マイナー好きの彼は無双を試みた   作:赤須

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第6話

「オレはなぁ、スペシャルでっ、模擬戦で負け知らずの! エリートなんだよぉ!!」

 

 この人物はあらゆる模擬戦においても、守りが硬く、並外れた反射神経、そして揺るがぬ不死身っぷりにより、模擬戦でも大きな戦果を繰り出していた実力者。

だがしかし、彼のその力の源とは……ハイメガキャノンやサテライトキャノンなど膨大なる一撃を喰らっても生き抜いて見せた激運にあると推察される。

 

先ほど述べたハイメガキャノンやサテライトキャノンのみならず……

 

ガンダム試作2号機のアトミックバズーカ、

 

デストロイガンダムのアウフプラール・ドライツェーン、

 

デビルガンダムのメガデビルフラッシュ、

 

ガンダムキュリオスのTRANS-AM 起動、

 

そして……バンシィのNT-Dからも撃墜を逃れたほど……

 

 

 

 そう、まるで機動戦士ガンダムOOに登場する「不死身のコーラサワー」の再来とも言うべきか、その幸運がこれまで幾多における戦場を彼は生き残ってきたのだと物語っている。

 そんな彼に付いた渾名とは――――――

 

――――――不屈のコカサワ……

 

 

 

 

 

「……おっ、と」

 

と振り被るであろう敵機のソニックブレイドを難なく躱すムロト・エイキ。

 

続けざまに斬り込もうとしても……当たらない。

 

フェイントを掛けた……と見せかけての二重フェイントも……当たらない。

 

もう自棄になってソニックブレイドを振っても……当たらない。

 

刀身から粒のような黒い塊が飛ばされ、爆発するが……当たらない。

 

「……エリートが、なんだって?」

「何じゃそりゃあああ!!」

 

と声に出しても……当たらない。

 

何故ならば……

 

 

 

―――このMSの速さに追い付いていないから―――

 

 

 

 このガンプラは一年戦争末にジオン軍がペズン基地で開発され、この機体は後に「ザクⅢ」のベース機として生まれたMSである。「ザクⅡ」を発展させて向上したその性能は、ザクとは思えないほどの桁違いな力を発揮させた。

 

 各関節部にはマグネット・コーディングが施され、高い機動力を持つようになり、ジオンに使われる流体パルスシステムから地球連邦軍製の駆動形式に用いられるフィールドモーターを採用したと言われている。

 

 武装は当時ザクには配備することすら儘ならなかったビームライフルとビームサーベル、専用ブルパップガン、専用ヒートホークなどを装備し、近接距離・中距離に優れているため、ザクでは到底成し得なる事が不可能だったとされていた。

が、しかし……これらを使いこなし、ガンダム5号機と相対した―――

 

 

 

 

 

―――機体(ザク)が現れた。

 

 戦闘ロボットヘビーメタル・重戦機エルガイムの操縦席(コクピット)に使用された架空の技術として登場した全天周囲モニター・リニアシートを搭載しているため、全天的に周りをメインカメラからCG合成として敵機やデブリを認識させることが可能。

 ただし、弱点としてガンダムF91による質量を持った残像(M.E.P.E.)に弱い。よって気を付けておくべきことは、敵の動きをモニターに頼るのではなく、感じ取ることが大切で、一言いえば、このMSはパイロットの腕を確かめるような機体である。

 

後に多くの機体が輩出されてきたのも、この機体があってこそだと言えよう。

 

この次世代への導き手となったザクの名は……

 

 

 

『機体名:MS-11アクトザク』

 

 マレット機に改造されたこのアクトザクが、吹き荒れる雪原の中で駆動音を唸り上げながら専用ヒートホークの刃が敵機の装甲に傷を入れる。

 

「この不屈のコカサワに傷を入れるたぁ……やるじゃねえのっ」

 

 自身の腕に酔っているのかニヒルに笑う男性―――コカサワ・リクがAEUイクナト【デモカラー】を奔らせ、地にソニックブレイドを突き立てながら反動による慣性を促した。

それに対し、アクトザクを操縦するファイターことムロト・エイキは、

 

「なるほど、そのガンプラはどうやら硬さを主として改造しているのですね。斬ってみてわかります。それと雪原を利用した環境の中で、ソニックブレイドを振るう時に刀身から何かが飛ばされたのを見ました。おそらくは弾薬が仕込まれているのかな?」

「……っ」

 

さっきまで笑みを浮かべていたはずのニヒルなコカサワから笑いが消えた。

 対するエイキはアクトザクの持つ専用ヒートホークが更にイクナトを陥れていた。狙いは重装甲にとって必要な重さを支える関節部分。

 人間の五指五体の間には各部位の関節があり、それらが体を動かすときに必要な組織といれよう。ガンプラもそれと同じで、先ほど述べた必要な組織を潰せば、いずれにせよ敵を沈めるのには十分すぎる手際であった。

 

「こ、こんのぉ……!」

 

 などと最後の奥の手と言うべきか、最後まで繰り出さなかったフルアーマーシステム特有のパージ機能を展開させ、軽装備となったイクナトが俊敏された動きと共にソニックブレイドを振るってくる。

流石は不屈のコカサワと名乗るだけあって無駄にしぶとい。

が、ムロト・エイキはそれを楽しんでいた。

 

「―――遅い」

「……なっ!?」

 

 イクナトからの猛攻が止んだこの瞬間の隙を逃さず、回避から攻撃に転じたアクトザクの専用ヒートホークがイクナトに切り刻む。それがどれだけ機体にダメージが掛かるかは喰らってみて分かるように、関節部位が破損した今……コカサワは動けないのだ。

 

機能(のう)は動いても機体(からだ)が動けないのでは、考えることはできても、行動に移ることが出来ない……即ち―――

 

「引導を渡してやろう……このボクがな!!」

「俺は! スペシャルで! 2000回で! 模擬戦なんだよおおお!!」

 

 関節部位を集中的に狙い続けてきた甲斐もあり、全てが破損し、五体満足が見事に斬り降ろされる。終には、不屈のコカサワが崩れ落ちていた……

 

「……いくら模擬戦で負け知らずでも、試合とそれとでは話が違う。出直してきなよ」

 

第7回 ガンプラ選手権 第3ブロック日本代表予選・2回戦

 

ムロト・エイキVSコカサワ・リクの勝敗はエイキの勝利に収まった。

 

「さて、と……ガンプラも回収した事だし、タツヤの方を見に行ってみるとするか」

 

 試合を終え、尊敬している悪役(ラウ・ル・クルーゼ)の名台詞を言えたエイキは、満足気になって近くのロビーへ辿り着くなり、そこから流れる映像を基にタツヤの様子を見てみた所、どうやらタツヤはあのアレックスと相対しているようだ。実力的に考えるとタツヤの方が上だろうし、やられるのも時間の問題か……

 

 

 

 

 

『行くぞっ、トゥーッ、ヘアァア!!』

 

 ∞ジャスティスのビームシールドの盾からシャイニングエッジを手に取り出し、ザクアメイジングに向けて投擲する直後、それを察したタツヤは持ち前の反射神経で易々と躱す。

 

『燃え上がれ、ガンプラッ……今日の私は、阿修羅すら凌駕する存在だ!』

 

 その一言を基にタツヤはザクアメイジングに搭載されているロングライフルを宇宙空間の中で体を反転させた見事な動きと共に狙いを定め、撃ち放つ。

 

『当たるかっ、そんなもの!』

 

 流石はアレックス。タケルの友人を務めるだけあって、タツヤの連撃をMSの機体とファトュム―01に分離させた特異戦法で何発か回避していく。が……それもまたタツヤには通用しないことをエイキは知っていた。

 

『ならば……これでどうだ!!』

 

 反転させた状態であったザクアメイジングの態勢を元に直し、タツヤは∞ジャスティスに追撃するためアメイジングブースターの推進力を底上げに……手にしていたロングライフルをハンドガンに持ち替えながら早撃ちを繰り出していく。

 その狙った先が敵機本体ではなく、宇宙空間に帯びる数多の小惑星(デブリ)にだった。

 

『いったい、何を考え――――――』

 

 

―――タツヤの銃弾が途方もなく現れてアレックスの行く先を奪い、

 

 

―――身動きが取れなくなったため、牽制に振り返ようと身を乗り出した瞬間……

 

 

―――ハンドガンから放たれる弾丸が∞ジャスティスの胸元を弾かせた。

 

 

 

『ぐ……なんだと!?』

 

 ∞ジャスティスにはヴァリアブル・フェイズシフト装甲を搭載しているため、ハンドガンによる実弾のダメージは低かったが、卓越な回避に銃弾が当たるなど、アレックス・ザラには到底考えられなかった現状であった。

 しかも当たった感触から正面からの衝撃とは思えなく、ファンネルかビットでも備えているのかとアレックスは疑ってしまう。

 

 

 

それを映像越しに見ていたムロト・エイキはどことなく察し始めた。

(……そうか、ハンドガンの銃弾を小惑星にワザと当てて弾道を曲げたんだ(・・・・・)。跳弾を利用するとは、タツヤも腕を上げたな)

 ハッキリ言っておくと、跳弾を使っての敵を仕留める戦法は、かなりの技術と空間認識能力がなければ勤まらないのだ。それに一朝一夕で出来るような芸当じゃない……あれは。曲撃ちは……!

 

 ∞ジャスティスを操るアレックスはその着弾に怯み、隙を生じた瞬間……追撃のためタツヤはハンドガンをヒートホークに切り替え、動き出した。

 

『も、もももうヤメルンダッ、お、お前の欲しかったものはそんなものじゃ……!』

『フッ、何を世迷言……私の欲しいものはただ1つ、純粋なる勝利だけだ!!』

 

 凄まじい気迫と猛攻に∞ジャスティスも流石に躱すことが限界に達したようで、胸部に着弾した直後、動きだしたザクアメイジングはヒートホークで火花を散らせながら一撃を加えると、∞ジャスティスは一閃の灯と共に爆ぜ去った。

 タツヤは宿敵と書いて愛と呼ぶほどのガンダムを倒せて……実に楽しそうで何よりです。

 

「相変わらずガンダムに容赦ないなー。先週のザクウォーリアの時は止めを刺さずに終わらせたのに。…………きっと愛を超越し過ぎたんだ、タツヤは」

 

 でもあれ、タツヤのザクアメイジング……チューンされているみたいだし、以前よりイオリ・セイたちと戦った時に比べてちょっと速くなっていたのでわかる。

 ガンプラバトルの技術も相当キレが増しているみたいだし、きっとタツヤが期待しているセイ君たちの影響なんだろうな。

 

―――そう、タツヤは今も成長しているのだ…………

 

 

 

「……いいなぁ」

 

思わずそう口にしてしまう。

 

 強すぎるが故に、上に昇りすぎたが故に、次に何を目指せばいいのか、このムロト・エイキには理解できなかった。強すぎて立ちはだかるライバルも、師も、ラルさんも、かの有名なイオリ・タケシですらボクに適うことすら出来なくなり、戦っても自分に勝てるファイターがいなくなってから、戦意の潤いに渇きが次第に募ってきていた。喉が渇けば水を欲するように、エイキもまた戦いと言う名の潤いを欲していた。全てはこの潤いを満たすために……

 

圧倒的な力っていうのは……ツマラナイモノである……

 

「…………あれからタツヤと出会って3年も経つのかぁ」

 

 師に言われ、全国に旅するようになったエイキはちょうど3年ほど前にガンプラ塾と言うものを知り、そこに行って少しの期間だけ通うことになったエイキはタツヤやアランなど塾生たちと出会った。

 

 マイナーな機体を使うようになったのもその頃だ。タツヤがザクアメイジングというベタなガンプラを使用していたものだから、自分も、と用意したのがエビル・Sで……戦った時のあの感覚はホント、心地よかった。きっとその影響なのかもしれない。ボクがマイナー機で無双してみようと試みたのは……

 

「ん? なんだろう。あれ……」

 

 イオリ・セイ、レイジ組、タツヤに次の試合の対戦相手になるであろうサザキ・ススムが勝ち進んだのを確認したエイキは他のファイター達の様子を伺ってみたのだが、これがどうも信じがたい決着の仕方を目撃してしまった。

 

 戦っているのは、キララとかいうガンプラ・アイドルだっけ? 確かキラ・タケルさんやラルさんが絶賛している女性だとか。よく見たら観客席でタケルさんがファングループの団体に紛れてめっちゃくちゃ応援しているよ。

……親友の応援よりもアイドルの応援を取ったのか元現役高校生最強ッ。

 

 他にもラルさん経由で知り合ったブライト中尉もいるが……『オォォ――ル・ハイルッ・キッラァーラァア―――!!』と叫んでいるな。

……アンタはどこぞのオレンジ君か。

 

対するは、スーパーガンダム使いのヘンケンさんは苦戦している模様。

 だが信じがたいと思ったのはそこだ。ヘンケンさんはスーパーガンダムの使い手として有名な実力者。その彼が新参で、経歴もないアイドルに陥れられているのだ。

ダークホースとかでヘンケンさんを倒すとかありそうな話はなくもないが、その戦い方が気になった。

 

『オォォ――ル・ハイルッ・キッラァーラァア―――!!』

 

「ヘンケンさんのガンプラ……動きがおかしい。キララっていうアイドルも相当な実力を持っているみたいだけど、戦い方……まるでタケルさんみたいだ。あのガンプラの作りも完全にタケルさん仕様だし」

 

『オォォ――ル・ハイルッ・キッラァーラァア―――!!』

 

 見ればヘンケンさんのスーパーガンダムは手足がボロボロとキララの攻撃で、崩れ落ちていく姿が目に浮かばれる。直撃ならまだしも―――掠っただけで(・・・・・・)機体に損傷を与えるとか、普通はありえない。

ユニコーンガンダムに搭載されているビームマグナム級の威力ならともかく、たかがMMI-M633ビーム突撃銃であれはちょっとなぁ。

どこか、調子でも悪いのだろうか。

 

『左舷、弾幕薄いぞ!! 応援団、なにやってんの!』

 

「まあ、それでやられるヘンケンさんもそこまでの人としか言いようがないかな。ちょっと厳しい評価だけど……」

 

『オォォ――ル・ハイルッ・キッラァーラァア―――!!』

 

「って、ブライト中尉どんだけ叫んでいるんですか!」

 

……全く、オレンジ君にも程があるよ。ホントに全く、こういう時に胃薬を持ってきておいて正解だった。

 

 それは兎も角、ヘンケンさんがあそこまで追い詰められているのは、女の子に弱いっていう節もあると聞いたことがあるから、そのせいかもしれない。

 

「それよりも次の対戦はサザキ君か。君のギャンは好きだったがね……ボクも彼に負けない個性的なガンプラを作っておくべきかな。そうなると、ムットゥーにするべきか。いやいや、ズゴックEも捨て難い。ああ、ギャンと言えばそれに対を成すあの機体を使うべきか、うん、そうしよう」

 

などと内なる闘争心を外へと剥き出しながら微笑を浮かべるムロト・エイキであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第3回戦に備えようと自宅へ赴いたサザキ・ススム。

次の対戦相手は現役高校生最強のユウキ・タツヤに並ぶほどの実力を持ったマイナー使いとして有名なムロト・エイキが今大会・3回戦の対戦相手だ。噂ではユウキ・タツヤをも超える力を持っているんじゃないかと言う話があり、それを聞いたサザキは当然勝ち目がないと悟り始めた。もちろん、自分の力に自信がないわけじゃない。相手が悪すぎるのだ。

 

 マイナー使いというだけあって、あまり知られていない未知なるMSやMAを使いこなし、策略や戦術に加え、機体を対戦ごとに変えてくる。

これがどう恐ろしいのかというと、まず1つが情報戦において必ずこちらに不利な状況へと持ち込まれること。一試合ずつ変えられると、相手に対する対抗策や戦法が読み取れず、最悪の場合、何もできずに終えてしまうケースが多い。

 

 そして2つ目は相手の力量が自分よりも遥か上に達するファイターであること。世界大会に出場したという経歴は、逆シャア風に言えば世界選出者は伊達ではないってことだ。

 

「ど、どうすれば……あのムロト先輩に勝てるというんだ。僕のギャンじゃあ太刀打ちできないじゃないか」

 

 必ずしもギャンで出ることはないのだが、このサザキはギャン使いとしての誇り(プライド)があり、彼にとってギャンが全てであった。だがこの機体は幾つかの欠点があり、元は量産機として開発されてきた故に性能が量産機特有の安易さ、そして接近戦に主とされて練られた戦術とニードルミサイルにビームサーベルという数少ない武装に加え、ハイドポンブという奥の手しかギャンに搭載されていないというのが、この機体の弱さにも繋がるであろう。……やはり、ここは重層に兼ねて武装を増やすべきか。

 だがそれでムロト・エイキに通用するのか……否や……

 

 

 

とその時、

 

 

 

『―――あのムロト・エイキを図に乗らせるわけにはいかんな……サザキ・ススムよ……』

「ひっ!? だ、誰なんだい……」

 

ふと聞き覚えのない男の声に思わず振り返るサザキ。

視界に写るその光景には1人のジオン兵……それも位の高そうな軍服を羽織った男性が自分のすぐ傍で立っているではないか。

 

『私か……私はマ・クベ司令官だ。君のギャン使いとしての名君はこの目でよく見ているぞ』

「ま、まさか、本人……?」

 

そう尋ねてみると、マ・クベと名乗る男は首を縦に振った。

変に全身が透けているから幽霊かスタンドか何かかと思ったが、どうやら本物らしい。

 

 マ・クベとは、サザキが使用しているガンプラ……ギャンの搭乗者として有名なガンダムのキャラで、キシリア配下の基、ヨーロッパ方面の司令官を務め、オデッサ作戦で撤退するまでは地球上の鉱山採掘が任務だった。

 条約で禁止とされていた水爆を使用したり、味方もろとも排除しかねないこの人物の性格は正に危険だとも言われていた。だがしかし、ニュータイプの覚醒に障壁なしで突き進むアムロ・レイによって逢えなく戦死を迎えるという哀れなキャラだ。

最後のあの壺をキシリアに届けるなど名シーンがあるが、あの壺……こっちの世界では4万円しか値打ちがないらしい。ホントに哀れすぎる。

 

「そのマ・クベさんは……僕に何の用で……」

『……うむ、私がこの場に現れた理由とは、君がヤツ……あのムロト・エイキを倒すための援助だ。聞けばヤツは相当な実力者だと聞くのでな。君1人では心細いと思って馳せ参じたのだよ』

「は……はぁ……」

 

あまりにも非科学的な現象が起こったことにサザキは訝しく相槌を打つが、対面するマ・クベは気にせず懐からHGサイズの箱をサザキの手に渡される。そのガンプラとは、

 

 ジオン公国軍が一年戦争時に開発されたギャンをベースに発展させて開発したMSで、アクシズにて完成させた試作型MSである。先代のギャンと比べ、主に武装が大きく強化されており、ニードルミサイルを搭載したシールドや試作ビームサーベルなどが変化されている。さらにアナハイム・エレトロニクスから裏でムーバブルフレームやリニアシートなどの第二世代における技術が入り込まれていた。

 

 しかし、それでもだ。量産機目的で開発を目論んだものの、全面的な性能が低く量産にまでは至らず……加えて開発までもが中断してしまったという―――

 

幻の機体であると……その名は―――

 

 

 

「―――……ギャン改っ、しかもリアルタイプじゃないか……!!」

 

 

 

そう、幻の機体にして、リアルタイプなど存在しない……影のようなMSであった。

普段は二頭身で有名なSDガンダムGジェネレーションやオーバーワールドなどゲームにしか登場しておらず、機体の性能としても接近戦には強いがそれ以外は微妙と言わざるを得ない武装面で……やはりと言うべきか、量産向きではないと思われてしまう。

 

(だ、だが僕がこの機体を使えば……ムロト先輩にも……!)

 

これに足りない部分を追加して、アレンジすればギャン改で彼と渡り合えるどころか10年は戦えるんじゃないのか……っ?

と、感じ取ったサザキの表情をマ・クベは見て、

 

『それでいい、サザキ・ススムよ。そのガンプラは……いいものだ』

 

などと満足気に含み笑いをする。

 

『……ではな、私はあの方の下へ帰らねばならん。暫しさらばだ』

「マ・クベさん……!」

 

そして、マ・クベは次第に姿が薄れていき、雲散霧消の如く去って行く。

サザキは彼の消えていくのを見届けた後、薄らと笑みを浮かべた。

 

「……勝ったぞ先輩、この戦い。僕の勝利だ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、エイキ君。次の試合……サザキ君が相手だね」

「おうふ……」

 

 二回戦から数日経ち、聖鳳学園の模型部でガンプラ製作していたムロト・エイキにタツヤはふと思い付きに尋ねてみる。

……確か前にエイキ君はサザキ君の事を気に入っていると言っていた。エイキ君ほどのファイターが気にしている相手、しかもギャン使いとして名を馳せた彼と戦うんだ。エイキ君がサザキ君にどんな思いで決着に赴くのか、つい考えてしまう。

 それにもし彼に勝てば……いや負ける通りがないエイキ君とは次の次、4回戦準々決勝で逢い見えるのだから。気になっても何らおかしくはないはず。

などと疑念に感じていたタツヤに対し、エイキは無関心な表情で頷いた。

 

「どうだい、気に入っていたというサザキ君と試合をする気持ちは」

「相手が相手だからねー。ギャンを使う彼には敬意を払わないと、そう……敬意を」

「フッ、流石は我が宿敵(ライバル)。それはそうと、そのガンプラは……?」

 

 話している途中でふと彼のガンプラ……彼の力作たちに紛れて飾られてあったあるガンプラに目が留まった。タツヤは気になってムロト・エイキに聞いてみると、エイキは作り掛けのガンプラを置いて、隅に置いてあったガンダム(・・・・)を懐かしむように見つめる。

 そのガンプラはあまりにも美しく、端正に作り込まれたその完成度には無駄が無い。そして磨きかかった達人の業と共にまるで格の違いさを見せつけるかのようなガンプラであった。

これを見たタツヤは唖然と口を空けた状態で驚愕する。

(二代目メイジンと同等……いや、それすら超える出来栄え……)

図体からMSなのは間違いないが、このガンプラは彼の好むマイナーな機体ではないことは確かだ。

 

「これは……」

 

―――……見れば見るほど、凛としていて見惚れてしまうほどだ。

なんせ、そのガンプラに搭載されている紅く輝くフルアーマーユニットはもはや生半可な攻撃では通じないであろう装甲で、内部構造から察するに各装甲にはスラスターが内蔵されているため、機動力にも申し分なく発揮されるはず……

 

 そして、背には4基ほどのファンネル。これにはおそらくファンネルによるIフィールドが展開できるようにと予想されるが、そのままでも大型ビーム砲として放てるように設計されてるみたいだし、ファンネル自体の発射後にビームが撃てるよう小型のビーム砲までもが備わっている。

 

……正に飛ぶ要塞。

 

まるでパーフェクトガンダムと思わせるかのような壮大さが目に浮かばれる。

パーソナルカラーはおそらくエイキ君の異名「緋色の流星」に模させた緋色の装甲……

だが、タツヤはこれを知っていた……このガンプラが何の機体なのかを。

 

「フォーエバー、ガンダム……!」

 




ガンダムファンの皆さん、お久しぶりです。
久々の更新で驚いたんですが、お気に入り数が100を超えていたとは思いもしませんでした。
始めはエクザスやバイアラン・カスタムが活躍した物語を書きたいな、と思って書いたSSなんですが、いつの間にかこんな展開に……感無量です。
マイナーな機体を軸に物語を進めようと思ったのもポケモンがきっかけですしw

話は変わりますが、今回の話では新キャラについて如何でしたか?
コカ・コーラさん。オレンジ君。そしてマ・クベ本人の登場……それに加えてここのサザキ君がスタンド使いという疑いが……

アニメの方も遂にフルクロスが出ましたねぇ。ホントあれには感動を覚えました。
いくら補給しなければ長時間戦いに保てないとはいえ、たった1機で圧倒するところは流石はフルクロスと言ったところでしょうか。

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