カンパニー社員の俺は仮面の愚者に人生台無しにされる 作:塊ロック
「アーラン!」
「お、お嬢様……!?」
アーランがお嬢様と呼ぶ人は一人しか心当たりが無い。
振り向くと、アスター所長が大慌てで現場に顔を出していた。
「ケガはない?増援も呼ばないでなんで戦ったの……!」
「早急に対処しなければ被害を出していたので。それに……」
アーランがこちらを見る。
「心強い味方がいましたので」
「味方……あら、貴方は」
「お久しぶりです、アスター所長。本日もお美しい」
「ガンズ·ロック……」
アスターの手を取る。
アーランが呆れたようにため息を吐く。
「名前、覚えてくださったんですね」
「そりゃ……あんな熱烈にアプローチしてこられたら……」
「貴女に名前を呼ばれただけでも、今回死力を尽くした甲斐があったというもの」
「あ、あはは……」
困ったようにアスター所長が笑う。
うーん、今日も綺麗だ。
「でも、ありがとう。宇宙ステーションを守ってくれて」
「当然です」
ちなみに俺個人の趣味であるが、アスター所長はめちゃくちゃタイプの女性だった。
なので、初対面の時に挨拶もそこそこに口説き始めたのだ。
……アーランにシバかれたけどな。
「そこまでにしておけ、ガンズ。カンパニーに報告とかあるだろ」
「アーラン……空気読んでくれよ……報告とか面倒だ」
「私は、何事も真摯に取り組む勤勉な男性がタイプかなー?」
「と、思ったが確かに大事だな!じゃあな、アーラン!それでは、また会える日を楽しみにしています、アスター所長!」
「ちょっと、お兄さん!?花火のこと忘れてない!?」
アスター所長に言われてコロッと手のひらを返して俺は走り出した。
「困った人」
「お嬢様、そう言えばどうしてここに?」
「え?ああ……呼ばれてね」
「呼ばれた……?」
アスターが指さした方向をアーランが見る。
アーランはため息を吐いた。
「目、付けられたな……」
――――――――――
「……いや多過ぎたろ」
「ヘルタ」で与えられた部屋にて。
持ってきた情報端末で今回の報告書を作成していた。
業務外の反物質レギオンとの遭遇についての内容を書ききる。
その時、ドアがノックされる。
「空いてますよー」
「失礼しまーす!」
「消灯時間だぞ、寝なさい」
「もー!ちょっとくらい良いじゃん!」
「どうしたの、花火ちゃん」
花火ちゃんが入ってくる。
頬がうっすらと上気している……入浴後のようだ。
そう言えば宇宙ステーションの浴場を貸してもらえたのだが、普段からシャワーで済ませるたちなので遠慮してしまった。
「お話しようよ〜」
「俺仕事してんだけど」
「勤務時間に所長口説いてたのは?」
「……わかったよ」
途中保存して部屋に備え付けてある椅子を回転させて花火ちゃんと向き合う。
当然のように花火ちゃんはベッドに飛び乗って座る。
「今日は、どうだった?」
「うーん、つまらなかった!」
「正直だね……でも、日常ってのはそういうもんさ。つまらないけど、行きていくためにはやらなきゃいけない」
「ふーん……お兄さん、趣味とか無いの?」
「趣味?」
「なんか、お兄さん仕事してるとこしか見たことないし……普段何してるのかなって」
「趣味、かー。昔はゲームとかやってたけど最近は何もしてないな」
帰ってきて寝て、起きて出勤している毎日。
代わり映えのない灰色の日々。
「えー、それってつまらなくない?」
「つまらない……か。考えたこと無かったな」
「花火は、耐えられないなー」
「ははは……そう言えば、何で花火ちゃんはスターピースカンパニーに?」
「え?あー……言ってなかったね。探し物」
「探し物?」
「うん。花火のぉ……運命の人!」
「えぇ?まさかの?」
「なーんてね!」
「流石に冗談か」
「あははは!」
何となく、気分が落ち着いた。
こんな気持ちは久しぶりだ。
誰かと居るのが、こんなにも心地良いなんて。
「……あれ、お兄さん。眠そうだね」
「……え?ああ……ふぁ……確かに、そうかもな」
今日は大立ち回りしたし、疲れたのかも。
「今日はもう寝ようよ〜」
「ああ……そうだな」
「ほらほら」
「……待て待て、何で君もここで寝ようとしてるんだ」
「花火が帰ったら、仕事始めちゃうでしょ」
「そんな事は……無い」
「あ!目を逸らした!ほら、おやすみおやすみ〜」
「ちょっと、引っ張るなって」
花火ちゃんにベッドへ引きずり込まれてしまった。
備え付けのシャンプーの匂いだけではない、甘い匂いがする。
「一緒に寝ることはないだろ」
「もうここまで来たら観念しなよ〜。それとも、花火と一緒は嫌?」
「……あー、もう。わかったよ……おやすみ」
「答えてよー……あ、もう寝てる……早……」
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