現役高校生最強といえばユウキ・タツヤ。日本ガンプラビルダーのほとんどがそう言うだろう。ガンプラ塾と呼ばれるガンプラのエキスパートを育成する養成所で彼はそこであらゆる困難を乗り越え、紅の彗星と称されるほどまでに至った。
しかし、彼を高校生最強に例えるのはまだ早いんじゃないか、という声がある。前世界大会バトルロワイヤルでそれが明らかになっていた。それはマイナー機を好み、ありとあらゆるガンプラに精通した男……ムロト・エイキ。
緋色の流星として紅の彗星と対を成していた少年で、聞けばユウキ・タツヤと同年代にして同じ高校に通っている人物だと言われている。そして彼はMA―――エグザスでバトルロワイヤルに出撃し、彼と巡り合った高校生最強ユウキ・タツヤは戦った。
ムロト・エイキが操るエグザスと対峙していたザクアメイジングが先に仕掛け、ハンドガンからの実弾と肩部に搭載したミサイルが一斉に放たれていく。
それを見越してエグザスは方向を上に飛び上り、弾丸やミサイルの嵐を回避する。それはユウキ・タツヤにとって分かり切っていたことだ。タツヤの目的はエグザスが前にしか突発的に動けないのを知っているので、それを追撃する形で彼を仕留めようと試みた。おそらくこれもエイキには見抜かれているだろう。
「……なッ」
見抜かれていたのはいい。問題はその対処され方だ。
エグザスはザクアメイジングの追撃を掠りともせずに躱し、有線式ガンバレルを使用するのをタツヤは用心しながらも追い回していたのだが、エグザスの後部から何やら煌めく鱗粉のようなモノが散らばり始めたのを目にした。 一瞬何なのかと思いきや、それはプラフスキー粒子だった。
プラフスキー粒子とは、とあるプラスチックに反応して外部から操縦することができる特質なモノで、これはガンプラビルダーにとって基本中の基本とも言える。そのプラフスキー粒子が一斉にタツヤの目前に振り撒かれた。
どういう意図なのか、タツヤはわからなかった。しかしガンプラ塾からの経験と脳裏に浮かび上がる生存本能から危険だと訴えてくる。だが遅かった。
プラフスキー粒子を凝縮し、一気に解き放たれる粉塵爆発染みたその威力がザクアメイジングに襲い掛かり、吹き荒れる爆音と爆風に見舞われ、エグザスから遠く離れてしまった。先ほどの攻撃はおそらく、プラフスキー粒子の応用を活かした技なのだろう。これでは追撃どころか逆に撃たれる危険性もあるわけだ。
そう感じ取ったタツヤは即座に対応し、ミノフスキー粒子のような弾幕から抜け出した。タツヤはエグザスがどこにいるかザクのメインカメラで辺りを見回すが、姿が一片たりとも現さない。
「……どこだ」
「―――ボクはここだよ! タツヤ!!」
ボフッと粒子の煙から現れた物陰がザクアメイジングに襲い掛かるのをタツヤは確認した。
(―――ッ、正面から向ってくるとは……愚かなッ)
二丁拳銃に持ったハンドガンをそれに向けて狙い撃った、が、しかし……
「有線式ガンバレルッ……囮か……!?」
シルエットを見て、あれが有線式ガンバレルの<ホーニッドムーン>だということを理解したタツヤはそれを破壊するも―――
―――ガッ
「……ぐっ、真下からだと!?」
2基目の<ホーニッドムーン>がザクアメイジングの背部を削り取るかのように切り刻む。ちょうどアメイジングブースターが身代わりになってくれたので、本体へのダメージは少なく、何とか一命を取り留める。
タツヤは自分のプライドもあってか―――タダではやられん! という勢いで切り刻んでくれた有線式ガンバレルのワイヤーをハンドガン1丁収めた直後、ヒートナタを抜き放って胴体の回転運動を利用し、ナタの薙いでワイヤーを引き裂いた。
(……これでヤツのガンバレルは2基のみ。手負いを喰らったが、これでお相子だっ)
自身が駆り出すザクアメイジングに比べ、エグザスは応用が多いものの武装面が少ない。先ほどのプラフスキー粒子も何度も使えるモノじゃないだろうし、一度やられた技だ。二度目は喰らわん。
と、タツヤは戦場に張り巡らせる知識の増量と、経験がそう語りだされる。
―――その時、コックピットに張り出されるモニターからブゥンッ―――と少年の顔と共に出現した。
「えへへ……ボクの2段構えを躱すなんて、さっすが」
「それはこちらのセリフだ、エイキ君。私のザクに搭載するアメイジングブースターがなければやられていたのはこっちなのだからな」
煙幕から抜け出したエイキに向けて称賛を送ったタツヤは速やかにザクアメイジングを稼働させてヤツを追いかけた。
ブースターが破壊され、機動力が多少減ったが……それでもなお、エイキの操るエグザスを狙い続ける。エグザスの機動力はタツヤが操るザクアメイジングを遥かに凌ぐ存在。だが、彼と渡り合えるのは、おそらく機体の性能ではなくてタツヤの技術力がそれをカバーしているのだと思われる。
タツヤもまたマイナーというものをよく使う。というより、彼の場合はマイナーという思考ではなくて「やられるだけの存在なのに、改良により多くの高性能機が生み出されている」という設定に惹かれたとか。
高校に上がる前、彼と出会い……知り合ってから間もないというのに友好的なのは、同じマイナーとしての同志に巡り合えたとか、バトルが好きとかではなく、ただ単にガンダムが好きだという共通点から生まれた友情なのである。
そんな彼らとの対決に観客からの声援が聞こえ始めた。もうこれ、決勝戦でいいんじゃね? という声もあり、その雰囲気に呼応したエイキとタツヤは笑わずにいられなかった。
「だからこそ、燃え上がる! そして滾る。この熱き戦い……私は嬉しい。これが本気のガンプラバトル……
―――まさしく愛だ!!」
瞬く間に紅い闘志を剥き出しにしたユウキ・タツヤは片手のヒートナタを仕舞って再びハンドガンを手にする。
(ハンドガン2丁……だが装弾数は残り右3発と左5発……ミサイルは6発。ヒートナタは2本。ヤツを相手にするなら物足りないのだが、今のヤツなら事足りる……ッ)
「うん、ボクも……楽しい。今まで物足りなかった戦場に対する欲が潤いに満たされるよ。こんなのいつ以来かなぁ」
口元を吊り上げ、無邪気で冷たい戦意を見せるムロト・エイキはエグザスに搭載された有線式ガンバレル2基を放ち、連装リニアガンをザクアメイジングに狙いを定める。
(ガンバレル2基、P粒子パックも残り1つ……連装リニアガンはまだまだいけそうだけど……タツヤ相手にこれは厳しいなー)
「この大会……この私が優勝をもらうっ!! 覚悟するがいい、エイキ君!」
「それは否だよ。断じて否だ! こう見えてもガンプラ心形流造形術の
―――でも、本来ならエグザスじゃなくて
「……っ?」
なに、不思議なことじゃない。ガンプラバトルにおいて創作と破壊の連鎖が続くわけで、それらに対応するためにも同じガンプラを作ったり、出場したガンプラを修理するために必要な素材を予め準備していたり、改造したり、新調したり、解除したり、と様々な工夫によってガンプラが日々進化するものだ。
だが、先の言葉……『決勝戦用』とは何だ。ではヤツ……ムロト・エイキは本気じゃなかったというのか。ユウキ・タツヤはエイキの言葉に思いの他、痛恨にして会心の一撃を喰らったかのような打撃であった。
(……や、ヤツの本気はあれが全部じゃないというのかっ)
ただでさえ、今こうして互いの本気というものを激突しあっているのに……
エイキという少年はまだ力を奥底に隠しているというのだ。
―――果てしなく底が知れない少年。
ユウキ・タツヤはこの時思い知った。格が違うと……
「で、どうするのさタツヤ。このまま続けるかい?」
「…………」
このままいけばタツヤは彼に勝つことができるだろう。
勝率としては十分にある。だがしかし、タツヤは彼の本気で戦ってみたいという信念が篭っていた。それはエゴだと思う。ここで勝てる試合を無駄にすることは、今まで戦ってきた自分の傷ついたガンプラに申し訳が立たない。故に、タツヤは思った。
「―――ああ、もちろんだ!」
格が違っても、タツヤはガンプラビルダーとしてのプライドがある。故に、それを打ち砕けと拳が唸り、今こそ勝利を掴めと轟き叫んだ。
ザクアメイジングもタツヤの叫びに呼応したのか、ブーストが壊れているはずなのに噴出作動が動く……昔主人公を努めていた時の補正が残っていたか、とでも思うぐらいに。
そして流星と彗星の激闘に幕を閉じたのであった。
……
…………
………………
……夢、か
「……あの戦いから僕は戦い続けた。だが物足りなさと口惜しさが残ってしまった……、これが真の戦いを求める僕の傲慢だというのか」
ユウキ・タツヤは自分が住む宅……その自室にてタツヤは夜遅くまで勉学と同時にガンプラの組み立てをしていたのだが、いつの間にか寝ていたらしい。時刻もどうやら朝方になっている。
(……エイキ君。君の本気はいつ、出してくれるというんだ?)
目の前のガンプラ……赤く、朱く、紅く、と色濃くフルカラーされたMSを見て、タツヤはそう思った。
それはザクアメイジングとはまた違うガンプラ……、それもザクではなくガンダムの姿をしている。その悍ましい雰囲気はタツヤの中でも最高傑作と思っていたザクアメイジングをいとも簡単に超越していた。
武装は2つだけ……ヒートロッドとビームサーベルのみ。これだけ聞けばもう分かるだろう。これがやられるだけの存在が高性能機を生み出してきた頂にしてタツヤが新たに生み出した最高傑作のガンプラ……
―――アメイジングエピオンはその彼の本気を相手にするのに相応しいことこの上ないガンプラであった。
(……これで、エイキ君を本気にさせてみせる!)
これが元主人公であるユウキ・タツヤの決意の表れであった。
―――ある時、1人の男性が日本・この町に颯爽と現れた。
ダンディーなバイクに乗り、滑走路を走っている姿はまさに男らしい。
街中で混み合う人ごみの中を歩けば大抵の女性がその男性に振り向いてくる。
彼はそれに誇りに思っていた。誇りに思っているからこそ、それに恥じぬ行動をしている。
人呼んで、イタリアの伊達男……名はリカルド・フェリーニ。
ガンプライタリア大会のチャンプにして世界大会に2回出場しているベテランのガンプラビルダーである。
そんな彼は何をしているのかというと……
ナンパをしていた。
リカルドはナンパのためならガンプラ制作に約1週間も命懸けで作り上げて、それらをナンパ用に使っている、伊達男ならぬ駄目男。
傍から見れば、何故ナンパにガンプラを女性にプレゼントするんだ? と疑問に思うのだが、これがまた面白く、上手い具合に成功しちゃっているわけである(成功しても続かないが……)
まあ、大半はガンプラじゃなくて容姿のおかげなのは秘密の内である……
「そこのお嬢さん、オレとドライブでもしないかねっ?」
喫茶チェーン店で優雅にお茶を嗜んでいた女性に、リカルドは躊躇いもなく気軽に話しかけてから、テーブルに1体のガンプラを置いた。
「ぬ……ガンプラか?」
ピンクに近い赤毛の髪をした美人の女性はキリッとした態度でリカルドを見た。
剣幕でも張られたかのような視線なのだが、それを気にすることなくリカルドは紳士な姿勢で答える。
「はい、これはZガンダムというエゥーゴ試作可変MSです。このデザインの出来栄えと機体のフォルム……まさしく貴方にこそ相応しい……どうぞオレの愛と共にお受け取りください」
「…………」
リカルドと話している女性……カンハマ・アン―――通称・ハマーンは非常にメンドクサそうな気持で心に抱いていた。
(……この俗物め……今日の運勢が最悪だとは聞いていたが、まさか本当に当たるとは)
よく見れば、こやつはテレビで見たことある気がする。確か……何かのイタリアチャンプだったか? まさかだとは思うがガンプラの、じゃないだろうな。
実を言うと、ハマーンはガンプラビルダーを趣味としてやっていたこともあり、その中でも最も毛嫌いしていたガンプラが2機あって、見るだけでも吐き気がするという。
……そのガンプラとは、Zガンダムと百式のモビルスーツであった。
Zガンダムの方は昔友人と何度も相手をしてて、自分が使用するキュベレイがZのバイオセンサーや「ビーム・コンヒューズ」で自慢のファンネルが落とされたり、あのウェイブライダーの速さに翻弄とされて、やられてしまうという屈辱的な敗北を何度も、何度も味わい、鬱になってしまったほど……
百式の方は昔好きだった男が使っていたガンプラなのだが、振られて以降、百式を見るたびに思い出し、嫌気が差すのだ。
ハマーンの嫌うZガンダムを目の前に置いたリカルドの方はそんな事情を知るすべもなく、ただ返事を待っているのだが……
「どうですか? お嬢さん。是非ともオレの愛の形を受け取ってくれませんか」
ニコやかな態度にハマーンはどっかの部下を思い出すのだが、それは別としてこの男をどうするか……ここはいっその事、率直に断るべきか……
と、考えていたハマーンはジロりとリカルドの方へ視線を向けて、口を開く。
「……断る。私は貴様のような女たらしの俗物は好かん。それに、Zガンダムは私の嫌いなガンダムだ」
「え……、マジですか……?」
リカルドはハマーンの言葉を聞き、顔を真っ青に変えていく。
失敗でもしたかのような、そんな表情だった。
(こ……これはっ……ニュータイプだというのかっ!? なんて威圧感!!)
まさかこの美人な女性が、ガンプラ基ガンダムのことを知っており、しかも嫌いなガンダムだと仰った。リカルドにとっても、予想外にして思わぬ方向に進み、気持ち的に控えめになっていくことに理解した……その時だった―――
「―――あれ、カンハマさん?」
その声は、リカルドでも……今目の前にいる女性でもなかった。
―――いわゆる第三者からの出現。
リカルドはおずおずと話しかけてきた第三者の方へ振り替えると、そこには自分よりも年下で無垢な少年がきょとんとした顔でこちらを向いていた。
リカルドはその少年を、目を凝視して細めると……なんと見知った顔であった。
(……んなぁ!? こ、コイツは!!)
前世界大会でユウキ・タツヤと互角に戦ってた少年じゃねえかっ。
名前は確か、ムロト・エイキ……! オレのフェニーチェと戦って一打撃を入れた……エグザス使い―――緋色の流星かよ!?
そんな驚きを胸に抱くリカルドに対し、少年ことムロト・エイキは気にもせず、こちらに話しかけてきた。
「それに、フェリーニさんも……こんなところで奇遇ですね」
「ん……あ、あぁ……そうだ、な」
戸惑いつつも、どうにかクールに答えるリカルドなのだが、そこにカッコよさなんてなかった。
「ぬ……? 貴様は、ムロトか。ふむ……久しいな。2か月ぶりか……」
リカルドとの挨拶を交わした後、次の声を発したのはリカルドがナンパしようとした女性であった。女性の方は少し驚いたかのような顔をしているのだが、すぐにキリッとしたところが自分との違いであった。
「ええ、そうですね。あっ、ミネバちゃんは元気?」
「うむ……ミネバ様は相も変わらずご健康だ。貴様は学校の行きか?」
「はい、今日は模型部がありまして……ボクはその部員なもんですから……」
何やら2人で先ほどの感じのいい話をしているぞっ?
……これはどういうことだ。わけがわからん。
と、思っていたリカルドはエイキと女性の会話を眺めていた。
さっきまで自分との会話に重たい地球の重力に圧されていたというのに、少年との会話がなぜか温かく感じる……不公平だ、とリカルドは怨めしくエイキを睨む。
(……しかし、この2人が知り合いだったとはなぁ)
先ほどまでエイキに怨みの念を送っていたのだが、それも飽きて次にリカルドはとっても不思議な現象に巡り合ったものだ、と関心を持ち始めた。
すると、エイキと女性の談話が終わったらしく、次に顔をこちらの方へ向けてきて、エイキは不思議そうな表情で話しかけてきた。
「……そういえば、カンハマさんとフェリーニさんで何か話していたみたいだけど、もしかして知り合い?」
「い、いや……これにはその……『ナンパだ』……ッ、そうそうナンパだ、ナンパ。あはははっ」
リカルドは彼の質問に答えようとしたのだが、その話を割ってカンハマと呼ばれる女性がそう直線的に言った。
「ナンパ……」
「貴様もこの俗物のような大人にはなるなよ。いずれ駄目男になるに違いないからな」
「おいおい、ひどいこと言うねぇ。これでもオレはイタリアの伊達男って呼ばれてんだからよ、それなりの威厳ってものがあるんだぜ?」
「ふんっ」
「あ、あはは……」
カンハマの言動にリカルドは肩書になぞって胸を張った。
エイキはその2人の様子に苦笑いしながら、自分の腕時計を確認すると―――
「あっ、もうこんな時間だ。それじゃ、ボク急ぎますので……また会いましょう」
「うむ……確か、近いうちに地区大会が行われるそうじゃないか。ミネバ様にも貴様が出場することを伝えておくとしよう」
「はい、ありがとうございます。……では、また」
そのセリフを最後に、エイキは去っていく。何とも言えない不思議な少年であった。
少年の背を眺めていたリカルドはハマーンに一礼を交わし、バイクに跨って次の行く先に向かおうと、エンジンを踏み鳴らす。
(……ムロト……エイキ、か。こりゃ、楽しみだぜ)
リカルドははにかむように笑みを口元に浮かべ、バイクの車輪を転がすのであった。
こんばんは、そして更新遅れてすいませんでした!
今回はバトルを少なめ、というか過去の話なのですが……タツヤを改造するため、新たな機体……アメイジングエピオンをオリジナルとして出させていただきましたw
ベースはガンダムエピオン(EW)です。アニメのエピオンと同一MSですが、カッコよさはこちらの方が好みなので、こっちを採用いたしました。
そしてパロキャラの登場はガンダムビルドファイターズのお約束。
ハマーン様が出てきたことにはお気づきかと思います。
1期のアニメ23話に出てきました、ハマーン様。似ていないかと思いますが、それは作者の描写不足だと思ってください<(_ _)>
感想・批評・誤字脱字がありましたらよろしくお願いします。
次はバトルをしたいと思います。他パロキャラの登場もご期待ください!