「…あのね。俺だって被害者なんだからね」
「じゃあ、そこ退いてくれる?」
「退いたら植物踏んじゃうでしょ」
「貴方が落ちてきた衝撃で何本か折れてるけど?」
「だから知らないっで!?」
目の前には緑髪の女。全体的に赤と白で、白いカッターシャツと花のワッペンがついた可愛らしいチェックが入ったスカート。ロングスカートか。赤いチェック柄のベストを着たその人外は、日傘からなんとも自在にビームを出してきた。パチュリーさんと小悪魔さんから学んだ、防御魔法を展開してなんとか逸らす。それでも俺の頬を掠めたことは忘れてはいけない。
「八雲紫にここに飛ばされてきたのさ。な、俺被害者」
「…そう。でもね、だからって貴方を許す道理はないでしょ?」
「誰か助けてぇ!」
「無駄よ。この辺りなんか、私を恐れて出てくる妖怪は一体もいないのよ」
「八雲紫のばかぁ!」
ことの顛末?そんなもん俺が知りたい。神社でこれからタダ飯食いになるのってやばくねーかとか考えてたらこうなったんだもん。突然八雲紫が空間の裂け目から顔出したと思ったら浮遊感に襲われて、背中にすごく鈍い衝撃を喰らって、起きたらこれだもん。近くでえらい美人が覗き込んでね、起きたら立ち上がって尋問だよ。
「しつこく生き残るのねぇ」
「八雲藍さんとまともに会話するまでは死ねない…!」
「八雲藍…あー、あの狐ね。その袋の中にあるのは何?あの狐の毛?」
「八雲藍さんの尻尾一本で作られたぬいぐるみです…」
「…そうなのね。最後におもしろい話をありがとう。じゃ、死んで」
日傘を向けられ、目の前が途端に眩しくなる。こちらも防御魔法だったり攻撃魔法だったりで相殺を試みる。相手が放つ前に放ってることについてはもう知らん。賢者の石が壊れようとも、ガチで知らん。全力で魔力を放ち、どうにか生き残ることを祈る。とんでもなく光が強くなって来たが、どうにかして防御魔法の重ねがけをする。攻撃魔法も忘れずに。
「邪魔ねぇ」
結果。眩い光は俺の攻撃魔法ではなんとも出来ずに、防御魔法さえ容易く打ち破り。俺は体のほとんどを地面に埋める結果となった。もはや感覚器官がなんの仕事もしないほどにぼんやりとしている。あー、これは死んだな。八雲藍さんにもらったぬいぐるみを投げ捨てることでなんとか守ると言う形をとった俺を褒めて欲しい。
「…ぃ…ぉ」
「びっくりね。それでも声が出せるなんて。後その片腕。随分と頑丈なのね。」
段々と痛みを感じて来ている。目の前の緑髪の人外は、俺を見つめている。見つめたまま、俺が埋まってる穴に足で土を流し込んできやがる。段々と視界が暗くなって行き、最後は真っ暗な中、土がこぼれ落ちて来る音だけが聞こえる。その音もだんだん聞こえなくなっていく。
目が覚める。あの世かと思ったが、違った。右腕を除き、動きづらいが体がある。それにここは見覚えがある。恐らくは繋ぎ目なのか、体のとある線に沿って札が貼られており、それに沿って考えるならば、頭と右腕、右肩は無事なようだ。しかしまあ、俺が助けられたと言うことは。多分だが、埋められる直前に言った言葉が届いたのだろう。
「屠自古さん」
「っ!?」
「裸なのは少し恥ずかしいので、何か服あります?」
「あ、ああ。持って来る。太子様にお前が目覚めたことを教えて来るが…どうする?着替えてからが良いか?」
「着替えてからで」
しかし、もはや死にかけも死にかけ。もはや母音ですらまともに発音できたか怪しい声を良くも拾ってくれたものだ。しかし、あんなに体が削れていたのに…どうやったら大量に出ていたであろう血すら問題のないように出来たのか。よくわからないな。屠自古さんが服を持って来てくれて、そのまま服を着る。屠自古さんには反対を向いてもらうが。すみませんね、ほんと。
「…よし、どうよ」
「似合ってるぞ。じゃ、お前の現状についての説明も含めたお話だ。太子様と青蛾が待ってる。こっち、来い」
屠自古さんに連れられ歩き始める。やはりどこか動きづらい。青蛾さんからすれば鮮度が低い、とのことだろうか。屠自古さんに連れられ座る。若干関節が座りづらい。右腕の動きが普通なことは本当に救いである。左手をグーパーと動かしつつ、話を聞こうか。
「…青蛾、まずは説明を。」
「ええ、わかりました。まず身体。大変でした。貴方と同じくらいの年齢、同じくらいの体格を持つ死体を探し出して貴方と接着。でもやっぱりこの術にはまだ時間がかかってしまい、今の少し動きづらい関節になってしまいましたわ」
「それで…その、君自身に関してだが」
「?」
「ほとんど死んでいるようなものだった。どうだろうか、頭のお札は。我々からしたら延命用だが…」
「あぁ、これですか?外しても大丈夫ですよ」
ぺらりと頭の札を外す。置く。意識的に問題はない。体も十分動かせる。グーパーと確かめ、肘もつける。あまりこの札の恩恵もあまり感じられないのだが…やはり、俺はあの時ギリギリで死んではいなかった、と言うことだろうか。体のほとんどがなくなっても人間はそれくらい生きられる。丈夫なんだな、ほんとに。
「良かった…我々からしてみれば、君はもう生きているかどうかさえわからなかったんだ。」
「私はこの方の、この顔が見たかったから手伝いました」
「神子、今回は助けてくれてありがとう」
「!」
「正直言って八雲紫に文句を言って殴りたい気分だが、まあそれは置いておき。今回は…流石に、死ぬかと思った。この恩は忘れない」
「そうか…!」
青蛾さん便利な上に使いやすくて助かる。動機は知らないけど。