いせかるメンバーにナツキ・スバルの人生上映会を観せる 作:リーグロード
「なんで……、なんでだよ、チクショウ……」
スバルが死んだ。その事実に、カズマはスクリーンを直視できず、下を向いて震える手で顔を押さえる。
最悪の想像をしてしまった。最悪も最悪、最低最悪のパターンだ。
屋敷の中にいるスバルが死んだ。それはつまり、推理小説ならば探偵が犯人は内部犯だと指摘するのと等しい。
だが、それはあくまで可能性の話だ。外部からの犯行の可能性だって十分にある。
不幸中の幸いか、スバルが死ぬ瞬間が映像に映し出されなかった。
もし第一部の時のように、スバルの悲惨な死に方を目にしていたら、カズマは自分が正気を保っていられた自信がない。
「え?え?どういうこと?スバルは寝て起きただけじゃないの!?」
いまだ状況がよく理解出来ていないアクアは、混乱する頭を抱えて喚きだす。
「おい、これがお前らの言う死に戻りってやつか……」
「ああ、自身の死をトリガーにある特定の過去の時間に巻き戻る。前回の上映では死ねば果物屋の店主の目の前に戻っていたが、どうやら日をまたいだことでセーブポイントが変わった?いや、ラムとレムがスバルをお客様と呼んでいたのは初日だけだったな。ならば、セーブポイントはランダムの可能性があるのか?」
尚文の質問にターニャが答えながら、スバルの死に戻りの能力をただ淡々と分析している。
戦場で死に慣れすぎた弊害だろう。今のターニャの精神はきっと……異形種のそれに近しいのだろう。
「ロクでもねえな……」
そんなターニャを鋭い睨むような目で見つめる尚文。その目には怒りが灯っており、そして疑問も浮かんでいた。
あの意味不明な学園で、少ないながらも友好的な言葉を交わしたことのあるスバルを誰が殺したのか。そして、学友が能力で死ぬ前に戻ったとはいえ、どうしてああも冷静に淡々と分析していられるのか。ここに自分達を呼び出した黒幕は何を思ってこんな映像を見せてくるのか。
イラつく感情が胸の中をグルグルと毒のように尚文を蝕み続ける。
「どう思う、デミウルゴス?」
「まだ情報が少ないのでなんとも……。ただナツキ・スバルを殺したのが外部犯である可能性はとても低いように思えます」
「ほぉ、それは何故だ?」
「あの屋敷はロズワール先生の屋敷。ならば、外から侵入してくる者に気がつかない筈がない。ならば、ここはやはり内部の者の犯行と推測するのが正しいかと」
「ふむ、なるほどな。確かにデミウルゴスの推理は間違っていなさそうだが、結論を出すにはまだ早すぎるな。ここはスバルの活躍を見守るとしよう」
そう、結論はまだ出せない。外部の人間が犯人なのか、それとも屋敷の関係者が犯人なのか。
何の情報もなく決めつけるのは愚か者のすることだろう。スバルには死に戻りという手札が存在する。ならば、時間が掛かろうとも、いずれ犯人は特定されるだろう。
「それまで、スバルの精神が持つかどうかだがな……」
眼窩の中に宿る赤い光が妖しく輝き、画面の中で憔悴した顔を見せるスバルを捉えて離さない。
『はぁ、はぁ、はぁ……』
スバルは屋敷の中を駆けずり回り、ようやく1つの扉の前で足を止めて、その扉の中に滑り込むように入っていった。
部屋の中に入ると、扉に背を預けてその場に座り込む。
ガクガクと震える足を止めようと、両手を伸ばすも、その止めようとした手の指先までブルブルと震えていた。
「ねえ、ご主人様?あの黒髪のお兄ちゃん、苦しんでるみたい。助けてあげられないの?」
「フィーロ……、それは……無理だ……」
悲しげな目で見つめるフィーロの目から顔を逸らし、どうにもならない現実を口にする。
どうしようもない程に理不尽で、誰にも頼る事が出来ない状況が、かつての自分の嫌な過去に重なる。
結局、自分は何も出来ないのだ。あの頃から何一つも成長していない。そう突き付けてくるような現実に、目の前の椅子を蹴り上げたくなる衝動にかられる。
やがて、禁書庫にいるベアトリスと死に戻りする前となんら変わらない会話をして落ち着いたのだろう。
ぐ~っと背伸びをして平静さを取り戻したスバルは、気持ちを切り替えて部屋を出る。
そうして、スバルを心配してやって来たエミリアに軽いセクハラジョークを飛ばし、前回と同様にロズワールに褒美として雇ってもらえるように頼み込んだ。
ただし、前回と違って色々なところが微妙に違っていた。
それは仕事の質であったり量であったりと、本当に細かい部分だ。
それを湯船の中でスバルが考えていると、ここでも前回とは違って風呂場にロズワールが乱入してきた。
それも、異世界の貴族の嗜みとしてか、浴場に入る際の当然の礼儀か、腰の聖剣を隠す気配もない全裸での登場だ。
「「「きゃ────!!!!?」」」
鑑賞中だった女性メンバーが、それを不意に直視してしまい、甲高い悲鳴が上がる。
「っ!?ラフタリア、フィーロ!!目を閉じていろ。俺が言うまで絶対に開くんじゃないぞ!」
「は、はいっ!!」
「ん~、わかった!」
反射的にラフタリアとフィーロの両目を手で覆いながら命令する。
ラフタリアは頬を赤くして頷き、フィーロも理解していないながらも、素直に尚文の命令に従って目をギュッと閉じる。
「「「で、デカイ──!!?」」」
「しょ、少佐!?み、見ちゃいけません!!」
「おわっ!?な、何をする、セレブリャコーフ中尉!?」
咄嗟にヴィーシャがターニャの目を塞ぎに掛かる。
慌てたターニャは、ヴィーシャの手を振り払おうとするが、体格差による関係でまるで振り払えないでいた。
ちなみに、男共は自分と比較して落ち込んでいた。
「か、カズマ!?私は、私はぁぁぁ!!!」
「いつぞや、カズマのを見たことがありますが、ロズワール先生に聖剣の称号を渡した方がよさそうですね!」
「喧しいわ!」
普段はド変態発言ばかりのダクネスが両手で顔を隠して一番乙女らしい反応をみせ、めぐみんはカズマのと比較して割と失礼なことを口にしていた。
ちなみにアクアは、「へぇ~」とだけ呟いて興味なさげだった。
「ぬお!?こ、コキュートス!アウラとマーレの視界を塞げ!!!」
「承知イタシマシタ」
アインズの命令でアウラとマーレの前に躍り出て、スクリーンが見えなくなるように、コキュートスの巨体で2人の視界を塞ぐ。
こうして、アウラとマーレの純情は守られたのだった。
そうして一部の女性陣と子供らの視界を塞いだまま、スバルとロズワールの誰得な入浴シーンが流れ出す。
しかし、絵面はともかくとして、2人の会話の内容。特にロズワールが語るあちらの世界の魔法の知識には耳を傾けるだけの価値があった。
流石は学園で教師として教鞭を執っているだけのことはあるのか、素人でも分かりやすい説明に、スバルは熱心に耳を傾けていた。
更に、入浴が終わるとラムが異世界の文字の読み書きの勉強を教えてくれる。
やはり、些細な行動や言葉の変化で未来は容易く変わるものだと、スバル共々理解させられる。
『スバルくん、お待たせしました。──大丈夫ですか?』
『ん、ああ、だいじょぶじょぶ。レムりんも、買い物終わり?』
『はい、滞りなく。スバルくんは、色々と大変そうでしたね』
仲良く2人でお買い物……というには、少々レムのスバルに対する態度が塩対応過ぎる気もしないではないが、それでも女の子と2人きりの買い物デートは、年頃の青少年としては嬉しいイベントなのだろう。
浮かれたようなテンションでレムに口説き文句に近い言葉を投げかけるスバル。
「……」
「おや、いつもならば、ここでカズマが叫びだすところだと思ったのですが?」
「別に、そんな気分じゃないだけだ……」
今は屋敷に来ての4日目、スバルが死に戻りをした日だ。
だからカズマも静かに緊張しているのだろう。もしまたあの悲劇じみた惨状が映し出された、果たして自分は耐えられるのだろうか。
そんな不安を、カズマは口いっぱいに含んだ苦い味と一緒に飲み下す。
場面は夜に切り替えり、いつもみたくラムがやって来て勉強会かと思いきや、まさかのエミリアが教師役としてやって来た。
それからエミリアの教えのもと、勉強を終えて雑談をしていくうちに、スバルが前回同様にエミリアにデートを申し込む。
『エミリアたんとの約束が待ち遠しくてこの様か。おいおい、俺ってば遠足前に寝られなくなる小学生かよ。修学旅行で寝坊したの思い出すな』
無事にデートの約束を取り付け、興奮に寝付けないでいながらも、スバルは1人で前回と今回の差異を考えていた。
目に見えて変化したのは仕事の内容とロズワールの入浴乱入事件、そして寝る前の勉強の3つだろう。
『ここまでやって、寝落ちとかマジ洒落になんねぇよ。オンゲやってるときとは違ぇんだから……』
ウトウトし始めるスバルに、誰も何も言わずに大人しく見守っている。
すると、突然スバルの様子が急変した。
『ヤバい、まさか、これ……っ!』
ついには膝をつき、部屋の床に嘔吐するスバルの容態に何人かが立ち上がる。
「スバル!おいおい、ここに来て急になんだよ!?まさか異世界の病気かなんかか?」
「お、お医者さんを呼ばなくちゃ!?」
カズマとアクアが慌てふためく。
その間にも、スバルは部屋を飛び出して助けを求めて屋敷をふらふらと彷徨い歩く。
「これは……、病気にしては急すぎる。いや、異世界ならそういった危険な病が存在している可能性もあるが、にしても……」
「症状の進行が早すぎるな。いくら異世界といえど、これでは病気というよりも毒を盛られた可能性の方が高い」
アインズとターニャが冷静にスバルの様子を見る。
体を引きずるように階段を登り、とある場所を目指して這いずるように移動するスバルの耳に金属音のような音が聞こえてきた。
「フィーロ!ラフタリア!」
「ひゃっ!?」
「わぷっ!?」
嫌な予感を感じ取った尚文が両隣の席に座っている2人の頭を抱き寄せて、スクリーンに映る映像と音を遮断させる。
急に抱き寄せられて混乱して抵抗する2人だったが、尚文のジッとしていろという命令に即座に抵抗をやめる。
しかし、胸元に抱き寄せられて視界は塞げたが、音だけはまだ微かに2人の耳に届いていた。
そんな奇怪な行動を取る尚文だったが、部屋にいる誰もが尚文ではなくスクリーンに映る映像に釘付けになっていた。
今も苦しそうに息をするスバルが音のする方へ顔を向けようとしたその瞬間だった。
『──う?』
何かがスバルの体にぶつかり、車に跳ねられたように廊下を吹き飛んでいった。
「スバルぅぅぅ──ーっ!!!」
叫んでも意味がないというのに、画面の中でスバルを襲う理不尽にカズマは叫び出さずにはいられなかった。
「おいおい!これがスバルの召喚された異世界かよ!?」
ラフタリアとフィーロを抱き寄せて、スクリーンの映像を見ながら、尚文は目を見開いて驚愕していた。
吹き飛ばされたスバルは床に大量の血を吐き散らし、ピクピクと痙攣している。
荒い息を吐きながら、何が起こったのか、呂律の回らない口でスバルが必死に状況を把握しようとする。
視線を少しずらせば、天井に吊り下げられているシャンデリアに引っ掛かるように、見覚えのあるジャージの袖を通した腕がぶら下がっている。
「────っ!!?」
その映像を見た瞬間、カズマは絶叫しようとしたが、喉の奥が渇いて掠れたような声しか出なかった。
(痛い、痛い、痛い痛い痛い────)
スクリーンに映し出されるスバルの惨状に強く共感してしまったのだろう。
ありもしない痛みがカズマに牙を剝く。いや、実際に痛いのかもしれない。バクバクと心臓が異常な動きをし、今にも握りつぶされそうな程の強い圧迫感が胸を締め付ける。
「っかはぁ!はぁっ!?」
スクリーンに映し出される、あまりにも恐ろしい光景に、意識しなければ呼吸することすら忘れてしまいそうだった。
『がっ!あああぁぁぁ!!!?』
「────っ!!」
今も映像の中で腕が千切れた痛みに絶叫しながら転がり回るスバルの声に、耳を塞ぎたくなる衝動を必死に抑えてスクリーンを睨む。
直後、見なければよかったという後悔がカズマを襲う。
ぐちゃり!!!
襲撃者と思われる敵の手によってスバルの頭蓋骨は踏みつぶされ、転がったスバルの眼球がスクリーンの映像を呆然と見ていたカズマと目が合った。
「あっ──」
自分の体が死んだように血の気が引き、意識が遠ざかっていく。
だが、この部屋はそんな逃避は許さないとばかりに、ふらついて椅子に崩れ落ちた瞬間、カズマの意識は簡単に戻ってしまう。
スバルの死に戻りで暗転しているスクリーンを目の当たりにしながら、カズマは口を開き、
「……気持ち悪い」
「だ、大丈夫……ですか、カズマ?」
「ちょっと、カズマさん大丈夫なわけ?」
両隣に座るめぐみんとアクアの心配そうな声を聞きながら、息を呑むほど顔を青白くしながらカズマは、
「──気持ち悪い」
スバルの異世界生活を見くびっていた、侮っていた、そんな自分の浅はかさに反吐が出る。
来週から年末年始前で残業多くなりそうなので、日曜に書けるだけ書いておいたので、毎日投稿はここらで終わりですね!
あっ、でも来週終わってからの連休に遅れを取り戻すレベルで書いていくので、高評価とお気に入り登録お願いします!!!
スバルの第二の試練後にIFストーリーを入れる
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