「…おーい」
「何です?」
「霊夢が慰めに来たぞ」
巫女さんが慰めに来てくれたらしい。あー…と何ともな返事をして上を向く。天井しか目に入らない。そんな視界の隅に、狐の耳。その耳元まで視線を向ければ巫女さん。紐で腹に括り付けているのか、尻尾まで。立ち直らせるのにそれを使うのか。俺の理想である人外狐お姉さん(大きい)には程遠くも、それは人外狐に見えても仕方のない姿だった。
「あー…ほら、立ち直って」
「寝転がってる男にそんなに近付かん方がいいよ」
「そ。じゃ、この耳は触らないわね」
…なんて狡い人間だ。仕方なく起き上がり、耳を触る。カチューシャのようなモノだろう感触がはっきりとわかる。だからか、何処か癒されている自分がいる。抱きしめたくなるような感触だが我慢して、尻尾も触る。やはり紐で腹に括り付けているらしく、引っ張ると巫女さんが痛みを訴えた。あー、くだらな。
「よし…まあ、いいか。よし、よし!」
「あ、もういいの?」
「俺の好みを再認識出来た。」
「割と失礼じゃないか、こいつ」
「良いのよ」
「それじゃ、八雲紫にお願いしてみるか」
「…え、今?」
「今ほど目が冴えてる時はないね。人里の教師もいらないだろうし」
「まず霊夢から呼べるのか?」
そこは残念だが知らないので。まあゴロゴロすることにしようか。あー、なんだろ。今更だし我ながらだけど、あの人外狐ぶん殴りたくなって来たな。しかしそれをしてしまってはもはやマトモな人間ではなくなる。うーん、困ったな…俺としてはそんな変人奇人にはなりたくない。
「おや」
「あら、まだいたのね」
「そりゃ、同居人ですから」
束の間の沈黙。八雲紫さんはどんな顔をしているのやら。見て確かめる必要はないだろう。まあここで確認するのはかなり…狙っているようで嫌なのが事実だが。
「ええええぁぁぇ!?」
「随分と大きい」
「紫、うるさい」
「ちょ、霊夢ちゃん!?何故!?男が同居人の理由は!?」
「なんとなく」
そうして、とある検査が始まった。題して『霊夢に相応しい同居人か見極めようの会』である。過保護っつーかこの人大袈裟に受け取りまくって鬱陶しいだけじゃないかな、違うかな?
「では…霊夢との関係は?」
「同居人…兼ビジネス関係?」
「嘘はなさそうね。それじゃあ次…同居する目的は?」
「人外狐お姉さん(大きい)と出会うための住処として使う」
「はぁ?」
「もう一度ですか?えーと、人外狐おねえさ」
「もう良い、やめて。え、何、じゃあ人外狐お姉さんを見つけたら、ここから出ていくの?」
「いえ。出会った後もここで暮らすつもりです。」
「あ、そう…ちょ、ちょっと待って?」
何だかよくわからないけれど、話し合いタイムだ。巫女さんと八雲紫が話し合っている。一体何を話しているのかは知らないが…まあ、ね。俺としてはこうも時が過ぎる間に人外狐お姉さん(大きい)がどこに出没しているのかを知りたいのだ。こんな変に時間を使うとは思わなかったのに。
「ちょいちょい」
「はぁ…何ですか、紫様」
声が聞こえる。どこか厳しげな声だ。俺の直感が吠えた。顔を見てはいけない。目を瞑り、声すら意識せぬよう心がけるべきだと。一体何故?わからない。だが、確実に言えることは一つ。それを見たのなら、もはやマトモではいられない。少なくとも心の準備が必要なの代物。
「目開けて」
「…」
「このような人間が霊夢と同居…ですか?」
まず目に入ったのは。その人の後ろにある隠すつもりのない尾。九本だろうか、金色に美しく輝きながらも作られたモノではないことを理解できる。次に目に入ったのは衣服だった。青、というよりも藍色の前掛けに、白いロングスカートのような服。その次に、頭を隠している帽子。耳があるかのような形で、とんがりが二つ付いている。最後に顔。美しく整った顔で、こちらを品定めしている顔からはおそらく当人の性格が滲み出ており、訝しげに八雲紫を見る姿もやはり美しく整っていた。そしてそして。その身長である。180はあるであろうその人。さらに、八雲紫と話した時の感覚。恐らく、恐らくではあるが、俺の好みドストライク。時速は200Kmを大きく越え、俺の脳髄を叩き割るような衝撃をその人は登場するだけで俺に与えた。
「ぁ、あぅ」
「…?」
「おーい」
「あー、多分藍が出て来たからね。ほら、藍は金田の好みど真ん中だし」
「金田って言うのね」
「…言葉が出てこないような男は何人かいたが、もはや気絶か…」
次に目が覚めたのは夕方だった。巫女さんに話を聞けば、一日とちょっとを気絶して居たらしい。なんたる不覚…!!
「と言うわけで面接を続けます」
「あ、はい」
再開された面接では、件の人外狐お姉さんは出て来なかった。面接も順調に進み、巫女さんが寝た頃。面接は急展開を迎えた。
「では、最後のテストです」
「はい?」
「貴方が霊夢に手を出さないかどうか…調べさせてもらうわ!!」
すると突然八雲紫は服を脱ぎ出した。何をしているんだこの人。そうして俺に対して変なことをして来た。遠ざかる。近付いてくる。下着姿と言えば良いのか、やたらとこちらに近付いてくる。
「すいません、服落としましたよ」
「藍、私の言った通りの服装して来て」
「はい…あの、またあの男にですか?」
「ええ」
「」
「…気絶してますが」
最後に出て来た藍の格好は下着姿一歩手前な感じ。
そのせいで今後の主人公にその記憶はありません。