カンパニー社員の俺は仮面の愚者に人生台無しにされる   作:塊ロック

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第20話

 

久方ぶりの仙舟だ。

仙舟は惑星ではなく、多くのスペースコロニーや船団が集まる大規模な艦隊群だ。

今回やって来たのは、その中の『羅浮』と呼ばれる舟だ。

詳しく言うと仙舟同盟の六大旗艦のうちのひとつ、らしいのだがどうにも仙舟の文化や歴史はあまりにもややこしく詳しく調べる気にもならなかった。

 

「………………さて、何処にいるのかな」

 

星槎海中枢、と言われている謂わば羅浮の玄関窓口に降り立つ。

あちこちに商売のために奔走する人々が居るが……今回はプライベートで来ているためあの中の一員にはなりそうにない。

 

何人か見知った制服の姿を見て思うところはあるものの、声をかけるようなマネはしなかった。

 

「しかしまぁ……人が多い場所だ」

 

喧騒。

何処を見渡しても人がいて活気がある。

 

(おや、メッセージだ。金人港に居るんだな)

 

金人港と言えば羅浮でも人気のある屋台街だ。

ここからだと少し遠いが約束の時間には余裕で間に合うだろう。

 

(せっかくだし何かプレゼント見繕っても良いかな)

 

彼女には恩義を感じている。

先の見えない暗闇の日々を照らしてくれた。

俺にとってかけがえの無い今をくれた。

 

彼女にとっては遊びの一環かも知れないが……俺にとっては、真剣だ。

 

(花、アクセサリー……いや、プロポーズじゃねぇんだからもうちょっと手頃な……)

 

デートが始まる前からこんな事を考えるべきじゃないのかも知れない。

とりあえず進もう。

そう思い歩き出し……。

 

「クソッ……!クソ、クソクソクソがぁ……!!」

 

めちゃくちゃ悪態吐きながら小走りに逃げる男を見かけた。

その顔は見覚えがあり……。

 

「スコート?」

 

つい声をかけてしまった。

 

「あ"ぁ……?あっ、お前、ガンズ=ロック!?何故ここに居る!!」

「ああ、やっぱスコートか。なんか荒れてんな」

「お前などに話すことなど……!……無い」

「なんでちょっと尻すぼみなんだよ。ははぁ?さては失敗したな」

「失敗……!?ちがう、ちがうぞ……予定、そう予定が狂っただけだ!」

「予定?」

「金人港の地上げを……」

「地元民の介入で失敗したんだな」

「違う!星穹列車だ!」

「……へぇ?」

 

ナナシビトの介入を受けて失敗したと。

 

「ナナシビト、まだ活動してたのか」

「知らんのか?この前のここでの騒ぎにも介入してたぞ」

「そうだったのか……今日来たばかりだったからな」

「そう言うお前は何しに来たんだ」

「え?あー……デート、かな」

「ハァ!?!!?」

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

また癇癪を起こして喚き始めたスコートを部下の人に押し付けてその場を後にした。

 

(そう言えば……あの人も仙舟の人だったな)

 

昔、駆け出しだった頃お世話になった狐族の女性。

元気にしているだろうか。

 

それはそれとして、金人港に到着する。

ここも活気に満ち溢れている。

どこからも美味しそうな匂いがする。

 

(腹が減る……な。その前に花火を見付けないと)

 

びっくりさせたいから、との理由で具体的な場所と彼女の格好は提示されなかった。

 

(そういや俺は制服姿しか見たこと無かったな)

 

インターンでも、一緒に過ごしてる時もほぼ髪を降ろし、眼鏡を掛けた制服姿だった。

それ以外の格好は見たことが無い。

 

(驚かせる、か……)

 

なら、かなりめかし込んでいるか……奇抜な格好をしているか。

 

(いや、それは無いだろう)

 

彼女は毎回薄くても化粧をしてるし、ネイルも凝っていた。

奇抜な格好の線は無いな。

 

「うーん……」

 

金人港を歩く人々を眺める。

 

(何処に居るんだろうか)

 

これでも仕事柄相手の顔や所作を覚えることにはそれなりに得意だったが。

仮に花火が以前見せたサンポに化けた時の用に他人に成り代わっていたなら……。

 

(見分けられるだろうか)

 

難しい。

彼女は一流の役者だ。

素人目に見破ることは難しいだろう。

 

一旦休憩しようと、ベンチに腰掛ける。

 

「ふぅ……」

「だーれだ」

「ぬ!?」

 

視界が塞がれた。

柔らかい感触。

女の子の手だ。

 

そして、聞き覚えのある声。

 

「お茶目なお嬢さんだ」

「答えは〜?」

「ごきげんよう、花火」

「せいか〜い」

 

満足気な声。

そして、目を覆っていた手を外された。

 

「こんにちは〜、ガンズお兄ちゃん♪」

「っ……」

 

結論から言うと、いつもの姿では無かった。

 

流していた長い黒髪は、高めに二房に結い上げ……仙舟の狐族が着るような扇情的で派手な赤い衣装。

 

あちこちにあしらわれた鈴が鳴る。

 

「どうしたの?」

「……いや。今日はやけに派手な格好だね」

「そう?何でだと思う?」

「気合入ってるとか」

「うんうん、それもあるねー。でもね……?」

 

花火が顔を近付けてくる。

目を細めて、どきりとするくらい色気のある顔で耳に唇を寄せる。

 

「っ……」

「ベッドの下……」

「いっ!?いや、違っ……そんなのは無かったはず……あっ」

「あ〜?あるんだ」

「か、かまをかけたな……!?」

「なんのこと〜?花火わかんな〜い♪」

「悪い子だな……!」

「や〜ん、ガンズお兄ちゃんのえっち〜」

「やめんか!」

「は〜い」

 

花火がベンチの裏から、俺の前にトテトテと歩いてくる。

 

「デート、しよ?」

「……ああ」

 

花火が差し出した手を、俺は何の躊躇いなく取った。

 

 

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