マイナー好きの彼は無双を試みた   作:赤須

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第1話

 

 

 

「よーし、行こう! 慎ましくな」

 

 緋色に照らす色鮮やかな装甲。さらに動き回るその速さはまるで流星のようで、射出された四方八方からのビットやファンネル、ドラグーンやファングとはまた違った特殊オールレンジによるビームの嵐が標的に向かって放っていく。

 

 『機体名:TS―MA4Fエグザス』

 

 ガンダムSEED DESTINY作品・地球連合軍のモビルアーマーで、前作のSEEDに出てきたメビウス・ゼロの後継機にあたる。

 メビウス自体もエグザス同様、オールレンジを主とし、高い機動力で敵を翻弄したのちに連装ビーム砲と呼ばれるガンバレルで敵を撃沈させるというマイナーにしては恐ろしい機体だ。

 実際にインパルスガンダムを圧倒しただけの機体だけある。

 まあ、ザクにガンバレルが2基も焼失させられ、そこから登場しなくなったというのは如何なものか。

 

 対する敵の機体は漆黒に染められたガンダムレオパルド。背にはブーストらしきモノが装備されており、宇宙空間にでも適応できるよう改造したのだろう。右手に翳されたビームガトリングガンを連射し、左手のシールドで自身を守っている。

 だがしかし、敵を一掃・牽制に特化されたガトリングはエグザスにとって関係なかった。

 ブーストが取り付けてあるだけあって高い速度で移動するレオパルドなのだが、四方から流れてくるビームが、その機動力を殺し、スキを狙ってエグザスが搭載する連装リニアガンをレオパルドに向けて襲い掛かる。

 

「くぅ!? つ、つえぇ」

 

 レオパルドはシールドで真正面に囲ってガトリングを向ってくるエグザスに照準を合わせてビームを撒き散らす。

 

 エグザス搭載のガンバレルにはメビウス・ゼロのようにただ撃つだけの機能だけじゃなかった。フィールドエッジ<ホーニッドムーン>と呼ばれるビームカッターがガンバレルに追加され、応用性が増えたのだ。

 

「お褒めに預かり光栄だね。でも君のその黒い機体……出来栄えがいいし何やら機動性を高めた改造レオパルドみたいだけど……動かなければただのレオパルドと何ら変わらないよな」

「んな!?」

 

 男が操るレオパルドは必死でビームを回避しようと試みるが、もう遅い。

 

「突貫する!」

 

 ビームカッターがレオパルドのガトリングガンを手にしている右手を切り刻み、もう一方からブーストに主砲が着弾、最後にエグザスのリニアガンが目前で火を噴かせてガンダムレオパルドが燃え盛る爆炎に覆われ、見事に粉砕されてしまった。

 

 

 

 ガンダムレオパルドの残骸から抜け出したエグザス。

 今大会の名種目であるバトルロワイヤルにて、大気圏内や圏外を戦場とした舞台でエグザスを操縦していたパイロット兼ビルダーであるエイキは、この宇宙空間を彷徨っていると目の前から赤い閃光の如く現れたMSがエイキの前に立ち塞がった。

 

「―――先の戦い、見事だったよ……ムロト・エイキ君!」

「むっ、その声は……ユウキ・タツヤか!?」

 

 名はユウキ・タツヤ。彼は外国の学校において常にトップクラスの優等生として知られている。

 だが、その実態はガンプラビルダー。それもかなりの熱烈な好戦者でガンプラを愛する人物だ。彼をガンダム作品のキャラクターに例えるなら、彼はグラハム・エーカーそのものと言えよう。

 それほどまでに彼は熱い。ガンプラ愛に満ちている。それしか言いようがない。

 

「……目の前に現れたってことは、ボクに戦いを挑みに来たってことで受け取っていいかな?」

「無論、そのつもりで君の目の前に現れた! さぁ戦おう。今戦おう。すぐ戦おう!」

「……君のその熱さ……学校のようにクールにいかないのかな?」

「フッ、無理なことを言うな。今の僕は燃えている……! そう、戦いを求める飢えた獣そのものだよ!」

 

 あはは……と、エイキは苦笑いしながら彼の熱さを鎮圧させることを諦めた。

 諦めたのと同時にエイキはエグザスを赤いフレームの敵機に方向を変える。

 

 ユウキ・タツヤの操る機体はザクアメイジング。

 シャアザクをベースに鍛え上げられたそのモデルは、まさに猛者を相手にするような異様な雰囲気を齎している。

 見れば肩部にミサイル、両手にハンドガン。背にはいくつかの武装がみられる。

 装甲も通常のザクとは比べられないほど厚く、並大抵な攻撃では弾かれてしまうだろう。

 だが、エイキはそんなのはどうでもよかった。なんせ、紅の彗星と呼ばれた男と一戦交えることができるのだから……

 

「さて、ここで止まっていても他のビルダーの的になりかねない。そろそろ始めようか」

「……本来なら決勝戦で戦うのだと思っていたんだけどね。運命とは複雑なものだ」

「同感だ……!」

 

 ザクアメイジングが動いた……! そして見た目以上に速いっ。

 しかし、エグザスはエイキが仕上げた中でも出来栄えの良い機体であるため、そう簡単に彼に勝利を譲るつもりはないし、譲らない。勝ち取る。絶対に……!

 

 そういう気でエイキはエグザスを起動させた。

 その動きはまるで紅の彗星と相似しており、アクロバティックな操作は誰もが見惚れるほど……故に、彼の異名にはこう名付けられた。

 

 

 

 ――――――緋色の流星と……

 

 

 

 

 

 あれから3年後……

 

 主人公―――ムロト・エイキはマイナーな機体を好む。

 ガンダムタイプやαアジールのようなレギュラー厨のモノに乗りたがらず……ガンダムシリーズにおいて原作で目立った動きをしてこなかった機体を使用することで有名になった話だ。

 性能ばかりを頼りに勝つようなマネはしたくないとか、ただ単にレギュラー系統の機体が嫌いなのか、そういった噂が同じビルダーであり、彼と友人関係にあるユウキ・タツヤの耳に届いていた。

 あれほどの腕前を持っていて、なぜ彼は性能として曖昧な機体ばかりを選ぶのか、ユウキ・タツヤは興味本位で聞いてみたところ、

 

「ん……? ああ、ボクはふつうにマイナーな機体が好きなだけで、別にガンダムとか厨MSとか好まないわけじゃないんだよ? でも確かに傍から見ればそう判断されそうだね」

 

 それを聞いて少し驚いた。ユウキ・タツヤは彼のことを厨ガン嫌いとばかり思っていて、それ以外の機体には眼中にないと思っていたからだ。

 彼が操っていたエグザスは確かに機体性能としては高く、マイナーにしてみればかなりのモノだろう。しかし、あれには欠点がある。

 それは、あの機体と同じ系統であるメビウスやメビウス・ゼロと同様……宇宙空間でしか動かすことができないことだ。確かに宇宙空間においてはガンダムに匹敵するぐらいの性能差を見せるが、大気圏内のエグザスは無力と化する。

 他は機動力の速さのせいで防御のほうが手薄になっていることだ。当たらなければどうということはないというが、万が一に着弾してしまった場合、致命傷を免れることは全くと言っていいほど無いだろう。

 マイナー機をもってして、彼は前回世界大会上位ランカーに入ったのだから、もしイージスガンダム、Zガンダムといった可変式ではあるが、高機動を誇り、かつ大気圏内でも活躍できるような機体に乗っていれば優勝なんて目じゃない。

 想像すれば想像するほど空恐ろしく思えてしまう。かと言って、彼を倒したのはユウキ・タツヤ本人なのだが、あれを勝ったとは微塵たりとも思ったことすらなかった。

 

 ユウキ・タツヤは「エグザス以外の機体に乗るつもりはないのか?」という軽い会話染みた風に再び質問してみると……

 

「おや? おやおや? もしかして次の世界大会に向けて情報収集かな~、タツヤもやるねー。でもそれだと負けフラグ建っちゃうからやめときなよ。そういうのは主人公にしか通用しないんだから」

 

 そのつもりで話したわけじゃないが、とユウキ・タツヤは呟く。

 どうも彼は話すつもりはなさそうだ。

 たった一言ではぐらかされたユウキ・タツヤは少し気難しそうな顔をするのだが、ムロト・エイキはそんなのお構いなしに机に置いてあった弁当の料理を頬張っていた。

 すると、彼は何かを思い出したかのような表情になり、自分の方に顔を向けてくる。

 

「そういや、タツヤ。さっき耳にしたんだけどさ、知ってるかい?」

「……? 何をだ」

「サザキがイオリに敗れたっていう噂だよ。サザキってギャンというマイナーな機体を扱うからボクのお気に入りだったんだけどさ、これが面白おかしくイオリの完成した機体を巡って返り討ちにあったんだって」

「あのサザキ君が……」

 

 サザキという人物はギャンを操ることで有名で、ここ聖凰学園の周辺において切っての実力者なのだが、その彼をイオリ・セイが倒した。

 イオリ・セイは世界大会準優勝者として有名なビルダー……イオリ・タケシの息子で、実力は未だ不明。彼の息子だからという理由で強いのだろうという判断はしてないものの、まさかサザキを倒すほどの実力と思うと、驚かざるを得ないのだ。

 

「でも、考えてみれば納得するかも……僕も何度かイオリ君の模型店に立ち寄ったことがあるんだけど、彼の作ったガンプラは実に素晴らしいものだったから、サザキ君を倒したのも本当なのかもね」

「へぇー、戦ってみたいものだ。タツヤもそう思うだろ?」

「まあね。僕としてはサザキ君を倒したその実力……この目で見極めたいと思っているよ」

「……さっきからサザキを過大評価しすぎだと思うんだけど……ボクの気のせい?」

 

 世界大会出場者であるエイキにとってサザキはまだまだ未熟としか思えなかった。

 対するタツヤも同じ世界大会出場者なのだが、彼の人に対する敬意というのが少し正しすぎる。

(……まあ、戦う時よりはまだマシかな)

 あの二重人格染みた変貌ぶりには驚きを禁じ得ない。

 つまりだ。エイキは彼のことが少し苦手だ。

 普段、友人として話すのなら問題ないのだが、あの真面目すぎる性格をどうにか柔らかくならないものなのか、と彼と会うたびに思う。

 

「じゃあ、僕はこれからイオリ君のもとに行ってみるよ」

「行くのはいいけど、もしかして君……イオリに勝負を挑みに行くんじゃないだろうね?」

「まさか! そんなはずがないだろう?」

 

 彼の言葉を聞いて、絶対に何か仕出かすに違いないとエイキは察した。

 長年の付き合いというわけじゃないが、聖凰学園で3年間同じクラスだっただけに、エイキは彼の行動が読めるようになってきたわけで、それが良いことなのか、悪いことなのかは知らないが、得というわけではないだろう。

 

 タツヤは教室から立ち去るのを見送りしながら、サザキを倒したというイオリ・セイという少年に武運を祈った。彼の目が光ったが最後……戦いというものから逃れられない。

(……でもボクが祈られた人、大抵やられちゃうんだよな。なんでだろう)

 ちょっとした疑念が湧き出し、うんぬんと考えたエイキ。その結果は何も思いつかなかった。

 どちらにせよ、エイキにとっては無価値な悩みだったので思いつかなかったらそれだけで、あとはそれ以上考えることはなかった。

 

「さて、と……タツヤも行ったことだし、ボクもアレの構想を練らないと……」

 




マイナーなMSが好きな諸君! マイナーなMAが好きな諸君!

ガンダム好きな諸君! 私は書いてしまったぞぉ!

因みに、私が好きなMSはバイアラン・カスタム。MAはエグザスです。
ね、マイナーでしょ? でもバイアランってマイナーだよ、ね?
劇場版UCに出てきたあの無双劇はマジで惚れた。そんでもってここのSSに書きたいですね。

バイアランやエグザスのみならず、他のマイナーな機体を使わせてみたいです。
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