人外狐お姉さん(身長が大きい)大好きな男   作:覚め

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三度以降はもう馬鹿


二度は踏めない

どうしましたか、と問われた今の俺なら多分余裕を持って答えることはできないだろう。賢者の石を握りつつ身体が温まらないようにするのはかなり集中力のいる行為で、小悪魔さんは温度が下がる度にすごい褒めてくる。わ、自己肯定感爆上がり。

 

「…で、こうなったと」

 

「俺だって熱いのは嫌だし」

 

「だからって炎で円陣描かないで」

 

「私がアドバイスした結果です…」

 

「あ、そう…まあ基本的な扱いは覚えた…のよね?」

 

「はい。炎は起こさず、3℃上がる程度に抑えられました!」

 

「小悪魔がいてそうなる理由がわからないわ。どこかで研究したいくらい」

 

「えっへへ」

 

義手を着ける…着けるというよりも、生やす方が適切だとは思った。おお、右腕が!動いてる!少し重い!!とまあ、感触にはしゃいではいたが。問題は温度。亜黄金製の手は温度が上がっているのか。意識するなと言われたが、普通に意識するでしょ。下手したら義手溶けるんじゃないの?それが怖いんだよね。

 

「…おー、動いた」

 

「仕組みとしては、貴方の神経が届けた電気信号を賢者の石から出てる魔力が察知して、その魔力が腕を動かしてるの。」

 

「魔力の扱いに慣れることってそんなに必要ではなかったんですが、貴方は…はい」

 

「多少は魔力について指南しないとまず動かせない。だからある程度触らせてたのよ」

 

「なるほど」

 

「温度は大丈夫ね。よし、退院よ」

 

やった、と小さく喜んでそのまま館を飛び出す。俺の右腕が本当の黄金の右腕になってしまった。更に言えば、こんなに輝く腕では疑い深き人里で商売ができるのだろうか。不安が増え、なんだか少し落ち着かない気持ちだ。館を数歩飛び出したところでメイドと相対する。突然現れたのはどういうわけなのか。

 

「ここから神社までは歩くには遠すぎます。私が送りましょう」

 

「何もこんな遠くで敬語な必要はないと思うが」

 

「そう?…じゃあ、送ってあげる。」

 

「右腕のせいで多少は重いと思うが」

 

「問題なし。あまり舐めてもらっては困るのよ」

 

背負われた状態で空を飛ぶ。良いな、俺も空を飛びたい。そんなことを考えつつ遠のいた地上が近付くのを待つ。メイトの背中は思っていたよりも大きく、何やら安心感を感じるような背中だった。後腕の居場所をどこにすれば良いのかわからない。垂らすと胸に当たりそうで怖い。かといってピンと伸ばすのは…うーむ。

 

「着きました」

 

「あい、ありがとう」

 

「おかえりなさい」

 

「ただいまっす」

 

「また、館に来てくれますか?」

 

「たまになら」

 

じゃーねー、と手を振って空は見送る。空に行くのを見て、何を思えば良いのか。俺は下から見た時に改めて『パンツ見えそうだよなぁ』くらいにしか思わなかった。少し重くなった右腕を巫女さんに見せたところ、手でコツコツと叩かれながらも心配するような言葉を聞けた。魔法でくっついてるし、魔法で朽ちるのを防止しているので手入れはいらないらしい。すげーな義手。

 

「…お前、魔法使いになったのか?」

 

「まさか」

 

「だよなぁ」

 

「炎が出せるようになったくらいだ」

 

「はぁ?」

 

霧雨魔理沙に炎の芸当を見せる。炎が龍の形を取ったり、魚になったり、管を巻いたり。逆に小さい炎を紐のように手繰ったり。紅魔館で学んだ魔法がかなり扱えるようになった。嬉しいことである。魔法ってのは楽しいもんだな、と操りながら最後に指先で収まる程度の炎に縮め、息で掻き消す。これら全てを亜黄金製の腕でやったことだ。

 

「私の努力…」

 

「なかなか面白いことができるのね。火起こしやってほしいくらいだわ」

 

「でもね巫女さん。ミスったら辺り一面焼け野原だからね」

 

「一生やんないで」

 

「うす…」

 

霧雨魔理沙がひどく塞ぎ込んでしまったが無視して、そのまま重くなった右腕を眺める。触った感覚は金属で、光が反射してあっ眩しい!そんなふうに腕を眺め続けていると何を嗅ぎつけたのか霧雨魔理沙が勝負を挑んで来た。空も飛べない俺に何を求めてるのか。巫女さんが背負って飛ぶことで勝負は成り立ってしまった。何故。

 

「こんな奴に私の努力を否定されてたまるか…!」

 

「魔法というのは便利な反面、人の欲を出させるなぁ」

 

「その点アンタははっきりしてて清々しいわね。人外狐お姉さんでしょ?」

 

「勿論!」

 

「呑気に会話しやがって!」

 

弾幕と呼ばれるものが疎に配られる。トランプを配るのがうまそうな配り方だ。俺が子供で、霧雨魔理沙がサンタなら楽しめたものを。しかしながら俺はそんな弾幕の使い方も知らないし出し方もわからない。なんなら、魔法も炎しか知らない。炎で龍を作って操るしかない俺は仕方なく弾幕を炎で焼き消しながら霧雨魔理沙へと龍を突っ込ませた。

 

「おっと!」

 

「両手で出さないの?」

 

「巫女さんに捕まってるとこれまた、手を置いてないと怖くて」

 

「恋符『マスタースパーク』」

 

何やら霧雨魔理沙が掲げたと思えば激しく光り始めた。龍に食わせようと炎を大きくしたが残念。龍はそれを喰らいきれずに、身の丈に合わなかったと言わんばかりに龍を貫き俺の横を通った。回避行動はほとんど巫女さん頼りで、ほぼ当たらないと考えてはいるのだが。急に動かれると、その、衝撃が。

 

「炎龍、破れたり。だな!」

 

「今のは弱者を痛めつけただけだと思うよ」

 

「魔理沙が変な意地を張るからねえ」

 

「ま、それでも私の努力を示せて良かった。じゃーな!」

 

「…あ、そうだ。明日宴会開くけどお酒とかどれくらい呑めるの?」

 

「全然呑めないよ」




人外狐お姉さん(大きい)はどこへ…まあ、身の丈を合わせるために会得した魔法ですから。どうか。
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