いせかるメンバーにナツキ・スバルの人生上映会を観せる   作:リーグロード

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ツンデレ屋さん

 ペテルギウスの疑似的な不死性を前に軽く驚愕と絶望に打ちのめされたが、それでもなおヴィルヘルムの言葉を受けて前に進もうとするスバルを目にし、まだ微かに希望はあるのだと信じて未来を知らないでいるカズマ達は鑑賞を続けている。

 

『スバルきゅん、早めにユリウスと仲直りした方がいいよ。ホント……』

 

『早めも何も、やり合ったことは全部水に流した。見てたろ……』

 

『とりあえずでしょ。本心と無意識に反発が残ってる。ユリウスは頼りにしていいよ。とっつきにくいし、分かりにくいのは認めるけどね』

 

「仲直りとか、ユリウスのあのキザったい性格が直らねえ限り無理だろ……」

 

「そうでもないでしょ。今だって学園で嫌味言ったりしてるけど、本心じゃちゃんとスバルもユリウスの事は毛嫌いしてないみたいだし。まあ、あれね、ツンデレってやつよ!」

 

 フェリスの仲直りしろという発言にカズマが食いつくが、アクアがそれを否定し、今の学園のスバルはユリウスを嫌い切れていないと指摘する。

 

 スバルもフェリスの言葉に嫌そうな顔をするが、それが正論だとちゃんと理解しているのだろう。

 速度を上げてユリウスの地竜に並走すると、だらだらと煮え切らない態度で仲直りの言葉を口にしようとすると、一瞬にして周りにいた者らが消えていた。

 

「これは!魔女教の仕業か!?」

 

「だとすると、何をされた?一瞬にして周囲の人間が消えてなくなるなど、ホラー映画でもテンプレ過ぎる真似なぞ、魔法でもそう容易くは……いや、魔法ではないのだとしたら」

 

 突然起こった事態に混乱するのはスバルだけではない。ターニャですら驚き戸惑う中、アインズは即座にこの現象に対して心当たりでもあるのか、周りの者達と比べて冷静な態度で映像を見続けている。

 

『なんだ?この強烈な臭い』

 

 急に人が消えて焦ったスバルはパトラッシュから降りると、辺りに漂う強烈な臭いの発生源と思わしき、道端に生えていた青い花に気が付く。

 数秒その花に注意を引かれていると、いきなり地面から花の根っこと思わしき蔦が飛び出してきて、スバルの手と首に巻き付いて拘束する。

 

「これってドルイドが習得する植物の絡みつき(トワイン・プラント)じゃない?」

 

「う、う~ん、でもなんか違うような?そ、そりゃ、異世界だし、僕の魔法と似たようなものって可能性もあるけれど、なんか不自然な気がするんだよ、お姉ちゃん」

 

「そうか、マーレが言うならばそうなのだろうな。では、やはり……」

 

 アウラがスバルに向かって伸びる蔦を見て、それがドルイドが習得する植物を成長させて敵を拘束する魔法に似ていると口にする。

 しかし、そのアウラの言葉にドルイドの職業を修めているマーレがオドオドとしながら、その魔法とは違うものだと否定する。

 そんなマーレの不自然という言葉に引っ掛かりを覚えたアインズは、自身の中にあった疑念が確信へと変わっていくのを感じ、ゆっくりと顔を上げるとスバルを拘束している蔦を見る。

 

『つまりこれは、幻影。全部まやかしだ!』

 

 事実、スバルに憑いていた赤い精霊が青い花を燃やしたかと思えば、蔦は一瞬でボロボロになって拘束は外れた。

 そうして拘束が急に解けた反動で尻餅をついたスバルを心配するように、いなくなっていた筈のユリウスが隣に立って声を掛けてきた。

 

「ほぉ。アインズ君は気が付いていたようだな」

 

「まあ、魔法に関してはかなりの知識があるのでな。少々この事態に当てはまる魔法の見当がつかなかったので、消去法で答えを導けただけさ。それでいえば、あの状況で混乱することなく自力で正解に至ったスバルの方が流石だろう」

 

 アインズはターニャの賞賛に軽く謙遜しながらも、スバルの方に目を向けて評価する。

 映像を見れば立っているのはスバルとユリウスのみで、残りの者達はまだ全員が幻の中に捕らえられているようだった。

 

「もし今ここで魔女教に襲われでもしたら、幻影に捕らわれている者達を守りながら戦わねばならなくなる。はっきり言って状況はかなり不利だと言わざるを得んな」

 

「ですね。しかし疑問なのは何故まだ攻撃がこないのか?もし今の幻影が魔女教のものであるとすれば、現状は絶好の攻撃チャンス。だというのに、スバルが起き上がってもまだ攻撃が始まらないのは一体?」

 

 冷静に現状を見た結果、アインズの言う通り、戦える人数は2人、しかもそのうちの1人は戦力には値せず、周囲の人や馬車を守りながら戦うというのはかなりの不利だ。

 そんなアインズの言葉に同意しながら、デミウルゴスも魔女教の意図を探る。何故、魔女教はスバルが幻影から解放されたというのに攻撃を開始しない? その答えを知る為にアインズは映像の先を見るが、魔女教が現れるよりも先にユリウスが幻惑を破る策を講じた。

 

『今から全員に幻惑の破り方を伝える。──では、インとネス。お願いする』

 

 ユリウスの掌に現れた6つの微精霊。正確には準精霊らしいが、黒と白の準精霊がにわかに光を強め始め、強烈な光を発したかと思えば、急に様々な人の声が重なって聞こえ始めた。

 

「っぐ!うるさいな!!」

 

「これは、伝言(メッセージ)と似たような魔法か?」

 

 部屋の中に音量がバグったように聞こえてくる人の声に皆が耳を塞いでいるなか、アインズだけは興味深そうにユリウスの準精霊が使用したであろうネクトという魔法に興味を引かれていた。

 

『全員を引き戻すのが優先だ』

 

 混じり合う人の声の中からユリウスの声をなんとか拾い上げて聞き取る。

 その直後だった、急に現れた黒とは違う白いローブの何者かが、ネクトによってうずくまるスバルを誘拐せんと飛び掛かってきた。

 だが、その襲撃は駆けつけたヴィルヘルムによって防がれ、更にフェリスとリカードに囲まれると、諦めたのかフードを取って正体を明かす。

 

『殺しなさい。辱しめは受けないわ』

 

「ラム!なんでラムがこんな事を!?」

 

「ふむ、あの覚悟の決まった目。何やら話の食い違いがありそうだな」

 

 白いローブの何者かの正体がラムであった事にカズマが驚く。更にフードを脱いで見せたラムの瞳から見える覚悟にターニャは疑問を浮かべる。

 事実、ラムの行動の原因はスバルが何の目的で他の陣営を引き連れて領地に足を踏み入れたか知らなかったことに起因する。

 

『親書だ!その為に手紙を書いた筈だ。屋敷に届いてないか?』

 

『確かに、王都から手紙は届いた。でも、白紙の親書だなんて、ずいぶんと面白い趣向だこと』

 

『白紙の親書?』

 

「白紙?どういうことだ?」

 

「手紙を書いたであろう時のシーンは映し出されてはいなかったが、こんな事態でそんな悪ふざけやヘマをするとは思えんが……」

 

 ラムの言葉に戸惑うターニャとアインズ。映像内では時間もないことから、その事に深く考えずに手違いか何かだとスルーされているが、ただ映像を鑑賞しているだけの皆にはそれを考えるだけの時間は十分にあった。

 

「もしかして、これも魔女教の仕業とかなのか?親書をすり替える事で混乱を起こすとか?」

 

「いや、今までの魔女教を見るからにそんな生温い連中とは思えん。そもそも、親書を送ったのがバレているのならば、奇襲が成功するはずがない」

 

「だとしても、手違いだなんてありますかね?手紙を送った使者の人が渡された手紙と白紙の手紙を間違って届けるなんて、あんまり考えられないのですが?」

 

「でも、実際に白紙の親書がラムに届いてるってことはそういうことなんじゃないの?」

 

 カズマ達があ~だこ~だと意見を出し合うが、そのどれもが今ある情報では決定打に欠けたものばかり。

 そんな中でターニャとデミウルゴス、そしてアルベドだけは、この白紙の親書という事態を重く見ていた。

 

「「…………」」

 

 この事態の最悪なパターンに至ったターニャとアルベドは口を閉ざしてしまう。

 

「アインズ様、これはもしや……」

 

「まあ、そういうこともあるだろうな」

 

 デミウルゴスの視線を受けたアインズがコクリと頷く。

 勿論、デミウルゴスが何を言いたいのかなんてサッパリ分かっていないし、白紙の親書の件もアインズなりに考えた結果、スバルが慌てて渡す紙を間違えてしまったのではないかと考えている。

 

「おお、では、やはりこれは……」

 

「うむ、そういうことだろう。状況が状況だからな」(ケアレスミスぐらいあるだろう)

 

 そういう意味でアインズは、デミウルゴスに対して人差し指を口に当てるジェスチャーをする。

 

「なるほど、そういうお考えなのですね!」

 

 意味深にメガネをクイッと持ち上げるデミウルゴス。その視線の先には不安そうな顔で爪を嚙むアルベドがいたが、なんでそこでアルベドを見るのか分からないアインズは疑問を覚えながらも、馬鹿正直になんでと問えないのでスルーすることにした。

 

『はい、注目! おはよう、みんな久しぶり! 俺の名前はナツキ・スバル! ほんの……一週間か。そこらで忘れられたと思いたくないが、帰ってきた!』

 

 見るからに不安そうな村人達の前にいつも通りのハイテンションで躍り出るスバル。

 魔獣が再び出たともっともらしい噓をつくが、村人の1人が魔獣ではなく魔女教が出たのではないかと零す。

 その瞬間、スバルの言葉に耳を傾けていた村人達に動揺が走る。

 

 その途端に、村人達の間で怒りや不満の矛先がハーフエルフであるエミリアの方へ移る。

 それを予感していたが為に、スバルは魔女教ではなく魔獣と言い換えたのだが、噓が下手なスバルは誤魔化しや否定も出来ずに拳を握る。

 

「こういった場面って、漫画とかでよく見るけど、実際に風評被害で冤罪掛けられたりするのは違うって思うよな」

 

「当然だ。噂だけで実情も知らずに声高らかに正義やら自分達の都合を押しつけてくるクズ共は皆死ねばいい!!」

 

「お、おう、そこまで強火な発言はしちゃいないが、まあ言いたいことは分かる」

 

 原因の矛先を魔女教からエミリアに向ける村人達の反応にカズマが素直な感想を述べる。

 それが地雷だったのか、かなり怖い形相で尚文が村人達に向けて怨嗟めいた声を上げる。

 

『どうして、半魔を……ハーフエルフなんかを……』

 

『おい、待てよ』

 

 どうしても聞き逃せない事を呟いた村人の1人にスバルが詰め寄る。

 

『今、なんつった』

 

『ま、間違ったことは言ってないだろ? 実際、そいつらがくるのだって……』

 

『俺は今! なんて言ったかって、そう聞いたんだよ!』

 

 今にも掴みかかりそうな剣幕で、スバルのただでさえおっかない目つきが鋭くなって怒鳴り上げる。

 

「ここで村人に手を上げれば全てご破算になるぞ、スバル!」

 

「そうです!ダメですよ、スバルさん!!」

 

 エミリアの事になれば短気になってしまうスバルが村人に暴力を振るうとでも思ったのか、ターニャとヴィーシャが慌ててスバルを宥める声を上げる。

 だが、その心配は杞憂だったようで、スバルはその怒りを押さえて村人達に語りかけるように演説染みた説得を試みる。

 

『──最初からあんな子いなければとか、ふざけたこと言うなよ?村を危険な目に遭わせようとしてるのは、どこの奴らだよ。魔女だなんだと、そうやって恐がられるぐらいの悪行かましたのはどこのどいつなんだよ。お前ら全員、そうやって見る相手が違うんじゃねぇの?そりゃ、得体の知れない連中よか、そこにいるってわかってる相手に不満ぶつける方が簡単なのはわかるし、俺もその口だから偉そうなこと言えるわけじゃねぇけどさ。俺は自分が最低だって自覚があるんだよ。だから、俺以外の人はみんな俺よりどっかいいとこがあるって思ってたい。ガキのわがままだってわかってるけど、頼むぜ。──こんな苦労するんじゃなかったとか、思わせないでくれよ。ロズワールがどうとか、そういうのは今はどうでもいい。屋敷にいるエミ……ハーフエルフの子になんだとか、そういうのも後回しにしてくれ。今、この村にいるのは危ないんだ。だから避難してほしい。そのための準備はしてきたんだ』

 

 誰もが、村人だけでなくこの部屋にいる全員がスバルの説得という名の演説に耳を傾けていた。

 まるで予め用意していた台本を読んでいるようだとか、そんなのは一切なく、今の自分の赤裸々な心の声をスバルは村人達にぶつける。

 その真摯な言葉を受け、村人達の中で様々な感情が駆け巡る。不安、恐怖、不満、疑心暗鬼。そういったものがない交ぜになった感情に揺れ動かされながらも、彼らはスバルの隣に立ったユリウスの最後の後押しによって避難することを決める。

 

『礼なんざ、言わねぇからな』

 

『ふ。──その言葉が聞きたかった』

 

「ふふ、本当にスバルはツンデレ屋さんなんだから!」

 

「──っお前、スバルのことツンデレって言いたいだけだろ?」

 

 ぶっきらぼうなスバルなりのユリウスへの感謝に、アクアが上機嫌でそんな感想を漏らす。

 その発言にカズマが否定してやりたくとも、出来ないことから論点をズラしたツッコミを入れる。

 まあ、要するにカズマもスバルと同じでツンデレ屋さんなのだ。

 

『スバル──!!』

 

 村人達の避難を進めているなか、村の子供のペトラがスバルを見つけて駆け寄ってきた。

 

『よお、ペトラ。どうした?』

 

 スバルに話しかけに来たということは何か用事があったのだろうとスバルがペトラに問いかける。

 すると、ペトラが語るのは昨日村に来たというエミリアの事だった。

 聞けばスバルと同じように村に危険が迫っているのを知らせに来たらしいが、村人達からの返答は拒絶、いやそれよりも酷い否定だったらしい。

 そんな事実に一瞬息が詰まるも、今こうして目の前でペトラがエミリアを心配している。その事実にスバルは今こうして行動しているのは間違いじゃないと、ペトラの頭を優しく撫でてやり、安心させて避難させる。

 

「村人の中にもいい奴はいるもんだぜ、尚文」

 

「ふん、そんなのは知っている」

 

「あれ?そうなのか……」

 

 捻くれ者の尚文をからかうようにカズマが言えば、尚文は鼻を鳴らしてそれを肯定する。

 てっきり、ああいった村人全員にいい印象を持っていないと思っていたカズマは少し意外だった。

 

「カズマさん。尚文様にだってちゃんと味方はいますよ。私やフィーロ、それに元の世界にもちゃんと尚文様の言葉を聞いてくれる優しい人たちが」

 

「おい、やめろ。ラフタリア」

 

「ふぅ~ん、そっか……。なんかからかって悪かったな」

 

「ふん!」

 

 ラフタリアの説明を受け、カズマもこれはやらかしたかとちょっぴり反省して謝罪する。

 それに対して、尚文は腕を組んで鼻を鳴らしてそっぽ向いた。この男もまた捻くれたツンデレ屋さんだったようだ。

 




ちょっと中途半端な終わり方になりましたが、次回の話で一気にスバ虐が始まるので、心臓を強くして待っていてください。

4章でのスバル視点外の放送

  • エミリアの試練
  • ラムの告白
  • ガーフィールとエルザのバトル
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