十五分物語(短編集)   作:網浜

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恐るべき小説(R6.3.19)

 恐るべき小説の存在を知っているだろうか。

 それは三重県H町の図書館にのみ存在しているのだという。

 その小説を読んだものは皆その小説の虜となり、一生をその小説に憑りつかれて過ごすこととなるのだとか。

「それってつまりとっても面白いってことですか博士」

 確かにそういう考えもあろう。面白い小説を読めばそれは虜になるし、憑りつかれることもあろう。寝ても覚めてもその小説の事を考えて、妄想して、二次創作なんかしちゃったりして、後悔して。

「経験談ですか博士」

 いいかい、博士になるようなオタク君はね、みんな思春期にライトノベルを読むし、二次創作もするし、学校がテロリストに占拠される中で自分が大活躍する妄想をするものなんだよ。

「ラノベはすたれてますよ博士」

 うるさいよ少年。小説の話に戻ろう。恐るべき小説の話に。

 その小説は、先ほども言った通り、とにかく魅力的なのだ。人間一人の人生を変えてしまう程に。しかし不思議なことに、そんな話はまことしやかに言い伝えられてはいるものの、肝心の内容がどんなものなのかは、一切不明なのだ。

「まあ都市伝説なんてそんなもんですからね博士」

 そうやって考えるのをやめてしまうのはよくないぞ少年。確かに「えっそれ誰がどうやって知って人に言い伝えてるの!?」という感じの怪談話は多いし、そういうのにいちいち突っ込むのも野暮という考えもある。その是非についてはここでは問うことはしない。ただね、少年。この恐るべき小説は違うのだよ。もう全然違うのだよそういうのとは。

「どう違うんですか博士」

 事実なのだ。つまり、作り話ゆえの粗などではないのだ。少年。

「本当にあった呪いのビデオ系のやつですね」

 あれは嘘なのだよ少年。でもこの恐るべき小説は事実なのだ。ノン・フィクションなのだよ。

「ノンフィクション小説なのですか博士」

 そうではないのだよ少年。いや、内容は伝わっていないからわからないのでもしかするとノンフィクション小説なのかもしれんけど、とにかくそういうことが言いたいのではないのだよ少年。

 いいか、少年。見たまえ、これを。

「古びたきったねー本ですね博士」

 口が過ぎるぞ少年。なんと、これが、件の恐るべき小説なのだよ。

「えっそうなのですか博士」

 そうなのですよ少年。

「どこで手に入れたんですか博士」

 三重県H市の図書館で借りたんだよ少年。

「普通に貸し出してるんですか博士」

 貸し出してたんだよ少年。

「読みましたか博士」

 読んでないんだよ少年。

「何故ですか博士」

 ビビってんだよ少年。

 あっ、きみ、ちょっとやめなさい! そんな、そんな素早い動きで、くっ! わかった、読む! 私が読むから少年!

「僕も読みたいです博士」

 まあよかろう君も道連れだ少年。

 果たして、読んだもの全員を虜にする恐るべき小説が如何なるものなのか。その謎がついに解けるわけだな。人生を小説に捧げる覚悟はできてるか少年!

「あ、もう先に読んでます博士」

 一番恐るべきなのはキミなんじゃないかな少年。

 で、で! どうなんだ。面白いのか? 怖ろしいのか? 小説の虜になっているのか少年!

「…………あれ、博士」

 どうしたんだ少年。

「博士って、なんで地の文なんです、博士」

 何を言っているんだ少年。

「僕ってなんで台詞なんです、博士」

 意味が分からんぞ少年。

「……読んでください、博士」

 うわっ、少年! キミ、そんな、心の準備がまだ!

 …………あれ。

 なんで私は地の文なんだ?

「ですよね博士」

 なんで君は台詞なんだ少年。

「ですよね博士」

 少年。

 私は。

 私達は。

 小説に

 




多分ドラマの岸部露伴とか見て感化されて奇妙系やりたいってなってこうなったんじゃないかな(うろ覚え)
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