いせかるメンバーにナツキ・スバルの人生上映会を観せる   作:リーグロード

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そういえば、エミリアとのデートの約束を入れるをすっかり忘れてた!?


Re:異世界カルテット~休憩時間~2

 

『──別に怒ってるわけじゃないわよ。ええ、そう、怒ったりしてない。一生懸命看病してた相手が目が覚めたらいなくて、探しにいこうかと思ったら椅子にがんじがらめに縛りつけられたりしてて、完全に置いてけぼりにされたからって、そんなことで怒るような狭量な心の持ち主じゃないもの、私』

 

「これは怒ってるな」

 

「ええ、怒ってますね」

 

「うん、間違いなく怒ってるね」

 

 カズマ、めぐみん、クリスがぷりぷりと怒りを見せるエミリアに苦笑を向ける。

 何はともあれ、スバルが屋敷の住人からの信頼を勝ち得、呪術師を討伐した。

 この難行を見事に果たしたスバルが望むもの。それは──、

 

『じゃあ、俺とデートしようぜ、エミリアたん』

 

『でえと?』

 

『一緒に二人でお出かけして、同じもの見て、同じもの食べて、同じことして、同じ思い出を共有するってこと』

 

「異世界に来て1ヶ月も経ってねえのに、もう可愛い女の子とデートの約束とか……。同じ元引きこもりとは思えねえな……」

 

「何言ってるのよ。カズマさんだってこの女神である私と何度も一緒にお出かけしたり、同じもの見たり、食べたりしたじゃない。あと、カズマさんは今でも立派なヒキニートよ」

 

「はぁ~?お前とのお出かけはなデートとは言わねえんだよ。手のかかる子供の子守となんら変わんねえんだよ!!あとヒキニート言うな!!!」

 

 お互いにバカにされたカズマとアクアが頬を引っ張り合う子供の喧嘩を始める。言い争う二人を横目に、皆はスバルとエミリアの会話に耳をかたむけた。

 いや、訂正しよう。皆ではなかった──。

 

「むぅ~、レムに手を出しておきながら、あの男はぁぁぁ!!!」

 

「ま、まあ、スバルは元々エミリアに惚れていたのだし、これぐらいで目くじらを立てるのは……」

 

 レムを惚れさせておいて、自分は別の女に現を抜かしているのが気に入らないのだろう。

 勿論、アルベドの気持ちも分かるアインズだが、スバルが誰と恋仲になろうとも文句を言う立場に自分達はいないと考えている。

 

(とはいえ、流石にプレイボーイが過ぎるんじゃないか、スバル。もしペロロンチーノさんがこの場にいたら絶対にカズマと一緒になって騒ぐだろうな。いや、カズマも傍からみたらハーレムパーティーだし、普通にカズマも標的に入れそう)

 

 そんな騒がしい連中を尻目に、エミリアとのデートの約束を取り付けてはしゃぐスバルの姿に、多くの者が微笑ましいと口角を上げる。

 

 いつかの4日目の夜と同じシチュエーション。されど、必ず来る明日が約束された夜が明ける。

 

「以上で、第二部を終わります。しばらくの休憩の後、第三部を放映致します」

 

 スクリーンの映像が途切れ、前と同じようにアナウンスの声が響いた。

 

「ふむ、これで屋敷の事件は全て解決したと見ていいだろう。しかし……」

 

「第二部が終わり、次に第三部があるということは、下手したらスバルはまた死に戻りを使って地獄を繰り返す可能性が高い……か……」

 

 ターニャの呟きに、アインズがその懸念を口にする。

 それを聞いた者の反応は、当然の如く重いものだ。無論、それ以外の反応を示す者もいる。(長女にアイアンクローでお仕置きされてるが)

 

「スバルがまた死ぬかもしれないって……そんな、どうにかならないの?」

 

「あの黒髪のお兄ちゃん。また酷い目にあっちゃうの、ご主人様?」

 

 クリスとフィーロが不安げな表情で、それぞれの信頼における者に問いかける。

 

「「それは──」」

 

 ピンポーン!

 

 カズマと尚文がそれに答えようとした瞬間、再びあの音が部屋中に響き渡った。

 

「これはまさか……」

 

 ターニャが警戒しつつも、1組がこの部屋に転移してきた状況と似通った展開に、3組が現れるのかと予想していた。

 だが、それは予想外の方向で裏切られた。

 

「な~はっはっは!あのぼっちの紅魔族の娘が来ると思ったか?だが、残念!吾輩である!!」

 

「ぬぉわぁ!?」

 

 突如、ターニャの背後から、高笑いを上げる男が現れる。

 振り返れば、ニヤニヤと身長差から見下す姿勢を取るバニルがそこに立っていた。

 

「──バニル先生だったか。あまりこういう悪ふざけは遠慮してもらいたいのだが」

 

「ふははは!まあ、そう言うな、吾輩は悪魔ゆえに、人間の悪感情を好むのでな!」

 

 周りを見渡せば、バニル先生以外にも、他の先生方がこの部屋に転移してきていた。

 

「アインズ様!このパンドラズ・アクター~!!!遅ればせながら、推っ参!しました!!」

 

「あ~、うん。それはいいんだが、お前はどうしてここに?」

 

「それは……、分かりません!!」

 

 アインズの質問に、無駄に格好付けたポーズを取るパンドラズ・アクターが答える。

 一々ポージング込みで答えるパンドラズ・アクターに感情抑制が働くアインズだが、お陰で冷静になれた。

 

「分からないとはどういうことかしら?アインズ様のご質問に分からないと答えるのは、いくらアインズ様の作られた存在とはいえ不敬だと思うのだけれど」

 

「あ~、よせアルベド。下がっているがいい」

 

「はっ……」

 

 パンドラズ・アクターの回答に不服を述べるアルベドだが、アインズはそれを制して下がらせる。

 

「さて、分からないとお前は答えたが、なら質問を変えよう。ここがどういう部屋か、それは分かるか?」

 

「その質問でしたら──」

 

「吾輩が答えよう!」

 

 パンドラズ・アクターの回答をバニルが遮る。

 いつの間にかターニャと共に近づいていたバニルが、自信ありげな表情でアインズに宣言する。

 

「そもそも、ここへ我々を転移させた者と学園に転移させた者は別の存在だ」

 

「別の存在だと?まさか、存在Xの仕業というわけか!?」

 

「い~や~!神を自称する輩の存在が悪魔やアンデッドに消滅以外の関与をするものか。ここへ我らを転移させたのはもっと別の……それこそ、吾輩ら悪魔と似通ったような存在だ!!」

 

 バニルの言葉に、アインズは顎に手をあてて思案する。

 学園に転移させた存在をAとするなら、ここに転移させた存在をBとしよう。

 2つの存在は似たようなものであるが、ここに我々を転移させたのなら、AとBの目的は別々なのか……?

 

「ふむ?ここに我々を転移させた存在、そいつは何の目的があってそんな……」

 

「ふははは!!特に大した理由などないのだろう。ここへ転移させたことも、学園に転移させたことも、狙った目的は違えども、その手段は似通ったものなのだ。……いや、『願い』の方向性が似ているというべきか」

 

「ふむ、なるほど──」

 

「なんのなるほど……?」

 

 バニルの続く言葉に、デミウルゴスがいつも通りの意味深な態度で頷き、会話に参加するのが遅れたカズマが疑問の声をあげる。

 それについて、大きく両手を広げたデミウルゴスがバニルの代わりに説明を続ける。

 

「いいですか、皆さん。今のバニル先生のおおよそ分かることは2つ。1つは、ここに我々を転移させた者と学園に転移させた者は全く別の存在。2つ目は、転移させた者同士は似て異なる目的を有しているということです」

 

「うんうん、そこまではなんとなく理解出来るよ……」

 

 指を立てて順序よく説明してくれるデミウルゴスの言葉に頷きながら、カズマも理解を示す。

 

「ねえ、ちょっと、どういう話?さっきから意味不明なんですけど……」

 

「お前はちょっと黙ってような。後でちゃんと分かりやすく説明してやるから」

 

 アホの子であるアクアを元の席に座り直させて、再びカズマ、及びその他の面々もデミウルゴスの話に集中する。

 

「ここで肝心なのはバニル先生がおっしゃった『願い』の方向性です。……これはどういう意味かお分かりになりますか?」

 

「そういや、そんなこと言ってたな。つっても、願いなんて言われてもさっぱりだぞ……?」

 

 これには、カズマだけでなくターニャや尚文も分かっておらず首を傾げている。アインズは下手に話の矛先が向けられないように聞き役に完全に徹して反応を見せないが。

 

「確かに、願いなんて言われても普通は分かりません。ですが、ここに我々を転移させた存在が悪魔と似通った者だとすれば、自ずと答えは出てきます」

 

「おお~!なら、デミウルゴスはもう答えが何なのか分かったんだな!?」

 

「ええ、まあ。確証はありませんが、おそらくは……」

 

 カズマの期待の声に、デミウルゴスが自信ありげな態度で頷く。

 そして、意味深にメガネをクイッと持ち上げると、その答えを明かした。

 

「この部屋に転移させた者の狙いは『感情』あるいは『反応』といったところでしょうか」

 

「ふははは!流石は同族だな。見事な推理だ!!」

 

 デミウルゴスの答えに、バニルが大仰に拍手する。

 そして、カズマもバニルを見て改めて悪魔がどういった存在なのかを思い出して、デミウルゴスの答えに納得を示す。

 

「なんだそれは?つまり、ここに転移させられたのは、悪魔が楽しむためということか?」

 

 尚文の言葉に、バニルがニヤリと笑って頷く。

 

「ふむ、その認識で構わんぞ、盾の男よ!!」

 

「ええ、そうですね。悪魔にも悪感情の好みがあります。そして、ナツキ・スバルの人生はここに我々を転移させた存在が好む悪感情を引き出すに最適な内容であると考察できますね」

 

 佐藤カズマの共感と無力感による悪感情。岩谷尚文の不理解と怒りによる悪感情。ターニャ・フォン・デグレチャフの悲哀と諦観による悪感情。アインズは■■■■。

 ナツキ・スバルが歩んできた人生は、そのどれもが悪魔が好む悪感情を引き出すに十分な内容であった。

 

「しかし、ならば何故この場にスバル達を召喚しない。今まで奴の人生を見たところ、当事者こそがここへ転移させた存在にとって、一番感情を引き出すのに適した者だろう?」

 

 ターニャの疑問はもっともである。

 これまでの出来事を鑑みれば、当事者であるエミリアやレムがこの上映会を鑑賞したならば、自分達とは比較にならない悪感情を引き出させることが可能なはずだ。

 そうしないということは──、

 

「それが出来ない状況?あるいは状態か?だとするなら、原因は嫉妬の──」

 

 アインズはそこまで言いかけて、口を閉じる。それはそれ以上先の言葉を持ち合わせていないからではない。

 深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ──。そうした言葉がある通り、死に戻りなどという全てを超越したような力を持つ存在。そんな得体の知れない存在の不興を買う可能性を恐れたためだ。

 現に、映像ではスバルがエミリアに死に戻りを暴露しようとした結果、心臓を握られるという警戒を送られた。

 ならば、ここで無暗にその名を出すのは警戒心が足りていない。それを察して、他の者もアインズが口を閉じたことに然したる反応を見せない。

 

「っで、ここが俺達に悪感情を引き出させる為のクソッたれな部屋だってのは理解した。なら、学園はどうなんだ?」

 

「そちらに関しては、感情云々ではなく、デミウルゴス殿がおっしゃったもう1つの狙い『反応』が目的でしょう」

 

 尚文の疑問に答えたのはパンドラズ・アクターだ。

 

 なるほど……、確かに、他人の人生を見せて得る()()。他人同士を合わせて得る()()。手段は似ているが、目的が異なっている。

 

 この部屋の真相が見えた。そう思えた瞬間、謎解きの時間は終わりだと言わんばかりに、上映再開のブザーの音が鳴り響く。

 

「それではこれより、ナツキ・スバルの人生。第三部を上映します。お立ちのお客様はお座りください」

 

 その指示に誰も逆らうことなく、各々の席へ着席する。

 

 カズマは再びナツキ・スバルの地獄を見せられるのかと、内心でうんざりした気持ちを抱き。

 尚文はきっとナツキ・スバルなら地獄を乗り越えられるだろうと淡い信頼を持ち。

 ターニャはナツキ・スバルの地獄を見た後で、自分がどのような感情を持つのかを想像しながら。

 アインズは少年ナツキ・スバルの普遍的な人間性と、それに矛盾するような狂気的な善性による行動の結果がどうなるのかを期待して。

 

 それぞれが様々な感情・思惑を抱きながら、スクリーンに映し出される映像を待っていた。

 

 

 ちなみに、この部屋に転移させられた帝国メンバーである先生陣はというと──、

 

(一体これは、どういうことなんだ……?)

 

「ふむ、なるほど、これは……」

 

「……上映会の始まりである!!!」

 

(誰か、誰か私に説明してくれぇぇぇ!!?)

 

 内心で困惑したままのレルゲンを残して、ナツキ・スバルの人生上映会の第三部がスタートする。

 

 

 




ここから先は席に着いたアインズ様とパンドラズ・アクターの会話です。

「ところで、恐怖公がいないようだが?」

「ああ、彼はその……。コンプライア〜ンス!に引っかかるといいますか……」

「つまり、どういうことだ?」

「まあ、その、暗闇で彼やその眷属を見つけてしまうと、上映会どころではなくなるという配慮でございます」

「ああ〜、なるほどな……」

というわけで、先生陣の中で恐怖公はスバル陣営と一緒に除外されました。

4章でのスバル視点外の放送

  • エミリアの試練
  • ラムの告白
  • ガーフィールとエルザのバトル
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