まさか連邦生徒会唯一の男が夜な夜な謎の美少女としてミステリアスムーブかましてるとは誰も予想だにしないだろうなぁ   作:ゆずっこ

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ミステリアース!!!(気さくな挨拶)

今回と次回は過去アビドスのハネタ視点です
シリアスはほぼ無いよ!




まず、ミステリアス美少女とは…何か……

 

 

「ここがアビドス自治区…神秘を感じるわね」

 

 暑い砂漠の熱を含んだ風が廃墟となったビルの屋上にいる少女のスカートと長い髪をたなびかせる。

 風に吹かれる髪を抑えて意味深な発言をする少女――――ライの内心はというと……

 

(屋上で髪を抑えながら意味深なことを言う美少女…!!!ミステリアスに60点!!!)

 

 外見からは信じられないほど俗っぽかった。

 

(本当ならこのままライの姿でいたいんだけど……ずっとこの状態でいると神秘の量がどんどん減っていくから節約をしなければ。ということで大変惜しいが、美少女化解除!)

 

 身体の中にある神秘の制御を手放すことによって、麗しい少女だった姿は男性らしさのあるガタイの良い肉体へ即座に変わる。

 

「…うわ暑!! って砂が口に入った!髪の間にも入りまくるし、なんなんだここ!!」

 

 自分が降りた駅の近くではここまででは無かったのに、と心の中で呪詛を吐きながら口の中の砂を吐き出す。

 

「もしかしてライの時は神秘がバリアのように作用して温度も砂もシャットアウトしてくれていたのか…?だとしたら神秘があまりにも有能すぎるな」

 

 思いがけない発見により心を躍らせたのもつかの間。先程よりも強い一陣の風が吹き、砂漠で暖められた大量の砂が全身にかかった。

 

「もーやだ! 神秘の節約なんか知るか!!! 美少女化する!」

 

 意志薄弱。意気地無しである。

 

 小学校低学年かのようなノリで発せられた情けない言葉の後、まばたきをする間もなく少女の姿に変化した。

 

「やっぱりこっちの方が快適だな…願わくば一生このままでいたいのだが」

 

 神秘の底上げ訓練は十分行ったのだが、それでも現時点では変身だけで1日当たり8時間が限界である。

 ……それでも初期に比べれば何倍にも増えているのだが彼にとっては満足出来ない様子であった。

 

「ん…? この反応は……強い神秘を感じるぞ! もしかして同族がいるのか!?」

 

 美少女化願望のある特殊性癖持ち(変態)などそう簡単に見つかる訳が無いのだが……自分以外から感じる中では最高レベルの神秘にあてられて思考が歪んでしまったのかもしれない。

 

「前々から考案していたミステリアス美少女×ミステリアス美少女のカップリングを成立させることができるチャンス! 今すぐ行くしかない!!」

 

……思考は歪んでいるのは元からだったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんなんだよアレ…!」

 

 神秘の感じる方へ全力で走ること約20分、 ようやく見えてきたのは水色の髪をした少女と大きさを測ることも億劫になるほど大きい白蛇のようなナニカ――――ビナーであった。

 

「クソッ! 同じミステリアス美少女かと思ったのに! 騙された!!」

 

 騙されたのではなく勝手に勘違いしているだけである。

 

「さすがにあのデカブツを破壊するには"コレ"でもキツいだろうな…ヨシ、逃げよう!」

 

 どこからともなく音も立てずに現れた、狙撃銃というにはあまりにも大きくロケットランチャーというには構造があまりにも複雑な砲――――――――アハトアハト(88mm高射砲)を見つめながらライはボヤく。

 

 評判の良いラーメン屋にでも行こうかな。と何も見なかったかのような様子で元いた市街地へ向かおうとしたのだか…

 

 

「あの子、なんかさっきからふらついてないか…?」

 

 ビナーと戦い続け、今にも熱中症になりそうなユメが視界に入り足を止める。

 

 あの様子ではビナーに致命傷を与えられず、だからといって撤退することも出来ないだろう。

 

「さすがに放置は危なすぎるか…?でもあんなの相手にして俺も無事で済むかどうか……」

 

 一か八か、自らの神秘のほとんどをつぎ込んだ特別弾を使えば当たり所次第で動きを止められるかもしれない。

 だがそんな事をしたのなら―――――

 

「今日どころか明日分までもの美少女化タイムが一瞬で消し飛ぶ…!!」

 

 万が一に備えた余剰分の神秘までも使ってしまえばせっかくの休みである明日にも影響は尾を引くであろう。

 

 目の前の少女の命と自分の美少女ライフを天秤に掛けている間にも時間は進み続ける。

 ビナーは口を大きく開き、砲口を正確にユメの方へ向けた。

 

「トドメを刺すつもりか!! どうするどうするどうする―――」

 

 自分も傷つきたくは無いし、唯一の生き甲斐とも言える美少女化時間を消費したくない。

 

 最終的に自らの内に秘められた『ミステリアス美少女』に判断を委ねたその時、

 

 ―――――美少女とは、他の美少女を蹴落して成るものでは無く、他の美少女と調和し、支えあってこそ真の美少女になれるものよ。

 

 まるで天啓のように降りてきたその言葉と共に自らの美少女へのギアが1つ上がる感覚を覚える。

 

 

 ―――そして、気づいた頃にはユメとビナーの間に立っていた。

 

 だが既にビナーの発射準備は整っており、突然現れたライに動揺する様子もなく2人諸共消し飛ばそうとしていた。

 

 目の前の少女を抱き抱えて撤退する余裕もなく、だからといってこれ程の攻撃を生身で受けてしまえばただでは済まない。

 

 ならばやることは1つ。真正面から相殺するだけだ。

 

 アハトアハトの砲口をビナーに向け、ちょうど特別弾用の神秘を残した状態で通常弾に神秘を込めて砲弾を発射する。

 

 ほぼ同時に放たれたビームと一瞬の拮抗の後、光を全て押し返すことに成功したが……

 

(マジかよ…傷の1つでもついてくれても良いだろ!?)

 

 撃破とはいかなくとも、ある程度の損傷を与えて撤退する隙を作れるのではないかと思っていた一撃が()()()()()()()()()()()

 

(舐めてかかってた訳じゃないけど……これはかなりの強敵だぞ…)

 

「はぇ…?」

 

 困惑したような掠れた声が後ろから聞こえて来る。

 少し振り返って見ると、まともに立つことも辛いのか膝をついて息を荒くしている少女の姿。

 

(早めに片付けて病院に運ばないとマズイ状況か……ここまで来たんだ、やれるだけやってやろう!)

 

 ライは急いで薬莢を排出し……

 

「満身創痍のうら若き乙女を虐めるだなんて、随分と酷い加虐趣味があるのね。私が代わりに遊び相手になってあげるわ」

 

 ビナーの耳をつんざくような叫び声の後、ミステリアス美少女としてのロールプレイも忘れることなくビナーの方へ向き直り、回り込むようにして走り出す。

 

(確証はないけど、だいたいこういうのは頭を潰せば動かなくなるものだろう。一発しかないこの弾で正確に撃ち抜くには至近距離に近づくしかない…!)

 

 ビナーの巨大な質量を使った体当たり攻撃や、ミサイルを舞踏会でのダンスのように回避しながらも足を止めることはしない。

 

(動画で見ただけだけど、実際舞踏会に行ったらかなり上手く踊れるんじゃないか?)

 

 たわいもないことを考えながらも走り回っていると、しびれを切らしたのかビナーはとてつもない速度でライを地面ごと叩き潰そうと頭を動かす。

 

 このままではライは準備に時間のかかる特別弾を撃つことなく物理的に押し潰されてしまうだろう。

 

(特別は用意出来なくたって……通常弾なら今すぐにでも撃ってやれるっ!)

 

 なんの神秘も込められていない通常弾…の中でも装甲を貫徹することに特化した徹甲弾を発射する。

 

 ビナーは先程のレーザーを相殺した攻撃を見たせいかライの放った砲弾に防御体勢を取るが、弾は装甲に僅かなへこみを作っただけで破壊された。

 数秒後、拍子抜けといった様子で攻撃を再開しようとするビナーに対してライはというと……

 

「サプライズは別に取ってあるわよ。ちゃんと受け取りなさい」

 

 防御体勢をとったことで出来た隙を利用して発射した砲弾の薬莢を排出して特別弾を装填していた。

 

 今度こそ強力な攻撃が来ると予測したビナーはまたしても防御体勢を取ろうとするが……

 

「あら…遠慮するつもりかしら? ダメよ。下手な遠慮は相手に失礼だと印象づけてしまうものなの。」

 

   ズダーン!!!

 

 今までのものと比べて一際大きな砲撃音の後、ビナーの頭に大穴を開け、その下にある砂漠にまでクレーターが作られた。

 

「案外呆気無いのね。もう少し抵抗してくると思ったのだけれど…………ってやべ! あの子放置してた!」

 

 

 急いでユメの元へ駆け寄ると、持っていた水を飲ませる。

 

「ごめんなさい、あの子相手に夢中になっていたせいで貴女のことは考えられていなかったわ。大丈夫? 立てるかしら?」

 

(汗をかいてないな、脱水症状だろうか………てか、顔が良い!美少女だ!! やはりここに来た俺の判断は正しかったな!)

 

 少し前まで助けるか迷っていたクセに相手が美少女と分かった瞬間これである。

 

 

(さて…どうやって病院に連れていこうか?)

 

 背負うか抱えるかぶん投げるか……悩むうちに体感ではかなりの時間熟考を要したが、外の時間ではあっという程の暇もなくに決まった。

 

(美少女と合法的に密着出来る上に顔も見れてBISHOUJO SMELLも感じられるとするならば……お姫様抱っこしかない!!)

 

 流れるように右手を腰に置き、左手を太腿の下に入れ込み持ち上げる。

 ユメの方が身長が高い為、負荷がかからないように腕全体や肩も添えることも忘れない。

 

(完璧だァ! ふふふふふ…おっと、楽しんでる暇は無いんだったな。早く病院に連れていかねば)

 

 抱えているユメへの揺れを抑えるためにゆっくりと歩いていたのだが約5分が経った頃、自分の状況を理解し始めたのか顔が赤らみ始めた。

 

「あ、あの! 私、自分で歩けるから大丈夫だよ!」

 

「その体で本当に歩けるというの?」

(水飲んで少しマシになったとはいえど自分の足で動くのは辛いだろう。あとまだ堪能していたい。)

 

 まともな考えと完全な私欲の両方を理由にユメの提案を一蹴するつもりで言い返した。

 

 それから返ってきたのは沈黙のみで、何らかの行動を起こそうとする様子はない。

 

(沈黙は金、雄弁は銀だぞ!ktkr!!)

 

 それを言うのならば無言の肯定であるが、自分本意の変態にとってはその程度微塵も気にすることでは無かった。

 

「そうでしょうね。大丈夫よ、周りに人は居ないから恥ずかしがる必要はないわ」

 

(上気した表情も良いなぁ…これがノベルゲームだったらスチルの1枚になってたんじゃないか?)

 

 

 

 たわいもないことを考えながらも確実に歩を進み続け、病院が見えてくる。

 

(名残惜しいがそろそろお別れか。名前すら聞いてないが……まあよかろう。ミステリアス美少女はクールに去るぜ!)

 

「それじゃあ、私はこれでお暇するわ。次はあんなことにならないように警戒しておくのよ」

 

 

 診察を済ませて病室まで送り、そのまま帰ろうとしたのだが一一一一

 

 

「ちょっと待って!」

 

 ユメの呼び声に病室から出ていこうとする足のみを止める。

 

「あら、何か用かしら?」

 

(やべ、運んでる最中わざと深呼吸しまくってたのがバレたか?)

 

「私、梔子ユメって名前で…えっと、ユメって呼んで欲しいの。それで、友達になりたいんだけど…貴女の名前は…?」

 

(そういうことか…なるほどね。やはり天の美少女神様は俺の事を見てくれているんだ!へへへ……)

 

 今の3秒で作り出した神を崇めて薄汚い笑いを心の中で漏らす。

 

「そう、――――私の名前は小野川ライ。よろしくね、ユメ。」

 

 そんな心の中とは裏腹にミステリアスみのある雰囲気は崩さないまま、少しだけ口角を上げてユメの方へ微笑む。

 

(普段表情を動かさない子が微笑んだ場合、普段から笑顔を見せている子と比べて2.5乗感情が揺さぶられるとされている。前者側のライが微笑んだ今、この病室はとてつもないBISHOUJO POWERで満たされているはずだ…!)

 

 言っている内容は支離滅裂だが実際にユメは動揺して顔を赤らめていた……が、直ぐに病室から出てしまったためハネタの完全な自己満足に終わってしまった。

 

 

 

 途中、ピンクのショートカットヘアをした少女がユメを探していたので病室の場所を教えてから病院の外へ出たのだが…

 

「…やば! もう限界だ!」

 

 急いで人の居ない路地裏に行って変身を解くことになった。

 

「あっぶなー…これ以上はまた倒れるところだったな。」

 

 

 さあて、美少女化出来ないままどうやって今日明日の休日を潰そうかな?と思いながらひとまず最寄り駅に向かうことにしたのだった。

 

 

 

 

「ん…? いつの間にかユメのモモトークIDらしきメモがポケットに入ってるな」

 

 駅のホームで電車を待っている間、ふとポケットに違和感を持ち手を突っ込んでみるとユメのモモトークIDらしきメモが入っていた。

 

「ユメがまともに字を書ける状態だったのは一瞬だけ……まさかユメ、俺と同じ速記の使い手だったか!?」

 

 ハネタの場合、ただ乱雑につなげて書くだけなので読みづらいことこの上ない汚い字だが…ユメはちゃんとした形式に沿ったものであるため真の速記という意味ではユメに軍配が上がるだろう。

 

 ただ………

 

「この"@yu-meyumeyume"とかいう絶望的なセンスはどうなってるんだ…?」

 

 ネーミングセンスに関してはハネタの方がまだマシだったようだ。

 

 

「さすがに俺のアカウントのままだと正体がバレるな……よし、新しくアカウントを作ることにしよう。IDは…@Cho-Tensai-Seisokei-Bishoujoにしよう」

 

 訂正、ハネタはユメ以下のネーミングセンスの持ち主であった。

 

「……っておい!このID使われてんのかよ。*1ここまで自分を持ち上げるIDをつかってるとか相当なナルシストだな…」

 

 

 お前が言うのか???

 

 

「仕方ない。IDは無難に@lie-onokawa とかにしておこう。」

 

 認証完了画面が表示された後、ユメに友だち申請を送信すると……

 

 

【リクエストが承認されました。】

 

【ライちゃん、今日は助けてくれてありがとう。ちょっとしたものだけどお礼がしたいんだ。】

【いつかアビドス校舎に来れないかな?】

 

「返信はや! まだ申請してから10秒も経ってないぞ……」

 

 あまりの反応速度に一種の恐怖まで覚えるが……ミステリアス美少女がここで挫けてはいけないとすぐさま立ち直り返信をする。

 

【あれは私がやりたかったから勝手にやったことなの。だからお礼なんてしなくても大丈夫よ。】

【それに、貴女が友人になってくれたことが一番のお礼だと思ってるわ。】

 

「まあまあまあ、こんなもんか」

 

 やはり文章ではミステリアスさを醸し出すのは難しいな…と今後の課題点を見つけたところで、あることに気づいた。

 

「肌身離さず持っていた俺のメガネが…無い…!!」

 

 この世の終わりかのような顔をするハネタ。

 今すぐ探しに行こうとしたが…男の姿では長時間の砂漠での滞在に耐えられないだろう。

 

「はぁ……生徒会の仕事もあるし、大事を取って探しに行くとしたら一週間後かぁ…鬱になりそう」

 

 大きな溜息と共にその日は1度帰宅することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 そして迎えた一週間後。

 

「他の人から全く感知できないらしいが、あのメガネは特異な神秘を放っているからな。一瞬で見つけられるだろう」

 

 ライとして駅から出ていくと廃墟のビルや病院を探索し、最終的にもっとも心当たりのあったビナーと戦った場所へ向かうと……

 

「うわ、クレーターはそのままにあの白蛇の姿はまんま消えてやがる…」

 

 撤去するだけでも莫大な金と時間がかかりそうな程大きいビナーは完全に消え去り、残ったのはクレーターだけであった。

 

「薬莢も無いし、全部砂の中に埋まったとでもいいのか…?」

 

 周りのグルグルと周りながらメガネの手掛かりを探していると、一人の少女を見つけた。

 

「あれは…!病院でユメの病室を教えた子だ!名前は確か小鳥遊ホシノだったかな」

 

 顔を合わせたのが一瞬でも相手美少女なら忘れない能力一一一一瞬間美少女記憶能力によって脳内の記憶が蘇る。

 

 

(ホシノが俺に気づいたようだな。1度あちらから話し掛けて来るのを待つことにしよう)

 

 しかし、『だって人違いだったら恥ずかしいし。』と先程の能力を疑うように及び腰な姿勢であった。

 

「ライさん…で良いですよね? 何か用でもあるんですか?」

 

(向こうは俺を知っている様子………となるとホシノで確定か?)

 

「貴女は…ホシノちゃん、でよかったかしら?」

 

「ッ!なぜ私の名前を知ってるんですか?」

 

(もしかしなくてもこれやばい勘違いされてるよな!早く誤解を解かないと……)

 

「貴女の先輩――――梔子ユメから聞いたのよ。私と彼女は"友人'"なの。」

 

 少しの逡巡の後、ホシノは一旦本当ということにしたようで、恐らく本命であろう質問を投げかけてくる。

 

「ライさんはなんでここに来たんですか?」

 

(一週間前のことか今日のことか…どっちを答えれば良いのか分からないけど、間違いなく答えやすいのは今日の方!)

 

 間違っても自分と同類の変態を感じたからなんてことは言わず、今日に鍵って言えば本当のことを話すことにした。

 

「今ここに来た理由のことかしら?…お恥ずかしながら、落としてしまったメガネを探しに来たの」

 

「メガネ、というのはここら辺に落ちていた度の入っていないメガネのことですか?それならうちの落とし物入れに保管してありますが…」

 

(間違いない!それだ!!!)

 

「あら、そうなの?ならそちらまで行かせてもらうわね。ありがとう、ホシノちゃん。」

 

(ミステリアス美少女は全力疾走する姿なんて見せない……だが急ぎたい時はどうするのかって?こうするんだよ!!! ……あ、さすがにライさん呼びなのは距離感感じるしやめてもらおう)

 

「ホシノちゃん、私のことはさん付けせずに呼んでも良いのよ」

 

「何を変なこと……を?」

 

ホシノの返事を待つ前にわざと砂を舞わせることによって視界を遮り、走っている姿を見せないという力技で解決してみせた。

 

 

 

 

 

 

 

 アビドス校舎が見えてきた頃、走るのをやめてミステリアスな美少女らしく少し小さな歩幅とカツッカツッと靴音がなるように歩き出す。

 なお、地面が砂であるためそのような音は出ないのだが……

 

「大切なのは周りから見たミステリアスらしさだ。独り善がりでキャラも定まってないようなミステリアス美少女なんて、ただの頭イカれ女だからな」

 

 ライはそう呟きながら、アビドス校舎の方に1つの人影を見つける。

 

「瞬間美少女記憶能力がビンビンに反応してやがるぜ…! その人影は、我が友ユメではないか?」

 

 近づいてよく見てみると、ユメは何やら大きな荷物を持ってどこかへ出掛けに行く様子であった。

 

「久しぶりね、ユメ。どこに行くつもりなのかしら?」

 

「ちょっと人探しに……ってええ!?ライちゃん!?」

 

「ええ、本物のライよ。」

 

「えへへぇ…本物のライちゃんだぁ……って今はそんなこと言ってる場合じゃないの!ホシノちゃんが……」

 

 話を聞く限り、ホシノが『戦闘跡を調査してきます。』と書かれた手紙を残してどこかへ行ってしまい、1人で無茶しているのではないかと心配しているらしい。

 

(割と元気そうだったし、しばらくしたら戻ってきそうな雰囲気してたから大丈夫だろう。多分。メイビー…)

 

「安心しなさい。あの子とはさっき会ったけれど、そう心配するような事態には陥っていなかったわ」

 

「そうだったの!?…良かった、あの子最近思い詰めてる節があるから万が一があったら…なんてずっと思ってたんだ」

「じゃあこの荷物ももう要らないね…あっ!せっかくだし校舎入っていってよ!お礼もしたいんだ!」

 

 独り善がりで適当なことをほざく頭イカれ女(ライ)の言葉を真に受けてしまったユメは、校舎に戻ることにした。

 

 

 

 

 

「散らかってるけど…うん、ここなら座れるかな?」

 

(なんだここは……汚部屋界隈に片足突っ込んでるみたいな感じがする…)

 

 異臭と虫が発生していないため汚部屋界隈とは真逆に位置するレベルで清潔なのだが…だとしても大事なのかそうでないのか分からない書類が床から机までに散らかり、足の踏み場には困るくらいであった。

 

(すっごいツッコミたいし聞きたいことは沢山あるけど……ミステリアス美少女はここで下手につっこんだりしないんだ!まるでいつもこの環境で生活してますが?みたいな雰囲気を出していくぞ!)

 

 こんな部屋にいつも住んでるような雰囲気など出しても得は無さそうだが…自らの信じるミステリアス美少女を信じて行動することにしたらしい。

 

「飲み物は何がいいー?」

 

(来た!この質問を待ってたんだ……)

 

「ご厚意はありがたいけれど、私はそこの電気ケトルとコップを貸して貰えれば十分よ」

 

 名探偵並に部屋中に目を光らせたことで発見したコーヒーポット型の電気ケトルで自ら持参したティーバッグを使って紅茶を飲もうと画策するが……

 

「電気ケトル…? あっ!それね!実は何年も前に壊れちゃっててね…」

 

 ずっとこれを使ってるんだ。と出されたお湯を沸かすための道具といえば一一一やかんであった。

 

 実用性は申し分ない。ただお湯を沸かしてお茶を飲みたいだけなら誰も文句は言わなかったであろう。

 ただ一人、この場にいる自称ミステリアス美少女を除いて。

 

(俺の完璧なミステリアス美少女像が崩れていく………いや、待てよ! 一流のミステリアス美少女は例えやかんを持っていようとミステリアスさが自然と出てくるものだろう。今の俺は小野川ライ。やれるはずだ!!)

 

「ありがとう。使わせてもらうわね」

 

 流れるような動作でやかんを受け取り、水を入れ……「ごめんね!ここの部屋水道通ってないんだ」られず、隣の部屋に向かう。

 

 ようやく見つけた蛇口から水を入れようとしたのだが……

 

「うわっ!勢い強すぎ!家の蛇口の3倍くらい勢い強いぞこれ!」

 

 あまりの勢いの強さに神秘のバリアがなければ袖がびしょびしょになるところであった。

 

(行動にミステリアス感がない。ミステリアスにマイナス60点だな…。)

 

 

 

 

 

 

 備え付けられているガスコンロを使ってお湯を沸かそうとしたところ、

 

「ごめんね、この部屋ガス通ってないんだ……だからこれを使ってもらうしかないかな。」

 

 なそう言って出されたのは主にアウトドア用に使われるガスコンロ。

それも大勢で鍋を囲むことができるように作られたカセットコンロではなく、キャンプ経験者が1人で使うようなシングルバーナーである。

 

(まっまだまだぁ!!ここからがミステリアス美少女の見せ所だ!!)

 

 

「ね、ライちゃん。お願いがあるんだ。」

 

 決心を固めて点火した直後、ユメに話しかけられた。

 

「なにかしら?」

 

「私は今年で卒業して、生徒会に所属する生徒はホシノちゃん一人になっちゃう。」

「今日は特段心配するようなことはなかったみたいだけど……何か突拍子も無いことをしそうになった時、ライちゃんに止めてほしいんだ」

 

 変なことをし始めるのはホシノちゃんだけじゃなくて私もかもしれないけどね、とユメは苦笑しながら2つの書類を手渡してきた。

 

「アビドス生徒会特別顧問新任届け…ね。貴女も中々考えたものだわ。」

 

(え…連邦生徒会みたく仕事大量に任されるってこと?)

 

 ライはミステリアスっぽい発言をしているが…その実何も理解しておらず、困惑していた。

 

「そうかな…?とにかくこの学校とホシノちゃん、あとはまだ見ぬ後輩達が変な大人に騙されたり、変なことをされたりしないよう見守っていて欲しいんだ。」

 

 ユメは少し照れたような表情をした後、はっとしたように真剣な顔に戻り自らの願いを告げた。

 

「…ひとつ聞きたいのだけれど、どうして私にそんな重大な任務を任せようと思ったの?」

 

 

「――――信頼してるからだよ。それに、ライちゃんならこの学校を変えてくれるんじゃないかって思ったんだ」

 

 

 底無しの純粋さと善性を放ち、誰がどう見ても100点満点な笑みを浮かべるユメ。

 

 そんな天然美少女にあてられたライ(養殖美少女)はというと………

 

(…………やばっ昇天するとこだった。意識を強く保て、俺!)

 

 勝手に死にそうになっていた。

 

「あっごめんね!いきなりこんなこと言われたって困惑するだけに決まって一一一「ペンはあるかしら?今ここでサインをするわ。」一一はぇ?」

 

(ペンを持ち歩いていない。ミステリアスにマイナス20点、か。)

 

「良いの…!? 今すぐペン持ってくるから!ちょっとまってて!!!」

 

 これで本当のお礼ができるように……と言いながら、ガシャーン!と椅子にぶつかって荷物を地面に散らかしながらも、急いでペンを取りに行くユメを見送ってからライは一言、こう呟いた。

 

「ミステリアス美少女…俺のミステリアス美少女はどこ…?」

 

 そんな呟きは、ピーーッ!!というやかんの音によってかき消され、誰にも聞かれること無く消えていった。

 

 

 

 

 

*1
とあるハッカーが属性被りを防止するため複数のIDを登録しているらしい






美少女化願望を持つことは変態じゃないだろ!!いい加減にしろ!!!!

アハトアハト…デカい!強い!カッコイイ!!本来は対空用途で作られた高射砲。戦車に向かって水平射撃したら良い感じの戦果を挙げたので対戦車用に改造されたり専用の弾種も作られたりした。(超適当な説明)

地の文におけるハネタ/ライの名前の区別……姿がライの時は地の文でライと表記し、姿がハネタの時は地の文でもハネタと表記します。





今回のミステリアスポイント、マイナス20点。
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