そういうわけじゃ……。」
でも、やっぱり声は、少し違います。女の子はひとしきり文句を言うと、満足そうにため息を吐きました。
「あなた、わたしにそっくりなのね。」
エリーがそう言うと、女の子は、へへん、と自慢げに笑いました。その意味はわかりませんでしたが、エリーは、この子なら仲良くできる……と、思いました。
「ねぇ、わたし、起きたらこんなところにいて……何をどうすればいいのかもわからないから、一緒に行動しない?」
「仕方ないから、一緒に行動してあげる! わたしに感謝することね!」
言葉は強かったけれど、女の子が喜んでいるのは、エリーからもわかりました。なんたって、さっきまでより、もっともっと、いい笑顔をしていたんですから。
「わたしはエリー。あなたは?」
「そうね、わたしの名前は……。」
女の子はちょっとだけ悩んだ様子でしたが、すぐにエリーに向き直って、笑顔で言いました。
「──わたしの名前は、アヤ。よろしくね、エリー!」
七部作です