いせかるメンバーにナツキ・スバルの人生上映会を観せる   作:リーグロード

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魔女との面会

 ユリウスの剣技は最優の名に相応しく、迫りくる見えざる手を全て一撃で斬り飛ばす。

 だが、ペテルギウスの繰り出す無数の見えざる手の前に防戦一方となってしまっている。

 

『とっとと、終わりにしたいってのはまぎれもねぇ本音だぜ……』

 

『少しずつ、体が慣れてきた。スバル、速度を上げるが?』

 

『ああ、ついていくから安心してろ!』

 

「ムウ!他者ノ視界デ戦ウ経験ナド持チ合ワセテイナイガ、素晴ラシイ動キナノハ理解デキル。ソシテ、スバルモマタ、ユリウスカラ目ヲ逸ラスコトナク逃ゲ続ケル胆力ハ見事ナモノダ!」

 

 スバルとユリウスの動きに武人であるコキュートスが褒める。

 彼の目から見ても、ユリウスの卓越した動きと剣戟、そしてスバルの度胸は称賛に値するだろう。

 

 そして、スバル視点で戦うのにも慣れてきたのだろう。時々、数の物量さに押されて掴まりかけていたユリウスだったが、速度を上げていき、縦横無尽に戦場を駆けていく。

 

『──そろそろ、本気で貴様を斬らせてもらおう。長きにわたり、王国を……いや、世界を脅かしてきた脅威の一端、『怠惰』をここで断ち切る』

 

 見えざる手を斬るのを止め、迫りくる手を避けながらペテルギウスとの距離を詰めていき、その剣に虹の輝きを宿す。

 

『──アル・クラリスタ!!』

 

 そうして放たれた一撃はどこぞのセイバーかと突っ込みたくなるほどで、もはやビームのレベルだった。

 そんな規格外な一撃は無数の見えざる手を消失させ、ペテルギウスに直撃して、抵抗すら許さずに吹っ飛ばした。

 

「ラインハルトもそうだけど、あの国の騎士って必殺技がビームなのはデフォなのかよ!?」

 

「まるで王族並みの戦闘力だね。前に王城に忍び込んだ時にあんな騎士がいなくて本当に良かったよ……」

 

 ユリウスの必殺の一撃にカズマとクリスが恐ろしさから、思わずそんな感想をこぼす。

 確かに、もしあんな強さの騎士がベルセルク王城にいたならば、銀髪盗賊団は捕縛されていただろう。

 いや、捕縛よりも先に修練場でのスバルみたくボロボロに叩きのめされていただろうと戦慄する。

 

 そうして全ての見えざる手を消し飛ばしたユリウスはトドメを刺さんと一気にペテルギウスとの距離を詰め寄る。

 

『そうはさせないの、デス!!ウル・ドーナ!!』

 

「なっ!?アイツ魔法まで扱えるのか!?」

 

「そこまで予想外の事でもないだろう。奴の部下の魔女教徒も火の魔法を扱えていたのだ。ペテルギウスの奴が扱えん道理はない」

 

 これまで一切魔法を使う場面を見せてこなかったペテルギウスがここで初めて魔法を使う。

 迫りくるユリウスに対して迎え撃つように、岩石の壁がペテルギウスを囲うように出現した。

 これに対して尚文が驚きの声を上げる中、ターニャは冷静な態度でありえんことではないと指摘する。

 

「しかしマズイな。攻撃魔法ならば避けて距離を詰めて終わりだっただろうが、あのペテルギウスという男、激高していても冷静な部分が残っていたのか、防御を固めることで新たに見えざる手を生み出す隙を作り出す。逃げれば体制を立て直され、攻めれば壁を崩す間に見えざる手が飛んでくる。どちらにせよ、手痛い反撃は避けられないだろう」

 

 アインズの分析に誰もが息を呑む。

 しかし、続く言葉がその緊張を緩和させる。

 

「だが、それはあくまであの場にいるのがユリウスだけだった場合の選択肢だ」

 

『燃えろ闘魂!うなれ魔球!──俺の本気は、百二十キロだぜ!!』

 

 何を投げたのか、走るユリウスを追い抜いてスバルの投げた物は真っ直ぐにペテルギウスの生み出した土壁へと命中する。

 すると、まるで手榴弾でも投げつけたのかといわんばかりの爆発が起こり、魔法で作られた土壁は爆砕された。

 そうして、その向こうにいるペテルギウスの視界を爆発による爆煙が塞いだ。

 その隙にユリウスが一気に距離を詰めて剣をグサリとペテルギウスの胸へと突き刺した。

 

『貴様の敗因は、たったひとりで戦いに臨んだことだ!』

 

『馬鹿な、バカな、ばぁかぁなぁ……こんな、ワタシの、体が……こんな』

 

『六属性を束ねた刃は、貴様の体を内から焦がす。貴様の正体がこちらの推測通りなら、このまま掻き消えてしまうがいい!』

 

「正体?ペテルギウスの秘密を掴んでいるのか?」

 

「だとしたら、こうしてスバルが前に出ているのも対抗策があるからなのか?」

 

 ユリウスの言葉に尚文とカズマは、勝算あってスバルはペテルギウスの前に出たのではと考えた。

 そして、その考えは正しかったのだろう。ペテルギウスは刺し貫かれながらもその狂気に満ちた目をユリウスではなくスバルに向ける。

 

『指先を失い、今もこうして肉体を損なう……デスが、デスが、デスがぁ! まだ! ワタシには! 残された体が、あるの……デス!』

 

 その言葉に怯んだのとは違う、スバルの様子が一瞬だが明らかに変わる。

 恐らく、スバルの中にペテルギウスが入り込んだのだろう。

 

『ユリウス!ネクトを解除しろ!!』

 

『わかった!』

 

 スバルの呼び声に応じてネクトを解除したユリウスが目を開ける。

 それと同時に、スバルとペテルギウスが力なく脱力して糸の切れた人形のようになる。

 

「大丈夫なのか?正体が判明したとしても、それが合っているのか、対処法が機能するかは別問題だぞ」

 

 今の所、前回のループと違った点が見受けられず、様子の変わったスバルを心配するターニャ。

 

『あぁ──脳が、震える』

 

『おぉ、震えて待ってろ。特別にお前に会わせてやる』

 

『なにを!誰と!なんの話を!!』

 

『お待ちかねの、魔女様に──だ』

 

 前回同様にペテルギウスに乗っ取られたスバル。それでも若干の抵抗は出来ているのだろう。前回と同様に、ペテルギウスに乗っ取られながらも自分の意識を保っているようで、まだ肉体の主導権を完全には渡していないようだった。

 ここからどうするのかと、スバルがペテルギウスに乗っ取られた後の展開を知っている面々は、その出方を注視していた。そして、スバルの口から語られる魔女への対面のセッティングに、その手があったか!と驚く者とそれは悪手になりかねんと焦る者に別れる。

 

『──俺は、『死に戻り』をして』

 

 その禁忌の言葉に世界が停止する。

 ただいつもと違うのは、映像に映し出されるのがスバルの心臓に手を伸ばす黒い手ではなく、暗く淀んだような空間に1人佇むペテルギウスだった。

 そしてもう1人、影よりも濃い闇を纏った人物、嫉妬の魔女がペテルギウスの前に現れた。

 

「これは、いつもと違う様子だが……」

 

「これも我々をこの部屋に呼んだ者による趣向ですかね。どうやら、ターニャ殿が考える最悪の事態にはならなそうで一安心といったところですか」

 

 ターニャの呟きに対してデミウルゴスがそう返す。

 ターニャが考える最悪の事態、それはスバルの死に戻りの力が魔女教に奪われること。魔女を崇拝し行動する者に、魔女と対面させるなど賭けの要素が強すぎる。

 スバルが自身に憑依したペテルギウスに魔女へ会わせてやると言った瞬間には、ターニャも目を丸くして慌てたものだ。

 魔女と魔女教大罪司教の邂逅にどうなる事かと不安はあったが、その心配はデミウルゴスの言う通り、無用の長物だったようだ。

 

『──違う。あなたじゃない』

 

 魔女からの拒絶とも否定ともとれる失望に彩られた声に、魔女との対面に歓喜していたペテルギウスを絶望に突き落とす。

 そして、怒りと共に魔女がペテルギウスに伸ばした黒い手で振り払い、その空間からペテルギウスを文字通り叩き出した。

 

『──あぁがぁ! 戻ってきたぁ!!』

 

「これは……、憑依が解けたのか?」

 

「どうやら、その通りみたいだね。現に、ペテルギウスの元の肉体の方に意識が戻っているようだ」

 

『こん、な……はず、が……ないの……デス……』

 

 デミウルゴスの言う通り、刺し貫かれて倒れた方の肉体にペテルギウスの意識が戻っていた。

 

『最悪、出ていくまで何回も繰り返すつもりだったが……一回でギブとは、根性なしもいいとこだぜ、てめぇ』

 

『今度こそ、終わりにしよう』

 

 意識が戻ったペテルギウスにユリウスが騎士剣を振り下ろしてトドメを刺す。

 

『魔女よ……魔女よ! 魔女よ! 魔女よぉ! これほどまでにアナタに捧げ尽くして! あれほどまでにアナタのためになにもかもを捨てて! 思いつく限りの全てをアナタに捧げたというのに、何故デスか! 何故なのデスか! 何故、ワタシをお見捨てになるのデスか!? 何故なのデス! 何故なのデスか! 魔女よ! それならば……それならば何故、ワタシに愛を……寵愛をぉ……!?』

 

 錯乱したのか、見えざる手を乱暴に伸ばして暴れさせる。その手はユリウスやスバルを捕らえることなく、近くの絶壁の表面を大きく削り、岩肌を激しく抉って亀裂を走らせる。

 結果、崩落が発生して、その近くに倒れていたペテルギウスに岩塊が落ちて、それがそのまま奴の墓標となった。

 

「なんか、色々とヤバい奴だったけど、最後は呆気ないというか、可哀想な終わり方だったな……」

 

「ふん、あれに同情などするな、カズマ。どんな終わり方であれ、奴らがして来たことを考えれば妥当な最後だっただろう」

 

 魔女の為に全てを捧げて尽くしてきたペテルギウスの最後に、カズマは同情が湧いて思わずそう呟いた。しかし、ターニャはそれを無情に切り捨てる。

 その冷淡なまでの言葉には、ペテルギウスと魔女教の両方に対する強い拒絶と怒りがあるように感じられる。

 カズマだって、ペテルギウスがこれまでのループで村人にしてきた非道の行いを見てきた。それに加えて魔女教が世界各地で同じ様な行為をしているのも知っている。だから、ターニャの言うように、ペテルギウスに対して同情する必要すらないのは分かっている。

 それでも、こうして哀れなペテルギウスの最後を見届けてしまい、思わず同情してしまうのはカズマが平和な世界で生きてきたせいだろうか。

 

 なんにせよ、こうして魔女教との長い闘いが終わり、スバルは小さく息を吸って墓標となったペテルギウスを押し潰した岩に向けて、終止符を告げる言葉を言い放つ。

 

『ペテルギウス・ロマネコンティ。──お前、『怠惰』だったな』

 

「随分と働き者の怠惰だったがな……」

 

「これで本当に終わって欲しいものだがな。……ん?あれは」

 

 ようやく終戦した魔女教との戦いに尚文が無駄に勤勉だったペテルギウスへの皮肉を込めて呟き、アインズもようやく終わったのだと希望を込めてため息を零す。

 映像の端、ペテルギウスを押しつぶした瓦礫の墓標の隣に、前回見た福音書なる本が無傷で落ちていた。

 それにスバルも気付いたのだろう、それを拾い上げて中身を読むが内容は相変わらず解読することは出来なかった。

 

『ようやく決着がついたと言いたいところではあるが、すぐに村に戻ろう、スバル』

 

「どうしたんだよ、ユリウスの奴?ようやくペテルギウスを討伐したってのに不穏な感じ出しやがって」

 

「カズマさん。私、なんだか嫌な予感がしてきたの。具体的にはいつもの私たちみたく、ボスを倒しても面倒事が降って湧いたみたいな!」

 

 ユリウスが通信用のミーティアを片手に真剣な表情でスバルに帰還するように促す。

 そのユリウスの雰囲気に何かを察したのか、アクアが今までの経験則から顔色を青褪めさせて不吉なことを口走る。

 

『フェリスの尋問で、魔女教徒が気になることを言ったらしい。避難させた方々が危険にさらされるかもしれない』

 

 どうやら、未だ魔女教との戦いは終わってはいなかったようだ。

 




4月中に終わらせると意気込みながら、後1話を残して既に5月に突入した我が怠惰をお許しください!!!
願わくば、GW中に終わらせるように勤勉な愛で書き上げる所存……デス!!!

4章でのスバル視点外の放送

  • エミリアの試練
  • ラムの告白
  • ガーフィールとエルザのバトル
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