チュンチョン…………
昼下がりの時間。
太陽の光が降り注ぐ公園。
クローバーが沢山生えていて、木が所々に生えている自然豊かな場所で、此処に来る者の心を癒してくれるであろう。風が吹くとクローバーが揺れ、海の波のように見える。クローバーが揺れる光景と風の音がこの場に木霊する。
この公園には、木で造られた足場が宙に浮いている。その足場は非常に細長く、何かを通すようにくり抜かれていて、小さな通路のようになっている。まるで何かを転がす為に造られたような、そのような構造に見える。
すると、足場に“何か”が現れた。それは球体で、コロコロと転がっている。それはお店で売ってるような可愛らしいボールだろうか。
「クゥン、キャンキャン!」
そのボールは音を出している。鳴いている。まるで、生きているように。
そのボールは子犬のような、可愛らしい犬のボールだ。
犬のボールは転がる度に可愛らしい鳴き声を出しながら転がっている。その声は正に子犬の鳴き声そのものだ。コロコロと転がったり、足場から別の足場に落ちて移動する度に「クゥン」や「キャン」といった鳴き声を上げている。
更にその後ろから、別のボールも転がって来た。
「ニャン、ニャン!」
そのボールは猫のような見た目だ。犬のボールの後を追う様に転がっている。キャンキャン。ニャンニャン。犬と猫の鳴き声が木霊し、公園は癒しの音が響いてゆく。
「ッ! キャン!」
「ニャ~」
犬と猫のボールは何かに反応したような鳴き声を上げる。ボールの視線は足場の前方に向いている。ボール達は何かを見つけたのだろうか。視線の先にはキラキラと橙色に輝くクリスタルが置いてある。まるで八面体のトパーズのような、綺麗な宝石だ。
「キャン!」
「ニャン!」
犬と猫のボールはそれに向かって、スピードを上げて転がり始めた。まるでそのクリスタルを欲しいと言わんばかりに。コロコロと転がり始める。
すると、前方に足場と足場の隙間があった。普通ならそのまま進むと落下してしまうが、そこまで距離は離れていない小さい隙間である事から、犬と猫のボールは簡単に次の足場に着地した。そのまま転がり続け、先に犬のボールが橙色のクリスタルに触れた。
「キャン! ワン!」
「ニャウゥ……」
橙色のクリスタルを手に入れた犬のボールは嬉しそうな鳴き声を上げた。後からやって来た猫のボールは少しがっかりとしたような表情をしている。橙色のクリスタルに触れられなかった事を悔しがっているようだ。
すると、近くの通路から別のボールが転がって来た。
コロコロコロコロ…………
そのボールはタンポポの上にテントウムシが乗っかっている、不思議なボールだ。犬と猫のボールのように鳴き声は出していないようだ。そのボールはコロコロと少し早いスピードで転がっているのだが、犬と猫のボールとは違う方向に転がっている。
テントウムシのボールが転がる先には、緑色に光る細長い多面体のクリスタルがあった。テントウムシのボールはその緑色のクリスタルに向かっていく。
そして、緑色のクリスタルに触れると、テントウムシのボールは喜ぶように周辺を転がっている。
「キャウウゥゥゥ…………」
「ニャイン…………」
一方、犬と猫のボールは残念そうな表情をしており、鳴き声も残念そうだ。どうやら橙色のクリスタルだけでなく、緑色のクリスタルも触りたかったらしい。だが、緑色のクリスタルは近くの木製の出っ張りに隠れていた事もあって、犬と猫のボールからは見えなかったようだ。
「……………………」
テントウムシのボールは無言で次の足場に行こうとしている。次の足場には、青く光る、迷路のゴールを表すような場所がある。
「ワン、キャン!」
「ニャア!」
犬と猫のボールもそれに続く。コロコロと速いスピードで転がって行く。その様子は何方が先か競い合っているようにも見える。
コロコロと転がって行き、テントウムシのボールが1着でゴールした。次に犬のボールが、最後に猫のボールがゴールした。1着でゴールしたテントウムシのボールは喜んでいるのか、少しばかり跳ねている。
「…………っ! …………」
「キャン!」
「ニャン!」
テントウムシのボールも、犬と猫のボールも、別の足場に向かって転がって行く。別の足場にはハサミや細長い磁石などの不思議な仕掛けが多いが、それでもボール達は転がって行く。
これが、この世界の玉の日常。
どんな玉があるのか、どんな場所があるのか。
少し見てみよう。
犬と猫のボールは可愛い。間違い無い。
次回は2024年12月25日21時00分に投稿予定です。