「うん、此処に居るって事はそっくりさんって訳じゃないし……多分別の世界の私なんでしょ?まあ格好は似ても似つかないけどさ」
「にしてもすっごい疲れた顔してるね……うーん、なんて呼べばいい?」
「私もナズナなんだけど……って野暮なツッコミはなしか。それじゃあ
「……あれ、コミュニケーション間違えた?」
「……そうなるか、話す順番を間違えちゃったな」
「うん、説明したほうがいいね、しよう」
「まず最初、此処が何処なのか。簡潔に説明すれば私の仮説を証明するための実験室、エンジニア部お手製のね」
「次に何の仮説かと言えば……」
「「ナラム・シンの玉座」、あれを現代の技術で再現するための場所だよ。と言ってもある程度オーパーツに頼らざるを得なかったけど」
「やっぱそうなるか……うん、根本的な勘違いだね。そうなるのもわかるけど」
「そ、勘違い」
「私は生まれてから今までの記憶しかない。やり直しとかそういうのは記録の上では知っているけど……別の世界の私はそうだったんだなーくらいの感覚しかない」
「私は麗樹ナズナではあっても貴方じゃない……独立した個の存在ってこと」
「納得してもらえたかな、それじゃ話を続けるよ」
「空が赤くなったあの日からの一連の事件、私もヴェリタスとして事態解決の為に奔走したんだけど……全部終わった後に気になっちゃってさ、「ナラム・シンの玉座」っていうのが」
「次元、時間、実在すら曖昧な混沌の領域……つまりやり方さえ分かれば知りたい事を何でも知れる万能データベースに早変わりってこと。興味が湧かないわけないじゃん?」
「そういう無茶苦茶をやってみたくなるのが私って人間だからね。そういうわけで私は先生の協力も得て実験に実験を重ね……こんな大規模な装置を用意する必要こそあったけど擬似的にナラム・シンの玉座を再現する事に成功した。クールタイムを挟まないとすぐに壊れるけどね」
「そこは流石私って言うところじゃない?まあいいや」
「次に私がなんで貴方の事情を知っているか、これは簡単。実験の過程で知った」
「玉座の再現に成功した私はまず自分の未来について知ろうとしてみた……けどこれは失敗した」
「どうもこの領域は「確定していないもの」を調べる事はできないみたいでさ。時間が曖昧とはいえどうも因果とかそういうものがややこしい事になるんじゃないかーって部長が考察してたね」
「だから開き直って次は並行世界の私について調べてみた。あの事件で数多の並行世界が存在する事は既に実証されてる。それで新たな事実が判明した」
「並行世界の私の一部は余りにも不自然な行動ばかりを繰り返していた。ミレニアム以外に居るっていうのを見た時はこれ本当に私?ってなったし、明らかに未来を知っているような行動すら取り始めた時は多分頭に?が5個くらい浮かんでたね」
「まあそうなんだろうね……というわけで気になった私は不自然な行動をしている私が居る並行世界を纏めてみた、大体3日かかっちゃったけどね」
「
「あっごめん、ついいつものノリで……まあそういう訳だからさ、改めて聞くよ。貴方は何回目?」
「なるほど、最初の1回を足してラストの1個前か」
「……私らしくないなぁ、なんで死ぬのがそんなに嬉しいの」
「……」
「なんで?」
「何も残ってないなんて事ないでしょ、私の見た限りではだいぶ先生といい感じだったし、その周だったら別の世界のシロコなんか凄い心配してたよ?」
「なけりゃ探せばいいでしょ?というかそもそも存在価値とか何処の誰が決めたのさ」
「ほらね、勝手に自分で自分に存在する価値なんてラベルを貼ってたんだ。それに友達も青春も、また作れば……ああ、なるほど。だからラストはああなってたんだ」
「言ったでしょ、65535回の内2つを除いて貴方は17歳で死んでる。けど……65534回目と65535回目は観測した限りではまだ死んでない」
「つまり66534回目……今回で世界を救う事に成功したんだよ、貴方は。だから65535回目は元鞘……ヴェリタスに戻った。なーんだ、こんな簡単な事だったんだ」
「違う違う、65535回目を最後に次の貴方は確認できてない……つまり貴方のやり直しは次で終わる。多分今回で世界を救った貴方へのせめてもの謝礼って所じゃないかな?」
「それに貴方は何も残ってないとか思い込んでるだけ。心を閉ざして無だと思い込んでいるだけ」
「違わない。これは私の観測結果からの結論。例え並行世界だろうと個人個人の性根は変わらない……私がそんな空っぽであることなんてあり得ない!」
「……演算の都合上此処には私以外入れない。つまり他人に聞かれることはない」
「だから話してみなよ。私の事を1番わかっているのは……私だ」
「私は……こんなこと、したくなかった!ただ普通に暮らして、ただ普通に過ごしてただけなのにいつの間にか死んだと思ったらやり直して!」
「せっかくやり直しできたんだからどうにかしようかって思ったけど結局ダメで!これで人生終わりなのかなって思ったら3回目!」
「ようやくAL-1Sを破壊できたと思ったら別の要因で滅んで……この世界そのものを救わないと私は永遠にやり直すんだって気づいてから……私は友達を私がやり直しから解放される為に利用するようになって……」
「どうせ世界を救えなかったらやり直しだからって普通の青春も捨てた……私だって……捨てたくて捨てた訳じゃない……!」
「でもそうしなきゃ私は何もできなかった!青春も、友達も捨ててようやくスタートラインに立てた……!」
「……だから私1人でできる事には限界があって、だから先生が来て……」
「今更捨てたものを取り戻せるわけがないって我慢して世界を救う事……そのための手助けに全てを使った。今更普通の生き方なんて、できない」
「……」
「……戻りたい」
「戻りたいよ……何も知らなかったあの頃に……無邪気に青春を楽しめてたあの頃に……!」
「でも今更どうやって!?終わりは知った。けど今更、今更……!」
「かえりたい……ヴェリタスに、みんなのところに……」
「……たすけてよ……わたし……!」
「……はあ」
「言えたじゃん、私。それに答えももう出てるし」
「……え?」
「「普通に生きたい」、それの何が悪いの?当たり前の権利じゃん」
「でも……」
「だから65536回目があったんだよ。安心しなって、貴方は世界を救える。救った上で……普通に生きることができる。別に私の力なんて必要ない」
「……本当に?」
「私は嘘をつくかもだけど科学は嘘をつかないよ。演算の結果なんだから間違いない」
「……じゃあ……」
「だから行ってきなよ、きっとどうにかなる。それに貴方を待っている人達もいる」
「……先生、シロコ……」
「とは言っても私は強情だからなぁ……よし、こうしよう!」
「……?」
「私の手帳とリボン、貴方に預ける。全部終わった後でまたナラム・シンの玉座経由で私に返しに来ること、いい?」
「……どうして?」
「返しに来てくれるって確信してるから。さっさとやることやって自由になろうよ」
「……ずるいや、私」
「ずるくて結構、使えるものは何でも使うのが私」
「……そうだったね、ありがとう。きっと返す」
「うん、絶対だよ」
「……」
「……確かに託したよ、私。そっちのナラム・シンの玉座がいつまで持つかは分からないけど……そろそろお別れかな?」
「言ったでしょ、あくまで私はナラム・シンの玉座をデータベースとして使おうとした。本来こういう並行世界から物体が転送されてくるのは想定外の挙動なんだ」
「まあ一回試してみた事はあるんだけど……それでわかったことが一つあってね」
「別世界の物体を持ってくる場合、原則としてそれらもナラム・シンの玉座内部に存在する事が必須である……電話みたいなものだね、お互いに使ってないと干渉する事は不可能」
「そして片方が途切れれば当然あるべき場所に戻る。私の方はお膳立てしてるから早々パワーダウンすることはないけど多分そっちはそうもいかない……まあそうだね、ダメだったら短い夢だったと思って」
「……杞憂だったか、絶対だよ?」
「ふふ、それじゃあさよならじゃなくて……」
「またいつか、かな?」
「……行ってらっしゃい
「……まさかいつも通り適当に機密情報漁ろうと思ってたらこんな事になるとは……人生何があるかわからないね」
「というかシッテムの箱を使えば安定して世界間で物質の転送ができるって事……?大発見じゃん、これはすぐに」
「ナズナ」
「研究……を……え、チーちゃん?」
「演算も終わったみたいだからそろそろ先生がシッテムの箱を返して欲しいってさ。それと……何を考えてたの?」
「えーっとその、歴史的大発見を……」
「はいはい、そういうのいいから行くよ。そろそろミレニアムEXPOなの忘れてないよね?」
「私はチーちゃんの眼鏡の度数とサイズを一字一句漏らさずに言えギャンッ!?」
「そういうのいいから……」
「うぅ……酷いやチーちゃん……」
「ほら行くよ……あれ、リボンどうしたの?」
「あー、気づいちゃう?」
「約束の担保として渡してきた。相応の利子つけて返してもらう予定」
頑張れ私、クソッタレなあれこれに負けるんじゃないぞ。
元々好き勝手やるのが「私」の性分なんだからさ、変な事考えずにしたい事をすればいいんだよ。
それが「生きる」って事だと私は思う。できるから、そっちの方がいいからって何もかも自分の意思と違う方向で決めつけていくのはあまりにも虚しくて、苦しいよ。
……まあでもやりすぎたらしっかり怒られるからそこら辺の加減は見極めた方がいいよ!私はできない!
番外編だよー!
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星の名を冠する銃
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1周目
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ナズナとの記憶が引き継がれてる……?
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各自治区人力RTA