まさか連邦生徒会唯一の男が夜な夜な謎の美少女としてミステリアスムーブかましてるとは誰も予想だにしないだろうなぁ   作:ゆずっこ

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次こそ時系列が現在へ

誤字報告ありがとうございます。(とても今更)


べっ、別に感謝なんかしてないんだからね!あんたなんか大っ嫌い!

 

 

 あれから3週間後……ライは特別顧問としてアビドスを訪れ、ユメと2人きりで話をしていた。

 

「お願い! こういうことでホシノちゃんには話を通すつもりなんだ!」

 

「それってユメに利点が無いように思えるけれど…?」

 

 話の内容はユメが買ってきた3枚の水族館チケットついてであった。

 

「ホシノちゃんってああ見えて結構繊細なところあるから、私がわざわざ買ってきたなんて言ったら色々気にしちゃうんじゃないかなって…」

 

「はぁ…そんなこと気にしなくても良いでしょうに。でもいいわ、ユメの言う通り口裏は合わせておくわね」

 

「本当…!?えへへぇ…良かった!」

 

(やはり美少女の笑顔は良いな…いずれと言わずに今すぐ難病に効くようになるだろう)

 

 ユメの気遣いの裏では、ライがありえもしない妄言を心の中で撒き散らしていた。

 

 

(…待て、この話の流れでは俺も水族館のチケットを奢られたということになるのでは無いか?)

 

「ユメ、もしかしてだけれど……私の分まで買ったというの?」

 

「え? 当然でしょ? まだお礼も済んでないし、案内するって言い始めたのは私なんだから当たり前だよ!」

 

(ミステリアス美少女は易々と奢られない、むしろ奢る側であるべき――――どうにかしてこの事態は回避しなければ)

 

 自らのミステリアス精神の誇りにかけて何とかこの状況を打破しようとする。

 

「大丈夫よ。私だって水族館に一度行くくらいのお金なら困らない程に持ってるわよ」

 

 なお、収入が多いのではなく多忙であるため消費する機会が少ないため不本意ながら貯金されているだけである。

 

「そんなの関係ないに決まってるでしょ? 遠慮なんてしなくていいからね!」

 

(馬鹿正直に奢られてたまるか! せめてもの折衷案として……そうだな、水族館でグッズでも買ってやるか)

 

 折衷案として意味を果たしているのか分からない案を出すことでひとまずは満足したようだ。

 

 

――――タッタッタッタ……

 

「噂をすれば、だね。さっき言った通りにお願い」

 

「わかったわ」

 

 タイミング良く廊下から聞こえてきたのは1つの足音。

 もはや瞬間美少女記憶能力をが機能する前に判別が可能であった。

 

(瞬間完全美少女記録能力を使わずして美少女を判別できる……これはミステリアス美少女としては小さな1歩だが俺にとっては大きな一歩だ。これからはオフの状態で生活してみるとしよう)

 

 ……どうやら名前変更機能付きかつ自由にオンオフを切り替え可能な能力だったようだ。

 

 

 

 

「ライちゃん、ホシノちゃん!見て!アビドス水族館のチケット三枚が当たったんだ!」

 

 さも今初めて発表したかのような口調で元気よく水族館のチケットが当たったことを言うユメ。

 

「商店街の福引きで当てたやつですか? ……まったく、ライだって暇じゃないでしょうし遊んでばかりいないでアビドスの復興案の1つでも考えて……はぁ」

 

(商店街にそんなくじ引きがあるのか……ユメも思ったより考えて行動出来るんだな)

 

 ユメを舐めているかのようだが、これは普段から舐められても仕方ない言動をしているユメにも非はあるだろう。

 

(もっと俺みたいにミステリアスで知的で人を思いやれる美少女を見習って欲しいね!)

 

 やってる事と考えてる事的にはユメ以上にこいつも舐められる側の立場である。

 

(さて…ホシノのこの顔は復興案の1つでも出せばいいのにと言いかけたが不満そうなユメを見て言うのを止めた感じだな。俺の読心術にかかればこのくらい余裕で分かるものだ)

 

「良いんじゃないかしら。貴女達は学生なのだから、もっと青春を楽しむべきよ」

 

 読心術と言うよりは洞察力…洞察力と言うよりはただの当てずっぽうである。

 

「そう!ライちゃんの言う通り、青春を楽しみ尽くすことが学生の本分なんだから遊ばないとダメだよ!」

 

「ライはそこまで言ってなかった気がしますが…まあ、一理あります。そうとなれば早く行きますよ!」

 

 目を輝かせて生徒会室から走り去って行くホシノをその場で見送ってからライが一言。

 

「なんだかんだで、ホシノちゃんが一番楽しみにしてそうね」

 

「ホシノちゃんがクジラ好きなのは知ってたけど、あそこまで喜ぶだなんて予想してなかったかな…」

 

(いつもツンケンしている美少女が笑顔を見られるとは…良きかな良きかな^^)

 

 内心はともかく、二人も荷物をまとめて外出する準備を始めることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 水族館に到着してすぐはホシノも平然とした顔をしていた。

 だがクジラのいる大水槽を前にした時――――

 

「クジラ…!!大きい…!可愛い…!」

 

「おっきいねー!」

 

「二人揃って語彙力が失われてるわよ」

 

 子どものように目を輝かせる2人を見て思わず本音を出してしまったライ。

 

(ユメはいっつもあんな感じだとして、ホシノまでこうなるとは…恐るべし水族館。恐るべしクジラ。)

(それはともかく、だ。俺はここでミステリアス美少女を遂行する必要があるのだが、この雰囲気でどんな振る舞いをするべきか……)

 

――――――不敵な笑みを浮かべるか、それとも水槽の中を見つめながら意味深な発言をするか、はたまた純粋な年相応の笑みを浮かべてみるか…?

ミステリアス美少女のこととなると常人の10倍以上早くなる思考で計画を立てる。

 

(水槽に軽く手を付け、魚を見ているようで実は何も見ていない遠い目をする……これが今回の"最適解"だ)

 

 実行に移そうとしたその時、想定外の事態に遭遇した。

 

――――――――ゴンッ!!!!

 

「あいたっ!」

 

 ホシノが水槽との距離感を見誤ってぶつかってしまったのだ。

 さすがにライもこれには心配の言葉を――――

(ちょ、ちょっと待ってくれ…あの堅物なホシノが『あいたっ!』って……くく、ははは!)

 

 かけることなく内心笑っていた。いや、内心に収まりきらないほど笑っていた。

 

「ふふ、あははっ!」

 

「な、ユメ先輩!笑わないでください!」

 

「ホシノちゃん…いいえっなんでもないわよっ! ふふふ…」

 

「ライは全く笑いを隠しきれてませんよ! もう、いつものほとんど動かない表情筋はどこに行ったんですか!?」

 

(俺としたことが表情筋硬い系ミステリアス美少女のイメージが崩れるような真似を…!でもこれホシノが悪いんじゃね…?)

 

 ライは自らのミステリアス美少女像を崩してしまったことに猛省していたものの、それはそれとしてあんなことをするホシノが悪いと責任転嫁した。

 

 

 

「はぁ…ようやく笑いが収まってきた。……あれ、これって…?」

 

 ホシノ水槽衝突事故の後、2人から少し離れて行動していたライはお土産コーナーに目を惹かれた。

 

「水族館のお土産コーナーにハンドガンだと…? 連邦生徒会の直轄地域ならガンショップ以外での銃器販売は禁止されてるから新鮮な光景だな…」

 

 自分が週五で引きこもる場所にはない目新しさを覚えたが、驚いたのはそれだけでは無い。

 

「ギミック付き…? 何だこの戦術的優位性の欠片もない構造は……って改造しやすいようになってるのかこれ。だとしたら実戦では全く使えないけどお土産として贈り物には最適だな」

 

 少しの逡巡の後、ライはユメとホシノの二人分を買うことにした。

 

「通販でキットやパーツが購入可能か……少しいじってから渡すか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 3人で水族館に行ってから1ヶ月が経過した。

 そう、1ヶ月が経過してしまったのだ。

 

「あれ以来ミステリアス美少女として振る舞う機会がほとんど無い…!!!! 悲しすぎて生徒会での仕事に手が付かないぞ…」

 

 この1ヶ月間、まともに行ったことは借金返済向けた相談や神秘の扱いについての訓練のみであった。

 

「意味深な言動をして神秘の扱い方を教えることでミステリアス美少女としてより高い格を目指したかったのに…………ホシノめ、絶対に許さんぞ」

 

 ライは元々、顧問の立場としてどうせ自分以外に出来るはずが無いと高を括って神秘だけで弾丸をその場で作製したり他人の神秘の流れをコントロールする技術を教えるはずだったのだが、ホシノの持つ神秘の量に圧倒されて当たり障りのない基本的な技能を教えるだけに留まってしまったのだ。

 

「ユメにはさりげなく神秘の流れをコントロールする技術を刷り込んだとはいえ………それでもミステリアス度はプラマイで言うと圧倒的にマイナスだよな。本人はその技術を扱える自覚ない訳だし」

 

 あまりの神秘の量が少なさに同情した流れでやっちゃったよ…と少しの後悔の後、ユメに呼ばれてライはアビドス市街地に向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 向かった先であるアビドス市街地は不自然な程に閑静で、聞こえるのは風が建物の隙間を通り抜ける音と三人の足音のみ。

 

「なんだか今日は静かですね……」

 

「静かというよりは人が全く居ないみたいだね」

 

(この異常事態……俺が逃す訳が無い! 今回こそは必ず行動を起こしてみせるぞ…)

 

 戦車のエンジンとヘリコプターの特徴的なエンジン音と風切り音が遠くから聞こえてからというもの、ライは今回の方向性を決めた。

 

「砂嵐の音じゃない……何かのエンジン音と風切り音みたい」

 

「まさかカイザーの手先?それに、この街の現状もヤツらの思惑通りなのでしょうか…?」

 

(今だ!! ここで行くぞ!!!)

 

「まさか、もう動き出したというの…?」

 

 いつも表情筋を硬くしている(つもり)のライが唖然とした様子で思わず心の声が漏れてしまったかのように口を開く。

 

「ライ、何か知って――――」

 

(そう!俺は何かを知っているんだ!さあ、俺が何を知っていて何をしようとしているのか存分に悩め! 俺も何をするのかはっきり決めて無いから2人の反応次第でこれからの行動を決めるぞ!)

 

 計画性皆無である。

 やるならば見通しを持ってやれば良いものをこのミステリアス厨は最初からその場のノリに流されることを選んだ。

 

 

――――しかしホシノの言葉は続けられることなく、爆音と硝煙によって五感の全てが封じらてしまった。

 

「くっ…皆、大丈夫!?」

 

 少し視界が開けてきた頃、少し離れた場所からユメの声が聞こえてくる。

 

「私は大丈夫です。ライは……良かった。大丈夫そうですね」

 

 そして完全に視界が開けた後、ホシノに大丈夫そうと言われたライはというと…………

 

(大丈夫なわけねーだろ!!!俺のミステリアス美少女タイムを潰しやがって、このバカイザー共絶対に潰してやるからな!!!)

 

 なお書記長の立場ですらないただの平書記のハネタにそんな権限は与えられていない。なんなら書記長でも明らかな越権行為である。

 

 

「人払いは済ませてあったのだが…誰かと思えばお前達だったか。アビドス生徒会、そして…貴様は誰だ?まさかただの民間人だとは言うまい」

 

 

 威圧感のある声で、突如目の前に現れたホログラムが喋りだした。

 

(こいつは……最近新しく就任した理事か! それに大量のカイザー兵士達、お前達のせいで……絶対にゆるさんぞ虫ケラども!じわじわとなぶり殺しにしてくれるッ!!!)

(だがそれはそうとミステリアス美少女は怒りに呑み込まれない生き物なのだ。ここはミステリアスに自己紹介といこう)

 

「あら、私の事を存じないということは…新人さんなのかしら?良いわ、自己紹介してあげる。私はアビドス生徒会の特別顧問、小野川ライよ」

 

 なおライのことを知っている人は現時点だと手で数えられる程度である。

 

「くく、はっはっは!! アビドス生徒会はこんなやつを特別顧問なんぞに仕立てあげたのか!」

 

 その言葉を聞きよりいっそう不機嫌な顔を見せる2人を横目に、ライは内心驚愕していた。

 

(えっ何その俺の事知ってますよ感出した発言。俺この姿で目立つようなことは何もしてないんだけど…)

 

 

「確かに立ち振る舞いこそ子供らしさを感じさせない……だがそのヘイローがあるということは、いくら取り繕っていても所詮青春ごっこをしているそこら辺のガキと同じ存在だということだ」

「だがそれは別として…小野川ライ、貴様の並外れた力は黒服から聞いている。そこでだ、カイザーに傭兵として仕えてみないか?今決めるのならば破格の好条件で雇ってやろう」

 

(ええっと…よく分からないんだが、要するに俺が欲しいってことか?)

 

 この事実に辿り着いた時、ライの内心は激しく怒りに燃えていた。

 

――――ミステリアス美少女に彼氏なんか存在しない!!!!!

 

 勝手な妄想であり唐突すぎる思想の押しつけである。だがミステリアス美少女として振る舞う変態にとっては死活問題。

 

 これには強く反応してやろうと拳を強く握り、口を開こうとした瞬間

 

「書類上での双方の合意が無いと特別顧問は離任出来ないことになっています。だから貴方なんかの所にライは行かせませんよ!」

「それに、今黒服って言いましたね?……カイザーは黒服一一一一ゲマトリアと関わりがあるということですか?」

 

 ユメの初めて見る凛々しい顔から発せられる雰囲気と、初めて聞く言葉ばかりの発言に脳内は「?」1色となってしまった。

 

(黒服?ゲマトリア?なんだよそれ――――――絶対俺と同類じゃん!)

 

 少し厨二病っぽい名前がぶっ刺さったライはいたく気に入り、これからはこの組織名を利用することにした。

 

「おっと……口が滑ってしまったな、だがもう良いだろう」

 

「良いって、一体何が……ッ!?」

 

 不機嫌な顔から一転、驚愕した表情へと変わった。

 

「ここでお前達を排除し、永久にアビドス自治区はカイザーの手中に収まるのだからな!!!」

 

 

唐突発表されたえげつない内容。

 

発言と同時に戦車の主砲やヘリコプターの火砲は主戦力ホシノと俺だけでなくユメへと向かい――――

 

「きゃっ!」

 

「ユメ先輩!」

 

 一方向からの単調な攻撃ではなく、多方向からの口径、威力も異なる砲火にさらされ盾を構えていたユメは致命的……とまではいかなくともかなりのダメージを負ってしまった。

 

(クソカイザーめ、アハトアハトで全部薙ぎ払ってやろうと思ったが…その場合ユメを守る手段が無くなってしまうな。となると俺に出来ることは…)

 

「ホシノちゃんは攻撃に専念しなさい。ユメは私が守るわ」

 

 だがこの選択は誰かを攻撃する経験はあっても、誰かを守る戦闘経験が無いライにかなりの苦渋を舐めさせることとなった。

 

(アハトアハトの砲身で防御しようにも取り回しが悪すぎるし、ユメの盾を代わりに使える気がしない……ならば自分の体を使うまでだッ!)

 

 半包囲されている状態でもユメは盾を持っている。そのため完全に守りきることは不可能では無い…が、ライであっても威力の大きい砲をまともに受ければかなり痛い上にヘリコプターの動向にも注意しなければならないため、守るだけとは言ってもかなりの集中力を要することとなる。

 

(よっ、ほっ! なんだよ全然当たんねぇじゃんか。 このミステリアス美少女を傷付けることにビビってんのか!? ヘイヘイヘイ!!)

 

 ……途中からユメを守ることもほどほどに砲弾を避けたり受け流したりすることに夢中になってしまっていたミステリアス美少女(笑)はそこまで集中力を必要としなかったようだ。

 

 なお、敵の攻撃がなかなか当たらない理由は裏でホシノが敵を撹乱させているからである。

 

(……ってあれ!? ユメが消えたんだが、どこに行ったんだ!?)

 

 ふと、ユメの元いた居場所を確認するが居なくなってしまったことに気づく。

 焦りながらも数秒ほど当たりを見渡してようやく見つけたユメはというと、ホシノと共に宙を舞っていた。

 

(やべっ、全然ユメのこと見てなかった。 …ミステリアス美少女はいつまでも過去を引きずらない、次から気をつければヨシ!)

 

 チラリと決意を固めた目で一瞬ホシノを見てからすぐにユメへ目を向けた。

 

 …引きずらなくても良いが反省はすべきである。

 

 

 

 

 

 

 

 戦闘が始まってからかなりの時間が経過した。

 既に目に見える兵器や兵士のほとんどは行動不能となっているため決着がつくのももう間も無くであろう。

 

(いきなりカイザー理事のホログラムが起動して…ユメに何か話し掛けているのか? っておい!ホシノ――――)

 

 ライは話の内容を聞こうと近づく途中、ホシノがカイザー理事のホログラムを神秘を込めた弾で撃とうとしていることに気づいた。

 当然そのまま発砲すればホログラムは貫通し、一切の減衰なくユメに直撃するだろう。

 

「ホシノちゃん!!!」

 

 思わず出した本気の声。

 ミステリアス美少女らしさを気にせず制止の意図を持って発したその言葉はホシノに届いたものの……少し遅かった。

 

(かくなる上は…俺が盾になるしかない…!)

 

バッとユメとホシノの間に入り込み、ただでさえ痛い至近距離からのショットガンの攻撃を神秘入りで受けたライは………

 

(いっっっっったぁぁぁ!!!!!脇からを通って首元までが死ぬほど痛い!それに神秘がゴリゴリ削れていく感覚がするぞ! このままだとどんなところで変身解除することになるか分かったもんじゃない!!)

 

 だがこの場で本音を吐くわけにもいかない。精一杯の虚勢を張って無事であることを伝える。

 

「ッ!……大丈夫よ。安心しなさい。……くっ」

 

(大丈夫じゃない!! 大丈夫じゃないよ!!!!でもミステリアス美少女はこんなところで泣かないしへたらないんだ…! 負けるとしても最後はミステリアスに散ると相場で決まってんだよ!)

 

 その相場はどこにあるんだ?

 

「ライっらい! ごめんなさい…ごめんなさいぃ…」

 

 ライを撃ってから数秒後、ようやく事態を理解したホシノはまるで幼い子供のように泣きじゃくり、嗚咽を上げていた。

 普段からは全く想像できないホシノに美少女大好き横着者はというと………

 

(いたいけな美少女が泣く姿なんて……泣く姿なんて……………ちょっと良いかも?)

 

 恐ろしいまでに思考が歪んでいた。

 

(違うんだ。ホシノ本人が直接傷付いて泣くとかなら絶対に許せない。でも今回傷付いたの俺だし、いつもとのギャップとか感情の昂りを確実に感じられるこの状況に関してはちょっと楽しんで良いと思うんだよ)

 

「小鳥遊ホシノ、貴様が撃ったのは私のホログラムだ。そこまで愚かだったとはなんとも哀れだな」

「負傷によって戦力外となった二人と疲労によって今にも倒れそうな一人…本来ならば攻撃を加えたいところだが、残念なことに全ての攻撃手段が失われた今これ以上出来ることはない、か…」

 

 三人とも継戦能力は皆無となった今、カイザー理事の指示に救われたとでも言えるだろう。

 だが当然、理事のホシノを馬鹿にしたような物言いにライは一一一一

( この人でなしめ(新しい扉を)そんな物言いをしやがって(開いてくださり)絶対に許さないからな!(ありがとうございます!) )

 

「ライちゃん…?ねぇ、ライちゃん!返事して!意識を飛ばさないように頑張って耐えて!」

 

「このくらい、問題ないわ…」

 

(なぜだろう、痛みが和らいできた。 新しい美少女道を開拓したからかな?)

(だが…とても名残惜し、じゃなくて心苦しいが神秘の削れ具合がレべチすぎる。一度帰らせてもらおう)

 

「待って、まってよ…あっ!救急車!えっと、えっと…番号はなんだったっけ…?」

 

 心配するユメを意図的に無視し、ライは荒い息をしながら*1も近くの路地を目指す。

 

「らい…まってください…止血しますから、だからとまってこっちに来てください…」

 

(くっ…振り返りたい!だが一時の欲流されてはならない。これは試練、自らがミステリアス美少女へと至るための試練なのだ…!!!)

 

 人を泣かせて喜ぶ趣味のどこがミステリアス美少女に関係するのだろうか。

 

(あの場所へッ!あの場所へッ!行きさえすればッ)

 

精神はともかく体は限界である。最後の力を振り絞って路地を曲がった瞬間――――ゴポリ、と大量の血液が地面に流れだした。

それと同時に姿がハネタの姿へと変化し、急いでその場から脱出するために走り出した。

 

 

「ライと俺の肉体が別物でよかった…さすがのキヴォトス人でもあの出血量は余裕で死ねたな」

 

 ハネタは安堵した様子でできるだけ速く二人から遠く離れた場所に向かう。

 

「神秘が回復するまで美少女化できないだろうし…それまで次のミステリアス美少女としての計画でも立てておくとしよう」

 

 今回のことで反省の様子を一切見せることなく次のことまで考えている。もうこいつは死ぬまでこのまんまだろう。

 

 

 

 

「次は…そうだな、出張の予定があるミレニアムとかどうだろう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!」

 

 ガバっと勢いよく布団を蹴り上げてハネタは起床した。

 

「今は…朝4時か、遅刻はしなさそうだな……それにしても懐かしい夢だったな。ホシノとは先日会ったけど、二人とも元気にしてるかなぁ」

 

 

*1
二人の泣き顔で興奮しているからではない。たぶん。





分かってます。まだ彼/彼女はミステリアス美少女を出し切れていない……ですがご安心を。
実戦経験を経て進化した彼ならば必ずや上質なミステリアス美少女が出来ることでしょう。

ハネタ専用平日スケジュール♡

5:00   起床
6:30 始業(登校)
12:00~12:20 昼飯兼お昼休み
12:21  職務再開
18:00   定時
18:01  残業開始
22:00  終業(下校)
23:00 帰宅
24:00 就寝

1年生のハネタは週5でこの生活をしていました。
最初のうちは嫌がらせのように自分だけ大量の仕事が振られてくることに何度も発狂しそうになったらしい
でもまだこの頃は完全週休二日制なのでホワイトです(当社比)
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