この世界に転生してから15年が経った。
今世の両親は前世の両親と同じく、私の事をとても大事にしてくれる。
だが、私はどうも物足りない。
魔王はとうの昔に勇者の手によって討伐されているし、魔物だって私の村に現れるのはせいぜいゴブリンくらい。
いくら辺境の村とはいえ、平和すぎるのではないだろうか?
いや、別に毎日が楽しくないわけではないのだ。
むしろ毎日は楽しすぎるくらいだ。
なんせ、私の村にはよく分からないムキムキマッチョのお爺さんや昔は国に英雄と呼ばれたこともあったというオネエ口調のイケメンなど、なかなか濃い面子が揃っているのだから。
それでも、やはり変化のない毎日というものはつまらない。
どうしても、どうせならもっと刺激が欲しいと思ってしまう。
しかも、私が求めている刺激、これがまた厄介なものなのだ。
どうやら私は根っからのM気質のようで、罵倒などの精神的な痛みは勿論、殴られる、蹴られる、と言った物理的な痛みも快感に変換してしまうらしい。
そんな体質であるため、普通の幸せな生活か物足りなくなってしまっている、というわけだ。
何処にでもいる成人男性だった頃はここまでのM気質ではなかったはずなのに。
今では二十四時間三百六十五日、脳が
さらに厄介な事に私はどうも性的なアレコレでは全く発散出来ない体質でもあるらしく、痛めつけられる事でしか自身の欲求を満たせないときた。
私と同じくらいの年頃の少女達は普通、悩みは両親に打ち明けるものだろう。
しかし、流石に私を心から愛してくれている両親に痛めつけられたい、などと言うわけにはいかない。
そこで私は思いついた。
村を出て、私を知る人物がいない所で痛めつけられてこよう、と。
これなら両親に心配をかける恐れは何処にもない。
とまあ、そんなこんなで今日までにかけて、私は痛めつけられるための旅に出る準備をしてきた。
……自分で言うのもなんだが、字面が酷いな、これ。
両親には旅に出る、としか話していないが、ありがたい事に行動には口を出してこない家庭なので旅に出る事については反対されていない。
そして今日、ついに旅の準備が全て完了したのだ。
後はこの村に関係する人間が何処にもいないところまで行き、自分の脳が訴えてくる欲求を発散するのみ。
ほとんどの友人にも今日旅に出る事は知らせている。
どうやら見送ってくれるらしい。
私の理由さえまともだったのなら感動的な展開なのだが、私の旅に出る理由がアレなので、見送ってくれる友人達には申し訳ない気持ちで一杯だ。
だが、それと同時にまだ見ぬ
ん、村を出ようと思っていた時間になったようだ。
私は、一五年間世話になった我が家と今日まで私を育ててくれた両親との別れを済ませて家を出る。
ふと空を見上げてみると、澄み渡った雲一つない青空が広がっていた。
私の新たな門出を祝福しようとしてくれているのだろうか。
なんだか清々しいような気持ちになりそうになったが、精神がトリップする直前に正気に戻る。
何を考えているんだ私は。
今から自分勝手な欲求を満たすために旅に出ようとしているというのに。
自分の頭がおかしくなっている事に凹みつつも村の門へ向かう。
そんな私を出迎えてくれた人達の中には、先程話題出したムキムキお爺さんやオネエイケメンの姿もあった。
思わず何をしているのか、とツッコんでしまった。
それにしても、やはり私の村の人間はキャラが非常に濃いのだな。
典型的な合法ロリからあんな人間やこんな人間がいるのだがら。
そんな個性的な人間達に見送られながら、わたしは村の外に出た。
ここから、私ことリディア・メイの冒険は始まるのだ。
殆ど見たことのない村の外の景色は、村の中とはまた違った魅力に溢れていた。
それなりに騒々しい村の中では耳を澄ませる事もなかった鳥の囀りが心地良い。
前世で鳥をペットとして飼っていた友人の気持ちが、今ならなんとなくなら分かるような気がする。
村から一番近い町までは歩きで何日ほどだっただろうか。
村長が三日ほどかかると言っていたような気がしなくもないが……
水は持ってきているので1週間は生きられる……はず。
三日くらいはなんとか耐えられるだろう。
そうして草原の中を歩いている時だった。
なんの前触れもなく宙に浮いているかのような感覚が私を襲う。
思わず
「あっ」
次の瞬間には、私はなすすべもなく地面に激突していた。
「……!? ……!!!!」
前世では勿論、今世でも感じたことのない激痛が身体中に走る。
かなりの数の骨が折れているだろう。
内臓も命に別状があるくらいには傷ついている感覚がする。
身体中を地面に打ちつけたショックからなのか、声は出したくても出せない。
動かない体を必死に動かそうとしながら周りを見れば、おびただしい量の血があたりに飛び散っている。
もしかしたら脳が見えているかもしれない。
何処からどう見ても瀕死だ。
呼吸すらもままならない。
苦しい、自分の体が確実に死に向かっているのが分かる。
なのに、どうしてだろう?
私は自身を襲った痛みが気持ちいいと感じてしまっている。
この快楽をずっと感じていたいと思ってしまっている。
……ああ、良い、良い!
こんな感覚、今まで一度も感じたことがない!
もっと! もっと!
もっとこんな体験をしてみたい!
……おっと、随分長い間脳がハイになっていたようだ。
それから何時間が経った頃だろうか。
私はやっと正気に戻ることができた。
冷静になってみると、中々気持ち悪い事を考えていたのだな、と思う。
しかしあれは痛みが気持ち良すぎるのが悪い。
あそこまで快感に変換されるとは夢にも思っていなかった。
そして私は立ち上がり、自身の体を隅々まで確認する。
先程まで死に向かっていたはずの体には、傷一つすらついていない。
これには勿論ワケがある。
私の体は、どれだけの傷を負ったとしても再生するように出来ているのだ。
ただこれは若干ややこしく、不老不死という訳ではない。
成長もするし、老化も多分するし、いつかは寿命を迎える。
ただ、どれだけ体に傷を負っても治る。
そういう変な体なのだ。
それにしても、自分の血液とはいえここまで血が飛び散っているのはグロい。
たまたま通りかかった人間がこれをみたのなら卒倒必死だ。
ま、まあ、これは初めからこういう趣旨の旅なのだから他人の心配をしている場合ではないな。
崖から落ちた事で町の方向が分からなくなったのは痛手だが、周りには森が広がっている。
ここなら私を痛めつけてくれる魔物が沢山いるだろう。
私は、先程感じたばかりの痛みを思い出して顔を笑みで歪めながら、更なる快楽に想いを馳せた。
タイトルの出オチ感よ
続く……かも