いせかるメンバーにナツキ・スバルの人生上映会を観せる 作:リーグロード
最初はOVAのところも書いてたんですが、バニルが愉悦だなんだと発言してしまったせいで、いきなり悲劇なしの回を上映するとなんかつまらない反応ばかりになってしまって、結果としてボツにしました。
あと、作者はリゼロはアニメ派でウェブ版とアニメどっちで進行しようかと悩んだ結果、書きたい場面だけで書いたらいいじゃんという結果になりました。
他にも理由としては、幼女戦記のターニャの人物像の理解を深める為にアニメを見直したり、各キャラの関係を見直す為にもいせかるを見直したりと時間を取ってしまったからです。
最後に一番の遅れた理由としてはリゼロ世界を知らないキャラにあの世界の事情を教える場面を入れないといけなくて、それを知った際のキャラの反応が想像しにくかったのが面倒だったからです。
リゼロキャラ入れたらもっとスムーズだったろうなと後悔しながらも、入れたら入れたらで面倒になっていると確信する俺氏!!
誰か、他にもナツキ・スバルの人生上映会を書く仲間になってくれ!!!!
長い地獄の始まり
『あい、最後に腕を天に伸ばしてフィニッシュ──ヴィクトリー!』
『ヴィクトリー!!』
映像が始まる前の緊迫した空気を吹き飛ばすぐらいの、スバルと村人達の陽気な声からスタートした。
どうやら、本格的にラジオ体操の文化を村に取り入れさせたようで、スタンプカードまで作成していた。
「スバルの奴も、よくもまあ異世界に行ってまでラジオ体操なんてやるよな」
「そうね。朝はベッドの上でダラ~っと過ごすに限るわ」
(戻ったら2人纏めて精神的に叩き直してやるとするか)
インドア派でぐうたらな性格のカズマとアクアの2人らしい発言だった。
そんな2人の発言を聞き逃さなかったターニャは、学園に戻ったら帝国式の精神矯正訓練を躾けてやろうと決意する。
『屋敷の前に……竜車が止まってる』
『おかえりなさいませ。ただいま、門の前を失礼させていただいております』
「む、あれは!ヴィルヘルム殿ですな」
竜車の前で待機していた老紳士のような男性に、セバスがいち早くが反応した。
まあ、このメンバーの中で唯一の用務員枠で転移したセバスだからこそ、同じ用務員で交流も多かった為に、気が付くのが早かったのだろう。
『えっと……、スバルには悪いんだけど、ここから先は大事なお話しだから──』
「ぷくくくっ!!!」
「わ、笑っちゃいけませんよ──」
「そう言うめぐみんだって口元ニヤけてるわよwww」
子供みたく追い出されてしまったスバルの、情けなくもちょっぴり可哀想な姿にダクネスを除くカズマ達3人は口元を緩めた。否、腹を抱えて笑い転げる5秒前といったところか。
そうして、手持ち無沙汰になったスバルは、竜車の掃除をしているヴィルヘルムに話しかけに行った。
『ヴィルヘルムさんは、ひょっとすると奥さんは世界一可愛いかもしれないとか思って結婚しなかったの?』
『なるほど、あなたの言う通りだ。私も妻が世界一美しいと思っていました。誰もが彼女を見ている気がした。釣り合わないかも、などとは情けない』
「ええ、そうでしょうな。ふふ、何時何処で誰が相手でも、恋バナというものは楽しいものです」
「ほぉ、それは君の経験談かな?」
映像の中で楽しそうに話し合う2人の会話に、セバスは優しい微笑みを浮かべながら頷く。
そんなセバスに、デミウルゴスが茶々を入れるように問いかけた。
無論、その心情はからかい半分であり、ちょっとした嫌味のようなものである。
デミウルゴスのそんな思惑を理解しつつも、セバスは気にした様子もなく「ええ、そうですね」と肯定の言葉を投げる。
あまりにもあっさりと肯定されてしまったことに、デミウルゴスは「やれやれ……」と内心で肩を竦めた。
そうして、使者である猫耳の女の子が会談を終えて戻ってきて、和やかな恋バナは終了。
その際に、スバルはエミリアが王都に行くのを知り、駄々をこねる子供のように騒ぐ。
結果、最初は反対したエミリアだったが、レムとロズワールの後押しもあってスバルの王都への同行は決定した。
そして場面は王都に移り、仲良くエミリアと散策するシーンがほのぼのしく映る。
『いい加減いちゃつくのはその辺にしとけや。客が寄り付かなんだろうが』
「あっ、いかつい顔した果物屋の店主じゃん!」
「そういえば、スバルに色々あって忘れてましたけど、金が入ったら買い物する約束してましたね。私達でも忘れてたのに、よく覚えているものです」
スバルとエミリアが王都を仲良くデートしているシーンに、店主のいかつい顔が映って思わずカズマとめぐみんは声を上げた。
盗品蔵での死闘や、ロズワールの屋敷での事件ですっかり忘れてしまっていたが、当の本人がその約束を忘れずにいた事に驚く。
「スバルは見た目によらず記憶力がよいのだな」
「ですね。私もめぐみんさんが言うように、すっかりあの約束の事なんか忘れていましたし……」
妙なところで感心するターニャの一言に、ヴィーシャもまた同じように感心した呟きをこぼす。
ともあれ、スバル達の王都散策は終わりを告げ、今度はラインハルトへの礼の為に衛兵の詰め所へと足を運ぶ。
『──おや、これは珍しいところでお会いしましたね』
エミリアに話しかけてきたのは、王子あるいは優麗な騎士という言葉が似合う青年で、1組に所属するユリウスだった。
更には、歯が浮きそうな台詞と共に、しれっとエミリアの手を取って、その手の甲にそっと口づけまでする始末。
「うげっ、なんだって別の異世界でもイケメンってのは歯の浮く台詞だけじゃなくて、行動までキザったいんだよ!」
「でも、あのミツツギさんって人よりも、こっちのユリウスって人の方がよっぽど騎士とか、それっぽいわね」
ユリウスのキザっぶりにカズマが顔を顰める。一方で、アクアは騎士か王子様といった印象を受けるユリウスと元の世界のミツルギとを比べて前者に軍配を上げる。
確かに、アクアの言う通り、ユリウスは見た目や立ち振る舞いはイケメンだし、所作だって中々に様になっている。
仮に、ここでカズマが決闘を挑んでスティールで剣を盗み取ったとしても、徒手空拳で返り討ちにしてしまえる程の技前を秘めていそうだ。
「ってか、ミツツギじゃなくて、ミカルゲさんだろ?」
「あれ?そうだっけ?」
残念なことに、存在感に関してもミツルギさんは敗北しているようだ。
それと、ミカルゲは人の名前ではなくポケモンの名前だ。
そして、カズマがムカつくということは、似た者同士であるスバルもムカつくということで、初対面ながら既にお前のことが嫌いだオーラを放っている。
それから、情けないスバルの反抗を涼しい顔で受け流すユリウスに、2人の格の差がハッキリと浮き彫りにされた。
それを見ていたエミリアは呆れながらも、当初の目的であったラインハルトとの取り次ぎの為にスバルとは別行動で詰め所に入っていった。
『マジ俺かっこ悪ぃ……なにやってんだよ。なにもしてねぇだけだけど』
そうして詰め所前でエミリアを待ちながら自己嫌悪に苛まれていると、トラブルホイホイのスバルの視界に、異世界テンプレみたく路地裏へ連れ去らわれるお嬢様らしき女の子の後ろ姿を発見する。
「これ、またスバルのヒロイン候補が増えるってパターンか……?」
「だとすると、また死に戻り案件な厄介事が押し寄せてきそうだな」
カズマの予想に、尚文がげんなりして返す。
これまで、エミリアにはエルザ、レムにはウルガルムの群れと、どちらもヒロインを救う為に凶悪な敵が立ち塞がった。今回の女の子もスバルが救わねばならないという事になれば、それはまたしても死に戻り案件になるだろう。
そんな暗い未来を想像し、その場にいる一同が揃って溜息をつく。
しかし、そんな心配は杞憂だった。路地裏に引っ張り込んだのはトンチンカンの3人組で、ラインハルトの名前を利用するのと、たまたま通り掛かったロム爺によって、あっさりと退散に追い込む事に成功する。
てっきり、これから目を背けたくなるような悲惨な展開が待ち受けているかもと身構えていたのが馬鹿みたいに感じる程に、呆気なく終わったイベントの肩透かし具合にため息を吐く。
ただ何人かは、エミリアが赤いドレスの高慢さを隠そうともしないお嬢様に敵意を──いや、警戒心を見せていることに気が付いた。
その理由が判明するのは翌日の事だった。
エミリアの助けになりたいスバルと、スバルに無理して欲しくないエミリアとのすれ違いや意見のぶつかり合いを映す中、それを見ているターニャは心の中で盛大にため息を吐いた。
(これはいかんな。互いが互いを思っているからこそ、相手を理解したいではなく、相手に理解して欲しいという感情が前に出過ぎている。これでは、何を言ったところで暖簾に腕押しだな。そして、この部屋に我々を転移させた者がバニル先生やデミウルゴス君の言う通りの存在だとするならば、これから先の展開は容易に想像が出来るものだ……)
この予想が正鵠を射ているならば、2人の関係は悪化する一方だろう。
そうして、一応の形ばかりの納得を見せるスバルだが、エミリアが王城へ向かうと、脳裏にエルザの姿がチラつき、居ても立ってもいられずにエミリアの後を追いかけた。
「相手を慮るあまりに大切なことを見落としてしまっているな」
「どんな事情であれ、約束を──信用や信頼を裏切られる辛さは、スバル自身が屋敷でも味わったってのにな」
アインズの言葉に、尚文が相手がした嫌なことを今度は自分が別の相手に無意識にしていることに頭を痛める。
更に、幸か不幸かエミリアの後を追う術を持たずに途方に暮れているスバルの前に、あの赤いドレスのお嬢様であるプリシラが現れて王城への橋渡し役を担ってくれた。
お陰で、色々と怪しまれたが王城へは入ることが出来た。
「なるほど、あのプリシラとかいう女もエミリアと同じ王選候補者だったのか。だから、プリシラがスバルと一緒にいたのを警戒していたのだな」
そんな存在と一緒に王城へ入る愚かさに、ターニャは呆れや苛立ちを感じつつも、流れる映像を見続ける。
そして、案の定というべきか、案内された大広間のような場所でスバルはエミリアとバッタリと出くわす事になる。
『──スバル?』
その声に含まれている感情を察せない愚か者はこの部屋にいな──
「そりゃ驚いちゃうわよね。家で待ってる子がこんな場所に居たらビックリするもの」
「でもでも、約束を破っちゃメェーなの!」
アホの子駄女神アクアとちびっこフィーロは例外であった。いや、若干フィーロの方が察せているので、アクアの方が馬鹿なのかもしれない。
ともあれ、エミリアとスバルは感動の再会を果たさず、互いに気まずい雰囲気で目を合わせている。
『これより、賢人会の方々が入場されます』
「賢人会……名前や雰囲気から察するに、あの世界の元老院的な立ち位置にあたる機関の者達だろう」
(元老院って確か……、ローマの王様を政治的に助ける助言とかをくれる人達の事だよな?)
ターニャの予想を聞いて、アインズは昔にギルメンに聞いた海外の歴史の内容を思い出す。
その間にも、映像は流れていき、王選候補者であるエミリアが前に出る。その横にもプリシラを含めた3人の美女が立ち並ぶ。
「エミリアとプリシラの隣に立つってことは、あの2人も王選候補者なのか?てっきり、王様っていうから男の方が多いと思ってたけど、見事に女ばっかなんだな」
「そうだな。だが、俺を召喚した国は王よりも女王の方が権力を握っていたぞ。まあ、王の奴がクズだったがな……」
カズマは立ち並ぶ王選候補者が軒並み女性だったことに驚くが、尚文はそんなカズマに苦虫を噛み潰したような顔で、召喚された国の事を思い出して答える。
『──やっぱり、君がきたね、スバル』
スバルもまた騎士が立ち並ぶ場所に同席すると、目の前に立つ人物が探していたラインハルトだった。
更に、横から前に屋敷に来た猫耳の使者も割り込んできた。しかも、どう見ても女子にしか見えない容姿だというのに、ラインハルトから彼と紹介されて面食らう。
そして始まる議事の進行だが、その途中で関西弁で喋る女性によって阻まれる。どうも形式ばった進行がまどろっこしくて我慢出来なかったらしい。
そんな彼女の発言を肯定するように、隣に立つ同じ候補者の貴族らしい女性が道理であると、堂々たる立ち振る舞いで肯定の意を示す。
『おおよその想像はついているが、な』
『ほぅ、なるほど。さすがはカルステン家の当主。すでにこの召集の意味がわかっておりましたか』
『ああ。──酒宴だろう? 我々はいずれ競い合う身であるとはいえ、今はまだ互いに知らないことが多すぎる。卓を囲み、杯を傾け合い、腹を割って話せば自ずとその人柄も知れようと……』
『いや、違いますが』
「は、恥ずかしい……」
あれだけ威風堂々と衆目の前で格好つけたのに、まったく的外れな事を言ったクルシュにカズマは共感性羞恥心を感じて顔を覆って悶える。
そんなカズマと違い、発言した当の本人は顔色一つ変えることなく、淡々とした態度で発言を撤回する。
「ふははは、良い悪感情だぞ小僧!しかし、あの女め、あのような状況でありながら羞恥心を一切見せぬとは……。映像越し故に見通せぬが、余程面の皮が厚いのか、それとも、高潔過ぎるあまりにそういった感情を排しているのか。やれやれ、そこの最近同じクラスのコキュートスに襲われる妄想で筋トレの量を増やしてしまった結果、腹筋がこの世界に来るよりも更に割れてしまったクルセイダーの貴族の娘と違って実に面白くない」
「にゃ、にゃ、にゃにを言っている、貴様はぁぁぁ!!!」
急に恥ずかしい秘密を暴露されたダクネスが、耳まで真っ赤に染めて今にも飛び掛からん勢いで立ち上がる。
気持ちは分かるが、この部屋で暴れられたら何が起こるか分からないので、カズマとめぐみんはダクネスを宥めて座らせた。
「娘ヨ。失敬ナ、アインズ様ヨリ仲良クシロト命ジラレテイル以上ハ、クラスメイトヲ襲ウヨウナ真似ハセン!」
「コキュートス、多分だけど、彼女の想像している襲われるはまた別の意味だと思うよ。恐らくだが──」
「やめろ!事細かに間違いを訂正しないでくれ!!」
「……ンン?」
コキュートスの悪意のない言葉に、デミウルゴスがこの先どうなるか分かっていながら訂正の説明を入れると、羞恥心で顔を覆いながらダクネスが叫ぶ。
「少佐、あれは……」
「見るな、セレブリャコーフ中尉。見てはならん」
「はっ、はい……」
そんなくだらないやり取りの間に、映像は流れ続けており、一度中断されて止まっていた説明はエミリアが害されてブチ切れそうになったスバルを止める為に、アルが道化を演じた事によって再開される。
『石板に刻まれた預言はこうありました。『ルグニカの盟約途切れし時、新たな竜の担い手が盟約の維持と国を導く』と』
「預言とはまた曖昧な。そんなものに国の運営方針を任せるとは、この国の連中は正気なのか?」
「しかし、竜はどこの世界でも上位存在。そして、その預言が刻まれた石版が国を建国した時と同じ時期に作られたのならば、その竜歴石と竜は大きな繋がりがあるのだろうから。あながちただの預言を妄言として切り捨てぬ方が賢明かもしれんぞ?」
アインズの考えに、ターニャも魔法や魔獣のいる異世界なのだから一理あると賛同する。
そのまま、議会は進んでいき、進行役である団長マーコスがラインハルトを前に呼び寄せる。
『竜の巫女、王の候補者──最後の五人目、見つかりましてございます』
「最後の5人目か。この面々を見る限り、絶対に普通の奴じゃなさそうだよな」
「まあ、普通の奴が国を背負うなんざ無理だろうからな。多少は尖っていても、適正のある奴を選んだ方がいいだろ」
カズマの予想に、尚文がクズと女王を比較しながら思い出し、吐き捨てるように言う。
そして、最後の王選候補者なる人物が入ってくると、何人かが驚いたように声を上げる。
『自分が王として仰ぐ方──名を、フェルト様と申します』
いつもの彼女と違う煌びやかなドレスを纏ったフェルトの登場に困惑する者と納得する者の2パターンに別れた。
「ええぇ!?フェルトもエミリアと同じ王選候補者だったのか!?」
「まあ、1組でのラインハルトのフェルトの態度を見ていたら予想はついたがな」
「そういえば、前にみにくいアヒルの子を演劇の題材にした時、妙にラインハルトの奴が気に入ってたけど、こういう理由だったか」
カズマの驚きに、ターニャは納得して頷き、尚文も前にラインハルトが演劇のテーマを決めた際に意味深な事をフェルトに呟いていた理由が知れて納得する。
「そっか、私と妙に馬が合うのも盗賊だって事もそうだけど、身分を隠している雰囲気があったからか」
「え?クリスもフェルトと同じで身分を隠してんの?まさか、実はクリスって王族だったりしちゃうわけ!?」
「え!?あっ、違!?そうじゃなくて、ちょっと家の事情とかそういうので、決して王族とかじゃないですからね!!」
不意に漏らした言葉がアクアの耳に入ってしまい、慌てふためいたように誤魔化すクリス。
まあ、クリスの場合は確かに王族ではないが、それよりも更に上の身分であるのだが、今はそんな事は関係ない。
フェルトの登場とラインハルトへの暴行(失敗)により、広間が騒然となるが、流石は国を任される重鎮たち。
特に慌てふためいた様子もなく、フェルトの暴挙も流れのひとつとばかりに平静を保っていた。
そして、ラインハルトがあの徽章をフェルトに握らせると、確かに徽章の宝石部分が発光し、彼女が巫女であると同時に、王選候補者の1人であることを認めた。
だが、それと周りの人間が認めるのは別問題のようだ。
『こんなことは言いたくないが、竜歴石の示した状況に沿っているとはいえ、少々人選に問題があるのではないだろうか』
どうにも、騎士団と文官は馬が合わない様子だった。広間に不穏な空気が流れる中、それを見ていたアインズがポツリと声を漏らす。
「どこの世界でもこういった内部反発は起こるものだな」
「ええ、まったく。我らナザリックと比べて、下等な人間共のなんと愚かな事か」
アインズの元の世界の王国を思い出しての発言をアルベドが全方位に喧嘩を売るような発言をして返答する。
特に、ターニャは気にはしていないが、帝国軍人──それもレルゲン先生辺りは不快感を顔に出していた。ただ、ルーデルドルフ校長とゼートゥーア副校長はアルベドの発言に対して涼しい顔で聞き流していた。
そして映像の中で事態は大きく動き出す。フェルトの王にならないという反抗的な態度に業を煮やした者の一部が大きく批判の声を上げると、それに釣られて賢人会の1人がエミリアの容姿や種族にまでケチをつけ始めた。
ここに至るまでのエミリアへの迫害染みた言動の数々に、ついにスバルがブチ切れた。
『ふざけてんじゃねぇ──!!』
この国の上層部が集まる場所で、何の力も権威も持ち合わせていない小僧が口を挟む。それがどれだけ命知らずなことか、それはスバルも分かっているのだろう。
周りからの敵意の籠った視線や状況に、声や体を震わせながらも豪胆な姿勢を崩さないスバルに、この部屋にいる者の心情が大きく別れた。
エミリアの為に自らを犠牲にする覚悟で立ち向かうスバルに、カズマらは大いに共感と好感を抱く。
逆に、この衆目の前で感情のみで動き、助けるつもりのエミリアへの心象を大きく削ぐような発言するスバルに、ターニャらは愚か者を見る目を向けていた。
残るアインズらと尚文らは中立とも言える心情であったが、アインズらは無関心に近く、尚文らは若干であるがカズマらと同じ気持ちであった。
『いーぃだろう。力なくばなにも通すことができない。その意味を、身を持って知ってみるといい。来世ではそれを活かせることを願うとも』
スバルの啖呵にロズワールが魔獣の群れにも使用しなかった火の魔法の最上級呪文を放った。
まさか、本当にスバルを殺すつもりなのかとカズマ達は驚きで言葉が出なかった。
『力がなければなにも通すことができない。なるほど、いい言葉だね。ああ、まったくもってその通りだと、ボクも肯定するところだよ』
だがそれはスバルに届くことはなく、直前で相殺されて白い蒸気だけが残った。
ロズワールの最上級魔法を相殺出来る力を持つ者など、この場では限られている。
「おお!ナイスだパック!!!」
「本当よ!もうヒヤヒヤしたんだから」
カズマやアクアがパックに歓喜の声を上げる中、ターニャは魔法を放ったロズワールをジッと見つめて目を細める。
そんなターニャにゼートゥーア副校長が気が付き、静かに問い掛ける。
「ふむ、デグレチャフ少佐は今のをどう判断する」
「はっ!ロズワール先生のあの場での行動は些か短慮に過ぎたと愚考します。ですが、少々いつものロズワール先生らしくはなく。何か別の狙いがあるのでは考慮します」
敬礼と共に自身の考えを述べるターニャに、ゼートゥーア副校長は満足そうに頷く。
そして、ターニャの意見は的を射ていたようで、パックの存在──というより、正体に気が付いた周囲の騎士団や文官の中にもちらほらと恐怖する者がおり、賢人会の面々も多少の動揺が走っていた。
そんな状況下の中で、今の一連のやり取りの真意に気が付く者が映像の中に最低でも1人。部屋の中では数人が理解したように厳しい目をする者と感心した目を向ける者で別れた。
「なるほど、どうやら今のはロズワール先生とパックの茶番劇だったという訳か……」
「だとすると、ロズワール先生がスバルの姿を確認して退席させずにいたのは……」
「全てこうなると織り込み済みだったという訳か。感心はせんが上手い手だな。既に多くの者がエミリアを半魔と軽々に見下すことは出来なくなった」
映像に映る2人の今の魔法戦の真意に感づいたアインズ、尚文、ターニャらは、ロズワールのしたたかさに舌を巻く。
一方で、そんな彼らの会話と映像で2人の演技を見抜いたマイクロトフなる老人の説明によって理解したカズマは納得出来ないイライラがふつふつと湧いていた。
「んだよそれ!その為だけにスバルを殺しかけたってのかよ。しかも、エミリアまで巻き込んでのこれとか、趣味が悪いよなロズワール先生は!!」
「そうよね!私も悪魔やアンデッドならともかく、半魔だからって嫌うあのお爺ちゃん達にはムカつくけど!さっきのロズワール先生のやり方にも納得できないわ!」
誰にともなく愚痴るカズマとそれに同調して憤慨するアクア。2人が部屋中の人間に聞こえる声量で言ったのは、それだけスバルやエミリアを想っての事だろう。
それが分かるからこそ、カズマやアクアのその物言いにめぐみんやダクネスも止めるような真似はしなかった。
『私の要求はたったひとつだけよ。──ただ、公平であることを』
ロズワールとパックの画策を踏み台に、エミリアもまた衆目に王としての風格を知らしめる。その有り様に半魔と侮辱し軽視していた賢人会のボルドーもまた非礼を詫びて謝罪を行った。
これでようやく、エミリアは真に王選候補者としてスタート地点に立つことが出来た。
ならばあとは──、
『して、そちらの御仁はどういった立場になるのですかな?』
『うぇげっ』
後に彼女の騎士となるスバルのみが、そのスタートラインにすら並び立てていない事を証明する悲劇のショーの幕開けにして、長い長い道のりを経ての喜劇へと辿り着くまでの地獄の始まりだった。
そろそろルプスレギナのアンケートを締め切って、飛ばした後の能力制限のアンケート入れます。
今のところ、白鯨&怠惰討伐で決定しそうですね。
ちゃんと書けるかな?(心配)
4章でのスバル視点外の放送
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エミリアの試練
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ラムの告白
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ガーフィールとエルザのバトル