「…入れない?」
「そうだ。里の者に申し訳ないが…お前のその、妖気がな。ダメなんだ」
「何言ってるんですか。俺は使えても魔力っすよ」
そうは言っても通されず。御守りを乗せたまま帰る。意外とこれ重いんだぞ、分かってくれ。はぁはぁと荒い息を吐きながら階段を登る。ちなみにだが、これ降りる時の方が辛いんだよ。勝手に車輪が回らないよう抑えながら進むわけだから。この坂短くなんないかな。ならないか。なったら自然的なあれこれがおかしいわけだな。
「…ふぅ」
「あー、ダメだったか」
「そーなんすよ」
「言ったでしょ。その狐は持って行くなって」
「何故に持っていけないのか…」
「萃香」
「衝撃的なこと言うぞ。そのぬいぐるみ、妖怪からしたら妖気が結構ダダ漏れ。」
だからか。あそこの守護者は確か、半人半妖、なるほどそういう意味で妖気云々と言われたのか。なるほどね。酒呑童子め、それを先に言えよ。俺はわかんねえんだぞそう言うの。しかしまあ、呪物とかってこういう感じで全く何も感じませんって物が多いのかな。しかし本当に、八雲藍さんはどうしてこの狐のぬいぐるみをくれたんだ…?
「ぐぅう…何故これを俺に渡したんだ…」
「私の無礼だって」
「うわ八雲紫」
「ぎゃっ!?」
反射的に炎を出してしまった。最近出してないのに。その結果、八雲紫は鼻のあたりを火傷した。うーん、八雲藍さんじゃないからなんの罪悪感もない。が、流石にこれは謝らなければなるまい。痛みに悶えてる八雲紫を眺めて謝るタイミングを待つ。…随分と長く、ぎゃあぎゃあと悶える妖怪だね。巫女さん曰く幻想郷最古の妖怪らしいのだが。
「ふーっ…あー、治った」
「すっげ」
「あなたねぇ…まあ、良いけど。」
「で、なんの用事ですか?」
「謝るべきよね?」
「部屋占拠してたでしょ。それくらい当然だと私は思うけど?」
「霊夢が反抗期になってしまったわ、あなたどうしましょう」
「八雲藍さん以外とコンビを組ませないでください。坊主にしますよ?」
「やってみなさい。そんな戯言が吐けないよう妖怪の恐ろしさを教えてあげる」
先ほどから巫女さんの後ろに人が見えていたので、立ち歩いて巫女さんの後ろへ。そこには、先ほど話していた半人半妖がいた。八雲紫を見てぎょっとしたのか書かれている。というよりも…この人、巫女さんより少し小さいくらいの身長だったのか。今まで、巫女さんより10センチくらい上だと思っていた。なんだか不思議である。
「…どうしたんですか」
「いや、君が博麗神社で暮らしていると聞いたから、その様子を」
「何故」
「君のように妖気を立ち昇らせている男が、巫女と一つ屋根の下で何をするかわからないからだ」
「…ああ、外から見ればそうなってるのか」
「でも私は気にしないし」
「私は許可したわぁ」
「慧音さん。こんな小さいのに頑張って来れましたね。ぱちぱち」
「な、人の気にしているところを指摘するな!」
「低身長にキレられてもなぁ…すまんち」
「この…っ!」
いやはや、これで先生をやっているのか。生徒が少しでも歳を取れば同じ目線で話すことになりそうだが。巫女さん曰く身長が40センチくらいの人外もたまにいるらしい。一回だけで良いから拝んでみたいものである。橙と呼ばれた奴より小さいのだろうから、それはそれは変な人間なんだろ。多分。
「…ただな。あの妖怪、相当なものだろう。あんな口調で話していて良いのか?」
「博麗神社住みってなると、結構みんな手出して来ないからねぇ。八雲紫次第だね」
「後ろでこそこそ話すな。」
「む、すまない」
「…俺の目測が誤ってなければ、おそらく身長が140台後半だと思うが、どうだろう?」
「おおよそ正解だ。146センチ」
「これより1メートル小さいのが実在するのか…」
そう言うと、慧音さんは怒りながら歩いて帰っていった。面白い人だなほんと。まあそれはそれとして。八雲紫はどうしてここによく顔を出すのか。八雲藍さんの機嫌とった方が良いだろうに。それすらもしないから追い出されるんだ反省しろ八雲紫。
「ふっ。残念だけど、私は藍に好かれてるから。追い出されても数日すれば帰れるのよ」
「…巫女さん、こいつって八雲藍さんに追い出されて不眠症になってましたよね」
「あの香りのやつね。滑稽よほんと」
「…本日の紫ちゃんはもう稼働しておりませーん」
「っし埋めるわよ」
「どこら辺の穴が良いですかね」
「ちょいちょい待って待って」
30センチほど掘り下げたところで止めが入る。仕方なく掘り下げた土を戻しつつ、さっさと帰れと巫女さんが言う。俺は八雲紫にヘッドロックを喰らっていた。くっ…人外狐お姉さん(大きい)=八雲藍さん以外の胸の感触を知ってしまった…もはや自害する以外に生きる道がない…でも頭が痛すぎて何もできない…
「全く、失礼ね」
「…そもそもなんの断りもなく私の家に入って来ないで」
「ここは神社よ。貴女の家…うん、まあ、そう言う扱いでも良いけど…」
「なら家主に断りがあるもんでしょ?」
「でも管理人は私よ。幻想郷全体のね!!」
「博麗神社は外と幻想郷の境目でしょ。何言ってんのよ」
「…あの、なんでも良いんで、そろそろ離してもらえませんかね」
「ふんっ」
「あだだだだ」
こうして俺を思う存分ヘッドロックした後、八雲紫は消えていった。頭を痛めた俺は枕を敷いてずーっと寝転がっていた。流石にきつい。熱中症のような頭痛がする。
「…八雲藍さんの膝枕が欲しい…」
「紫に頼めばよかったでしょ」
「正しく言えば欲しいと口に出して時間を無駄にしたい」
ウチの慧音さんは小さいんだよ!!