カンパニー社員の俺は仮面の愚者に人生台無しにされる 作:塊ロック
「それで?花火さんと仙舟へデートに」
「ああ」
数日後。
俺はバーでサンポと飲んでいた。
「すっかりメロメロですねぇ」
「……惚れた弱みだな」
「でも安心しました。お兄さんずっと気を張ってましたしいつか倒れるんじゃないかと思っていましたよ」
「まぁ一回倒れたけどさ」
「そうでした。それでも……僕達と同じ道を歩もうとしている事に感謝したいんですよ」
「そうか?」
「ええ。お仲間は多い方が良いに決まってますので」
「そうか……仲間、か」
カンパニーの同僚たちも線引きがあるというか。
仲間……かと言われると微妙なところは確かにあった。
「……ところで、花火さんに何言ったんです?僕理由もなく蹴られたんですけど」
「えっ?さぁ……心当たりが無いな」
「そうですか……」
グラスを一杯あおる。
酒なんて数回程度しか飲まなかったが……こうして腰を据えて飲んでみるとちゃんと味があるというか。
意外と良いものなんだな。
「それにしても、随分と気に入られましたね」
「そうなのか?」
「ええ……いつもなら遊び相手と言うか……彼女、すぐに飽きるんですけど」
「……取っ替え引っ替え?」
「お兄さんが思ってるほど男遊びしているわけではありませんよ?文字通り遊んでるんです、彼女」
「はあ……?」
サンポの言っていることはよく分からなかった。
もう酔ったのだろうか。
「……お兄さんになら言っても大丈夫でしょう」
「うん?」
「花火さん、自分は役者だとおっしゃいましたよね」
「言ってたな」
「……彼女は、もう自分が役を演じているのかそうでないのか分からないのです」
「………………」
「なので、刹那的と言うか……少し、浮世離れしているのはそのせいです」
「そう、か」
『君がどんな役だろうと、本当の君を見せてくれなかろうと……隣にいてくれるなら、俺は嬉しいかな』
先日花火に告げた言葉。
これが、彼女に響いたのだろうか。
「あ。仙舟行きのチケット買っておかないと」
「忘れちゃダメですよ?彼女ああ見えて引きずるタイプですから」
「忘れねぇよ。女の子泣かしちゃ男が廃る」
スマホを取り出して画面を点け……危うくスマホを落としかけた。
「ちょっと……お兄さんどうしたんです?」
「い、いや……職場からメッセージが来ててな……」
メッセージアプリに1件、あまり見たくない名前から連絡が来ていた。
(アベンチュリン……)
何故彼から俺に向けてメッセージなんて来ているのか。
内容はひと言だけ。
『やぁマイフレンド。前に誘った件、そろそろ答えを聞かせて貰えないかな』
「お兄さん?」
「ああいや……別の部署から配置転換して来ないかって誘いがあってな」
「エッ。お兄さん確か営業ですよね……警備にでも転向するんですか?」
「いや……戦略投資部だよ」
「……どうするんです?」
「前は、断った」
以前の宇宙海賊との大立ち回り。
その後、アベンチュリンから直々のご指名があった。
『僕のとこに来ない?』
あと時は、断った。
今は?
……正直、今の椅子にもう価値はない。
「……受けてみようと思う」
「では昇進ですね!」
「いやー……どうだろうな」
『詳しい話を聞かせてください』
メッセージをそう送ると、すぐにサムズアップのスタンプが来た。
「でも、なんか……前より、全然前向けてる気がする」
「では不肖サンポがお兄さんの昇進祝いのためにこの店でキープしてるボトルを開けるとしましょう。マスター、アレをお願いします」「え?そんな悪いって」
「いえいえ……僕、こう見えて友達は少ないたちでして。今日は朝まで飲みましょうよ」
「……ははっ。たまには良いかもな」
………………ただ、アベンチュリンと仕事をする機会は結局訪れなかったのだが。