Emotion   作:小淵良樹

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すごい……まさか本当に、こんなにおっきい木を、倒すなんて……。

えへへ……流石にちょっと、疲れちゃったけど。どう?これで私が宇宙人だって、信じてくれるでしょ?

うん、私、信じるよ。まさかこんなところで、宇宙人に出会えるなんて、思ってなかったけど。

あなた、もしかしてずっと、宇宙人を探してたの……?




「うーん……今夜は、どこに泊まりましょうねえ。」

 

 アヤは呟きます。そう言えば、警察のおじさんたちも言っていましたが、もう子供が出歩いていいような時間ではないのです。できるだけ馴染みのあるところがいいな、と、エリーは思いました。

 

「あそこ……学校、とかは?」

 

 エリーは恐る恐る訊きます。そんな様子に顔をかしげながら、それでも、アヤは笑いました。

 

「学校、いいじゃない! 今の時間なら誰もいやしないわ!」

 

 何が怖いんでしょう。何を考えているんでしょう。自分のこと、アヤのこと、エリーは何もわからないような気がして、身震いしました。それでも、学校に行けば何かがあるような、そんな気がしました。

 

 パン屋さんも、お魚屋さんも、エリーは知っています。ゆっくりと考えて、漸く思い出したのです。

 

 それだけではありません。自分が昔、ある宇宙人と出会ったことも、思い出しました。

 

「ねえ、アヤ。」

 

「どうしたの、エリー?」

 

 学校の門を開けているアヤに話しかけます。今は深夜。どうして門に鍵をかけていないのでしょう? やっぱりこの世界はどこかおかしいのだと、エリーは思いました。

 

「アヤはさ……宇宙人って、信じる?」

 

 アヤは首を傾げました。そういえば、アヤは出会ってから、いつも首を傾げているような気がします。しかもその姿を、エリーは見た記憶がありました。

 

「今更何を言ってるのよ──」

 

 エリーはずっと一人ぼっちでした。ずっと友達を探していました。

 

「──宇宙人なんて、ずっと目の前にいるじゃない。」

 

 エリーはずっと宇宙人がいると信じ続けていました。そのせいで友達がいなかったのか、それとも友達がいなかったから宇宙人の友達を求めていたのか、それはエリー自身にもわかりません。

 

「……わたし、あなたに会ったことがある。そしてあなたと、約束をしたの。」

 

 二人はいつの間にか、学校のグラウンドにいました。エリーは話すのに夢中で、門の中に入ったことにも、気付いていませんでした。

 

「おともだちになろうって……。ねえ、アヤ。あなた、あの時の宇宙人さんなんでしょ?」

 

 アヤは、今度は首を傾げませんでした。

 

「思い出したのね。」

 

 その代わり、エリーのから一歩だけ離れました。

 

「ここはわたしの作った夢の世界。きっと、わたしたちにとっての『おともだち』と、あなたたちにとってのおともだちは違うのね。」

 

 わたしたちにとって、『おともだち』は、まず自分の世界に閉じ込めるものなの。そしてずっと、死ぬまで、一緒に生きるの。アヤは淡々と説明します。きっと彼女は、もう、エリーと『おともだち』になることを諦めているのでしょう。

 

 アヤは、今までもいろんな人を友達にしようとしたんだ。それでも、みんなに断られたんだ。エリーはアヤの気持ちがわかってしまい、とても悲しくなりました。

 

「ごめんなさい、エリー。わたし、あなたに酷いことをした。おともだち、失格ね……。」

 

「……それは、違うよ。」

 

 思わず、エリーは言い返しました。アヤは驚いた顔をして、そのまま固まります。

 

「アヤがわたしを閉じ込めたのは、多分、本当なんだと思う。でも、アヤはわたしの友達になってくれた! 私はそれだけでも、わたし、アヤに感謝してる!」

 

 それは心の底からの想いでした。

 

「アヤはわたしの……はじめての友達なの! 今までは確かに友達になれなかったかもしれないけれど、私だけは、ずっとずっと、大好きでいるから……。」

 

 だから、友達失格だなんて、言わないで。その言葉に、アヤは思わず、涙を流しました。

 

「こんなわたしでも……いいの? ずっとずっと、一緒に生きてくれるの?」

 

「当たり前じゃん。だってわたしたち、友達だって、約束したでしょ。」

 

 勿論、約束なんてなくても、友達なのは変わらないけどね。エリーは恥ずかしそうに笑いました。

 

「本当に……ありがとう。」

 

 エリーはずっと一人でした。アヤもずっと一人でした。一人ぼっちだった二人は、今、本当に『友達』になったのです。

 

「ねえ……わたし、あなたのこと、大好きよ。」

 

 アヤはエリーを優しく抱きしめました。エリーはぎゅっと目をつぶります。

 

 

 

 そして次の瞬間、エリーの目に映ったのは、胴体に大きな穴が開いたアヤの体でした。

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