マイナー好きの彼は無双を試みた   作:赤須

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第5話

 

 

 

 第7回ガンプラバトル選手権 第3ブロック日本代表予選……当日。

 

 待ちに待った世界選手権のスタート地点である。

 それらには様々な機体と共に様々なビルダーがこの地方の中から集まるわけで、ボクが期待するほどの人物もあの中にいるってことだ。

たとえば、

 

 この地区実力者であり、ギャン使いにおいて右に出るものなしのサザキ。

 

 高火力を以てして敵を屠るマラサイの使い手、クリタ・コンスケがサポートするシリド・マサ。

 

 第5回ガンプラバトル選手権で元現役高校生最強と謳われたキラ・タケルの友人、アレックス・ザラ。

 

 ガンダムDXとGXビット12機を以て戦場を支配する導師、カトウ。股の名を軍団の魔術師。

 

 今や新人有望株として力を群として伸ばしているビルドストライクの担い手、ビルダー……イオリ・セイとファイター……レイジの2人組。

 

 噂では彼らだけでなく、個性的なファイター達がこの場に募っているとか……

 

 そして―――

 

「楽しみだなぁ……この大会にどんなガンプラやビルダーが待ち受けているんだろ」

「……確かに。僕もイオリ君やレイジ君がどれくらい成長したか楽しみでしょうがないよ」

 

 紅の彗星ことユウキ・タツヤ。ガンプラ塾において三期生のトップエリート。次期メイジンにまで上り詰めた男。そんな彼と共に、ムロト・エイキはエナメルバックを肩に微笑を浮かべる。

 

「前にも思ってたけど、そんなに彼のことを買っているんだ……」

 

 イオリっていうのは、イオリ・セイのことで……

ガンプラバトル選手権に出場し、世界大会準優勝をしたイオリ・タケシの息子だ。

 数週間前、その彼とレイジっていう不思議な少年がタツヤと戦って敗れたものの、あの時に見せた闘気はこれから、っていう感じの雰囲気であった。

 

 その彼らが今日の大会に出るというのだから、以前にタツヤと戦ったあの時よりもどれほど強くなっているのか、またはボクの予想よりも遥かに上回った伸びしろとなっているのだろうか、実のところ楽しみにしていたのだ。

 

「ふっ、当たり前だ。彼らの成長には僕のセンチメンタリズムな運命を感じずにはいられないからね」

「なるほど、ラウ・ル・クルーゼ曰く……物事はそうそう頭の中で引いた図面通りにはいかないってことか」

「そういうことだ」

 

 などとボクとタツヤの2人で納得し合う中、辿り着いた会場内に入ってエントリーを済ませようと先を急ぐことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2人がエントリーを終える頃……重要キャラの如く1人の少女が動きだす。その場所は会場ではなく、ここから大きく離れた……木々に見舞われた自然豊かな場所に、純白でお城のような屋敷が広大な森を差し置いて頭角を現していた……

 

「うぅ……ハマーン。ハマーンはいるか……?」

 

 無垢で眠たげな声を発しながら少女はゆっくりと上体を起こして辺りを見渡している。

そこに緋色な髪を揺らし、凍てつくような目つきをした女性が少女の前に立つ。

 彼女の名はカンハマ・アン。またの名をハマーンと呼ばれており、ここ―――ミネザキ邸の屋敷に努めているSPにして教育係として任命された人物である。

 

そんなハマーンも今日は仕事としてではなく、1人の友人ということで来ていた。

 

「はい、ミネバ様。ここに……」

「ハマーン、今日は仕事じゃないから我のことはコトリというがよい」

 

 使用人のメイドが少女の顔を御湯に浸かったタオルで拭う。

 この少女の名はミネザキ・コトリ。ミネザキ財閥の跡取り娘で、かつて両親と暮らしていたのだが、とある理由で離婚し母親の基で過ごすことになる。そんな中で財閥のトップとして働く母親であるゼナは今の状況でコトリを育てることが出来ない身であったため、代わりとしてハマーンを用意したのだが、意外にも上手くいったのかコトリは健やかで利口な子に育ったということで、今でも使用人として契約中だそうだ。

 

 と、普段はミネバ様と呼ぶことが日課のせいか、ハマーンは表情を訝しくさせる。

 

「ぬ……こ、コトリ」

 

 不慣れな言動に戸惑うハマーン。だがそれをコトリは満足げに笑みを浮かべ、元気よく「うむ!」と大きく頷くと、パジャマ姿から外に出歩くための私服へと着替え始めた。

 

「ハマーン、今日はガンプラバトル選手権・地区大会が始まるのであろう? 楽しみだな!」

「はい、コトリも久しい休日ですので十分に楽しめる1日になるかと」

 

 やはり丁寧語が抜け切れていないハマーンは緊張しながらも、コトリの言葉に肯定した。

 

「ということは、あのムロト・エイキも出るのかな? 我はあの男の戦いを見てみたいよ」

「……そう、だな。前にも言った通り……ヤツは出る。ムロトもきっとコトリの応援を待っているでしょう」

 

 ムロト・エイキとは、今から2ヵ月ほど前にアクシズ喫茶店でガンプラバトルの試合があった時、コトリからのご所望でハマーンは愛機であるキュベレイで出場した、が。

 

 ヤツの駆けるガンダム試作0号機のEWAC機能を保有する性能がハマーンを圧倒し、さらに大型ビームライフルの的確な攻撃に敗れたのだ。

 それを観戦していたコトリはそんなエイキに感心を抱き、ファンになったとか。

 

「うむ! では早速出発と行こうではないか!」

 

 着替え終わったコトリは我先に、と自室から飛び出していこうとする。

(……ミネバ様があんなに微笑んでいるとはな。これもムロトのおかげと言えよう)

 数年前に父親が行方知らずとなって以降、彼を慕っていた彼女に笑顔を見せなくなり、寂しさが故にベッドに籠って縮こまる娘だった。そんな彼女を私は支えようと頑張ってきたものだが、やはり友人と親とでは差が生じるわけで、この差を埋めるためには、それ相応の何かをしなくてはならない。

 だが、私に何かできないかと探しては見たが……やはり私はガンプラ(これ)しかなく、女の子として、高潔な少女として、不味いだろうと思い表に出さなかったものの、彼女を喜ばせるためにはガンプラ(これ)に頼る他なかった。

 

 そしてガンプラ(これ)のおかげでミネバ様は少しずつだが明るみを取り戻し、ガンプラバトルでもアクシズ喫茶店で時々行われる試合で勝つたびにミネバ様は喜んでくださった。勝つことで私自身も清々しく、また彼女も喜んでくれるというのなら、今まで嫌いであったガンプラ……Zガンダムであろうと、百式であろうと、戦ったものだ。

 

 そんなある時に現れたのがムロト・エイキで、その時に味わった敗北には少し驚かせたものだ。ミネバ様も私が負けるところを見たことがなかったので失望するのではないかと思ったのだが、実はその逆で私を負かすほどの腕を持ったムロト・エイキに興味を持ったらしく、いつも見せてくれた笑顔にはさらに深みが増したそうだ。

 ムロト・エイキも人並み以上に友好的で、ミネバ様とはすぐに打ち解けあった。

(ふむ……ヤツは何か人を惹き付ける……いわゆるカリスマ性というものがあるのか? だとしたら納得するのも当然と言えよう)

 

「ハマーン! 早く行こー、試合が始まってしまうではないか!」

「……あ、ああ、今行く」

 

 

 

 そしてミネザキ邸から外に、駐車されてあるレクサス・LFAと呼ばれる、「世界超一級レベルの運動性能と超一流の感性と官能を持ち合わせるスーパースポーツカー」として世に送り出すべく開発された、レクサス初のスーパーカーにコトリを助手席に乗せて私は運転席に座り、シートベルトを敷く。

 コトリは「いざ、しゅっぱーつ!」と無邪気な一声に私はアクセルを踏み出そうとしたその瞬間……!

 

 

 

「ハマアァァ―――ンさまぁぁあ―――ッ!!」

 

 どこからともなく、と空を劈く聞き慣れた声に私は「……」と沈黙に帯びてしまう。

 ミネバ様は至って普通で、もう慣れている、的な表情で助手席からミネザキ邸の方へ顔を向けた。

 

 そこからドドドドッ! と、アクロバティックに走ってきてはここを通りすがり、そしてスタッと戻ってきて、颯爽とバラの花びらを背景に彼―――マシマ・セイジが登場する。

 

「は、ハマーン様! いったい、どこに向かわれるのですかぁ! このマシマ・セイジことマシュマーは! たとえ火の中、地の中、水の中! 地球の裏側だろうと私は付いていくと誓ったはずです! それを……それを、ハマーン様は……私に断りもなく……」

「……い、いや……このレクサスは2人乗りだからな。お前を乗せるわけにはいかんだろう」

 

 流石のハマーンもこれには呆れるを通り過ごして引く一方だ。

 しかし、マシュマーはそれに気にもせず、サッと胸元のバラを取り出し、それを崇めるかのような動作を送って、私を見つめてくる……

 

「ハマーン様! それでしたら荷積めにお乗せください! 貴方がくれた忠義の証たるこのバラに賭けて、忠義の荷物マシュマーとして役割を全うしましょう! ですからこの私に――――――」

 

 と、最後まで言い切る前に走り去るレクサス。

 その速さは正に世界超一級レベルの運動性能を誇るだけあって、たった数秒してマシュマーの視界からレクサスの姿が瞬く間に消え失せた。

 

「……は、ハマーン様?」

 

 ぽかーん……と、マシュマーは一瞬だけ固まる。

 思考に張り巡らせ、なぜハマーン様がいなくなったのかの理由を自分自身に問いかけてみた。

 ミネバ様を助手席に、ハマーン様は運転席に、2人乗りのレクサスには乗ることはできず、荷積めするしかないのだが、それ以外にも乗る方法でもあるというのか。

 何か、何か画期的な方法が……

 

「―――ハッ!?」

 

 マシュマーは気付く。

(そ、そうか! これは試練なのだっ。ハマーン様はこの私を忠義の騎士として試されている……! なるほど、それなら頷けるというもの……)

 

 となれば、答えなんてアレしかない。

 

「走って付いてこい……これが答えか!」

 

 いや、間違ってるだろ、と誰か突っ込みがいないのが心もとないが……

 マシュマーは、先ほどレクサスが向かった方向へと体を向け、陸上選手の短距離走が見せるクラウチングスタートの体勢を作り―――

 

「―――ハマアァァ―――ンさまあぁぁ!! ばんっ―――ざあああぁぁぁぃぃ!!」

 

 猛き咆哮のもと、マシュマーが進撃する……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひっ」

「……ハマーン? どうしたのだ」

 

 レクサスを運転する最中、ハマーンは持ち前の直感に悪寒が冴え渡った。

 ミネバ様は心配そうにハマーンの様子を伺うも、

 

「ぬ……何やら背筋に寒気がしたもので……」

「無理はするでないぞ?」

 

 キョトンとした顔で首を傾げる。これが日常茶飯事なせいか、ミネバ様にとってはさほど驚く必要がなかったらしい。慣れと言うものはこれほど怖いものだとはな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 このガンプラは一年戦争末期に開発された量産試作機の完成系・ジム改をベースに近接戦闘を向上させようと目論んだMSである。接近時で着弾を考慮し、搭載されるようになった「ウェラブル・アーマー」を全身に装い、その性能は被弾時の衝撃を外に逃がす内部炸薬があるため、実弾に対して無類の強さを発揮した。

 

 が、着装された「ウェラブル・アーマー」の重量が機動力が殺されてしまうのが、このMSの弱点と言えよう。……と思うが、それはもう克服済みである。

 何故なら、それらをカバーする大型バックパックと脚部スラスターが搭載されており、重くて速い―――白兵戦のために生まれたMSだ。

 

 主武器は伸縮可能なビームサーベルを2本付けたツイン・ビーム・スピアで、ロッドモードとサイズモードで戦場による状況に合わせた戦術をする。

 もちろん他にも100mmマシンガン、ビームサーベル、60mmバルカン砲があるため、接近戦に掛かれば一騎当千の力を振るうことが可能。

 

 また防御に関しても、先日ハイネさんが使用していたグフイグナイテッドのスパイクが付けられたシールドと似た盾を持っており、先端のスパイクをクロー・アームとして敵機を捕縛……接近戦に持ち込むのが、このMSの戦法だ。

 

 これは、実戦経験の練度が高いエースパイロットだけが許された、いわば隊長機に相応しき連邦のMS。だが接近戦を得意とするため、接近戦にそれなりに熟すパイロットでなければ発揮されない……言うなれば、人を選ぶ機体として扱われる。

 

 宇宙世紀において、先ほど述べた人を選ぶ機体として最もこれを扱うことが出来たのは、ユージ・アルカナと言われている。彼は北米戦線で多大な戦果を挙げ、幾多にボロボロとなろうが前に進むことを止めず、味方全員を生還させることから、敬意を込めて「ゾンビー・ジム」と異名を付けられた。

 

 不死身のジム……その名は……

 

 

 

『機体名:RGM-79EPジム・ストライカー』

 

 

 

 

 

 の、流れを組む接近戦を……更に重視したエース専用機として一年戦争後に開発された「ジム・ストライカーの次世代対応型モデル」として生まれたこの機体が―――今!

 

「妖刀……抜刀(きどう)

 

 戦場に紅く灯る燐光のもと、彼……ムロト・エイキが躍り出る。

 

「こんな場面に出れば、シャアのあの名言を言わざるを得ないよね……うん」

 

 このガンプラは「機動戦士ガンダム カタナ」に登場するイットウ・ツルギが使用したMSで、モチのロンことゾンビー・ジムを異名としたユージも使用したといわれているこの機体はジム・ストライカーを上回る接近戦に特化された対ニュータイプ専用のジムである。

 

 だが、ジムはジムでも、この機体は次第にガンダムタイプと認定されるようになった。

 

 その理由は―――ガンダムの頭をしているから。

 

 

 

『機体名:FA-79FCフルアーマー・ストライカー・カスタム』

 

 敵はガンダムスローネアイン。相手にとって不足無し。

 

「―――見せて貰おうか、君の作ったガンプラの性能とやらを……」

 

 FAストライカー・カスタムは、抜き放つツイン・ビームサーベルを手元に出すだけで、静かに……ソッと佇みだした。まるで……何かを待っているかのように……

 

 

 

 

 

「……ッ、EXAMシステムだと!?」

 

 スローネアインのファイターであったミツギ・ヨハンはFAストライカー・カスタムの様子に驚愕を覚えていた。

 彼はミツギ兄弟妹(きょうだい)の長男で、GNランチャーで敵を寄せ付けず、高い射撃能力で相手を撃墜させる……初手で相手に自分の存在を悟られないように動き、隠れ、意表を突くことでどの敵に対しても一撃必中で紛うことなく沈めるのが、彼の戦法であった。

 

 敵は初手に繰り出される攻撃に弱い。これは世界の法則である。

 斬られれば、撃たれれば、叩けば、潰せば、捻じれば、壊せば……皆、ほとんどの相手は死ぬのだから……

 ましてや初手に加える一撃ならば尚更だ。

 たとえば、先に日本刀で相手に傷を負わせることが出来れば、その時点で相手は動きが鈍くなり、こちらの優勢となるのだから……。

 刀身に毒でも盛られていたのなら更に勝率が上がるだろう。

 

 だが今―――ヤツは覚醒した。EXAMシステムとは、対ニュータイプ用に開発されたシステムで、ジムやガンダム、ギャンやグフにも搭載可能。装備させることによって最強の力を手に入れることができるジョーカーのようなもの。

 

 しかも相手は世界大会出場経験あり……しかも上位ランカーに入る緋色の流星……ムロト・エイキが相手。

 

 こちらの遠距離型の機体は近接戦闘に特化された機体に有利である。距離的な感覚から近づくことすら許ないわけだ。遠すぎて文字通り手も足も出せないといった方が話が速いだろう。しかも相手は自分の姿を視認していない。気付かれていない内に仕掛ければ確実に屠れるはず……

 

 これは絶好にして好機といっても過言ではないだろう状況だ。

 

 だがしかし、ヤツの機体の様子が可笑しいことに気付く。

 

「……EXAMシステムにしてはどこか違う……何なんだ、アレは」

 

 異常なまでに紅く、煌めくメインカメラをしたFAストライカー・カスタムの、増大な畏怖による威圧感が機体の周りを覆っていた。ニュータイプで言うところのプレッシャーと見て間違いないだろう。

 ヨハンは肌に滲む汗を拭い、宇宙空間を戦場としたこの態勢において小惑星に隠れながらヤツに近づく彼は、エイキが操るFAストライカー・カスタムの様子を伺った。

 

 撃てば勝てる……なのに撃てない。あの威圧感(プレッシャー)がオレの判断を鈍らせているのだ。

 

「……ならば一気に畳みかけた戦術を取り入れるべきか。善は急げと言うしな」

 

 思いのほか決心したヨハンは、右肩に担がれたGNメガランチャーを展開させ、バレないようにゆらりと小惑星から飛び出し、ヤツに照準を向ける。

(……よし、この距離ならば当てられる。これは、オレの距離だ)

 冷静に、黙殺し、集中し、一刻の時を有効に活かすために……GNメガランチャーの出力を最大限にまで溜めていく。

 

「ふぅ―――……っ」

 

(ヤツに動きが見えないな。……フッ、動かない的ならば寧ろ好都合だ)

 もしかしたら誘いを掛けているのかもしれんが、今から放つGNハイパーメガランチャーは今までのGNメガランチャーを改造し、サイコガンダムに風穴空けるほどの威力を発揮させた代物だ。

 放たれたら最後……躱すことが不可能なほどの速度と幅で発せられる。要は不可避の一撃。撃った後はオーバーロードによる冷却時間が必要とし、しばらく稼働しないのが玉に瑕なのだが、それでもだ。絶大なる破壊力はそれだけ所要しているということを意味する。

 

 ヨハンは息を潜めながら、落ち着いてタイミングを計った。

 2秒、4秒、8秒と経て……ついにGNハイパーメガランチャーの粒子が最大にまで溜まるのを確認した後、彼が動き出す。

 

「……最後まで動かない、か。何を考えているのか知らないが……弟と妹にオレが優勝するところを見せてやるんだ。……悪く思うなよ」

 

 相手は世界大会に出場したほどの実力者だ。オレはそれに臆病で、狡猾に挑ませてもらうっ……ただ、それだけのことだ。

 

「―――GNハイパーメガランチャー……発射っ」

 

 

 

 砲台に照らされた膨大なるGN粒子。

 

 

 

 解き放たれる一撃が、ムロト・エイキの操るFAストライカー・カスタムに向かって、

 

 

 

 破滅に導こうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――待っていたよ。……この一撃を……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――刹那―――

 

 ムロト・エイキの凍てつく眼光が揺らぎだした……

 

 また、ストライカー・カスタムもファイターに呼応したのか、悍ましく光る赤黒いメインカメラが……破滅の一撃に向けて、視界と、機体の全身を……方向を変える。

 

 そして―――

 

「唸れ……妖刀……!」

 

 ―――妖刀。ストライカー・カスタムの頭部に内蔵された精神感応AI。一種の強化人間プロジェクトである。ニュータイプの兆候にあったイットウ・ツルギの脳波を手本とし、この妖刀のシステムを新人類に与えることによって、ニュータイプの覚醒へと促進させる波動を促すことが可能となる。同時にこの波動が、彼らの兵器となり、超振動による波動の触発が、物質を砂塵状と化した。……これは、ツルギ流居合い「空合掌底気」と呼ばれた奥義を再現させたもの。別名:『超妖刀』と言われている。

 

 即ち、ガンプラであっても発動するこの妖刀というシステムは、ある一種のニュータイプへの昇華に繋がる触媒と成り得るものだ。

 そんなチートみたいな性能を、今、ムロト・エイキが再現させる……!!

 

 

 

「「「「「――――――ッ」」」」」

 

 

 

 誰もが、ここにいる観客席のほとんどが、彼の様子を我先に確かめようとした。

 果たして、ムロト・エイキは何をやらかした(・・・・・)のかを……!

 

 思わず唾を飲み込んだヤツもいるだろう。

 

 彼の安否を心配したヤツ……は、いないだろうが……無事なのか撃墜されているのかは知りたいものである。

 

 ムロト・エイキの対戦相手……ミツギ・ヨハンも、GN粒子の残量が少ないであろうガンダムスローネアインに構わずヤツが撃墜されているのか、はたまた沈められていないのか、目を細めながら凝視した。

 

 その先に目にした光景とは―――

 

「……バカなっ」

 

 最初に口が開いたのはヨハンだった。

 先に気付けた理由は、スローネアインから送られる映像によるもの。

 ヨハンはすぐさまに危機感を覚え、咄嗟にGNビームライフルの照準を構える。

 

 

 

 なんせ、彼は―――FAストライカー・カスタムは―――

 

 

 

「―――さっすがだねぇ。ボクの機体にここまで傷を負わせるとは……流石の『カタナ』もパージせざるを得ないよ」

 

 FAの装備をパージさせたストライカー・カスタムの姿がヨハンの視界に写る。

 今の一撃で、左腕、右足首、ガンダムのシンボルである左アンテナ、そしてFAアレックスに搭載される「チョバムアーマー」が、他にも所々破損して失っているようだが、

(沈め……きれていないだとっ?)

 ヤツは何を仕出かしたというのだ。オレのGNハイパーメガランチャーを防ぐなんて……

 

「―――ま、まさか……っ」

 

 ヨハンは気付く。あの時、スローネアインのGNハイパーメガランチャーが放たれた瞬間に、ヤツの操るFAストライカー・カスタムが、手元のツイン・ビームサーベルを両手に、振り下ろす様を。

 

 GNハイパーメガランチャーの粒子砲を……

 

 あのツイン・ビームサーベルで……

 

「両断したというのかっ、あの一撃をっ!?」

「うん! ……ま、これは妖刀システムの応用だね。妖刀システムは超振動(ニュータイプ)による波動であらゆる物質を細胞レベルにまで分解させる機能なんだけれど、それをこのビームサーベルに転じさせて、熱線による超振動を作り、君のGNメガランチャーを切り裂いたんだよ。一応、これって斬れぬ物質はないって設定になっているしさ。もしかしたらソレも斬れるかなぁって思って」

 

 あはは、と苦笑いするエイキ。

 それに対してヨハンは絶句した。

 改造したガンプラで、あのGNハイパーメガランチャーを防いだのなら納得が付くものだが、ヤツは改造もせず、IフィールドやGNフィールドのような特殊武装を取り付けた盾を装備したわけでもない。原作通りに製作したガンプラで、あの一撃を防いだのだ。

 ありえない、と思いたいが……これが現実。

 

「でもさ、君のアレ……GNハイパーメガランチャーだっけ? ホント、アレは凄いよ。ボクの知り合いにアレと同じくらいの威力で撃ってくる兄弟子ならぬ年下の子がいるんだけど、あの子よりも速く溜め、速く撃ってきたのは驚いた。やはり捨てたもんじゃないね、今回の大会は」

「……見抜かれていたのか。オレが奇襲をかけるのを」

 

 ヨハンは少し悔しそうにエイキに問いかける。

 あの時に妖刀システムを発動していたのは、動かない自分にオレが仕掛けるのを待っていたから。ヤツは分かっていたんだ。オレがどんな風に動き、どう仕掛けるのかを。

最大の一撃を斬ったのも、その威力までもが……知っていたから。

 まるで掌の上で踊らされた気分だ。

 

 苦虫を噛み潰したようにヨハンはジッと答えも待つ。

 GNメガランチャーは暫く使えない今、彼に対する勝率の見込みがない。

 負けたんだ、とヨハンは思った。

 

 すると、エイキはちょっとした間を置いて、口が開く。

 

「……正直言うと、そうだね。君がガンダムスローネアインを使用するときから、かな。ボクの使うストライカー・カスタムは接近戦用のMSだからどうしても遠距離戦のMSに不利な状況で挑まなくちゃいけない。だから敢えて待っていたんだよ。場所もわからない中で君が撃てば場所も距離も明らかになるからね」

「そ、そこまで……予測していたのか……」

 

 その述べた言葉に悔しいをすっ飛ばして、驚愕を覚える。

 あっさりしすぎるのもアレだが、ヤツの予測する範囲が大きすぎだ。

いくら世界選手権に出場したことのあるからといって、そこまでの考慮を頭の中に詰め込むなど、ガンプラを……ガンダムを愛していなければ、到底果たせない所業のはず。

 

 ヨハンはそこまで考えた後に、ふと思想が浮かび上がる。

(……そうか、あのエイキとやらがあそこまで強いのは、ガンダムを愛しているからなんだな。それなのにオレというヤツは、自分のガンプラに愛や信頼にすら置いてなかった。弟や妹にカッコいいところを見せてやろうとしたばかりに、ガンプラに対する思いの筋が見えてなかったんだな。……どおりで強いわけだ)

 

「さて、ボクはまだ戦えるけど君はどうする?」

「……正直、ここでサレンダーしたいところだが、生憎……弟や妹に無様な負け姿を見せたくないのでな。()らせてもらう」

「そうこなくてはねっ」

 

 ストライカー・カスタムの妖刀システムはまだ続いていた。

 基はEXAMシステムを手本として独自に開発された機能だけに、俊敏された動きにはキレがある。損傷が多く、バランスがとりづらそうに見えるが、それで戦闘に劣るほど彼は甘くはないだろう。

 

 現にGNビームライフルで射撃された熱線が、ストライカー・カスタムのツイン・ビームサーベルによって弾き飛ばされていたのだから。その光景から「機動戦士ガンダムSEED」に登場するフリーダムがラケルタ・ビームサーベル二刀流で、プロヴィデンスのドラグーンによるオールレンジ攻撃を斬って防ぐシーンを彷彿させてくれる。

 

「……っ、負けて……たまるか!」

 

 切羽詰るヨハンは、咄嗟の判断で迫りつつあるストライカー・カスタムに後方に下がりつつGNビームライフルで牽制し続けた。

 ―――だが弾かれる。ヤツに、射撃は効かない。剣術も、話にならんな。

 戦慄にさえ感じるヨハンの焦りが、そう語ってくる。

(強……すぎる、だろ……ッ)

 機動力も背を向けないで退きながらでは何れ追いつかれてしまうだろう。

 かと言って背を見せれば何をしてくるか分からない。

 

 これが、真にガンプラを愛するファイターの力だというのか。

 と、ヨハンは痛感する。だが、力の差を知ったところで、ここで終わるような自分ではなかった。

 

「……―――GNメガランチャー、稼働」

「……!」

 

 エイキは「冷却時間がまだなのに、撃つのかっ?」と言動を放つが、今のヨハンからすればどうでも良かった。これで決着を付けさせたかった。

例え……この一発でGNメガランチャーが大破しようと、次の戦いに勝つことが出来なくとも、ヨハンは少なくとも今は、ムロト・エイキという少年を倒したいと願っていた。

 これほど戦いに対して楽しいと感じさせ、勝ちたいと思ったのは、ここに来てガンプラバトルを始めたあの頃以来だ。

 弟や妹とのあの楽しかったあの時間を思い出させてくれる。

 

「……―――これで仕留めるっ」

「させるかあぁぁ!!」

 

 照準を合わせられたエイキは、瞬時―――瞳を見開いた。

 まるで種子(SEED)でも割れたかのように……

 

「それでもボクはっ、守りたい世界があるんだあぁぁ!!」

 

 GNメガランチャーから放たれるGN粒子がストライカー・カスタムの頭部に被弾し、ヤツの悍ましい空気が止んだ。おそらく妖刀システムが途絶えたのだろう。

 だがしかし、エイキは止まらなかった。頭部を失ったストライカー・カスタムのツイン・ビームサーベルをガンダムスローネアインの胴体に突き立て、アインはそのまま熱線を受け入れた。

 

 そのシーンがちょうどプロヴィデンスがフリーダムにやられるというシチュエーションと同じ感じに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 勝者と敗者が決まったこの時、観戦していたファンたちからの大きな盛況が流れ始めてきた。

 エイキとヨハンはその中で互いのガンプラを回収するなり、熱い握手を交えて会場から退いた。会場内のフロアに辿り着くなり2人は自分たちを待っててくれた人たちの下へ向かっていく。

 

 ヨハンは少年少女……おそらくは弟と妹なのだろう。弟は何やらスネてプンスカと怒っており、妹の方は何故かエイキの方へ向けて目付きを鋭くしながら睨んでいた。

 

そんな中、エイキはというと―――

 

「待ち構えてたぞ、エイキ君!」

「た、タツヤっ?」

 

 バトルしているわけでもないのに、何故かグラハム化しているタツヤ。

 たぶん、さっきの試合……ザクウォーリア使いのファイターと戦って()ったんだろう。

 エイキは彼の変わり様に驚いて思わず苦笑いする。

 

「先の戦いは実に素晴らしかった、おめでとう」

「あ、ありがと……。でもあれは危なかったな。あそこでGNメガランチャーを撃ってこようとしてくるんだから驚いたね。避けるのも間一髪だったよ」

「だが勝てたのだろう? それでこそ……私が認めた熱き宿敵(ライバル)だ。抱きしめたいな、エイキ君」

「い、いや……それは遠慮しとく」

「ん? 残念だ」

 

 今一瞬だけ危険な匂いがしたのだが、気のせいであろうか。

 いや、気のせいでありたい……と、エイキはそう願う。

 最近になってタツヤの変化が大きくなっていくような感じもするのだが、まさかソッチ系に目覚めたとか、じゃないよね? ノーマルだよね?

 

「タツヤ……」

「どうしたんだね、エイキ君」

「……ボクは……君がどんなになっても友達でいるからね」

「急になんだ、頭でも打ったのか?」

「うん、そうかもしれない」

 

 タツヤは今の言動に不可解そうに手を顎に当てて首を傾げながら考える仕草をする。

 そんな動きにボクは何故かお腹が、というか胃が痛くなってきた。明日から胃薬が必要になりそうだ。

 

 そして改めて思う。

 

 ボクは……ムロト・エイキは、ユウキ・タツヤが苦手だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、マシマ・セイジことマシュマーはというと……

 

「どこにいるのですかあぁぁ! ハマアァァンンさまああぁぁ!!」

 

 と、道端で叫ぶ。

 

「ひっ」

 

 一回戦の終了を機に帰宅しようとしたハマーンとミネバ。

 悲鳴を上げたかのように声を出すハマーンを、ミネバは心配そうな瞳で問いかける。

 

「ハマーン、大丈夫?」

「だ、大丈夫だ、コトリ。ただのしゃっくりです」

「無理だけはするでないぞ?」

 




お久しぶりです、ガンダムファンもとい読者の皆さん!

今回は以前と同じように活動報告からの要望で、ストライカー・カスタムとガンダムスローネアインを出させていただきました。4話までの話でSEED系の機体ばかりでしたので、そろそろ宇宙世紀やOOあたりの機体を出さなくちゃな、と思い選考しましたが、如何だったでしょうか? (速くバイアラン・カスタムを出したい。

あとパロキャラ……ZZの忠義の騎士道さんとミネバ様、そしてOOの三兄弟など豪華ゲストの登場で、作者としては満足ですね(特にマシュマーがw

……ここからは私情による話になりますが、アニメ・ガンダムビルドファイターズトライでトランザムしていたキュリオス「MA」に、あのライトニングが当たり前のようにMS状態で追いつくシーンを見たのですが、トランザムとは一体……何だったんだろうか。
それが疑問に今も思っております。

それでは感想・批評・誤字脱字などがありましたらお願いします。
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