十五分物語(短編集) 作:網浜
へろー、へろー、どうもどうも、こんにちわ。聞こえてる? ちゃんと録音できてるかな。ええと、俺です。影太です。影山影太。今、この音声を録音しています。時刻は午後九時を回ったところ。空が異様に明るいです。
今回なんでこんな音声を録っているかというと、ええっと、なんて言ったらいいのかな。遺書? 遺言? そういう感じです。もうすぐ俺は死にます! なのでこうして言葉を残しているのです。誰に? 誰にだろう。わからん。誰かこの音声を聞いていますか? いませんか? いてくれたら、うれしいかもしれません。
突然ですが、今地球は大変なことになっています。宇宙人です。宇宙人の侵略。人間は絶滅寸前だ。俺達は必死に逃げて、なんとか隠れてこれたけど限界です。宇宙人のえらい奴に見つかってしまった。仲間はみんな死にました! 家族も。残るは俺一人で、それも長持ちはしないでしょう。しばらく俺以外の人間と合っていません。もしかして、最後の人間なのかな、なんて。だったらこの音声も意味ないね。いや、宇宙人が拾ってくれたら、まあ、なんとか解読してくれるかな。被侵略者の貴重な音声。みたいな。宇宙人の人権派団体がこれをもとに地球侵略を非難してくれたらうれしいな。いやどうでもいいか。わはは。うける。
うけるといえば、今までのは嘘です。宇宙人は居ません。いるわけないでしょう。信じた馬鹿おる? おらんか。
じゃあこの音声は何かというと、やっぱり遺書です。宇宙人は嘘だが、この世界はもうだめです。異常気象で人類は絶滅寸前だ。長らく雨が降っていない! 温暖化で海面がヤバイ! 雨がやまないとこもあってそこはそこでヤバイ! 仲間はみんな死にました。飢えとか病気とかで。家族もね。もしかしたら俺が最後の人間か? だったらもうこの音声を拾ってくれる奴はいないか。宇宙人はいないし。でも海底人間はいるかも。あるいは、ええと、人間が滅んだ後にナメクジが進化したりしないか? ナメクジ人間。手塚治虫マルシー。そいつらがこの音声を……いや、残ってるわけないか。あって何万、何億年も先やろうし。
ちなみになんだけど、嘘です。異常気象も嘘。あとかなり些細なことかもしれんけど時刻も嘘。午後九時じゃなくて午後一時です。最初に「へろー」っていったでしょ。こんにちわって。どうでもいいか。
実際のとこ、戦争です。あ、人間が滅びそうな理由なんだけど。戦争。核とかの。一番あり得そうなのが戦争って話。ロシアがね。あと中国が。そしてアメリカが。ついには日本が。やってやりかえしての応酬が一瞬で世界を引き裂いたって寸法。おかげさまでここしばらく人類は終わりっぱなし。そしてとうとう俺も終わり。もうすぐ死にます。なので遺書です。遺言か。仲間は飢えとか病気とかで死にました。あと醜い争いで死にました。家族も。俺ももうすぐです。俺が最後の人間かというとそうでもないかもしれんので、この音声はまあ誰かに届く可能性もなくもないかなって思います。見つけた人は大事にしてください。
一応断っておくけど、嘘です。戦争は起きていない。
じゃあなんで人類は滅ぶのかって話。あ、滅ぶっていうか滅びそうってか。そこは嘘ではないので。ええと、それは、実は俺が多少悪くて。詳しくは話したくないのだけれども、俺が原因でこうなっているところはあるわけです。終わります。世界。もうすぐこの世界が終わる。何故か。
何故なら俺がこの世界を始めたからです。この録音によってはじめたから。
この世界は大体十五分間で終わります。十五分間で書かれている物語だからです。ここに住んでいるという設定の人たちも完結と共に滅びます。仲間も、家族も、俺も。
あ、嘘言いました。最初からずっと、これを録音って言ってたよね。嘘です。
これは文章です。
小説です。
今、読んでるんだから、わかるでしょ。
あ、今十五分過ぎました。でもまだ少し猶予があります。せっかくなので上手く締めたい、そういう思いがあるみたいです。誰に? 神様? そんな立派なものじゃないなにか? 俺? まあいいでしょう。
これを読んだ人。ありがとうございます。読んでくれてうれしいです。この気持ちは嘘じゃない。俺に気持ちがあるのは嘘かもしれない。でもうれしい。俺達の事を忘れないでください。俺達はそろそろ書かれる『完』って言葉で滅ぶけれども。ありがとう。ありがとうね。宇宙人も、異常気象も、戦争もないつまんない物語だったと思うけれど。さようなら。
完
とりあえず一回目なので、一応オチがついているっぽいやつを一生懸命探しました。
メタなオチですが、毎日書いてるとよくメタに逃げるようになります。