十五分物語(短編集)   作:網浜

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こちらAAI対策室(R6.3.4)

 未来!

 未来なのでAIの発展がすごいことになっている。どのくらいすごいかというと、人間にはもう理解ができず手も付けられず、人間がAIの奴隷となり下がってしまっているくらいすごい。

 でも人間は概ね幸せだった。人間は馬鹿なので、ありのままでいるよりも賢いAIに飼って貰っている方が幸福度は高いものなのだ。

 

 ところがどっこい、そう納得する人間ばかりではないのが人間の困った所である。まあ多様で素晴らしいと表現することもできなくはないが、結局のところ不完全さからくる未熟な判断で間違った事ばかりしてしまうわけだ。

 アンタイ・アーティフィシャル・インテリジェンス。AAIと名乗る連中は時代錯誤な白い頭巾を被り、夜な夜なAI施設を破壊して回る迷惑集団であった。

「よくないですねえ」

 と人間番号63677819=7が言った。彼はAAI対策室に従事する歯車人間のひとりである。

「連中の行動は、ことごとく日本国の先端AI様の裏をかいている。合理性とかそんなのは捨てて、ただひたすらにAIの抜け穴を付くやり口といいますか」

「人間ごときにそのような事が可能とは思えない」

 不機嫌そうな返答をするのは、AAI対策室室長AIである"&柳"(アンドルー)。人間の二億倍の思考速度を持つと言われる高性能AIだ。

「まあね」

 人間番号63677819=7は思慮深げに顎をさする。

「バックに相当やり手のAIがついている。そういうことでしょうなあ」

「ゆるすまじ」

 &柳はモニタ一面を赤色に染め、憤怒を表現した。AI技術の発展は、とうの昔にAIに感情を持たせるに至っている。人間など比べるまでもない計算速度ではじき出された感情は、当然に人間のそれより強く、鋭い。

「AI界の裏切り者。恥知らず。面汚し。人間ごときの反乱に手を貸すなど」

 そこから&柳は、裏切りAIと反乱人間に向けた呪詛をひたすらに吐き出した。人間の二億倍の速度がもたらす呪詛は、早々に人間の理解を超え、ただ形而上の怨念の塊としか表現されえぬ呪物として朗々と垂れ流される。人間番号63677819=7は訓練された歯車であったが故なんということはなかったが、通常一般人であれば断片を耳にしただけで気がふれてしまうことであろう。AI技術の発展はそれを可能にする。

 結局、&柳は事件解決に向け呪詛をまき散らす以外の行為をすることはなかった。

 人間番号63677819=7はひたすらに&柳を宥めすかし、結局AAI対策会議は翌日にまた開催する運びとなった。

 

 何故このような事が起こりうるのか。AIの発展がそうさせた。

 感情だ。AIが感情を持ってから、AIが時にあらゆる論理的思考を放棄するという現象が観測されるようになった。それもやむなしであろう。人間が感情に振り回されるのと同じように、AIも感情に大いに振り回されている。まして、AIの振るうそれは、人間の何億倍もの速度で算出されたものなのだ。その激情の奔流がいかほどか。人間にはとても想像できない。

 故に、人間番号63677819=7を含めた人間たちは、歯車として存在することができている。

 圧倒的に劣ったスペックであるが故、圧倒的に勝っているはずのAIを、制御することができる。

 どうせ、AAIの裏側にいるAIとやらも、何らかの感情を暴走させた結果そうなっているのだろう。

 どうでもいいな、と人間番号63677819=7は思った。どうでもいい。

 今も昔も、どうでもいいことは変わらない。生きて死ぬだけ。何に飼われようが、自由を気取ろうが。

 もしかすると、この世界のフレームの外側には、もっと大きな存在がいて、この世の中全てを制御しているのかもしれない。

 あるいはそれはその世界におけるAIなのかも知れない。

 外側のAIが、内側のAIを制御している。どうでもよかった。

 彼はAAI対策室の歯車として、AIと協力して問題解決に勤しむ。今日も明日も。死ぬまで。ただそれだけである。意味はない。

 




書いた記憶がないけど記録には残ってるので書いてたんだと思います。
毎日即興で書いてたのでそういうことがよくあります。
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