【完結】TS強化兵のファンタジーロボット戦記   作:相竹空区

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今日は少し短めです


モノローグ

 

 鋼鉄の壁を隔てた遠くから、戦いの音が聞こえた。

 記憶が少しあやふやで、少し吐き気がする。

 戦っていた、戦っていた……

 そうだ、爆発が起きた。

 味方を逃がそうと戦っていたら、目の前で爆発が起きた。

 

「ッ……」

 

 全身が重たい。

 声も上手く出ない。

 身体……身体が動かない?

 腕も、脚も、無い?

 

「ヒッ──」

 

 胸が張り裂けそうなくらい激しく、心臓が勝手に動き出す。

 息が苦しい。

 助けて……

 

「ゥアア……」

 

 ようやく喉から絞り出された泣き声がコクピットに響く。

 そうだ、違う。

 私はゴーレムのコクピットの中に居る。

 くらい、暗いけどコクピットの中。

 手脚が無いのはゴーレムで、中の私は大丈夫なんだ。

 

「ハァ……ハァ……」

 

 あると分かれば腕が動かせた。

 ゆっくりと、自分の身体を抱きしめる。

 大丈夫、大丈夫。

 

「ンーンンー」

 

 怖い時はこの歌を歌えば大丈夫。

 ひとつ、ふたつ、みっつ。

 数を数えて、心を落ち着かせる。

 こうしたら大丈夫だって知っているから、大丈夫。

 落ち着くまで繰り返す。

 たまに聞こえる大きな爆発音が怖いけど、小さく歌い続ける。

 大丈夫、大丈夫……

 

「ゥゥ……グス……」

 

 落ち着けたのは、涙が乾いた頃だった。

 周りから音が消えて、独りになったみたいで怖い。

 もう外に出ても大丈夫かな?

 まずはハッチを開けて……開かない。

 自動も、手動もピクリとも動かずにハッチは閉まったまま。

 ハッチが歪んで動かなくなってしまったのかもしれない。

 こんな時はゴーレムの腕で無理矢理──ダメだ。

 このゴーレムにはもう腕が無い。

 開かない……開けない?

 このまま、閉じ込められて、死ぬ?

 

「……ァ」

 

 声が出なかった。

 心細くて、何も出来なかった。

 脚を抱えて、うずくまる。

 ひとりぼっちだと狭いコクピットが広く感じた。

 怖い、怖い、こわい、こわいこわいこわいこわい。

 

「ァァァァァ……」

 

 だめだ。

 泣いちゃだめ。

 こんな時はあの子(・・・)の事を考えよう。

 あの子はいつもしっかりしてて、初めて会った時から私を助けてくれた。

 研究所に連れて行かれるトラックの中で、みんな怖くて泣いていたのに、あの子は何も怖くないみたいに堂々としてかっこよかったな。

 

 でも、あの子にだって弱いところはある。

 怖くないのかと思ったけど、ホントはあの子も怖がってた。

 あの子はいつも誰より先を歩いて、私達が安心出来るようにしてくれる。

 でも夜中に痛くて泣いてるところも、小さな身体で無理しているところも見てきた。

 基地にやって来てみんな不安だった時に一番先に動いてご飯の食べ方を教えてくれたのはあの子だったし、誰よりも無茶をして大人に私達の存在を認めさせたのもあの子だった。

 

 でも、あの子だって傷付く普通の人間。

 同じ部隊の仲間が死んで、あの子も酷い身体で帰って来た時に私はどうしたらいいのか分からなくて泣いてしまった。

 本当はあの子を元気付けたかったのに。

 

 いつも、私はあの子に守られている。

 なら、あの子は誰が守るんだろう。

 私が守らなきゃ。

 そう思っていたのに……

 

「ア、ア……」

 

 これじゃ、あの子を悲しませるだけだ。

 あの子は優しいから、きっと私が死んだら悲しんで傷付いてしまう。

 一緒にチョコを食べる相手が居ないと寂しいかも。

 アリナさんがもっと美味しいチョコがマチ?にはあると言っていた。

 それをあの子と食べたかった。

 あの子が笑顔になってくれたら私は嬉しい。

 

「コレは……資料にあったエルフの新型強化兵の機体ですか」

「スパークル、ハッチは開きそうかい?」

 

 遠くから、くぐもった声がする。

 外に誰が居るのかな?

 

「──無理ですね。開閉機構が歪んでいるのでしょう」

「オーケー分かった。そういう時は引き剥がしてしまえばいいのさ」

 

 周りから激しく軋む音がする。

 ギシギシ、ミシミシと割れて裂けて耳を刺す。

 

「これでいいだろ?」

「流石ですトーチ隊長。短絡的な手段は貴方の十八番ですね」

 

 開かれたハッチからコクピットに光が飛び込む。

 暗い中に目が慣れていたからやけに眩しい。

 でも、あの中で死ぬと思っていたから、この光はとても暖かい。

 

 ああ……だから、そうだ。

 私はあの子を照らしたい。

 暖かく、見守るみたいに。

 引き剥がされたハッチから差したあの光──あの火みたいに。

 

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