宇宙とは、冷たい場所だ。空気もなく、生き物の気配もない。そこにあるのは、無限に続く暗闇と、眩い光を放つ星々。冷たいからこそ、暗闇が広がるからこそ、星の光はより一層美しく映え、見る者に筆舌に尽くし難い感動を与える。そもそも、宇宙空間までやって来られる生き物の方が少ないのだが。
そんな冷たい宇宙の片隅に、煌めく星の間を掻き分け、宛もなく飛び続ける星があった。
ここで言う星というのは、宇宙に点在する天体のことではない。それよりも遥かに小さく、クリスマスツリーの天辺に飾られているような「星」を丸っこくしたような形をした、黄色く輝く物体である。
星型の光を後ろから撒き散らしながら飛び続ける星の上には、何かが乗っていた。ピンク色の球体のように見えるそれには、短い手と赤い足がある。生き物であった。
その身体には少々不釣り合いなほどに大きなリュックサックを背負ったその生き物の小さな手の中には、白銀に煌めく、歯車のような装飾が施された羅針盤が握られていた。星を閉じ込めたような水色の瞳は、水色に彩られた羅針盤の針が指し示す方向をまっすぐと向いている。
「むむ……この近くかなぁ。ワープスター、ちょっとスピード落として」
その生き物は乗っている星をぽんぽん、と叩く。キュルキュル、と甲高い音を立てながら飛んでいた、ワープスターと呼ばれたその星は、自身のスピードを緩めた。
ワープスターの上から羅針盤と宇宙空間を交互に見やる、ピンク色の球体のような不思議な生き物。
その名前は、「カービィ」。
「星のカービィ」と呼ばれることもある、宇宙ではそれなりに名の知れた存在である。「春風の旅人」や「星の戦士」といった二つ名も持っている。
彼、あるいは彼女(カービィの性別は不明である。以降は便宜上「彼」と記す)は元々、根無し草の旅人であった。彼専用の乗り物「ワープスター」と共に、途方もない時の中、宇宙を飛び回り続けていた。
いつしか時間の感覚すら忘れかけた頃、彼はこの世で最も美しい星、「ポップスター」に存在する呆れかえるほど平和な国、「プププランド」に降り立つ。その地の大王による食料&秘宝強奪を力技で解決したことをきっかけにプププランドに住み着くようになり、以降も星の危機や宇宙の危機を幾度となく救ってきた。破神や侵略種を倒したこともある。
こんななりだが、カービィは紛れもない英雄である。本人にそのつもりは一切なく、ただ「早く終わらせて家に帰ってご飯を食べて寝よう」としていただけなのだが。
そんなカービィだが、今はポップスターを飛び出して、白銀の羅針盤片手にワープスターで宇宙を飛び回っていた。
別に何かの危機に率先して行動しているわけではない。彼は今、友達を探す旅をしているのだ。ポップスターと遥か遠くの世界、そして宇宙を巻き込んだ戦いで姿を消してしまった、友達を探す旅を。
「……どこいっちゃったのかなぁ……」
物思いに耽りながら、カービィは羅針盤が示すままにワープスターを走らせていた。
……だから、だろうか。
空間に穴が空いていたことに、気がつくのが遅れてしまった。
「……うわっ!」
虫食いのように空いた星型の穴。カービィはそれが「ディメンションホール」と呼ばれているものであると気が付いた。すぐにワープスターにディメンションホールの逆側に行くように指示を出したが、そのディメンションホールはブラックホールのようにカービィとワープスターを吸い込もうとし、吸い込む力が強すぎてワープスターでは振り切ることができず……
「うわ〜っ!!」
カービィは、ディメンションホールに吸い込まれてしまった。
「あいたっ!」
ディメンションホールを通り抜け、吐き出された先はどこかの山の中だった。カービィは荷物と羅針盤がディメンションホールの中に飛ばされていないことを確認すると、ひとまず安堵のため息をつく。
「どこだろう、ここ」
ワープスターから降りたカービィは、ひとまず羅針盤を確認した。針が物凄い勢いでぐるぐると回転している。こんな反応、今まで示したことがなかった。
「もしかして……この星に居るの?」
そうと決まれば話は早い。カービィはリュックサックをワープスターに預け、羅針盤だけを持って駆け出した。
付近で大規模な山崩れが発生した。
その報告を受けた13号は、現地に居たヒーローたちと合流し、被災者の救助に当たっていた。指先からブラックホールを出して土砂や瓦礫を取り除き、生き埋めになってしまった人たちを救助していく。
この山崩れは、どうやら登山客の“個性”が暴発した結果起きてしまったことのようだ。その登山客は眼の前で発生した落石に驚いてしまい、怪物化の“個性”を暴発させてしまったのだとか。登山客はパニック状態に陥ってしまい、今も暴れている。幸いその登山客の近くに他の民間人は居らず、登山客の暴走そのものに巻き込まれている民間人は居ないとのことだが、登山客が暴れた影響で発生した山崩れに多くの人が巻き込まれている。このままでは、登山客の暴走そのものに巻き込まれてしまう人が出るのも時間の問題であり、更なる二次災害も発生しかねない。
山崩れに巻き込まれてしまった人々を救いながら、13号は登山客が暴走している地点に近付いていく。彼女の役目はこの事態に巻き込まれてしまった人々の救助だ。暴走した登山客の進路上に、まだ救助されていない民間人が居るという情報が入ってきていた。
山を駆け抜け、生き埋めになった民間人を救助し、他に逃げ遅れた人が居ないかを探して駆ける。暫くすると、暴走した登山客を発見した。巨大な犬のようなライオンのような姿になる“個性”。事前に聞いていた情報の通りだ。
しかし、情報通りではない事柄があった。
「とぉ!」
ピンク色のボールのような生き物が、暴走した登山客と戦っていた。
その生き物はピエロのような派手な二股帽を被っており、青い水晶が先端に着いた金色のステッキを持っている。
ピンクのボールはステッキを振るう。すると、ステッキからムチのようなビームが発生し、暴走した登山客を怯ませた。
暴走した登山客はピンクのボールに拳を振るう。ピンクのボールは軽やかなステップで拳を躱し、宙に浮いたまま斜め下にステッキを向けた。
「ビームマシンガン!」
ステッキから球状のビームがまるでマシンガンのように放たれた。暴走した登山客は尻もちをつく。ピンクのボールは地面に降り立つと、両手でステッキを握りしめる。まるで、力を溜めているかのような動作だった。
その予想は、果たして当たっていたわけで。
「はどうビーム!」
一際大きなビームがステッキから放たれ、暴走した登山客に命中した。登山客は気を失ったのか、“個性”が解除され、登山客は人の姿に戻る。
13号が呆気に取られていると、いつの間にやらピンクのボールが彼女の足元に近付いてきていた。
「君は……」
「はぁい、ボク、カービィ!」
ステッキを掲げながら笑顔で挨拶をするピンクのボール、もといカービィ。13号は予想だにしない事態に困惑しながら、「ど、どうもご丁寧に……」と返すことしか出来なかった。
これが、この星のヒーローと、春風の旅人とのファーストコンタクトである。
というわけで、カービィ×ヒロアカに手を出しました。最近ちょっと思う所がありましてぇ、(何、とは言いませんが)こりゃ書かねばな、と思ったでござる。
ただまぁ、元々書いてたヒロアカものも全然完結してないんで、こっちの投稿は完全に不定期になります。一応ストーリーはなんとなくできてきていますが、見切り発車なんで。いつものことだけど。忘れた頃に投稿すると思うんで、お暇な時にでもお付き合いくださいませ。