人外狐お姉さん(身長が大きい)大好きな男   作:覚め

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人外狐お姉さんの話です


酒瓶の中身

天使が舞い降りたのだと思った。いや、正確には違う。空間の裂け目から、八雲紫の代わりに出てきたのだ。八雲紫と同じ場所にいたのか、湿って頭の形を愚直にも伝えてくれている金色の髪、そんな中でも物事を活用できる五感を利用して察知しようと存在感を晒している狐耳。顔は整い、気高くも優しさを感じさせる顔だ。若干の困惑が見えるのは状況のせいだろう。八雲紫と同じように温泉に浸かっているのか見える限りは肌色で、見える肌さえ白く輝いていた。見える限りが美しい、人外。更に言えば先程少しだけ会話をした金髪の人外である。もっと言えば。それ以前にどこかで会ったことがある。その女性に手を触られる。空間の裂け目から出てきた手は、巧妙な細工をされた彫刻のように美しく、尚且つそれが生命体が持つ部位の一つであることを示す温かさを持っていた。温泉の湯で濡れている手で左腕を握られ、もはやこちらが正気かもわからない。酒を呑んでいた方がこの場合は乗り切れただろうか。否。この美しさを持った人外を記憶した脳に酒をかけるなど愚行である。思考に頭が先走り、体を動かすことさえ出来ずに、手を離された左腕さえもその場を維持出来ずに落ちるほどだった。

 

「どう?わかるでしょ?」

 

「はい」

 

「…あー、また藍の虜になってる。意識は保ててるみたいね」

 

「…っ、…っっ」

 

危うかった。これで尻尾も付いてたら俺はもう意識のない抜け殻になっていたことだろう。空間の裂け目は消え、八雲紫も名も知らぬ賽銭を渡してきた俺の好みドストライクな美女も消えた。くっ、どうしてだ。あんな裸体を、俺の目の前に晒すなんて。俺の好みを人外お姉さんにズラすつもりか?いやしかし、狐耳があったから…まさかアレは、本当の人外狐お姉さん(大きい)!?

 

「しまったぁ…!!」

 

「どうしたのよ」

 

「いま、人外狐お姉さん(大きい)がいたかもしれない…!っ、何故そこに頭が回らなかった…!!」

 

「あー、また惚けてたのねぇ。」

 

「またって…いつ出会ったのさ?」

 

「ほら、紫に同居を申し込んだとき。気絶してたけど」

 

はぇ…とんでもない喪失感がもう一度俺を襲う。どうしてこうなってしまうのか。人外狐お姉さん(大きい)に出会うための道を、何者かが阻んでるのかもとか思ってたが…まさか俺が忘れ続けていたとは。しかしアレだ。このままでは出会ってもまた忘れてしまうかもしれない。忍耐力…いや精神力か…?

 

「寺かぁ」

 

「何?寺に行くの?」

 

「多分?」

 

「…アンタ、今度は左腕失うんじゃない?」

 

「巫女さんが言うとか、縁起物なら最悪だよ」

 

酒がほどよく抜けてきたのか、巫女さんはごろんと寝転がってそのまま就寝。布団をかけてやり、宴会もそろそろ下火となってきたことを感じつつ俺も寝る。が、下火になっても宴会は続いており、なんならここまで眠らずに潰れずに呑んでるような奴だ。暴れるのは当然だな。うん。

 

「…鬼と知らん人外が何人いるだけか」

 

「おっ!お前もようやく呑むのか!」

 

「呑まないよー」

 

「そうですよ萃香!彼にそんな度数の高いお酒は無理です!よってこの度数12のこのお酒なんです!」

 

「霧雨魔理沙ー、起きてくれ〜」

 

「…っ、揺らさないで…ゔ」

 

「お、すまん」

 

足にかかった吐瀉物を見て他を見渡す。あれ、もしかして吐瀉物かなりあるな?霧雨魔理沙には水を飲ませておき、いやはや。明日の朝に起きたら吐瀉物臭いのは勘弁してほしいので片付けるとしよう。緑髪の巫女が一番ひどい吐き方をしていたこともまあ許してやろう。顔も拭いてやる。人外狐お姉さん(大きい)に出会えた俺はもうそれは、聖母にも負けず劣らずの優しさを持つ。

 

「埋めるか」

 

「うぇ、肥溜めみたいな匂いするなここ」

 

「えぇ…」

 

「よく触れるわね」

 

「お前は無事なんかい」

 

メイドは無事らしかった。俺は手伝ってほしいのだが、まあそれは無理な願いらしくちょっと遠慮された。まあ仕方ないか。女性にこの量の吐瀉物を処理させる方がダメだろう。何人分あるのかはあまり数えてない。緑髪の巫女が一番多かった記憶だけがある。

 

「良し、終わりだ」

 

「…」

 

「黙って見ないでくれないかな」

 

「あら、ごめんなさい。」

 

「えーと…なんて名前だっけ」

 

「十六夜咲夜…初めて会った時も名乗ったはずだけど?」

 

「忘れた」

 

紅魔館訪問はもう、片腕失った時の記憶の方が強いので何も記憶に残っていないのが正直なところである。すまんな、お前んとこの住人が化け物なんだわ。

 

「まあ、良いけど。呑み直しと行きましょう」

 

「生憎俺は酒が苦手なんだな」

 

「…あら、じゃあさっき渡したご飯は?」

 

「アレくらいなら大丈夫」

 

「いや、あれの中に入ってたお酒ってそこに転がってたお酒なんだけど…」

 

そう言われると視点がぐるりと回る。俺はこんな、斬られてもなお喋り続けて刀を完全に納刀した瞬間倒れるような人間だったのか。倒れた俺は、抱えられたことまでは覚えている。その後?知らん。十六夜咲夜に布団を掛けられたのか、朝起きた時に寒さは感じなかった。

 

「…呑みすぎたわ」

 

「あっはは、そんなんじゃ今日異変が起きても解決できないんじゃないか?」

 

「あんたも足ガクガクじゃない。どこでそんなに呑んだのよ」

 

「ぃや、なんか、うまく足に力が…」

 

「誰かに襲われたんじゃないのか?」

 

「ま、ここで宴会する奴は全員独身だしねぇ」

 

「十六夜に…飲まされた…っ」

 

「咲夜か。じゃあアレだな。酒にやられたんだわ」

 

「水でも飲んでおきなさい」




咲夜「私は何もしていません」
レミリア「…そんなに料理の感想がダメだった?」
咲夜「滅相もございません。ただ食べてしたり顔で『まあまあね』なんて言った挙句残して、デザートを要求するお嬢様と妹様にそんなこと、畏れ多いことです」
レミリア「少しは隠しなさいよ…」
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