カンパニー社員の俺は仮面の愚者に人生台無しにされる 作:塊ロック
花火ちゃんのインターン期間が終わった。
思い返せば色々あった気がするがあまりにも色々あったので割愛する。
「お兄さん、お世話になりました」
「おう、おつかれさん。俺なんかの下じゃこの会社がどんなとこか分からなかっただろ」
「営業の仕事何もしてなかったね」
「そりゃ……うん」
お互いに苦笑する。
と言うより俺の激務に付き合わせたが一つも弱音吐かなかったし。
案外適正あるのかもなこの子。
「それじゃあ……またね、お兄さん」
「まぁ会うことは無いだろうな……世界は広い」
「寂しい事言うなー、もう」
「ははは……世の中そんなもんさ」
「それじゃあ……ばいばい」
「お疲れ様」
花火ちゃんを見送って事務室に戻る。
「花火ちゃん……いい子だったな」
室長がしみじみとつぶやく。
「まぁ、あのくらい元気ならどこでもやっていけますよ」
「そうだな」
……ふと、空席の隣の事務机を見る。
「……あれ?帰ってきてない……?」
「ガンズ、見てないのか?あいつ……今行方不明だ」
「えっ」
先月宇宙ステーション「ヘルタ」に出張すると言っていた同僚の顔がフラッシュバックする。
「嘘だろ……」
「お前、ヘルタで会わなかったのか?」
「いや……あの時はそれどころじゃなかったし……」
「……残念だが」
「……そうか」
悲しいとは思うが、涙は出ない。
宇宙は無慈悲だ。
星々を巡り、渡り歩くのが俺たちの仕事ではあるが……それは決して容易い旅ではない。
途中で倒れてしまうことも、往々にしてある。
だけど、
(俺は倒れるわけにはいかない)
果たすべき目標があるから。
金は、まだ貯まらない。
あと、何年俺は戦えば良いんだろうか。
(遠いなぁ……)
果てしなく、遠い。
窓の外を見る。
せわしなく行き来する宇宙舟。
俺は……。
「ガンズ、今日の仕事は?」
「何で室長が俺の仕事把握してないんですか」
「お前が俺達の仕事してねぇからだろ」
「うぐ……」
パソコンを立ち上げて来ているメールをチェックする。
基本的に俺の仕事は依頼形式ばかりである。
(……トパーズからだ)
戦略投資部の高級幹部、トパーズ。
彼女もアべンチュリンと同じく十の石心のメンバーであり一筋縄でいかない人物である。
(俺は……あの人苦手なんだよな)
聞けば、彼女の故郷は不毛の大地でスターピースカンパニーのテラフォーミングで救われカンパニーに雇われたという。
彼女は恩義を感じているが、俺はそうではない。
バックボーンは似ているが抱いている感情はまるで正反対だ。
『市場開拓部営業部門 ガンズ=ロック殿。先日のヤリーロⅥでの調査データ、ありがとうございます。お陰で今回も穏便に事が運びました』
「穏便、穏便か……」
どんなプロジェクトだろうと成功率80%を誇る彼女だが……今回は上の望んだ結末にはならなかったらしい。
「……まぁ、彼女が割と穏健派だからこれで済んだんだろうな」
そして今日もまた資材物流部と警備部門からのヘルプメールが来ている。
ため息を吐きながら席を立つのだった。
「じゃ、行ってきます」
これが、俺の変わらない日々。