いせかるメンバーにナツキ・スバルの人生上映会を観せる 作:リーグロード
3章終わらせてちょっとした燃え尽き症候群状態かも。
『なんかさ……ペトラ、近くない?』
『だって、さっきまでお姉ちゃんが独り占めしててズルかったし、いいでしょ』
年上のお兄さんに甘える子供──というにはスバルの隣に座るエミリアに対抗心を燃やしている時点で、どう考えてもスバルLOVEだと丸わかりだろう。
「スバルの奴、子供にも好かれてるのか」
「あれは好かれてるというよりも、愛されてるって感じだと思いますが?」
恋愛感情の機微に鈍い尚文の勘違いをラフタリアがやんわりと訂正し、2人は映像に注視する。
『エミリアたん、子供の言う事だよ。笑って、笑顔で、スマイルで大雑把に受け流さないと』
『子どもが相手だからって、そんなインチキみたいなことできないわよ』
『インチキってきょうび聞かねぇな……』
『むぅ、またそうやって茶化す』
また前みたいな、学園での2人のやり取りと同じ雰囲気に、皆が今の今まで胸につっかえていたような重い空気が霧散するのを感じた。
「やはり、スバルとエミリアが仲良くしているのを見ると安心してしまうな」
「そうだな……」
アインズも、ターニャの言うように、ほっと胸をなで下ろした。
エミリアとペトラに軽く叱られながら、戻ってきた平穏に安堵している顔を見せているスバルに、カズマを始めとして多くの者がここから先、スバル達は学園に召喚されて、いつもの学園生活が始まるのだろうと気楽に考えていた。
エミリアからあの言葉を聞くまでは……。
『あー、その、エミリアたん……すごく、大事なお話があるんですが』
『うん、なぁに?』
何か覚悟を決めたような表情でエミリアに向き合うスバル。
っが、言葉を紡ぐたびに視線がだんだんと逸れていき、声も若干震えている。
『ものすごく言いづらいことなんだが、聞いてほしい。もちろん、実姉にもいずれ報告しなくちゃとは思ってるんだが……最初は、エミリアたんに』
『……うん?』
「あ、あの男!レムに堂々とエミリアが好きと言って振りながら、二股をしようと準備していませんか!?」
「だ、だが、それはレムも嬉しいんじゃないか?レムだってエミリアの事を好いていたし、わ……私も好きな相手と結ばれるのであれば二股くらいは別に許容範囲というか……」
だんだんと尻すぼみになっていくダクネスの言い分を聞いためぐみんは泥棒ネコを見るようなじっとりとした目で睨む。
それを受けて恥ずかしさと興奮を混ぜ合わせたような複雑な顔ながらも
「なあ、ダクネス。今の言葉もう一回言ってくれないか?出来れば最後の方を聞こえるぐらい大きな声で詳しく!」
次の瞬間、カズマがめぐみんに引っ叩かれたのは言うまでもない。
『実は、レムの話なんだよ。レムがその、俺のことを……な、なんとなくわかるじゃん? それで、あんな告白しておいて勝手っちゃ勝手なんだけど……』
『スバル、落ち着いて。なにが言いたいのかわからなくなってるし、すごーくスバルが一生懸命なのはわかってるから。ね、良い子だからゆっくり』
『良い子だからってなんか凹む評価!いや、俺が男らしくねぇ。ああ、スパッといくぜ。あのですね、実はレムも俺を好きだって言ってくれてるので、エミリアたんが俺を好きになってくれた暁にはこう……二人揃って俺のもの、というか!?』
「ああ!!言いました!あの男ついに言いましたよ!?」
「いいじゃない、別に。3人がお互い認めて、そこに愛があればアクシズ教の教義的にはセーフよ、セーフ!」
完全な浮気宣言にめぐみんが噴火したようにスクリーンに映るスバルを指差して憤慨する。それをアクアがアクシズ教の元締めらしい台詞でぶった切った。
「…………」
そんなアクアの言葉に、ターニャが何か言いたそうにジト目で見ていたが、結局変に面倒事に巻き込まれそうなので止めた。
何より、スバルの口からレムの名前が出てきた際のエミリアの表情を見て、これから先に起こるであろう地獄にあの馬鹿騒ぎは強制的に終了するのだと悟ったからだ。
『スバル』
『はい』
『──レムって、誰のこと?』
『──っは!?』
──部屋の空気が凍った。
冷えたなんて生易しいものではなく、先程まで馬鹿騒ぎしていたカズマ達もエミリアのその言葉に動きを止めて驚愕で目を見開きながら、顔面を蒼白にして嫌な汗をかいていた。
どれくらいの時間が経ったのか、1分かそれとも30秒くらいか?どちらにせよ、それだけの時間、誰も口を開くことが出来なかった。
最初に声を出したのは、否、叫び声を発したのはカズマだった。
「っっクッソがぁぁぁ!!!!」
肘掛けに思いっ切り拳を叩きつけ、怒りを露わにする。
だが、それはカズマだけでなく、この部屋にいるほとんどの者が同じ気持ちだった。
中には、口元を手で押さえて嗚咽を漏らさないようにしている者もいる。
それほどまでに、エミリアが最後に口にした一言が衝撃的だったのだ。
まるであの時の再現だとターニャは思った。白鯨を相手にたった1人で殿を務め、存在そのものをスバル以外の誰からも忘れられたあの3度目のループの再現。
もう白鯨はいない。だが、敵は正体不明の魔女教だ。同じ力を持つ者や、蘇生手段を保有している可能性もある。
「嫌な予感が──いや、最悪な予想が現実になったか……」
「おい、ターニャ。お前、今最悪な予想と言っていたな?レムの存在が消えていたのを、お前は知っていたのか?」
ターニャの思わずこぼしてしまった独り言を尚文が聞き咎め、顔を顰めながら問い詰める。
その目は険しく、噓偽りや誤魔化しは許さないといった雰囲気を出していた。
そんな雰囲気を出しているのは尚文だけじゃない。今の尚文の言葉を聞いた皆の視線がターニャに集まり、その胸にある負の感情をぶつけたがっているような様子さえあった。
「はぁ~、言っておくが、私は何も確信があって隠していたわけではない」
観念したようなため息を吐きながら、皆の怒りや悲しみが爆発しないように前置きを置いて語りだす。
「そうだな。まず不審に思ったのはあの白紙の親書の件だ」
「白紙の親書……。おい、まさかあの時点でもう……」
「ご想像の通りだろうな。手紙を送ったのはスバルだろうが、肝心の中身を書いたのがレムであるのならば、彼女の存在が消えた事によって親書は白紙になったのだろう」
ターニャの推理聞くうちに、レムの存在消滅が現実味を帯びてきた。そのことに皆の顔にやるせなさが浮かんでくる。
それと同時に、スクリーンに映る映像が切り替わり、昼間だった景色が星空を浮かべる夜になった。
『ひどい……』
王都にあるクルシュの屋敷の庭に、白鯨を王都へ輸送していた隊の者達が傷だらけになって治療されていた。
レムもこの隊に同行して王都へ向かっていたので、彼女の身に何かトラブルが起きたことは明白だった。
慌てたスバルがレムを探し出そうとした瞬間、絹を裂くような悲鳴が上がった。
「今の声って……!?」
「ああ、フェリスの奴の悲鳴だ。まあ、理由はなんとなく察しがつくが……」
聞こえてきた悲鳴にカズマが反応し、ターニャがその声の主と理由を察して目を瞑る。
スバルがその悲鳴の聞こえてきた方を見れば、気を失って倒れているクルシュに泣き崩れているフェリスがいた。
「フェリスが泣いているということは、クルシュの記憶は残っているということか。なら、あのループの時みたく、恐らくレムは……」
「そんな……。こんなことって……」
状況から色々と察した尚文の呟きに、ラフタリアは悲痛な表情で目に涙を浮かべる。
レムが隊を逃がすために一人で殿を務めた。そう、いつかのループで白鯨からスバルの乗った竜車を逃がすために、白鯨に挑んで存在が消えてしまったあの時と同じ状況だと悟り、他の者もそれに薄々と感付き始めて静かに涙をこらえていた。
「なんで……、なんでスバルがこんな苦しい目に合わなきゃなんねえんだよ──っ!!」
「カズマ……」
やりきれない思いでカズマが拳を握りしめ、まるで自分の事のようにスバルの境遇を悲しんでいた。
その目に浮かんでいた涙に、めぐみんは何も言えずにただそっと震えるカズマの握った拳に手を重ね合わせる。
『レム──!!』
「「「えっ!?」」」
てっきり亡骸さえ残っていないのかと思われたレムが倒れているのを見つけ、てっきり遺体さえ残っていないものだと思っていた者達は驚きで小さな声が出た。
更に、遺体と思っていたレムがただ眠っているだけなのにも驚かされた。
「けど、眠ったまま起きないだなんて、まるで白雪姫だな……」
「存在が忘れられている分、白雪姫よりも過酷かもしれんがな……」
「あの、少佐?白雪姫って誰の事なんですか?」
「ん?そうか、セレブリャコーフ中尉は知らなくて当然だな。学園の図書室に置いてあると思うが、白雪姫とはグリム童話の1つで、色々とネタバレになるのであまり詳しくは語らんが、タイトルにもなっている白雪姫なる女性が毒りんごを食べて死んだようにに眠ってしまう物語だ」
「死んだように眠る……。だから尚文さんが今のレムさんの事を白雪姫みたいだって言ったんですね」
ターニャの説明で、ヴィーシャは眠っているレムを見て白雪姫と例えた尚文の言葉に合点がいった。
やがて、治療師にも手の施しようがないと突き放されたスバルが近くに落ちている刃の欠けた剣を見つけて拾い上げる。
「……はぁ?おい、待て、スバル!?」
首筋に剣を当てて、震えながら自害する覚悟を決めるスバルに、カズマが声を上げる。
無論、そんな声など映像の中のスバルに届くはずもなく、スバルは異世界で2度目の自害を決行した。
「ハァ……ハァ……、嘘だろぉ!なんで、スバルばっかがこんな目に……」
悲愴の覚悟を決めたスバルの言葉に、カズマは頭痛すら感じながら頭を押さた。
そんな目を閉じて下を向くカズマの耳にリカードではなく、エミリアの心配する声が届く。
『大丈夫、スバル?』
「い、今の声……。エミ……リア……?」
「死に戻り地点が更新されたか……」
「予想は出来たが、いざこうして目の当たりにしてみると、ボス級の敵の撃破後の自動セーブは詰みポイントを生み出すな」
驚愕に震えるカズマを置いてきぼりに、ターニャとアインズは冷静な声でスバルの死に戻りの地点が更新されたことへの考察が始まる。
「おい、なんでだよ!死に戻りは──、アレはやり直す為の力だろ!!手遅れな時点に戻してどうすんだよ!!!」
泣き叫ぶようにカズマはスクリーンに映るスバルの絶望の顔を見ながら、どこの誰とも知らぬ相手に怒鳴りつける。
それは死に戻りの力を授けた魔女にか、それともこの部屋に召喚した何者とも知れない存在にか。カズマの怒りを孕んだ声だけが部屋に響いていた。
「落ち着け、佐藤カズマ」
「落ち着け?落ち着けだって!?逆に聞くけど、なんでお前らはそんなに冷静なんだよ!!俺は、俺はもう限界だ!!何度こんな場面を見せらんなきゃなんねえんだよ!!!」
「確かに、その理不尽さには怒ってもいいだろう。スバルがその理不尽さに何度も死ぬような目に合い、それに対して怒り狂うのも理解は出来る。だがな……、死に戻りはそれほど便利な力ではない。それはこれまで散々見てきただろう」
『俺が聞きたいのそれじゃない!論点をズラすな!!』そう口にしたかったカズマだが、頭の冷静な部分がそれを言葉にするなと強く引き止める。
それに気が付いた時、この部屋の悪魔みたいな奴は今度は理性で俺を苦しめるのかと小さく歯ぎしりした。
「カズマ。その気持ちは私も痛いほど分かりますが、ここで叫んだって意味はありません。ですから、その……」
「いいよ、めぐみん。俺が全部バカやってるだけだって……俺も分かってるから……」
覇気のない声でカズマはめぐみんが伸ばしてきた手を握る。
それで落ち着きを取り戻してくれたのか、めぐみんは安心したように少しだけ微笑んだ。
部屋の雰囲気も少しだが、落ち着きを見せ始めた。
それを狙ってか、スクリーンに映る映像が暗転して、いつものアナウンスの声が響く。
「以上で、第三部を終わります。しばらくの休憩の後、第四部を放映致します」
静まり返った部屋にあのアナウンスが鳴り響き、スクリーンも暗転して何も映し出さなくなった。
「っテメェ!何処かでこっちを見てるんだろ!!いい加減姿を見せやがれ!!!」
「そうよ!とっとと私たちをこの部屋から出しなさいよ!!!」
カズマとアクアが騒ぐが、アナウンスはそれに答えることはなく、部屋には沈黙が残った。
「結局、いつものパターンか……」
「だとするならば、ここで追加のメンバーが呼び出されるはずだが。もう既に席はだいぶ埋まっているが、どうなるんだ?」
尚文の呟きにアインズが疑問を口にする。
「まだこの部屋に来ていないのってスバル達ぐらいよね?」
「アクア、忘れるのも当たり前ですが、まだゆんゆんが所属する3組も来てませんよ」
「ああ、そういや、3組もあるんだったよな。でも、俺3組の人間ってゆんゆんしか知らないんだけど。誰か知り合いが3組にいる?」
カズマの疑問に誰も答えなかった。というよりも、答えられなかったというのが正解か。
「そういえば、今まで大して気にしてはいなかったが、3組には一体誰がいるんだ?」
「ゆんゆんが噓を言っていなければ、ちゃんと人はいるようですが、今まで誰の姿も見てないんですよね?」
アインズの疑問にめぐみんが反応して答えるが、結局のところ、ゆんゆん以外に3組に所属している者の存在を知る者はいなかった。
それが判明するのと同時に、あのボタンを押した際に出るピンポーンという音が部屋中に響き渡った。
「一応警戒はしておけ、どんな奴が現れるか分らんからな」
ターニャがそう警戒を呼び掛けるが、部屋に誰かが転移してくることはなく、1分しても何も変化が起こらなかったので各々警戒を解いていく。
「何も起こらなかったな……」
「ゆんゆん、ついにボッチを極めすぎて、召喚すらもハブられるようになったのですね」
「おい、やめてやれよ……」
何も変化が起こらなかったことに拍子抜けするターニャ。召喚されなかったゆんゆんに対するめぐみんの毒舌に、カズマが思わずツッコむ。
そう、この時点で誰も気が付いていなかった。誰かが召喚されて増えたのではなく、減ったという事実に……。
これで次回からルプスレギナ編がスタート!!大体3~4話程度で完結させるつもりやから、気に入らない人はそれまで待機しといてね♡
スバルの第二の試練後にIFストーリーを入れる
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