【完結】TS強化兵のファンタジーロボット戦記   作:相竹空区

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第七話 理解したか?

 

 軍隊での生活が始まった。

 厳格に管理された時間割により起床から睡眠までを過ごす、という点においては以前と変わらず。

 着る服だって濃緑の戦闘服を与えられたからこれを着るだけ。

 個人的には宿舎暮らしで隣のベッドに444号が居ない事が大きな変化か。

 個人的ではない変化としては、より大人数との共同生活であるという点。

 今までは同じ収容所の劣等種、同じ研究所の実験体と横並びの人間関係だったものが今は違う。

 朝起きて、食事を摂ろうと食堂へと向かえば階級の様々な兵士でひしめいているのだ。

 少し良い席ではエルフが食べて、それ以外ではオレ達と同じ劣等種が固まって食べている。

 そしてオレ達、遠巻きに陰口を叩かれている首輪の強化兵はと言えば……

 

「何やってんだアイツら?」

「喋らないし気味が悪いわ」

 

 食堂の片隅で固まっていた。

 オレが食堂にやって来た時には既に一塊出来ていて、なんだろうと合流したら次々と付け足されていまや総勢十五名によるおしくら饅頭。

 背の小さいオレでは中々に窮屈だ。

 

 最初はここで待てとでも言われたのかと思ったが、いくら経っても動きがないので違うのだろう。

 であれば何かと考えてみると、おそらくこの子供達は分からないのだ。

 朝起きたら食堂に行けとはオレも言われた。

 だから来た。

 それで?

 この子供達は与えられた食事を食べる事しか出来ない。

 いくら空腹だろうと、食べてもいいかと聞けない、尋ねる言葉を持たない。

 オレなんかは他の人に倣ってキッチン前の列に並べばプレートに食事を盛ってくれる事が分かるのだが、この子達はその他人に倣う社会性すら持っていない。

 学ぶ機会を与えられていない。

 

「フゥ……」

 

 やれやれ、仕方ない。

 ここはひとつ、オレが先陣を切ってやろう。

 腕捲りして列の最後尾に着く。

 堂々と、やましい事など無いと薄い胸を張る。

 

「お?随分長く立ってたが……食うのか?」

アー!(飯くれ!)

 

 トレーを受け取り突き出せば、言葉になっていなくても流石に分かるだろう。

 困り顔の炊事兵が取り敢えず、といった様子でオレのトレーに山盛りの何かを乗せる。

 ズッシリと重い、おそらく炭水化物たっぷりのメインの料理。

 そのまま列に沿って動いて次の料理も受け取り、更にその次と続ければオレの手元には一食分が完成。

 団子になってる子供達へと目配せすれば、何かに気が付いた様子の444号と目が合った。

 

「アー!」

「ワァー!」

「お?おお?一気に来たな……」

 

 オレに続けと444号が口火を切って、アー!の一言と共に子供達はようやく食事を手にしてゆく。

 食堂にやって来てから何分無駄にしたのやら。

 きっとあの調子じゃ席を選ぶのすらままならないだろうから、空いてる場所をオレが探さないと。

 

「場所取りかいお嬢さん」

 

 周囲を見回していたら声を掛けられた。

 昨日団長と呼ばれていた劣等種の男だ。

 

アー(そうだよ)

「ん?ああ、喋れないのかな。あっちの隅の方に行きなさい、あそこはいつも空いてる」

アー!(ありがとう!)

「ハハ、何言ってんだか」

 

 気の良い人のように思える。

 見た目も縦にも横にも大きくて熊みたいだし、親しみが持てる。

 思い返してみると昨日はエルフに面倒を見ろ、と言われていたしまとめ役みたいな人なのかもしれない。

 感謝はせめて気持ちが伝わっていると良いんだけど。

 ありがたい事に団長の言っていた席は十五人が座るのに十分で、更にはこちらを見て何かを言っている連中から距離を取る余裕もあった。

 それに軍隊の食事というのは中々食べ応えがあるもので、子供達は一心不乱に勢いよく食べて満足げだ。

 オレはと言えば隣に座った444号はやたらご飯を盛られたらしく、無断でオレのプレートにお裾分けをくれるものだから腹が破裂するかと思うくらいの量を食べた。

 朝からこんなんで動けるものか?

 この時はそう思いはしたのだが、結果的にはしっかりとエネルギー補給をしていた事が功を奏した。

 その日、オレ達は早速の初出撃となったからだ。

 

◆◆◆

 

 ゴーレム格納庫は広い。

 整備スペースに、パーツの保管を行う場所にとゴーレムに纏わる設備が付帯した空間は相当なものだ。

 そんな空間の片隅に、簡易的なオペレーションルームを築いた所で大した邪魔にはならないのだ。

 

「喧しい場所だが無いよりマシだ。駄犬諸君は足るを知りたまえ」

 

 キランはそんな事を言いつつも以前に使っていた人が居たのであろう、埃の積もった場所に露骨な不快感を示していた。

 

「これより簡単な、実に簡単な任務を遂行する。駄犬の散歩にはうってつけのな」

 

 オレ達五人をキランは駄犬と呼ぶが、まあそれは……強く否定出来ない。

 三人はこの時間は少しフワフワしているし、436号は周囲から響く大きな音にビクビクしている。

 オレ?

 オレは朝飯を腹一杯食べてしんどい。

 

「国境を越えて偵察に来たリシルの部隊を追い返す。少し姿を見せて威嚇射撃をするだけで済む任務だ。ゴーレムを走らせて魔獣を威嚇し、歩兵が巡回中に不要な接触をしないよう抑制する狙いもある」

 

 魔獣というのは魔力の影響を受けて異常発達した生物の総称だとか。

 強化兵には関係無い事なのであまり習わなかったが、こうして自然の中に基地があれば獣ともぶつかる事があるのだろう。

 ここは我々の縄張りだぞ、とリシルと獣に示す仕事。

 なんだ簡単じゃないか。

 ずっとこんな仕事していたいもんだぜ。

 

「貴様らの機体は既に準備してある。来い」

 

 キランがオレ達を連れて行ったのは全く同じ五機の前。

 エルヴンランドを象徴する濃緑に、角張ったシルエット。

 オレ達はゴーレムに関する事はみっちりと教育されたから、この機体についてはスラスラと情報が出てくる。

 

 これは旧ノゥル公国で正式採用されていたゴーレム、ケルッカ。

 寒冷地での安定性を求めて開発されたケルッカは、高い馬力と拡張性により評価された、ノゥル公国で最も多く配備されたゴーレムだったとか。

 しかしノゥルはエルフに敗れ、併合された後はエルヴンランドの為に戦う事になった。

 自国の軍に現地人を取り込んで、扱わせる兵器も現地の生産ラインをそのまま使う。

 これがエルフの常套手段なのだとか。

 そもそもエルフ用のゴーレムはいくら強化兵でも負荷が大きく操れない為、結局劣等種用のゴーレムが必要となるのであればこの形が一番効率的なのだろう。

 

「速やかに出撃準備をしろ。陽が出ているうちに帰投したい」

 

 キランはそのまま何処かへ行った。

 エルフ用のゴーレムは別の格納庫だ、そっちへ向かったんだろう。

 きっと向こうはゴーレム用の絨毯とかが敷いてある。

 

「ム、アンタらが昨日やって来た新型だね?」

アー?(そうだけど?)

「あぁ?」

 

 突然話しかけて来た女性がめっちゃガン付けてくる……怖い。

 スパナを肩に担いで頬に機械油を拭った跡があるワイルドな姿。

 きっと整備兵なんだろう、彼女も劣等種だ。

 

「新入りは態度悪りぃなぁ……あの耳長に言われて機体は準備しといたから、あとは好きにやってくれ。アタイが丹精込めて整えたんだから、死んだ時はゴーレムの責任にすんじゃないよ?」

 

 その言葉を聞いて隊の仲間達がノソノソと動き出す。

 機体に記された番号に従いコクピットへ向かい、オレはと言えば整備兵のお姉さんに睨まれて動けないまま。

 

アー?(ありがとう?)

「……喋れないのか?」

 

 コクコクと大袈裟に頷く。

 やっぱりボディランゲージは最高だ。

 

「全員、そうなのか?」

 

 再度頷く。

 お姉さんの顔がどんどん顰めっ面になってゆく。

 

「チッ!胸糞悪りぃ事しやがって耳長のクソ共が……!」

 

 エルフに対してこんなに怒りを露わにする人を初めて見た。

 こんな勇気……蛮勇と呼べるかもしれない感情の発露は少し怖い。

 万が一エルフに聞かれていたらオレまで処罰されるかもしれないと宥めようとする、がそれもまた彼女の何かに触れたらしい。

 

「辛い目に遭ったんだろうな。まだこんなガキなのによ……行きな、怒られないうちに。大丈夫だ、ケルッカはノゥルの子を守ってくれる」

 

 怒ったり湿っぽくなったりと忙しい人だ。

 言葉は無理だから手を振ってオレのゴーレムへと駆け出す。

 背後から聞こえた励ましの声を胸に抱き、コクピットへ入り込む。

 訓練用のゴーレムとそう変わらない。

 頭に叩き込んだ手順を正確になぞり、鋼鉄の身体を徐々に起こしてゆく。

 様々な動作音が、魔力の唸りが、コクピットに反響する。

 

ヴゥ(まだ慣れないんだよなこれ)

 

 腕と腹にチューブを挿して交感の準備は完了。

 深々と息を吸って、吐いて心も準備完了。

 これくらいやらないと、あの強烈な感覚は少し毒だ。

 

「……ッ」

 

 スイッチを弾けばチューブから魔力溶液が流れ込む。

 体内に異物が入る不快感、五感が拡張される陶酔感、そして情報量に脳が痺れる感覚。

 交感開始時に視界で煌めく光を見ていると脳を刺すような痛みがある。

 なんにせよ身体には良くないだろう。

 

『道は開けといたよ。順番に外へ出な』

 

 無線からはさっきのお姉さんの声が聞こえる。

 こういう時の順番というのが子供達は苦手だろう。

 誰から、と指定されないと動き出せないだろうからオレが最初に動き出す。

 格納庫を出ればゴーレムの為の広い道に出る。

 取り敢えずは五人揃ってそこで待つ。

 

『出撃準備に関しては問題無し。常に私よりも早く準備を終わらせるように』

 

 無線からキランの声が聞こえて程なくして、オレ達の前に一機のゴーレムがやって来た。

 濃緑である事はオレ達のケルッカと変わらないが、丸みを帯びたフォルムは明らかに違う設計者の存在を感じさせる。

 

『私の乗るこの機体、ドライアドに決して武器を向けるな。命を賭して守れ。それが貴様ら強化兵(バンドッグ)の役割だ』

 

 これは研究所でも何度も言われた事だ。

 新旧問わず強化兵とはエルフの弾除けなのだと、そう教えられた。

 

『そして私の命令に逆らうな。敵前逃亡も許さん。私の銃口は貴様らの背をいつでも撃つ事が出来る位置に置いておく。ゆめゆめ忘れるなよ』

 

 そう言ってキランはゴーレムを走らせる。

 地を滑るような滑らかな移動だ。

 オレ達も慌ててその後を追うが、ケルッカの移動はパワーを感じさせる荒々しいもの。

 足裏の履帯が力強く地面を背後へと押し出す動きに従って、オレ達の楽しいピクニックが始まった。

 

◆◆◆

 

『ハンドラーより伝達。ポイント更新、バンドッグ各員は北東へ進路を変更せよ』

 

 無線越しに届いた指示に従い一列になって移動を続ける。

 生身で歩いては大変な苦労をするような深雪も、ケルッカならば楽々だ。

 とはいえ何処に居るかも分からない指揮官(ハンドラー)から届く指示に従い続けるのは退屈で、そして不安だ。

 

 キランは姿を隠している。

 周囲を回せば森や丘があるから、そのどれかにゴーレムの巨体を隠しているのだろうが……何故隠すのか?

 キラン自身がこれは簡単な任務だと言っていたが、それは嘘だったのか。

 疑心に苛まれつつの行軍を続けていると、キランの意図が分かった。

 

『ハンドラーより伝達、前方の木立の先にリシルの偵察隊。相手は六機だがやれるな?見ているぞ(・・・・・)

 

 遠くの見晴らしの良い位置から周辺を窺い、そしてオレ達が逃げ出そうとするのを抑止する。

 敵を狙いつつオレ達の背をも狙っているのだろう。

 となればやるしかない。

 命が掛かっているのだから。

 

アー(オレが先に行く)

 

 この機体に積まれた無線は一応こちらから声を届ける事も出来るのだ。

 こちらの意思が伝わるかはわからないが、それでも一応声は掛けておく。

 食堂での様子を見るに、子供達は状況問わず具体的な指示無しで動くのは苦手だろう。

 訓練ではより正確な指示と具体的な状況を用意されていたからなんとかなったのだが。

 研究所側の無用な知恵を付けさせたくない、という意向と現場でそれは通用しない、という現実の板挟みになっていた教官殿には同情する。

 とはいえ場を整えてやれば続く四機も上手く動いてくれるだろうから、あとは信じて先行するだけ。

 

 ゴーレムの腕を動かしてついて来いとハンドサイン。

 木立をスムーズに抜けるルートを即座に組み立て走り抜ける。

 程なくして木々の向こうに赤銅色の六機が見えた。

 

アー!(行くぞ!)

『グアァ!』

『ギギギァ!』

 

 景気の良い叫びが聞こえる。

 勢いは十分。

 まずは一機、敵の数を減らそう。

 ケルッカの武装は実にシンプルなライフル、盾、斧。

 使う武装に悩む必要もなくライフルを構えて、射撃。

 

『見事だ448号。そのまま畳み込め』

 

 キランの賞賛は不思議と嬉しさよりもプレッシャーが勝る。

 やはり視線と共に銃口を向けられている、と頭の片隅にあるからだろうか。

 とはいえ褒めるだけなら自画自賛がある。

 オレは見事に一機を落とした。

 念の為に撃った二発の弾丸は、リシルのゴーレムの胸部を穿って基幹部分を破壊したのだろう。

 火を吹いて倒れるゴーレムにオレ達は勢い付き、リシルは慌てふためく。

 

『ギギギギアガァ!』

 

 少し勢い付き過ぎてるのも居る。

 とは言えここまで見事に成功した奇襲は戦いの趨勢を明確に決めて、オレ達は苦戦のくの字も見えない程に容易く勝利を収めたのだった。

 

『悪くない。些か柔軟性に欠けるようには見受けられるが、駄犬にそこまで期待するのは酷か』

 

 オレ達の戦いぶりをそう評価して、キランはようやく姿を見せた。

 キランの乗るドライアドは木立の中から現れて、手にしたライフルを地に臥せたリシルの機体に向けて一発。

 

『注意力散漫……獣にはせめて感覚が鋭くあって欲しいものだが』

 

 僅かに銃口を持ち上げたゴーレムはパイロットを失い沈黙。

 六機の残骸が転がる大地に六機のゴーレムが健在。

 勝利としては言う事のない完璧なものだと思う。

 最後くらいはキランに働いてもらっても問題ないだろ。

 

『さて、あとは帰投するのみだが──なぜ銃口を私に向けている?』

「!?」

 

 キランの言葉で慌てて仲間を見れば、戦闘中にやたらと昂っていた一人がキランへと銃を向けていた。

 やめさせようと一歩踏み出すと、鋭い声がオレを咎める。

 

『全員動くな!……初めて得た勝利の味に酔いしれ、自らはこの大地に並ぶもののない強者だと驕り高ぶる駄犬の躾も私の仕事か』

 

 銃口を向けられてなお、キランは余裕の態度を崩さない。

 キランの乗るドライアドはオレ達のケルッカとは基礎スペックから段違いだ。

 その性能差を考えれば妥当だが、既に銃口を向けられている状況を考えれば無謀だろう。

 見る限り、ドライアドの武装は右手のライフルと左腕に取り付けた……何か。

 そもそもオレ達にエルフの機体の詳細は教えられていないのだ。

 もしかしたらそれがこのような暴発を招いたのかもしれないが。

 

『来い、痛みを以て矯正してやろう──』

『ガギギィイ!』

 

 キランが言い終わるより先に、銃声が響く。

 その余韻が大気に残る僅かな時間で……キランは全てを終わらせた。

 機体を傾け弾丸を避け、銃口を突き付けて迷わず前進。

 さっきの戦闘をキランはただ見ていただけではないのだろう。

 観察してオレ達の癖を見抜いていたのだ。

 オレ達は深くゴーレムと交感する事で力を得るが、逆にゴーレムに向けられた危機をより敏感に感じ取ってしまう。

 つまりは銃口を向けられれば反射的に避けてしまう。

 反応速度が高過ぎるからこそ、避けられるからこそ確実に防御ではなく回避を選ぶ。

 

 キランはそれでケルッカの動きを制御した。

 ただの一発も撃つ事なく盤面を制したキランは距離を一気に縮める。

 

『ゥゥギア!?』

 

 恐怖に駆られて乱射する弾丸を的確に読みキランはその全てを回避するか、直撃コースにある弾丸は──斬り払う。

 ドライアドの左腕の装備が展開し、青い光の束を放出する。

 それはさながら光の剣。

 弾丸を焼き切りケルッカの四肢を瞬く間に切り落とした。

 

『終わりだ』

 

 四肢を失ったケルッカの残る胴を蹴り抜き勝負は決まる。

 強い衝撃はコクピットの中まで届いたのだろう、無線からはもう異様な衝動に突き動かされる声は聞こえなかった。

 

『理解したか?貴様らよりも私の方が遥かに強いと』

 

 この態度にも納得の強さだ。

 ほんの僅かな時間で一機を無力化してみせたあの腕前、オレ達を弾除け程度にしか見ていない理由も分かる。

 

『そして、そうだな。貴様らの身体に埋め込まれた霊樹の枝は魔力を求める。これはゴーレムとの交感によって充足するか、任務の無い期間は我々が適宜魔力の補給機会をくれてやる』

 

 衣食住だけではない。

 オレ達はエルフにより多くの生存の為のリソースを管理されている。

 それは突き詰めていけばもっと根源的な、命を握られていると言い換える事も出来る程に。

 

『だが脱走すればどうなるか、貴様らの頭では理解出来ないだろうから予め伝えておこう。霊樹の枝は魔力を求めて根を伸ばす。その痛みに耐えども根は肉を破り皮膚を破り貴様らは苦痛に満ちた最期を迎える』

 

 だが魔力を摂取すれば魔石での死が近付くのだ。

 本当に悪辣で……難儀な身体になってしまった。

 

『言葉を話す事も出来ない貴様らが脱走したところで魔力の安定補給とは程遠い事を知れ。人里に入れば拘留され、軍に連絡が行くまでに死ななければ運が良い方だ』

 

 確かにオレ達は一般常識すら教えて貰えていない。

 オレは前世の分でなんとかなる……可能性があるが、食事もままならない子供達ではここ以外で生き抜く事は不可能だ。

 オレ自身だって、前世の感覚でいたら思わぬタブーを犯してしまう可能性だってあるのだからそう変わらないか。

 

『以上が私に逆らうべきではない理由だ。ご清聴感謝する』

 

 ぐうの音も出ない程の正論だ。

 これがエルフによって作られた状況でなければ納得していた。

 やはり僅かに心に残る反骨心がオレの人間性を示してくれる。

 だが歯向かうような真似を出来ない奴隷根性も染み付いてしまっていた。

 

『手脚はいい。胴体だけ持ち帰るぞ』

「……アー(了解)

 

 命令されれば身体が動くとは……なんとも虚しくなる。

 反抗して躾の一撃を喰らった仲間を抱えて帰路に就く。

 悪くない勝利から一転こんな気分にさせられるのだから、やはりオレの人生とは上げて落とすが徹底しているものだ。

 




嬉しい事に一時、日刊ランキングの75位についていたようで。
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