「…俺は身を隠してたほうが良い?」
「うーむ…その身体になってから命蓮寺に顔を出したことは?」
「ないよ。あったとしてもこの身体のことは説明してないはず。」
最近では全くと言って良いほどに顔を出していない。最後に顔を出したのはいつ頃か…普通に覚えてないわ…まあしょうがないか。そんなこんなで身を隠すことになったが、どこに隠れよう。トイレは男子トイレもあるらしいのだが、ここに男がいないことからあまりよろしくなさそう。女子トイレ?論外。聖白蓮も生物学上は女だぞ。人外だけど。
「…ここ?ほんとにバレない?」
「ああ。大の大人が横長い物置に隠れてるなどとは思うまい。入るか?」
「関節が厳しいけど、入れば楽勝よ。出す時がキツイかも」
「では閉めるぞ」
俺が書かれたのは、本日聖白蓮を招く部屋の物置…こういうとこなんて言うんだろ?わかんない。少しかがむように横たわって入れたのだが…ここ思ったよりも外の声丸聞こえだな。足音がする。神子にはバレるだろうが、聖白蓮はどうだろうか。気付くことはあるまい。神子のように感覚が鋭いわけではないだろうし。
「それで?なんの用事ですか」
「早速か。今後の宗教活動について、我々と命蓮寺が日替わりで行うというのはどうだろうか」
聖白蓮はなんかぶっきらぼうな答え方してるな…なんかあったのか?まあなんかあっても俺は知らないから良いか。とりあえず俺は絶対にここで待機だし。この身体で固まったままだと関節が固定されそうで怖いが…物部さんと青蛾さんを信じる。まあ寝ている間に固まってないから良いだろ。足音がするたびにビクビクする以外不快感はない。多分。
「…」
「どうだろう、同じ日に違う教えを説く者が現れたら、人里で混乱を招きかねない」
「金田さんに拒絶されてましたよね。その教えを説くのは十分危険だと思いますが?」
「そうかな?たまにではあるが彼はここに足を運んでくれているよ」
「御冗談を。」
まずいな。博麗神社に帰りたい。風見幽香がいないってわかったらすぐに帰ってやりますからね。巫女さんに心配かけてるかもしれないし。あと俺のことバラすなよ神子。わかってるよな神子。あーもうこっちから顔が見えないからバラされそうで怖え!
「布都の話であれば、つい先ほどまでいたはずだよ」
「ここに金田さんが?どうやって?」
「そもそも…聖、君は彼が死にかけたことを知っているかな?」
「知りませんね。そんな出鱈目」
「風見幽香という大妖怪のところへ連れて来られ、そのまま死にかけた話だ。魔法で身体の八割を消されていた」
「…そうであれば、そもそも生きているはずもないですよね」
「知り合いに頼んでね。身体のほとんどをこちらで用意して、くっつけてもらったんだ」
マジか。じゃあ青蛾さんほとんどくっつけるだけだったの??…えー、マジか。いやでも流石に何度も身体をくっつけてもらうのはなぁ…それに探してたのは神子達っぽいし。あれ、じゃあ俺の延命は?…青蛾さんが何かしたんだろ!そうに違いない。そうでなければ説明がつけられない。ていうか神子のやつ俺がいること完全にわかってるな?
「彼の体の八割は、私が用意した死体だ。そんなことも知らない君が教えを説くのか?」
「…もう良いです。今度直接彼に会って話します」
「そうは行かない。いや、そうはしなくても良いんじゃないかな?」
「どういう意味ですか?」
「先に謝っておくよ。私は嘘をついた。」
足音が近づいてくる。まずい、こいつバラすつもりだ。やめろやめろ、俺がその暗い雰囲気についていけるわけないだろ。馬鹿か?あーやばい足音がもう止まりやがった。悩んでいたら押入れの扉が開く。神子が大事そうに俺の上半身を引っこ抜き、ズルズルと出される。気分はさながら釣られた魚である。
「…何故ここに?」
「聖さんが来ると知って…ちょっと、ね?」
「どうかな。これでもう初対面時の拒絶はほとんどないと思っているのだが?」
「っ…」
もしや今、聖さんの頭の中ではNTRという忌々しい単語がひしめいていたりしないだろうか。俺はとても嫌いなのだが。近付いて様子を伺う。どうした?大丈夫か?おーい?…泣いてしまった。聖さんではなく俺が。なんかずーっと反応なく無視され続けるとさ。こう、来るんだ。心にダメージが。八雲藍さんと出会うことで心の痛さが原因の涙ではなく、心の喜びが原因の涙を流したい。
「…帰らせていただきます」
「え、あ、わかった…」
「いやー…無視がこんなにキツイとは」
「すまない…やはり出すべきではなかったか」
「出さないでくれよ…そーっとしておくだけで良いからさ…」
「君もそろそろ帰ろうか。今道を作る」
博麗神社まで一足の道を作ってもらう。物部さんにはトイレの件で謝っておいて。さあ帰ろう。博麗神社には風見幽香がいないだろうか。巫女さんがいてくれるだけでかなり安心だが…頼む、どうか俺の思い通りな状況であってくれ。
「…久しぶり、ね」
風見幽香いた。ただし。下着姿で。何故か八雲紫もいて、巫女さんもいた。なんでこの三人が…とも思ったが、見てみればなんと八雲紫が風見幽香を縛り上げているではないか。何やってんだこの人??
「貴方のせいで服のほとんどが燃えてしまったのよ」
「おー、俺のスペルカードのおかげだな!」
「アレのどこが」
「紅魔館にはナイフ投げてくる奴だっているんだから、不思議じゃないわよ」
十六夜咲夜「遠回しに非常識と言われた気がする…」
レミリア「何言ってんのよ…?」