カンパニー社員の俺は仮面の愚者に人生台無しにされる 作:塊ロック
「……えっ?」
ある日。
例にもよって例のごとく花火ちゃんが遊びに来ていた。
「だから、デートだよ〜」
「……誰と?」
「お兄さんと、花火が」
「……マジで言ってんの?」
「大マジだよ〜」
俺は少し考えた。
……花火ちゃんはどう見積もっても10代前半くらいの見た目をしている。
そんな子と24の大人が並んで歩いてたら割と通報案件ではないだろうか。
「……ちなみに、どこへ?」
「仙舟!」
仙舟と聞いて、少し考える。
カンパニーとも交易があるから俺が行っても門前払いはされない。
そして、長命種と呼ばれる宇宙全体を見ても長い寿命を持つ種族が当たり前のように生活している場所でもある。
……外見の年の差なんて気にされないのかも知れない。
「仙舟か。俺も仕事で何回か行ったことがあるけど……良い場所だと思うよ」
「決まり!ちょっと準備があるから……この日!一緒に行こうね!」
卓上のカレンダーに花火ちゃんが赤ペンで花丸を描く。
その姿が年相応に見えて思わず笑みが溢れる。
「……わかったよ。楽しみにしてる」
「む……!花火子ども扱いしてる!?」
「そんなことないよ」
「もう……!」
プンプンしだした花火ちゃんを微笑ましいく思い眺めていると……花火ちゃんがデスクに座る俺の背中にしなだれかかってきた。
「え……」
「あんまり子ども扱いしてると……足元、すくっちゃうよ」
「っ……!?」
ゾットするほど妖艶な声。
普段のティーン相応な高い声ではない。
粘り気を孕んだ艶っぽい囁き。
背筋を撫でられながら、脳を揺さぶられたようや気がした。
「……なーんてね?」
「………………」
「あ……やり過ぎちゃったかな」
「役者……と言っていたのは、本当みたいだな……?」
「……変なところで鈍いね、お兄さん」
くすり、と花火ちゃんが笑う。
「お兄さんが望むなら、花火はどんな役だって演じてあげるよ?」
「え?えぇ……?役かぁ……」
しばし考えて。
「思い付かないや」
「欲がないね」
「今まで我慢してたもんで。強いて言うなら……君がこうやって俺の近くに居てくれる事が望みかな」
「……プロポーズ?」
「………………は!?いやいや、待って!今の無し!」
ニヤニヤと表情を歪める花火ちゃんの顔を見て、自分が何を口走ったのかに気付く。
「無しで良いの?」
「うっ……ぐ、ぬ……」
「うぅ……お兄さんは花火と一緒にいたくないんだ……」
「違っ……」
「違うの?」
「違……う……」
「えー?声が小さくて聞こえなーい」
「ち、違う……!花火ちゃんが居てくれて、俺は嬉しい」
そう言うと、花火ちゃんは俺の唇に指をそっと添えた。
「花火。ちゃんは禁止」
「え……?」
「花火って呼んで」
「……じゃあ」
添えられた指をとって、俺の指を花火の手に絡めた。
「君も、お兄さん禁止」
「え……」
「返事は?花火」
「え、えっとぉ……」
今度は、花火が顔を赤くしてしどろもどろになる。
やった、してやった……と良い気になっていると。
「……ガンズお兄ちゃん」
「っ」
ちょっとした変化球を投げられて思わず動揺してしまった。
潤んだ瞳の上目遣いと、弱々しい呟き。
ある意味犯罪的な姿に何か変な気分になりそうだ。
「……ぷっ。あはは!」
「くっ……はは、負けた……」
お互いに吹き出す。
「花火に勝とうなんて10年早いよ?」
「あー参った参った。全く、本当に何だって演じられるんだな」
「どう?凄いでしょ」
「凄いよ」
天真爛漫に笑ったり、しおらしくなったり、怪しい色気を出したり。
彼女の引き出しに底はないらしい。
「ね。貴方はどんな花火が好き?」
「俺の隣で笑ってくれる君が好き、かな」
「あはは、なにそれー」
「君がどんな役だろうと、本当の君を見せてくれなかろうと……隣にいてくれるなら、俺は嬉しいかな」
「………………」
「勿論サンポもな。アイツもいい奴だし」
そう言うと、花火が俺の頬をつねった。
「いてっ!!」