まさか連邦生徒会唯一の男が夜な夜な謎の美少女としてミステリアスムーブかましてるとは誰も予想だにしないだろうなぁ   作:ゆずっこ

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更新頻度について、良いニュースと悪いニュースがあります。

良いニュースは、つい最近まで熱心に書いていた一次創作作品が頓挫したため、この作品の執筆により多くの時間を割けるようになったことです。

悪いニュースは、それとは別に新しい一次創作を思いついてしまったことです。

私のミステリアス美少女道は永遠に続くのです……

ミステリアース!(敬具)



浮き沈みはミステリアス美少女の習いとはよく言うものである

 

「なっ…どうして…!!」

 

「……あら、来たのね。ホシノちゃん」

 

 ホシノの叫ぶような声に、ライは薄い笑みを浮かべながらゆっくりと振り返る。

 

 全てがライの想定内。場の空気は彼女中心だと言えるだろう。

 

 しかし肝心の本人の心情はと言うと────────

 

 

(クックック……やばいぞこれ、想定外だ!)

(研究職ミステリアス美少女を遂行するためには被検体っぽい人が必要だと思って協力してもらおうと思ったのに、ここだけ見られたらただの人さらいじゃないか!!!)

 

 意識を飛ばしてあらぬ場所へと勝手に連れていくことを人さらいと言わずしてなんと表すのだろうか。

 

 しかしライは一切悪びれることなく、ホシノとの対応に頭を悩ませる。

 

(こうなってしまった以上は仕方ない。高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変な対応による言い訳作戦────オペレーションMYSTERIOUSの実行を宣言する!!)

 

 かくして、行き当たりばったりなその場の思い付きによる作戦は始まることとなった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 能面のような顔でライはホシノへと向き直る。

 

 ヘルメット団の拠点で出会った時、そして二年前の初めて会った時と同じあの無表情でこちらを見つめるその目は、彼女が何も変わっていないことを表していた。

 

 ────見慣れない白衣を除いては、であるが。

 

「どうしてここに……?」

 

 なぜ彼女がハネタの銃を持っているのか、なぜ彼女が砲を操作していたであろう少女を抱えているのか……疑問はいくつにも広がるが、自然と口に出てきたのはここにいることについての疑問であった。

 

「強いて言うのなら、実験のためと言ったところかしら」

 

「実験…?」

 

 『実験』 その単語を聞いたのは黒服との会話以来だった。

 

 ライの妨害となるようなことはしたくない……だが『実験』という黒服との会話以来だった言葉を聞きホシノの懐疑心は高まる。

 

「二年前、世界平和のために動いている。と言ったわよね」

「実験もその一環なの。理解してくれるかしら」

 

 さも当然かのようにそう告げるライの目の中には、何も写っていないようだった。

 

「実験って……その人を使うの? それが本当に必要なことなの…?」

 

 ホシノの視線の先には、ライに抱えられている気絶した傭兵の姿。

 つい、ホシノは心に秘めておくはずだった疑問を口に出してしまった。

 

 ライはそんなホシノから視線を外し、背を向けてから口を開く。

 

「キヴォトス崩壊に繋がる要因は1つや2つだけではないの」

 

「……」

 

 ライの声色が僅かに暗くなり、ホシノはその『要因』に心当たりがある様子を見せながらも黙って話を聞く。

 

「裏切り、対立、禁忌、軋轢────それだけじゃないわ。外からの敵にだって対抗策を講じなければならない」

 

 ああ、概ね()()()()()()()()()()()()。とホシノは思う。

 

 ただ、次の一言がホシノを動揺へと誘う。

 

「そしてその要因は複雑な現象を通して貴女たちにも、私たちにも、先生にもなり得る……だから()()はその保険なのよ」

 

 先生についてはいくつかの隠し事をしているとはいえ、ある程度信頼している────と言うよりは信頼せざるを得ない状況にある────ため、そんな人物がキヴォトスの崩壊を引き起こすとは考えづらい。

 

 "貴女たち"の枠には誰が入っているのか分からないが……もしそれが自分なのだとすれば、何をトリガーに崩壊が引き起こされるのだろうか。

 

 そしてライたちはどのような行動を────と、ここまでホシノが考えているうちにスマホから通知音が鳴る。

 

 確認してみると、それは先生からのメッセージだった。

 

 【皆はホシノ先輩だから大丈夫。なんて言うけれど……一時間も音沙汰が無いから心配になってきちゃった。ホシノとハネタ、どちらか一方でも何かあったらすぐ連絡するんだよ】

 

 よく分からない鳥のスタンプと共に送られてきたそのメッセージからは、文章越しにも先生が心配している様子が想像できるものであった。

 

「そっか。もう一時間も……」

 

「ええ。この過酷なアビドスで貴女は一時間も過ごしているの」

 

 ホシノが独り言として呟いたその言葉に、暗に早く帰ることを促すようにライは言う。

 

「それに、貴女には待ってくれている仲間がいる。早く戻って余計な心配はさせないようにすることが大事だと思わない?」

 

 より強く、今度はより直接的な言い方でライはホシノに帰るよう促す。

 

 なぜそこまで帰らせようとするのか。ホシノが口に出そうとしたその瞬間。

 

 地平線の向こうから、巨大な黄色っぽい雲が迫ってきていることに気づく。

 

「なっ……あれは……!」

 

 だがすぐにあれがただの雲では無いことが分かる。

 それは二年前のある日まで頻繁に発生し、自治区が砂に沈む原因となった現象────巨大な砂嵐であった。

 

 キヴォトスの中でもトップクラスに頑丈な体を持つホシノだが、砂嵐に生身で入ってしまえば方向感覚が失われ、遭難してしまう可能性がある。

 

(これ以上皆を心配させたくはない。でもそのままこの場から離れてしまったら……)

 

 そのためできる限り早く戻りたいと思うホシノだったが、視線はライの背中から動かない。

 

 そんな様子を察してなのか、はたまた関係ないのか分からないが、ライは独り言のように暗く、小さな声で呟いた。

 

「正直なことを言うと、貴女には関わってほしくないの」

 

「……ッ!」

 

 表情を見るまでもなく、それはホシノへの明確な拒絶であった。

 

(そっか……ライはもう私のことを───────)

 

 一瞬、視線を下げたことにより視界いっぱいに黄色く、きめ細やかな砂が映る。

 

 視線を前へと戻した時には既にライの姿は消えており、周囲には破壊された砲といくつかの放棄された装備以外何も残されていなかった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 結局その日、帰ってきたのはホシノだけでハネタが私たちに姿を見せることは無かった。

 

 しかし翌朝には【昨日のことなんだが、緊急で用事が入ったから直帰したんだ。連絡をし忘れたことは申し訳ないと思ってる】とメッセージが来ていたため、少しだけ安心することが出来ていたのだが────

 

"無事なら良いんだけど……"

 

 私とセリカの2人しかいない教室に、独り言がこだまする。

 

「どうせあの人なら死んでも死なないわよ。そんなことより、今日の会議を────」

 

 セリカは私の言葉を心配することでもないと軽く流し、みんなを呼んで定例会議を始めるように促す。

 

 ────ピンポーン

 

 が、突如委員会室に響いたインターホンの音によってその言葉は遮られた。

 

"お客さんかな?"

 

「インターホンを鳴らすほど律儀な人は来ないんじゃない? 来るのは襲撃目的のヘルメット団やら傭兵団しか────あっ」

 

 セリカはため息をつくように話しながらも窓の外を覗くと、何かに気づいたような声を上げた。

 

"どうかしたの?"

 

 私も窓から外を見てみると、一台の物々しいトラックが正門前に止まっているのが見えた。

 

 車体側面には王冠を被ったタコを抽象化したようなロゴとカイザーローンの文字が描かれており、一目見て所属が分かる。

 

 間違いなくあのトラックはカイザー系列の企業のものであることが分かるけど……なぜ今ここに?

 

「そうだった……今日は利息の支払い日…!! 皆を呼ばないと!」

 

 そう言って、セリカは慌ただしい様子で部屋を飛び出していった。

 

 このままセリカとあのトラックを放っておくわけにもいかず、私もセリカの後を追い、正門へ向かうことにした。

 

 

 

 

 私が正門に着く頃には既にトラックは何処かへと走り去っており、セリカと対策委員会の4人が向かい合って話をしているようだった。

 

「ごめんね~。あれ以降体調が悪そうだったから、先生と一緒に居て安静にしてもらおうかと思って……」

 

「見ていれば分かると思うけれど……私は変わらず元気で健康体よ!」

 

「ん。バイトしてる時の声はいつもより小さかった」

 

「動きのキレも無かったです~☆」

 

 通りであまり姿を見なかったわけだ。私をセリカと一緒にさせたのは、セリカが安静にしているかどうか見守るためだろうか。

 

「それでも! 軽く書類をまとめて現金を用意するだけなんだからそのくらいは……」

 

「書類作業はいつもやってもらってるし、現金は重いから体に障っちゃうかもしれないでしょ?」

 

 ホシノはやんわりと言っているつもりなのだろうが、目の奥からは明確な拒否を感じとれる。

 

「書類作業とは言っても数枚書類まとめて印鑑を押すだけだし、現金だって持とうと思えば片手で持てる程の重さじゃない!」

 

 それでもなお、セリカは食い下がる。

 

 確かにあんなことがあったのだからしばらくセリカは安静にしていた方が良いと思う。

 しかしなぜホシノ……いや、みんなはセリカを止めるのだろうか。

 

「確かに周りから見れば調子が悪かったかもしれないけど……でもあれくらいの仕事ならできるわよ! 先生もそう思うでしょ!?」

 

 セリカは振り返ってこちらを見つめながらそう言った。

 

 ラーメン屋で何時間もバイト出来ているのだから、そこまで体力を使わなさそうな仕事くらい出来そうな気はする。

 

 ただ、私が声を出す前にホシノの視線が強くこちらに向き、声を出すことなく口を開いていることに気づいた。

 

 『あわせて』

 そう言いたいのだろうか。

 

 読唇術を持っているわけではないが、それがこちらにホシノの言うことに合わせてほしいという意思表示であることが何となくではあるが分かった。

 

 何故そこまでしてセリカの動きを止めようとするのかは分からないものの、ホシノにも考えがあってのことだろうと思い、ひとまずは従うことにした。

 

"うーん。でもやっぱり安静にはしておいた方が良いんじゃないかな?"

 

「そんな、先生まで……」

 

 がくりと項垂れるセリカを横目にホシノはこちらを見たまま軽く頷き、視線をセリカへ向けて口を開いた。

 

「まーまー。いつも頑張ってくれてるんだしさ、しばらく休んでようよ」

 

「納得いかないけど、そこまで言うんなら少し休むべきかしら……シロコ先輩とノノミ先輩の言う通りならバイトにも支障が出てるみたいだし……」

 

 渋々と言った様子でセリカが折れて、しばらく休むことにした様子。

 

 コテコテのラーメンでも食べて休んでもらうのが良いかな?

 

「ん。銀行の襲撃計画でも立てて身を休めるのが1番いい」

 

「アイドル衣装を考えるのでも良いと思いますよ~☆」

 

「普通に休むという考えは無いのですか…?」

 

 アヤネの呆れたような声に、セリカも腕を組んでそれに同調した様子でため息をついていた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

「ううっ……」

 

 呻き声が廃墟に響き渡る。

 

「ここは……?」

 

 傭兵着の少女は体の中をぐちゃぐちゃにされたような気持ち悪さを感じながら、周りを見渡す。

 

 そこにはたくさんのボロボロとなったデスクやイスが放置されており、もともとはオフィスであった事が分かる。

 

「一人で突っ込んできたヤバい女とやり合おうとして……いきなり触られたと思ったら気を失って……うっ」

 

 少女は困惑しながらもここに来た経緯を知るため、過去を思い返す。

 ライに触れられてから意識を失たことを思いだすと、体の中の気持ち悪さをより一層強まったのを感じる。

 

「これ以上深く思い出すのはやめておこう……とりあえず、ここから出てみんなと合流しないと」

 

 服についた砂を軽く払い、立ち上がるが────

 

 ガチャリと扉が開いて一人の少女が入ってきた。

 

「なっ……お前は!」

 

 とっさに距離を取り、武器として使えそうなイスを手に取っていつでも戦えるように備える。

 

 それもそのはず、部屋に入ってきた少女は自分を気絶させ、ここに連れてきたであろう張本人なのである。

 

「そんなに怖がらないで。下手に抵抗するのなら、また()()をすることになるわよ」

 

「……ッ!」

 

 身体が当時の記憶を思い出し、僅かに震えだす。

 

「自己紹介がまだだったかしら。私は小野川ライ。"ネストリウス"のエージェント兼神秘の研究……いえ。これ以上は言うべきではないわね」

 

 傭兵着の少女はライと名乗る目の前の少女を注意深く見つめる。

 

 体に対してサイズが少し大きい白衣を着たその少女は、いかにも研究員といった風貌でこちらに目を向けていた。

 

「貴女の名前は?」

 

「……大千瀬イガタ」

 

 しばらくの間、不信感と警戒心によりライカは何も言わずにただライを睨むだけであったが、やがてあきらめたように名乗る。

 

「イガタね。貴女の仲間がいるわ。ついてきなさい」

 

「本当か!?」

 

 どうやら、連れてこられたのは自分だけではなかったらしい。……となれば、協力すればここから脱出するのも難しくはないかもしれない。

 

 一縷の望みにかけて、イガタは黙ってライの後をついていくことにした。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ライちゃんってば、すーぐ私のことに気づいてどっか行っちゃうんだから」

 

「貴女の姿を投影したホログラムはとある神秘を用いていますからね。神秘の扱いに長けているライさんならば見なくても探知できる事でしょう」

 

 外部からの光が入ってこない空間にて、一人の異形と水色の髪をした少女が話し合っている。

 

 異形の男は真剣な声色で、しかしどこか愉快そうに話す。

 それとは対照的に、くすんだ水色の髪をした少女は友人と世間話を楽しむように話しているが、感情をうしなったかのように空虚な表情をしており目には何も映していない。

 

「それでこそライちゃんだよ! ……でも、ホシノちゃんも似たような能力を持っているとは思ってなかったかなぁ」

 

「ふむ。ホシノさんもですか……根拠は何処に?」

 

 男にとって、それは完全に予想外の事ではなかった。

 しかしそれが真実であると裏付ける証拠がないため表には出していなかった情報である。

 

「セリカちゃん、だったかな? その子を何度か誘拐しようとしてたんだけど……そのたびにホシノちゃんに止められちゃってね。その後いくつか実験してみたんだけどやっぱりホシノちゃんは神秘に反応しているみたい」

 

「ふむ。興味深いお話ですね……ところで、なぜセリカさんを誘拐しようと思ったのでしょうか。ホシノさん相手に強引な誘拐をするのは厳しいでしょうが、アヌビスの神────シロコさんならば不可能ではなかったはずです」

 

 シロコの神秘もまた異質である。そう暗に伝えるが、少女の反応は芳しくない。

 

「神秘と神秘は影響し合い、その性質は変容する。この原則は知っているでしょ?」

 

「ええ。もちろんですとも……ああ、なるほど。理解できましたよ」

 

 

「暁のホルスとアヌビスの死の神────この両方の神秘が作用しあった者を被検体として扱いたいということですね?」

 

 

 今まで一切動かなかった表情が、口角がゆっくりと上がることによって変化してゆく。

 

 ただ、その表情から本当の心情を読み取ることはできない。

 

 

 その感情が、思考が、本当に彼女のものであるとは言い切れないのだから。

 

 

 

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