貞操逆転世界で危機感0でも案外、平気っぽい   作:陽波ゆうい

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第11話 たまには王子様系幼馴染と離れ離れだけど平気……ぽくない?

「おお、氷川が同伴者! なるほどな! いいぞ!」

 

 俺は氷川の案に納得して、即座に答えた。

 

 しかし、俺の答えを聞いた氷川は……なぜか険しい表情を浮かべた。

 

「……そんなにあっさり決められるとは思っていなかったわ」

「ん? 俺は氷川の案が良いと思ったから、即決しただけだぞ?」

 

 そう言うも、氷川はじとっとした目で俺を見つめてくる。

 

「……こういうのって、もっと迷うものじゃないの?」

「迷う必要ないだろ。同伴者の案は納得だし、何より氷川が考えたんだから間違いないって」

 

 俺はそう言い切ったが、氷川の表情はどこか腑に落ちない様子だった。

 

 そもそも、同伴者というのはずっと固定ではない。

 

 男子と女子の双方が了承すれば、簡単に変えることができる。

 

 理由として多いのは、同伴者の生徒が体調を崩したり、個人の用事があった場合だ。

 

 同伴者という制度自体、女性1人を必ず同伴させるという、限定的ではないので変えやすくはなっている。

 

 要は、男を1人にしなければ良いってことだな。

 

 ただ、今回の目的は……。

 

「彼方と同伴者を変わって、自由な時間を作ってあげるってことだろ?」

 

 彼方を『同伴者』という役割で縛っている状態ならば、その役割がなくなれば彼方は気楽になれるはずだ。

 

「ま、まあ更科君の言う通りの狙いだけど……」

「だろ? 俺ちゃんと理解できてるって!」

「……」   

 

 そう言うも……氷川は今度は黙り始めた。

 

 あれ? 俺が馬鹿だから理解できるか心配とかじゃなかったのか?

 

 すると、氷川は少し視線を逸らしながら口を開いた。

 

「自分で言うものなんだけど……更科君。私が少しは……その、私情を挟んでいるとか考えないのかしら?」

「私情? 氷川が純粋に俺の同伴者になりたいってこと? それとも、俺と一緒に帰りたいの?」

「っ……」

 

 氷川は言葉を詰まらせた。

 それに、頬が少し赤くなった。

 

 ん? ということは……どっちかは当たっているのか?

 

「私情ねぇ……。まあそのぐらいの私情なら挟んでもいいと思うけど」

「そのぐらいって……貴方ねぇ。ほんと、危機感がないわね。それに、私としては結構勇気出して言ったつもりなのに……」

 

 氷川の最後らへんの言葉は聞き取れなかったが、ちょっと不満げだ。

 

 さっきから氷川の感情がよく分からない。

 女心は難しいってやつか?

 

 まあでも俺の意見は変わらないし……。

 

「それに、俺は氷川と一緒に帰ってみたいからな」

「っ!?」

 

 氷川とは隣の席でよく話すが、一緒に帰ったことは思い返せばなかった。 

 

「そ、そう……。なら、私を同伴者にしてくれるのね」

「おう、もちろん。よろしくな、氷川」

「ええ……」

 

 俺がそう言って笑みを見せれば、氷川は少し照れたような表情でこちらから目線をそらした。

 

「あとは……佐宮さん次第ね」

 

 氷川が少し難しそうな顔で呟く。

 

「まあ、そこは大丈夫だろ」

 

 対して俺は気軽にそう言う。

 

 彼方なら『いいよ』って爽やかな笑顔で了承してくれるはずだ。

 それに、彼方が俺の頼み事を断ったことは思い返せば1度もなかった気がするし。

 

 今回の案も彼方は断ることなく……むしろ、笑顔で肯定してくれると思う!

 

「——遅くなったよ、一季」

 

 なんて思っていると、不意に彼方の声が背後から聞こえてきた。

 

「おっ、彼方〜!」

 

 俺がひらひらと手を振れば、彼方はにっこりと笑いながらこちらに歩いてきた。

 

「一季と……それに今日は氷川さんも一緒だなんて珍しいね」

「ええ、そうね」

 

 彼方の言葉に氷川は頷くと、ちらっと俺に視線を送ってきた。

 

 今が言うタイミングってことかな。

 

「なあ、彼方。ちょっと提案があるんだけどいいか?」

「ん? 何かな?」

 

 彼方は爽やかな笑みを浮かべる。

 

 いつも通りの彼方の姿を前に、俺は気楽に話し始めた。

 

「今日の放課後の同伴者は氷川に頼もうと思うんだ。だから彼方は今日はゆっくりしてくれ!」

「……そっか。ありがとうね」

 

 俺の話を最後まで聞き終えた彼方はにっこりと笑みを浮かべた。

 

 やっぱり彼方もたまには俺の同伴者ではなく、他の人と帰りたかったようだ。

 

 俺は俺で氷川と帰るとしよう。

 

「じゃあ帰ろうか、一季」

「おう帰ろう彼方——って、え?」

 

 彼方にそう言われた俺は、鞄を肩にかけて、立ち上がった時にハッと気づく。

 

 いつもの流れだったのでついつい動いてしまったが……。

 

「……彼方? 俺、放課後の同伴者は氷川に頼むから……」

「ああ、うん。ちゃんと聞こえていたよ。氷川さんが今日はボクの代わりに一季の同伴者を引き受けてくれたのだろう? だからボクは同伴者ではない」

「だから、彼方は今日は自由だろ?」

「護衛をちゃんとしなきゃっていう使命感がなくなるのは気楽になるね。そんな日に一季と帰るのはまた楽しくなりそうだ」

「……」

 

 どうやら彼方は同伴者じゃなくても、俺と帰る感じ?

 

 俺が大きく首を傾げると……彼方がくすりと笑った。

 

「一季と一緒に帰って良いのは同伴者だけって決まりはないよね?」

「そりゃ、まあそうだが……」

「もっとストレートに言った方がいいかな? ボクは今日も一季と一緒に帰りたいんだ」

 

 綺麗な瞳を真っ直ぐに向けられ、俺は返す言葉がなくなってしまった。

 

「——でも、今日ぐらいは更科君の隣は私に譲ってほしいわね」

 

 横から、氷川のそんな声が聞こえてきた。

 

「へぇ……氷川さんがそんなことを言うなんて珍しいね」

「ええ、今日の私はそんな気分なの」

「そっかぁ。じゃあ尚更ボクは一緒に帰りたいかな」

 

 にこっと爽やかに微笑む彼方とクールな表情の氷川。

 

 2人は互いに見つめ合っているが……仲睦まじいという雰囲気ではない。

 

 と、2人の視線が俺の方へ向いた。

 

「さあ、一季。今日もボクと一緒に帰ろう」

「更科君? 今日は私と帰るって言ったわよね?」

「これ、俺に選択権があるのか?」

 

 俺がそう聞けば彼方も氷川も大きく頷き、答えを求めるように俺を見つめる。

 

 ええ……なんか俺の取り合いみたいになってる? なんで??

 

 でも俺に選択権があるのなら……。

 

「俺は彼方と氷川と帰りたい。両方選んだらダメか……?」

 

 

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