ユグドラシル攻略情報局より
これまで確認されたことのない新たな種族。
我らが憎き《暗月》の
考察ギルドのメンバー《名誉教授ミ☆ぬーき♡》が
さて、
王ということはロード系よりも上なのだろうか。神出鬼没の辻斬りクソムーブしてないで早く詳細を教えろ。
かねてよりアインズ・ウール・ゴウンに出入りしているという噂から、異種族であるという憶測しか立っていない。
本人の戦闘スタイルから、近接や魔法にも適正があるようだ。
公式も本当に厄介な種族を追加したものである。
当サイトでは追加の情報をいつでも歓迎しております。
「おいで」
両腕を開くと、トテトテと小さな女の子がすっぽりと腕の中に入ってきた。
こんな子供を相手に下半身を出してたクズは到着の衝撃で木っ端微塵になっちゃったし……。
うん、そんな安らかに死なせてやらん。あとで蘇生させよう。
それと、ウレイリカ、か。
どうやらもう一人いるらしい。急がないとな。
「来い【時計塔のマリア】」
影が揺らめいた。
「お待ちしておりました」
パサリと黒のチェスターコートがはためいた。
特徴的なハットと、ふわり揺れる白い羽飾り。
月の光を吸い取ったような淡い髪が夜の中で妖しく輝やいている。
血の気の引いた艶やかな唇は無表情に横一線に引かれ、スッと通った鼻筋がより美麗さを際立たせる。
……やっぱり影の違和感はこれか。
さては、事あるごとに暗月の中から出ようと暴れてたな?
「わぁ……キレイ……女神様?」
ぽーっとマリアに見惚れる少女に、マリアは微笑みを返す。
クールっていう設定にしてた筈なんだけど……。なにやらご機嫌って感じだ。てっきりお小言のひとつやふたつは貰うと思ってたんだがな。
「恐らく幼子がもう一人いる、救え。犯人は捕らえて【実験塔】に落とせ。だが死なせるな」
「ハッ」
返事と共にその姿が掻き消えた。
相変わらずの速さだ。
しかし、やはり彼女らNPCはプレイヤーに忠実らしい。
これが、プレイヤーに忠実なのか、製作者に忠実なのかで意味合いは変わってくるが……ま、今考えても仕方のないことか。
現状で言う事を聞いてくれるのなら、それに文句はない。
「……あれ?」
風のように消えたマリアに、目を白黒させている少女。
これ以上怖がらせる訳にもいかない。
小さな体を抱き上げ、ゆらゆらと優しく揺らしながら背中を撫でる。
「名前を聞いてもいいかな?」
「……クーデリカ」
こちらの様子を伺うような仕草はあるが、警戒心らしいものが全く見えない。
まったく、こんな産まれたての雛みたいな生態じゃ、そりゃ蛇にでも食い殺されかねない訳だ。
「大丈夫、ウレイリカは無事だよ」
「ほんとう?」
「本当だよ。暗月は、信じる者を守る」
「信じる者を……?」
「あぁ。そのウレイリカも、暗月に願ったみたいだ。暗月に願ったら絶対に助ける。だから大丈夫」
「……ほんとう?」
「本当だよ」
ギィと背後で扉が開かれる。
「だろ、マリア」
すでにそこには、クーデリカと瓜二つのウレイリカと
うん、ウレイリカに怪我もないようだ。
怖い想いをしたであろう涙の跡は残ってるが、その辺のケアも大丈夫そうだ。
マリアの首を絞めんばかりにガッシリしがみついている。
「ご命令の通り、こちらに」
「うん、よくやった」
「光栄です」
マリアがウレイリカを降ろすと同じ様に、腕の中の少女を降ろすと、二人は互いに磁石のように抱き合った。
「ウレイリカ!」
「クーデリカ!」
二人して泣き初めてしまった。
しかしそうか。名前はクーデリカとウレイリカか。よくこんな子供を引き離せるな。人の心ないんか?
ま、暫くは泣き止むまで待ってあげるべきかね。
「んじゃ、マリア。残党狩り……」
まだこの屋敷にいる残りの連中を始末しようと思ったんだが、ウレイリカが空いた手でマリアのコートの裾を、クーデリカが俺のベストの裾を掴んだ。
「……仕方ないか」
離れるなってことらしい。
だが、まだ暢気に寝てる残党をそのままにしてここに乗り込まれてもうざいし、外に逃げられても腹立たしい。
「出番だ【梟】」
小声で影に囁けば、それだけで空気を察してくれたようだ。子供たちの前に姿を現すこともなく、気配だけが闇の中に現れた。
当然、マリアもそれを横目に捉えている。
子供たちを怯えさせない為の配慮を感じ取ってくれる辺り、流石不器用ながらも息子想いの義父だ。
「全員捉え捕らえろ。殺すな。奴隷にされている者もまだいる筈だ。被害者は【祭祀場】。加害者は【実験塔】へ投げとけ」
大柄な筈なのに捉えきれない気配が、闇の中で肯首したと同時に掻き消える。
奴のジョブは『大忍び』。俺たち狩人とは違う、忍び寄る者のエキスパートだ。カルマ値も0の中立値だし上手くやってくれるだろう。
とか思ってる内にもう梟が戻ってきた、有能過ぎぃ!
うん、こっちもちゃんと言う事を聞いてくれてるっぽい。よかった。
梟は自分の仕事を終わらせると、声もなく影の中に帰っていく。
満足のいく出来に、こっそり親指を立てて労いを送った。
梟は「ハッ」と小さく得意げな返答を浮かべて、無言のまま満足そうに消えていった。
あいつたぶんその内裏切るかもだろうけど……。
あ、いや、裏切りのテキストって消したんだっけ?
……覚えない、けど。なんやかんや有能だからオッケー!
一方、こちらでは。
「わっ」
「わっ」
「安心しなさい。あなた達は私が守ります」
マリアがしゃがんて二人の肩に手を置いていた。
「うん、ありがとう女神様!」
「ありがとうマリア様!」
そんなマリアに抱きつく小さな双子。
金髪も相まって、天使の様だ。
真ん中のマリアもとんでもない美人だし、とてつもなく画になる。カメラがあれば激写しているところだ。
「女神様ってマリア様って言うの?」
「うんっ、女神様はマリア様って言うの!」
ドヤァ。
無表情なのに、なぜかそんな色を感じ取れる顔でマリアがこちらを見ている。
「……あー」
なるほど、泣き止ませたから褒めて欲しいのね。
まさか梟に対抗意識を持つとは思わなかった。結構可愛らしい一面もあるんだな。
梟にしたのと同じ様にグッと指を立ててやると、口元を隠すようにハットを下げて小さく俯いた。
クール美人がニヤついてる。コイツ、万能キャラの割に喜び方ヘタだなぁ。
「こっちはね、暗月様!私を助けてくれたの!暗月様もありがとう!」
「暗月様?暗月様!ありがとう暗月様!」
うお、こっち来た!
ギュッ。ギュッ。
「暗月様カッコよかった!」
「暗月様のカッコよかったの見たかった!」
「そうです、暗月様はカッコいいんです」
「カッコいい!」
「カッコいい!」
「……フッ」
お前は並ぶな。フッじゃない。
キラキラとした目でこちら見ている2人と得意げ顔が1人。
マリアってこんなキャラ設定だったか?まぁ、設定厨の妹が書いたテキストを全て暗記してる訳じゃないから細かいことはわからないが……。
いや、それとも、自律機能を得た影響だろうか。別に悪いことって訳じゃないから良いんだけど。
その調子じゃ他のNPCたちも心配になってきたな。重めのバックストーリー設定しちゃってる子たちも複数いるし、闇落ちとか暴走とかしないでくれよ……?
気まずかったマリアという一番の懸念もここで解決したんだし、早めに帰ってあげよう。
マリア自身もこの2人を気に入ってしまったようだけど、とにかく家に返してやらないと。
この子たちの出で立ちを見たところ貴族の令嬢って感じだし、誘拐かねぇ。
いくら皇帝が有能とは言え、新しくなったばかりって話だし。さすがに国全体を見渡して、その全てから黒い部分を取り除くってのは無茶な話か。
「それじゃ、お家に帰ろっか」
「うん!」
「うん!」
少しだけ、記憶をボヤけさせておこう。
この子たちの中に恐怖が根付かないように。
それになーんか……知り合いのワーカーに似てる気がする。
もし俺の暗月活動が見つかりでもしたら、厄介事になりそうだからな。
◆◇◆◇
双子を家にお送り返し、離れてしばらく様子を見守っていたんだが……。
「ダメだな、あれは」
ただのクズ親だった。
帰ってきた娘たちに笑顔ひとつ向けず自室に放り込むと、慌てふためいた様子でどこかへ連絡を取り始めた。
……奴隷として、売ったな。
むー。日本人として生きていた俺にとっては結構ショックだし、殺意の湧く話だ。
しかし俺にどうにか出来る話じゃない。
フルト家、ね。
現実逃避のしようもないくらい明確だ。
アルシェの家だよなぁこれ。
大変だな。あの子たちの為に必死に仕事をしてお金を貯めてるってことか。魔法学院もやめてワーカーとして、あくせくと。
「しかしまぁ……責任は感じちゃうよな」
あの両親が一度に大量のお金を消費した原因は、どうやら俺にあるらしい。
こちらへ来た初日に売った骨董品だ。
【絵画・飛べない鳥】
ランクとしては中々のレアだ。
が、特殊なアイテム場所のヒントを示してくれるだけで、一度その場にたどり着けばもう二度と使用する必要のないのゴミもゴミのヒントアイテムだ。
ま、結局一度も使うことのなかったヒントなんだが。
どちらにせよこの世界では唯一無二の品。
淡く神秘的な絵画を大枚はたいて買い取ったらしい。
馬鹿かよ、実の娘を売ってまで買うようなモノじゃないだろうが。
いや、元よりの娘以上の存在はないと思うけどな。
あの両親は買った物の物的価値というより、大金を扱ってる自分に酔っているようにしか見えない。
「醜いな」
結果論ではあるんだが、今回の件は俺のせいとも言えなくもない。
……腹立たしいが、俺が文句を言える立場ではなさそうだ。
「【孤影衆】」
一応、彼女たちの為に奴隷商人たちは潰しておくか。
ま、間接的にだが、絵画をお買い上げいただいたアフターサービスってことにしておこう。せっかくあの姉妹に平穏を取り戻したのに、台無しにはしたくない。
妹想いのアルシェにはシンパシーを感じるし。
「我ら【孤影衆】御身の前に」
宵闇の中でボウッと浮かびあがるような、不気味な紫の忍びたちが、背後に数十人と出現した。
先頭で
梟の教え、主は絶対、を設定に盛り込んだNPCたちだ。
設定に基づいて動くのなら、彼らを使っても大丈夫だろう。
「【槍足】お前たちで屋敷やその周辺から繋がりを辿れ。帝国内以外ともなにかしらラインがある筈だ、情報を集めろ」
その場にいる全員の手元に帰還の骨片を落とした。
効果はご存知、拠点としてマーキングしている場所へのデメリットなしのリスポーンだ。
あえてデメリットを挙げるなら消費アイテムということだけ。
ま、カンストするくらい持ってるし【螺旋剣の破片】もある。暫くは大丈夫だろう。
「デデンネ様。この様な貴重な品を、我等のような雑兵に与えてしまって宜しいのでしょうか」
【槍足】の動揺したような声色。【太刀足】からも【忌み手】からも動揺が見て取れる。
いや必要だろ。というかアサシンにとっての最強アイテムだ。渡すメリットしかない。
なにが雑兵だよ。
イベントストーリーでお前らに何十回殺されたと思ってんだ。
いや、あくまでお前らNPCの元ネタの話だけどさ。
「無論だ。それに、お前らが雑兵だなんて笑わせる。優秀な忍に優秀なアイテム。これで失敗する道理はないだろう?」
そう言うと、全員が息を揃えたように更に深く頭を下げた。
腹の底から響かせるような、静に決心したような声と共に【槍足】は俺を見あげた。
「王よ。我ら【孤影衆】全身全霊を持って、任務に当たらせていただきます」
「任せた」
「……ハッ」
よしよし、気合十分って感じだな。
「それと、彼女らに手を出そうとする輩がいたら始末しろ」
「御意」
「手加減はするな。身辺調査をして、クズ度合いで殺し方を選んでもいい。匙加減は任せよう」
「御随意のままに」
「それじゃ、行け」
手を叩けば、一瞬で散り散りに駆けてく孤影衆たち。
彼らに任せておけば解決は時間の問題だろう。
レベルは平均60。リーダー格は70が2人と75が1人。そうそう負けることはないだろうし、負けることになろうと逃げ足はお墨付きの一級品。任せて大丈夫だろう。
「はぁ……ゆっくり眠るつもりだったのに。すっかり夜も更けちまったなー」
暗月の空の下でボヤキながらため息をつく。
ま、でもこの世界で初めての暗月の使徒の誕生だ。同胞として、護るのが俺たちの役目だ。
とりあえず緊急があれば知らせてくれるだろうし、そろそろ俺もやるべきことをやらなきゃな。
「行くか。
暗月帳
隻狼イベントを完走した。
完走した感想だが、全くもって神イベだった。
梟やらお蝶やら気に入ったボスキャラが数多く、一度倒しておしまいというのは余りに勿体ない。
暗月のNPCとして、解像度を上げてキャラクリエイト出来ないか試してみようと思う。
幾度もトライしてゲットした本人たちのドロップアイテムをストレージからNPCに与えるのは手が痙攣してるんじゃないかってくらい震えたが、それもやむ無しだろう。
また数百回くらい周回すればいいだけだし!(ヤケクソ)
なにより忍者集団を引き連れるとかカッコいいから、これは外せない。
あ、梟のカルマは中立にしておこう。
こういう小狡い策謀キャラは善過ぎても悪過ぎても怖いからね。あと”子煩悩”っと。わはは!命を持って息子に主の大切さを教えるような不器用オヤジめ!これで狼と正面切っての仲良しだザマミロォ!!