いせかるメンバーにナツキ・スバルの人生上映会を観せる   作:リーグロード

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同盟成立

 

「クルシュが白鯨の討伐を目論んでいる?」

 

「そのような情報、今までのスバルさんの死に戻りのループの中にあったでしょうか?」

 

 スバルが口にした言葉の内容に、先程まで一緒になってハラハラしていたカズマとヴィーシャが疑問を浮かべる。

 2人が思い返した記憶の中に、クルシュが白鯨の討伐を目論んでいるなんて情報は欠片もなかったように思える。

 

「セレブリャコーフ中尉、貴君は今まで何を見ていたのかね?」

 

「まったく、確かに明言こそされちゃいないが、そのヒントとなる情報はそこかしこに散りばめられていたぞ」

 

「「「えっ!?」」」

 

 しかし、そんな2人の疑問はターニャと尚文の呆れを含んだ声に一蹴される。

 あとなんか驚いた人数が1人多いような……。

 

「ねえ、さっきアインズもえっ!?って驚いてなかった?」

 

「いや、気のせいだろ。頭のいいアインズが俺らみたいに、今のあの状況が理解出来てないわけないだろ」

 

(すまん、カズマ。俺もクルシュが白鯨の討伐を目論んでいたなんて事実、全然理解してないんだよな)

 

 どうやら1人増えた声の持ち主はアインズだったようで、アクアはその声をちゃんと聞こえていたみたいだが、カズマによって気のせいだとされてしまった。

 そして、当の本人であるアインズはカズマの言葉に耳が痛いとばかりに、内心でトホホと涙を流すのであった。

 

『ひとつ、考えを問い質そう、ナツキ・スバル。その突飛な発想はどこから出てきた?なぜ、当家がそのようなことを目論んでいるのだと、判断する?』

 

 戯言では許さないといった思いが透けて見える気すらするクルシュの言葉はアインズ、カズマ、ヴィーシャの3人の思いですらあった。

 それに対して、スバルはレムの気合いの一発を入れて貰ってから、今まで自身が見て聞いてきた情報を纏めてから語りだす。

 

 クルシュが鉄製の武器を買い集めている。これは最初のループでレムの後を追いかけようとした際に得た情報だ。

 次にスバルが口にしたのは『さる商人が口を滑らせた』の一言だ。これは前回の交渉時の前にヴィルヘルムとラッセルが交わした会話の内容からくるものだが、まさか別の時間軸の自分達の会話とは露ほども思っていないラッセルは正直に自分ではないとクルシュに手と首を振って否定のポーズを見せる。

 

「ほぉ~!なるほどな、確かに尚文が言った通り、ヒントはあったな!」

 

「うぅ……、それを見落としてただなんて、帝国軍人として後で少佐に怒られちゃいます……」

 

「当然だ。帝国軍人たるもの、戦況を見極める目は大事なこと。貴官はここ最近の学園生活で色々と腑抜けているようだったからな。この部屋から脱出した後に特別訓練を覚悟しておけ!ついでに、お前たちもだからな!!」

 

「「「ええっ!?」」」

 

 ついでに連帯責任でヴァイスらもターニャ主導の特別訓練なるものに強制参加させられることになった。(グランツは白目を剝いている)

 

『改めて言う。エミリアとクルシュの同盟に関して、エミリア陣営から差し出せるのはエリオール大森林の魔鉱石採掘権の分譲と、白鯨出現の時間と場所の情報。つまるところ、長いこと世界を騒がしてきた魔獣討伐──その栄誉だ!』

 

「栄誉か……。見栄が好きな貴族なら釣れそうだが、クルシュは違うだろうからな」

 

「勇者ともなれば、異世界で貴族と渡り合うような出来事にも困らなさそうだからな。その発言は実体験か?」

 

 スバルのある種の挑発ともいえる誘い文句に、しかしクルシュは乗らないだろうと尚文は思う。

 そんな尚文の言葉に反応したのはアインズで、純粋な好奇心に近い疑問から皮肉に捉えられない声色で伺う。

 

「──まあ、スバルと違って交渉なんてお上品なもんじゃなくて、物理的な意味での渡り合いだがな!!」

 

「そ、そうか……」

 

 ギラついた笑みを浮かべながらの返答にアインズは地雷を踏んだかと若干引き気味になる。

 

『俺の言葉が的外れで、全然意に沿わないってんならばっさり切り捨ててくれ。もし違ってんなら、純粋に白鯨の出現情報だけの取引きにしてもらってもかまわない。けど、もしもあんたの狙いと俺の望みがかち合うなら、白鯨を、討伐しよう。──ひと狩りいこうぜ』

 

 差し出すスバルの手は震えてはいない。だが、これまでのスバルが辿ってきた道中を見てきた者達の目には、その手が不安と恐怖を必死に抑え込んでいるように見えた。

 

「ひと狩りいこうぜ……って、ゲームじゃねえんだから。まあ、変に気合い入れた誘い文句よりかはマシだけど。……上手くいく筈だよな」

 

 最初はスバルの口にした言葉にツッコミを入れながらも、ぎゅっと握りしめた手を胸に当て、カズマは不安を拭うように小さくそう呟く。

 

『ひとつ、問いを発そう。卿が──白鯨の出る時間と場所を知っているのは、確実か?』

 

「そう、ああそうだ。そのように疑問に思うのは当然だろう」

 

「相手の噓を判断する事の出来る加護、交渉事においては無類の強さを誇れるそれも、今のスバルを相手には通用しない」

 

『ああ、本当だ。白鯨の出る時間と場所は俺が保障する。命、懸けてもいいぜ』

 

 クルシュの言葉にアインズは抑揚をつけたように頷くと、ターニャが獰猛な笑みを零しながら今のスバルにその加護は敵ではないと言わんばかりに口にする。

 事実、スバルもその問いにブラックジョークを挟みながら、一切臆することなく肯定してみせた。

 

『──いくらか疑問点はあるが、こちらの思惑を見抜いたのは見事、というべきか』

 

『それじゃ……』

 

『疑惑はある、疑念はある。腑に落ちない点も多く、即座に頷くには難しい。だが、この状況を作った卿の意気と、この目を信じることとしよう』

 

 その2人の交わした握手が映った瞬間、部屋に大歓声が響き渡る。

 

「いよっしゃ──!!!」

 

「やりましたね、スバル!!!」

 

「まさか、貴族を相手にここまで堂々と同盟を結ばせられるとは、感服したぞ!」

 

「これはあれね!祝杯ってやつが必要よ!!」

 

 スバルの成し遂げた偉業ともいえる活躍に、カズマらは拳を振り上げて大喜びしている。

 

「少佐!スバルさんがやりましたよ!!」

 

「ここに至るまで随分と情けない姿を見せられたものだ。それに、交渉としてはギリギリ及第点といったところだが……。ふっ、ナツキ・スバル、見直したぞ!」

 

 ヴィーシャもまた興奮した様子でターニャに抱きつくが、対する彼女はあまり感情こそ表に出してはいなかったが、その言葉からスバルへの評価を大きく上げたことが伺える。

 そして、帝国軍人の中でスバルの活躍に一喜一憂したのは彼女らだけではない。

 

「おい!」

 

「ああ!」

 

「だな!」

 

「スバルの奴、やりましたね!!!」

 

 短いながらも、その言葉からは友人が大事を成し遂げた事に対する喜びと感動がひしひしと伝わってくる。

 いや、彼らだけではない、先生役となっているレルゲンなどは啞然とした様子で惚けており、校長と副校長であるルーデルドルフとゼートゥーアは互いに拳をぶつけ合って無言の歓喜を交わしていた。

 

「やりましたね!尚文様!!」

 

「ああ、正直言ってこの1回で成功するかは半々程度で見てたが、随分とまあうまい着地点に誘導できたもんだ」

 

「あの黒髪のお兄ちゃんすごい!まるでご主人様みたい!」

 

 スバルの交渉成立を尚文らは和気藹々と祝っていた。

 

「ヌウ、前回ノ交渉デハ、アレ程ニ決裂シテイタ相手ヲ前ニコノ成果。ナツキ・スバル、弱者ナレドモ侮レヌ男ダ!イヤ、コレコソガ、アインズ様が仰ッテイタ失敗カラ得タ経験トイウ学ビノ成果トイウコトナノカ!!」

 

「そうだな。コキュートスの言う通り、ナツキ・スバルの王都での行動、最初は無茶で無謀なものばかりだった。死に戻りという強力なスキルがあるにも関わらず、いや、あったからこその慢心もあったのだろう」

 

 コキュートスの言葉にアインズが良い機会だとばかりにスバルの行動から、かつてのリザードマンの村を襲撃した際の意味を第三者の視点から、あの時の教えを繰り返す。

 

「だが、3度に渡る死という敗北と失敗からナツキ・スバルは経験し、そして学んだ。その結果が今見ているこの映像だ」

 

 アインズの真紅の瞳が守護者並びにプレアデス達を見渡す。

 その誰もがアインズの言葉をただ黙って静かに、されど真剣な顔つきで一言一句聞き逃さまいとしていた。

 

「……つまり、私が言いたいのは、どのような無様を晒して敗北や失敗を積み重ねようとも、そこから何を得たかで未来は変わるということだ。ただ怠惰に自らの失態を嘆く無能に価値はなく、その失態から得た学びで何をなせるかがその者の価値になるのではないかと私は思うのだ」

 

 そこでアインズが言葉を切ると、最初に声を掛けてきたのは意外にも守護者ではなく、学友たるターニャだった。

 

「いや、実に素晴らしい話の内容だった。失敗から得る学び、か。改めてナツキ・スバルのこれまでを振り返ってみれば、確かにその成果が伺えるというもの。アインズ君の着眼点には感服するよ、まったく……」

 

 軽くパチパチと拍手を送ってくるターニャにアインズは感謝の言葉変わりに手を上げてその言葉を受け取った。

 

「さて、では改めて鑑賞を続けようか。我らが学友たるナツキ・スバルのこれからの戦いの、そしてこれまで敗北し続けてきた戦いの決着を!!」

 

 その言葉に異を唱える者はおらず、皆が黙ってアインズの言葉に従うようにその視線をスクリーンに再び向ける。

 

『──魔法器によると、白鯨が出るのは今から約三十一時間後。場所は……フリューゲルの大樹、その近辺だ』

 

『三十一時間……!』

 

『フリューゲルの大樹』

 

「約三十一時間後か……。やっぱし、アインズが言う通り、失敗……っていうか、白鯨との遭遇っていう敗北イベントでの経験を生かしてんだな。俺なら、襲われた時間帯なんて死んだショックで忘れてるだろうしな」

 

「そこも含めると、やはりスバルの精神力は異常な程に高いな。あの状況で携帯に表示された時間を見逃さず、それを次のループで交渉に組み込む。並みの人間では不可能に近いぞ」

 

 スバルのした事を改めて評価するアインズとカズマ。

 あの襲撃で時間を確認する。そして、それを記憶し続けておく。そのどちらも、常人ならいったい何人が達成出来ることか?

 それを成し遂げたスバルは、紛れもなく傑物に入る人物であると評価を下す。

 

『──スバル殿、感謝を』

 

 スバルに対して、お手本のような綺麗な礼を取るヴィルヘルム。

 その声と態度から、お世辞ではなく本心からくる感謝の礼であることは誰の目にも明らかだった。

 

「ヴィルヘルム殿、なるほど。貴方がナツキ殿に対する恩義、これがその始まりなのですね」

 

 思い出す互いの恋バナの合間合間で語られる恩人たるナツキ・スバルへの感謝の言葉。この先の白鯨討伐でその感謝の念は更に強まるだろうと思いながら、セバスはその仏頂面の顔をほんの僅かばかり歪ませる。

 

 




これにて交渉回はお終い!頭いいキャラが観ている交渉回って考えるのがムズってなる!!
今回で下がりまくっていたスバル君の株が急上昇!白鯨討伐戦で更にどれだけ上げるかは考え中デス!!!

4章でのスバル視点外の放送

  • エミリアの試練
  • ラムの告白
  • ガーフィールとエルザのバトル
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