いせかるメンバーにナツキ・スバルの人生上映会を観せる 作:リーグロード
そして、今回は誰を曇らせるかで悩んだ結果、難産になってしまい書き上げるのが遅れましたことをお詫び申し上げます。
スバルが屋敷に来てからの3度目の死に、部屋にいる多くの者が未だに涙を流している。
だが、全員がスバルの死に心を痛めている訳ではなかった。
「くふっ。あはぁ~♡」
「ルプー、その顔気持ち悪いからやめなさい」
「あ~、ナーちゃんが酷いこと言ったっす!」
妖艶な笑みを浮かべている筈なのに、それはまるで牙を剥いた獣のようで、見る者が見れば悲鳴を上げてしまいそうな恐ろしさを醸し出すルプスレギナに、ナーベラルが冷たい言葉を投げかける。
「でもっすよ!あんな私好みの映像を見せられて、まだよく我慢出来てる方っすよ!」
そう、サディスティックの本性を持つルプスレギナにとって、誰かの悲痛や絶望に苦しむ姿は最高のご馳走であり、今この瞬間はまさにその真っ盛り。
なのに、どうして我慢出来ているのかと言えば、この部屋に至高と評する偉大なる御方がおり、創造された配下である自分が迷惑を掛けるだなんて許される筈もないからだ。
その一心で、サディスティックな欲望を抑え込んでいるルプスレギナに、ナーベラルが呆れた溜息をこぼした。
しかし、映像の中でレムとラムの姿を見て発狂する
エミリアが見舞いとしてやって来ても、スバルは落ち込んだまま塞ぎ込んでいる。
しかし、何か思いついたのか、スバルが唐突に顔を上げてエミリアに向き直る。
『エミリアたん、聞いて欲しいことがある』
一笑に付される覚悟でスバルが口を開こうとする。
だが、それは結果として叶わなかった。
「あれ、どうしたんだよ?」
「これは、止まっている……のでしょうか?」
急に動きを止めたエミリアを……否、音もなくなり、風ですら動きを停止した世界に、カズマとめぐみんが困惑する。
(これは
アインズがそこまで考えた辺りで、不意に何もない空間から黒い手が生えてくる。
それはやがてスバルの体内に潜り込み、心臓を握り締める。
「あれは、
スバルに起きた現象はどちらもアインズが知っている魔法に酷似した効果のものだった。
『──スバル?』
いつの間にか停止した世界が動き出しており、心臓を苦しそうに押さえつけながら、荒い呼吸を繰り返すスバルを心配そうに見つめるエミリア。
ここで、事態を見守っていた皆がスバルの境遇にまた一段と深い絶望を覚えた。
「まさか、今のってスバルへの口封じってことか……?」
「なによそれ!?そんなのスバルが可哀想過ぎるじゃない!!却下よ!却下するべきよそんな条件!!!」
「いや、却下って……。まあ、気持ちは分らんでもないが」
スバルが受けた仕打ちを聞いて、激怒したアクアが喚き立てる。
それを聞いていたターニャが呆れたようにしていたが、流石にスバルの境遇が酷すぎるのは共感していたので、強くは否定しない。
そして、頼れる人がいないという事実に打ちのめされたスバルは、エミリアの心配を余所に、絶望に浸りきったまま、構わないでくれと突き放す一言を口にしてしまう。
ベッドの上でロズワールと徽章奪還の報酬としての交渉を行い、客人として屋敷にいさせてもらった。
それでも、安心は出来ない。自分を殺した相手が屋敷でメイドとして働いている。仮に屋敷を出たとしても、前回のように口封じと尋問によるBADENDが待ち構えている。
王都では3回の死を経験したが、4回目は果たして存在しているのか。その不安が独り言となって皆の耳に届く。
「っく!……スバル」
痛ましいほどのスバルの絶望に、多くの見ている者の胸を大きく締め付ける。
今も寝たら死ぬかもしれないという恐怖と不安に戦いながら、自傷行為で眠気を吹き飛ばそうとするスバルの姿を見て、何とかしてやりたい。だけど、今の自分達には何も出来ない。そんな無力感に苛まれながら、ただ黙って流れるスバルの過去を見届ける。
「さて、これで本当に手詰まりなのか、スバル……」
アインズはそんなスバルの境遇に同情こそすれど、心を揺り動かされたりはしなかった。
それはアインズがアンデッドだからなのか、それともアインズの元々の人間性が淡泊だからなのか。
ただアインズは、この状況をスバルならひっくり返せる。信頼とも信用とも違う。ただ、スバルなら何かやってくれる。アインズはそんな確信めいた予感を覚えながら、映像の先の出来事に意識を集中させる。
『──ずいぶんと、腑抜けた面構えになっているのよ』
いつの間にか部屋の中にいたベアトリスが、変わらない太々しい態度でスバルに話しかける。
そこで知らされるスバルにとっての衝撃の事実。自身に纏わりつく魔女の臭いという最悪の事実だが、それでもレムが自分を狙った原因の1つを突き止められたという一歩がスバルにほんの少しだけ前を向かせる力になった。
『お前、俺に悪いと思ってるんだよな?』
「むぅ……」
ベアトリスを脅すような言い方をするスバルに、ほんの少しだけ不快そうな声を零すマーレ。
スバルの境遇なんて関係ない。友達を不当に脅す輩に殺意を滲ませる。
「ちょっと、マーレ。少し落ち着きなよ……」
「あっ、ごめんね、お姉ちゃん」
姉のアウラの注意を受け、マーレは殺意を引っ込める。
そんな姉弟のやり取りの間にもスバルとベアトリスの話は進む。
『──汝の願いを聞き届ける。ベアトリスの名において、契約はここに結ばれる』
『マジかよ。……幼女に泣かされそうになった』
敵も味方も分からない今の現状で、契約という明確な仲間の印に、不覚にも目頭が熱くなるスバルにカズマ達も釣られて一緒に泣きそうになっていた。
「契約か……」
ふと隣に座るラフタリアを見つめる尚文。
彼女もまた、奴隷契約という契りで当時誰一人として味方のいなかった尚文の仲間になったのだ。
「……?どうしました?」
尚文の視線に気づいたラフタリアが、可愛らしく小首を傾げる。
そんな彼女に救われた経験を持つ尚文は、今回でスバルの死のループが終ればいい。そう、切に願った。
ベアトリスという協力者が出来たことに、ほんの少しだけ安堵を覚えるも、スバルの中には
『そう、よかった。ちゃんとベアトリス、謝りにきたんだ。感心、感心』
明確な拒絶の意思を伝えられたはずのエミリアだったが、それでもスバルを心配して歩み寄ってきてくれる。
それはスバルにとってこの上ない幸せで、この地獄にもたらされた唯一の光明であった。
『やっぱり、ご飯、食べてないのね』
『…………悪い』
料理を残してある皿を見て、エミリアは悲しげな表情を見せる。
それにチクリと罪悪感を覚えるスバルだが、心の中で毒が入っているんじゃないだろうかなんて不安が言葉になってスバルを襲う。
「そうだよな、自分を裏切り殺した相手の料理なんか口に出来る筈がない」
冤罪によって味覚を失う程の経験を持つ尚文からしてみれば、スバルの行動は当然のものだ。
『……エミリアたんが、『あーん』って食べさせてくれるんなら、食べられるかも』
『じゃ、はい、あーん』
『──へ?』
スープを掬った匙であーんをしてくるエミリアに、本気の戸惑いを見せるスバル。
しかし、一度自分で口にしたうえに、こういう時には強引なエミリアの行動力に押されて結局は料理をあーんするスバル。
ガタン!!
「だ、大丈夫ですか、尚文様!?」
「あ、ああ……。大丈夫だ、ラフタリア」
スバルの図太さに思わずズッコケて前の席に頭を打ち付ける尚文。
ちょっとばかし痛むおでこを摩りながら、尚文は軽く頭を振る。
結局、エミリアのあーんによって料理を完食したスバル。
大した量でもないのに、満腹になったことに疑問を抱くと、エミリアがその理由を教えてくれる。
『しばらくちゃんとしたもの食べてないから、胃がびっくりしないようにって。ラムが言い出して、レムが作ったの。良い子たちなんだから』
そう姉妹を自慢するエミリア。そんな姉妹の気遣いにスバルは嬉しくなるよりも先に、優しくするのにも、親しく振舞うのにも、そのままでない裏がある。そんな疑心暗鬼に囚われる。
「ちくしょう、スバルの考えに同意見なのに、さっきので素直に同意したくね~!」
「えっと、そう変に突っぱねなくても。私だって尚文様にあーんされたら、どんなに悲しいことがあっても、きっと食べちゃいますし。そこはスバルさんの気持ちが理解できちゃいます!」
そうスバルの行動にフォローを入れるラフタリア。
それを複雑そうな顔で聞き終えた尚文は、何も言い返すことなく、スバルの様子を見守る。
久しぶりの料理を食べて満足してしまったせいか、それともエミリアの優しさに絆されてしまったせいなのか、スバルに睡魔が襲い掛かる。
やがてスバルの意識は現実世界から夢の世界へと移行する。
「なんか急にモノクロになったし、枯れ木ばっかの風景になったけれど、これってもしかしてスバルの夢の中ってことか?」
「恐らくは、カズマの言う通り、スバルの夢を映像にしたものだろう。だとしたら、ここで我々にこの映像を見せている者の趣味は最悪といえるだろうな」
「ああ、今までスバルの夢にまで干渉しなかったというのに、悪夢に関してだけは干渉して映像に流すのだからな」
飛び散る血飛沫、自分が殺されたシーンの断片的な映像。最後に行き着くのは自分を襲ったモーニングスターを握り締めるレムの姿。
そんな最悪の悪夢を書き換えるように、誰かがスバルの手を握り、悪夢が振り払われる。
やがて、現実世界で悪夢に魘されていたスバルだったが、その夢から解き放たれ、穏やかな寝息を立てるのだった。
スバルが悪夢から解放されて眠りについてすぐくらいに、その安眠は妨害される。
『──いつまでもグースカと寝てるんじゃないかしら』
そう乱暴にベアトリスに叩き起こされるスバル。
そのことに対して、スバルはキレるどころか、自分のマヌケさに頭を抱えた。
見渡せば、寝る前まで自分がいた部屋ではなく、禁書庫に移動させられている。
確かに、ここならば扉渡りで来る必要があるため、レムもそう易々と侵入してこれはしないだろう。
『お前、意外と色々考えてくれてんのな』
その後も、スバルが読める文字だけで書かれた本を投げつけてくるなど、態度の割には世話好きなベアトリスに、スバルは苦笑を漏らす。
悪態を吐きつつも、しっかりとベアトリスなりにスバルの面倒をみてくれているのだから。
「やっぱし、ベアトリスはなんだかんだ言いながらスバルに甘いところがあるよな」
「ええ、そうね!私も彼女はすご~く良い子なのはちゃんと知ってるんだから!」
カズマがベアトリスのツンデレに笑って、アクアもはしゃぎながらそう言ってくる。
スバルが部屋をうろつきながら、渡された本を熟読していると、唐突にベアトリスが立ち上がり、部屋を飛び出る。
急に理由も言わずに立ち去るベアトリスに焦燥感を隠さないまま、その背中を追う。
禁書庫の扉の前で数秒ほど立ち竦んだ後、意を決した表情で扉を開くスバル。
そして、扉を開いた先には眩いばかりの朝日が立ち昇っていた。
『まさ、か……越えた、のか?四日目の夜を……!?』
無理ゲーだと内心で思っていたスバルは、五日目の朝を迎えられたことに、知らず知らずのうちに乾いた笑みが口から漏れる。
まだ屋敷での問題は何一つとして解決していない。いないのだが、それでも四日目の夜という死の境界線を乗り越えた感動が言葉にも感情にもならないでいた。
どう反応すればいいのか、茫然自失とその場で膝をつくスバルに、エミリアが近寄ってきた。
『──スバル?』
「これからハッピーエンドにまっしぐら……って、そんな顔じゃねえよな?」
「少なくとも、悪い知らせを持ってきたような顔をしていますね」
動揺と焦燥感が浮かぶエミリアの顔を見て、カズマとめぐみんが不安の声を上げる。
「少佐、スバルさんはこれから先、本当に大丈夫なんでしょうか?」
「さてな、だがあの男のことだ。きっと最後には笑って終われる未来が待っているとは思うがな……」
それは学園に転移してきたことから推測できる未来。だが、その未来に行き着くために、いったい何度の絶望を乗り越えてきたのか。
それは、この場にいる誰もが答えを持ち合わせていないだろう。
ただスバルが幸せになれることを信じて黙って映像を見ていると、突如としてラムの悲鳴がけたたましく屋敷中に、そして部屋中に響き渡った。
「この声は……、ラムの声か?」
「彼女がこれほどの悲鳴を上げるとすれば、妹のレムか主人のロズワールに何かがあったということでしょう」
アインズが声の主をラムと断定し、アルベドがその悲鳴の原因を推測する。
エミリアに手を引かれてスバルが泣き叫ぶラムがいる部屋へ辿り着くと、そこにはベッドの上で静かに眠るレムがいた。
いや、ただ寝ているだけならばラムがこうも泣き叫ぶことはない。なによりも、いつも怠惰の極みともいえるラムよりもレムが遅くまで寝ているだなんてありえない。
だとすると、残された答えは1つになる。
「これってつまり、レムが誰かに呪い殺されたってことか!?」
「じゃあ、少佐が先程おっしゃった通り、襲撃者は2人いるってことですね?」
「ああ、だろうな。スバルを殺したのは内部犯のレム。そして、外部犯の呪術師だろう。しかし、スバルも運が悪い。これでは、部屋にいなかったスバルがこの場で最も怪しい人物になる。ベアトリスのアリバイ証言も、今のラムに通用するかどうか……」
寝ている間に殺されるという、1回目のスバルの死因とまるで同じなレムの死因に、カズマが困惑に顔を歪ませる。
そして、ヴィーシャもまたターニャが先程口に漏らした襲撃者が複数人いるという事実を噛み砕いて呑み込んでいく。
『なんで、立場がこうも変わっちまってる……?』
困惑と絶望と、そんな様々な負の感情で震えるスバルはレムの亡骸に近づいていく。
だが、そんなスバルの感情を無視して、ラムは無情にもスバルの手をレムに触らせまいと払いのける。
「なんだよこれ、ハッピーエンドなんてどこに存在するんだよ……」
「紅魔族随一の頭脳を持つと自負している私ですが、流石にこれは……」
完全な手詰まり、犯人が別にもう1人存在する。それも、殺害対象は自分の他にレムも対象内という事実に、皆が言葉を失いつつあった。
映像の中でもレムが殺されたことに、普段は陽気なロズワールも顔を険にしてスバルを見つめている。
そして誰しもがスバルに心当たりを求める。
だが言えない。スバルが知っている情報は死に戻りありきの情報だ。
その根拠や証拠を話そうとした瞬間に、また再びあの恐怖が襲ってくるとなれば簡単には口を開けない。
「最悪だな。ここでだんまりは自分が犯人だと示している証拠だ。噓でもいいから何か口にできればいいが、今のスバルの精神的にそれは無理か……」
何をすればいいのか。何を考えればいいのかすら分かっていないスバルに、この状況をどうにかできる術などあるはずがない。
尚文は、今度こそはと願っていたが、こうまで最悪な状況を目にしてしまえば、今回もまた諦めて死に戻るしか選択肢はないと、そう思った。
現に、今もレムを殺されて激怒するラムとその手助けにはいるロズワール。スバルの味方はベアトリスとエミリアの2人。
パックは心情的にどちらでもないスタンスだが、エミリアが味方するからとりあえずスバルの味方という立ち位置。
そして当の本人であるスバルはこの状況にまるでついていけていない。
ただ見ているだけならば、スバルはまさに愚者そのもの。足搔けば足搔くほどに蟻地獄に飲み込まれる虫のような存在。
そんなスバルにエミリアは無知ゆえに残酷なお願いをする。
『スバル、お願い。……あなたがラムを、レムを救ってあげられるなら、全部話して?』
自分を殺した相手を救えと、何も話せないことを話せと、そう慈しみが込められた眼で自身に歩み寄るエミリアに、スバルは己の卑小さを感じて目を逸らした。
その時のエミリアの眼に宿った失望、あるいはスバルに対する悲哀の色は、スバルがこの場から逃げ出すには十分すぎる理由だった。
逃げ去る自分の背に届くラムの純粋な殺意の叫びがスバルの心を大きく抉りながら、ただただ必死に逃げ続ける。
「こんなの、酷すぎるだろう!」
何も分からないまま殺され、呪いで苦しんだまま殺され、疑われて殺されて、ようやく死の運命から逃れられたと思えば、今度はレムが死んで自分が犯人だと疑われる。
逃げるスバルの弱音が、あの屋敷での日々が楽しかったという本音が、スバルのこれまでの全てが悲しみと苦しみとなって観ている者の心を突き刺す。
カズマを始めとして、多くの善人がスバルに同情した。
アインズとターニャ等の死に感情を持つことが薄い種族・軍人は冷静に事の顛末を見届ける。
そして一部のカルマ値マイナス組が、スバルの苦しみと絶望に内心で歓喜の声を上げながら、部屋の中ですすり泣く皆の声をBGMに映像をニヤつく顔を必死にこらえながら黙って見続ける。
やがて、スバルは前回と似た場所に躍り出ると、そこで死に戻りを選択する決断に入る。
ふと少し遠くの方を見れば崖が見える。
「自分から死にに行こうだなんて、そんなの本当は認めちゃダメなのに……」
異世界での人間の死後を導く役目を担う、エリスの偽りの姿であるクリスは、そうスバルの決断に対して顔を悲痛に歪めた。
やがて、崖の前に立ったスバルは眼下に広がる光景に怯えながら、一歩を踏み出そうとする。
「ダメだ!スバル!!!」
カズマのその声が止めた訳ではないが、スバルは崖から飛び降りることなく、その場に尻餅をついた。
今を変える為に自分から死ににいく勇気もない臆病者だと自己嫌悪に陥りながら、スバルはボロボロと涙を流していった。
「出来る筈がない。何度死のうとも、自分から命を絶ち切れる者など、そう多くはないのだから……」
アインズはスバルの行動に批判するわけでもなく、ただそう呟いた。
その内心で、出来れば失態の1つ程度ですぐに自害しようとするNPC達にもこれくらいの忌避感があったらな~っと、益体も無いことを考えてしまう。
そして、寝不足も相まって泣きつかれたスバルは気絶したように崖の前で意識を失い、夕暮れ時に目を覚ました。
『──ようやく、気がついたのよ』
気がつけば目の前にベアトリスが立っていた。
契約は朝までという内容を勝手に改竄して、今もスバルを守る為に傍にいてくれたベアトリスのぶきっちょな優しさに触れながら、差し出された手にスバルが握り返す。
その時、映像が少し乱れ、昨日の夜の場面を一瞬だけ映し出す。
そこには昨夜の時点で映し出されなかった悪夢に魘されるスバルの両手を握る手。薄っすらとスバルの視界に映る双子のメイドの姿があった。
『おい、バカなこと考えてんぞ、俺……』
そう言いながらも、スバルの顔が絶望や悲壮から覚悟の決まった男の顔つきに変わる。
「何考えてやがる!ありえないだろ……!?」
スバルの脳裏に次々と思い返される最初のループの日々の記憶。
馬鹿をやって共に笑いあっていた幸せな過去の記憶。
偽りだったであろう、あの幸せを取り戻そうとするスバルに、尚文は理解出来ないといった表情でスクリーンを食い入るように見つめる。
「ちっ……!」
自分が出来なかった決断をスバルはしようとしていた。
それが果たして正解なのか、間違いなのか、その答えを知るために、尚文は流れる映像をより真剣になって見つめ始めた。
『ようやく、見つけたわ。ベアトリス様がまだ一緒なのは予想外だけど』
このタイミングでのラムの登場に、スバルがどう対応するのか、尚文は涼しい顔をしながらも、手に汗を握りながら、それを見守る。
『びよーん』
「はぁ?」
覚悟を決めたスバルが何をするのかと、固唾を呑んで見守る尚文達の前で、スバルはベアトリスのドリルヘアーを掴んで遊び始めた。
「あいつは本当に、何を考えていやがるんだ……」
とことん予想の斜め上過ぎる行動を取るスバルに頭痛が痛いとばかしに、尚文は頭を悩ます。
だが、これもスバルなりの優しさや思いやりだったのだろう。
ラムとベアトリスの間に生まれていた険悪な空気が今の一発で綺麗さっぱり消え去った。
『なにをしてやがるのかしら!?こんな状況で、死にたいのかしら!?』
『バカ言うんじゃねぇよ、死にたくなんか欠片もねぇ。死ぬのなんざ本当に、人生の最後にいっぺんだけでいい。本気で、そう思う』
『いい、度胸だわ。やっと観念したってこと?』
『観念とは少し違うな。言うなれば……覚悟が決まった、ってとこか』
死ぬのを怖がっていたスバルは今やどこにもいない。
今のナツキ・スバルは屋敷の皆を救うと決意した面構えをしていた。
「かっこよすぎんだろ、スバル!主人公かっての!!」
「ええそうね、いつもの弱気でウジウジしているカズマさんよりもよっぽど主人公っぽいわね!」
一言余計なアクアの頬を抓り上げ、スバルの勇姿を見届けようとするカズマ。
『あなたに、ラムと、レムの、なにがわかるって言うの!?』
『なにもわからねぇよ、知ろうとしなかったからな。肝心な部分はなんにも知らないまんまだ。だけどな、お前らだって、知らないだろうが』
『なにを……』
『俺が!お前らを!──大好きだってことをだよ!』
前回のループで結局語られぬままに終わってしまったスバルの思いの丈が、今この場所で暴露された。
スバルのその告白にカズマもアクアもめぐみんにダクネスすらも涙ぐみながら、その言葉に胸を打たれている。
「スバル!お前ってやつは……!!」
「私!もう涙腺崩壊しちゃうんですけど!?」
「うぐっ!私も思わずスバルの言葉に感涙の涙が……」
「ああ、私もスバルの覚悟と想いに、涙が止まりそうにない……」
崖へ向かって走り出し、かつて王都でエミリアに誓った時のように、今度は殺してやると殺意の声を上げるラムに、反対のありったけの善意を込めた言葉を叫び返す。
『──絶対に、助けてやる』
その言葉と同時に映像は暗転し、スバルは死んだ。
次回かその次辺りで第二章は終わりますが、意外なことにゆんゆんが先生陣のメンバーとアンケートでいい勝負をしていたことに驚きです!
てっきり、先生陣の一強かと思いましたが、確かに、ゆんゆんは曇らせたらいいキャラしそうですね。
っていうか、1組メンバー尚文以外のキャラが書きにくい!!!
まだプレアデスはルプスレギナを前に出せば書けるけれど、クリスはマジで登場させるのに苦労する。
ってか、ハーメルンで誰か同じようにナツキ・スバルの人生上映会を書いて!!!仲間が欲しいのよ!!!
4章でのスバル視点外の放送
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エミリアの試練
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ラムの告白
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ガーフィールとエルザのバトル