いせかるメンバーにナツキ・スバルの人生上映会を観せる   作:リーグロード

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お待たせして申し訳ございません。
このルプスレギナの1人旅はストックしてから放出する予定だったので遅れました!!

なので、前回の投稿からちょうど一ヶ月の今日に全部投稿します!!

※感想で皆が送ってきた予想(期待)とはまるで違う展開になっているのでご容赦ください。


番外編
ルプスレギナの1人旅


 

 ピンポーン!

 

 気の抜けそうなチャイム音が鳴り響き、広大な草原にルプスレギナは1人でポツンと立ち尽くしていた。

 

「いや~、これマジでどういう状況っすかね?」

 

 急に転移させられて困惑するルプスレギナはキョロキョロと辺りを見回して現状を把握しようとするが、如何せん情報が無さ過ぎてどうしたものかと頭を抱える。

 

「えっと?確か、あの鳥っ子がボタンを押したとこまでは覚えてるっすけど、ここは何処っすかね?」

 

 直近の記憶では1時間目が終了し、隣のクラスに誰もいないと聞いて駆け付けたところ、アインズ様の席に例の謎のボタンが置いてあり、それをフィーロが押してしまったところまでしかない。

 

 元の世界に帰ってきた?だけど周囲にユリ姉やナーちゃん達がいない。単独で転移した?

 だとしたら、私だけ別の世界に送られたのか、それとも場所が違うだけで、同じ世界にアインズ様達も同様に飛ばされたのか。

 

「う~ん、情報が少なすぎて判断がムズイっすね……」

 

 だが、とりあえずは視界の先に薄っすらとだが道らしきものが見える。

 あれに沿って進めば街か村ぐらいは見えるだろう。

 

「ひとまずは、情報収集から始めないとっすよね!」

 

 早速動き出そうとしたその時、伝言(メッセージ)が届いたような感覚と同時に目の前にコンソール画面のような半透明の窓が開いた。

 

 そこにはクエスト『魔女教とその手先を討て』と銘打たれた依頼書のような内容が書き込まれていた。

 

「これは……!?つまり、これをクリアしないことには元の世界には帰さないってことっすか?」

 

 何処かで見ているかもしれない謎の人物に対して、ルプスレギナは人当たりのいい声と友好的な態度で叫び問いかけるが、その返事が返ってくることはなかった。

 

「これは、監視されていないのか、それとも無視されているのか。どっちにしろ、あまり手の内を晒さないようにして、これをクリアした方がよさそうっすけど……」

 

 魔女教なんて聞いた覚えがない。そしてクエスト名の下に表示されている2つの名前。

 

 ・ペテルギウス・ロマネコンティ 0/1

 

 ・白鯨 0/1

 

 どうやら、これが討伐目標の名前のようだ。

 なんにせよ、目標が出来ただけで、するべきことは変わらない。今は原住民に接触してアインズ様とこの世界のこと、追加で魔女教の情報を知るのが最優先だ。

 

「それじゃ、行くっすかね!」

 

 まるでピクニックにでも行くかのよな陽気なステップを踏みながら、ルプスレギナは原住民を探しに足を踏み出す。

 

(まあ、何処の誰がこんなことしたのか知らないけれど、それ相応の報復は受けてもらわないとね)

 

 しかし、そんな陽気な態度の裏では、誰にも気づかれぬようにドロドロとした怒りを抱え、この事態を引き起こした犯人への残酷な復讐方法を思い巡らせていた。

 

 ルプスレギナは、人狼ならではの俊敏な脚力を活かし、街道と思われる道に到達すると、地面にある窪みをじっくりと観察した。

 

(車輪の跡、それが2つとなれば恐らくはこの世界の住人は馬車を利用している。それにまだ跡が大して消えてないことを考えるにこの道はまだ利用されてる可能性が高いっすね)

 

 これで、この道の先には人間か亜人種かは分からないが、少なくとも馬車を利用できる知識を持つ存在がいることが明らかになった。

 さらに、足跡が馬の蹄とは異なる跡である為、別の生き物が馬車を引いている可能性が高いと推測できる。ただし、これはあまり重要ではないだろうから、特に気に留めなくてもよいだろう。

 

「んでもって、着いたっす!!!」

 

 あの道をどちらに進めばいいのか分からず、半ば勘に頼って進んだものの、運良く人々が集う街に辿り着いた。

 建物の上から見下ろせば、大通りを行き交う人々や獣人たちの姿が目に入る。

 

「ふむふむ、人間以外にもウチみたいな種族も多数あり、そんでもってレベルはカルネ村の人間共と似たり寄ったりって感じっすかね」

 

 現在、ルプスレギナは完全不可視化で姿を消して建物の上から観察を続けているが、どうやら原住民のレベルは元の世界の原住民とあまり変わらないようだ。ただ、文明の発展度で言えばこちらの方が進んでいるようだが、ナザリックとカルネ村以外の外界をほとんど知らないルプスレギナには、正確な判断はできないでいる。

 

「ナーちゃんとかだったら、『この下等生物(ガガンボ)が、とっとと知っていることを洗いざらい話しなさい!』なんて言って突撃するかもっすけど、まずは自分よりも強い奴がいないかどうかの確認は重要っすよね!」

 

 建物から下へ降り、完全不可視化を発動したまま、人通りの中を誰にもぶつからずにかき分けて進む。

 その際に、この世界の通貨と思わしきコインの入った財布を通行人からスリながら、ちゃっかりと軍資金を稼ぐ。

 

「流石にこのメイド服は目立つっすからね。至高の御方に下賜された服から着替えるのは不敬っすけど、今は状況が状況っすし、下手に汚す方がマズイっすからね」

 

 他の姉妹ならどう反応するだろうと妄想しつつ、この世界の洋服屋らしき店に完全不可視化を解いて入る。

 

「いらっしゃいませ~!」

 

 店員は最初、仕立ての良いメイド服を見て貴族からの依頼だと期待していたが、メイドによる個人的な買い物だと知ると、露骨ではないが少しガッカリした様子を見せる。

 

「これなんてどうですか?あっ、こっちの方もお客様の美貌に合ってお似合いですよ!」

 

 しかし、いざ服を選び始めると、その圧倒的な美貌を持つルプスレギナに、店員はすっかり魅了されて商品を次々と勧めてくる。

 持ち運びにはアインズ様から授かった無限の背負い袋《インフィニティ・ハヴァザック》があるので問題ないし、軍資金もスリでたっぷり確保しているので心配はないが、このペースでは買い物がいつ終わるのか全く予測がつかない。

 

 いくら突発的な事件に巻き込まれたとはいえ、主君の側を離れる時間を無駄に増やすのはメイドとしてはあるまじき行為だ。

 というわけで、汚れても問題はなく、丈夫で身軽さを追及した服を1着注文すると、ちゃんとその要望通りの服を持ってきた。

 

 汚れが目立ちにくい灰色に近い色合いで、肌の露出は多めながらも隠すべき部分はしっかりと隠されている、一見すると踊り子のような衣装だった。

 どうやら、この世界の狩猟民族の衣装を参考に作られたらしく、女の傭兵としては珍しい服装なものの、そこまで目立つデザインではないようだった。

 

「ほぉ~、いいじゃないっすか、これ!」

 

 生地や作りはナザリックの衣装に比べればまるで及ばないものの、この世界では十分に高級品と言える。何より、ルプスレギナの抜群のスタイルがこれ以上ないほど際立っているのが素晴らしい。

 

「むふ~!新生ルプスレギナ改め、流れの傭兵レギィちゃんっす!!」

 

 新しい衣装に身を包み、にこやかに笑顔を浮かべながらその場でクルリと一回転してみせる。そして、念のため本名ではなく偽名で活動することに決めた。

 そうして洋服屋を出たルプスレギナの次の目的地は情報集めの定番とも言える酒場だ。

 

 メイド服で行けば目立っただろうが、流れの傭兵に見える今の恰好ならば、酒場へ行こうとも奇異の視線で見られることはない。

 ただ、傭兵よりも娼婦や踊り子のような格好であることから、男共の視線がイヤらしさを帯びている。

 

 そんな視線を気にすることなく、ルプスレギナは酒場で最も身なりが良く、すでに酔いが回っている男の席に勝手に腰を下ろした。

 

「ちわっす~!ここ空いてるっすか?」

 

「おいおい、座ってから聞くもんじゃねえだろ。まあ、男一人で飲んでたんだ。察してくれよ」

 

 ぶっきらぼうな口調ながらも、その目や雰囲気には嬉しそうな色がちらついている。

 

「っで、なんで俺のところに来たんだ?まだ昼間だ、席ならちらほら空いてるが?」

 

「んも~、分かってて言ってる癖に、そんなこと聞いてくるっすか?実はちょっとした諸事情でこの辺りに最近来たばかりで、色々と情報を欲してるんすよ。だから、お兄さんみたいな情報通から色々と聞きたいな~って……」

 

 そう言いながら、さりげなく体の重心を男の方へ寄せ、視界に胸が入るように強調してみせた。

 たゆんとテーブルの上で揺れるルプスレギナの胸に、男の視線は釘づけになり、視線の中に劣情を多量に含んだ物が混じりだす。

 

「っ、そ、そうかい。だったら何でも質問してきな。俺に答えられるもんならいくらでも答えてやらぁ!!」

 

 豪快にジョッキに入った酒を一気飲みすると、まるで何かを誤魔化すかのように大声を上げて答える。

 まあ、男がルプスレギナの胸に視線を向けていたことくらいお見通しなのだが、それには触れず、気になることを順番に質問していく。

 

 そして分かったのは、ここがルグニカ王国という国で、現在王族全員が病死してしまい、それに代わる人物を選ぶために王選候補という催しが行われているらしい、ということだ。

 

「ふ~ん、じゃあ、魔女教あるいは白鯨について教えて欲しいんすけど、どっちでもいいから知ってたら教えて欲しいっす!」

 

「なんだお嬢ちゃん、そいつらの事も知らねえのか。一体どこから──ってのは野暮な質問か。まあ、別に教えてもいいが、詳しいことは俺どころか騎士団だって知らねえぞ」

 

 そう前置きして、男は酒を飲みながら魔女教について話し始めた。

 曰く、かつて大昔に大暴れした嫉妬の魔女を崇拝する邪教徒の集団で、各地に甚大な被害をもたらす災害のような連中だという。そして厄介なのは、そいつらが神出鬼没で、騎士団ですらその足取りを掴めずにいるとのことだ。

 白鯨も似たような存在で、予兆もなく突然現れて人を襲い、商人にとっては天敵であり、かつて騎士団を率いた剣聖ですら討伐することができず、全滅したという話だ。

 

「マジっすか~。これは厄介っすね……」

 

 標的(ターゲット)であろう魔女教や白鯨が強いというのは予想出来ていたが、その足取りをまるで掴めないのは予想外だった。

 情報を得る為の伝手がない以上、この辺りで切り上げるしかないだろう。そう考えてルプスレギナが立ち上がろうとしたとき、男は気になる情報を話し出した。

 

「なんだ嬢ちゃん。魔女教を知らないくせに、そいつらのこと追ってるのかい?止めといた方がいいだろうけど、どうしても奴ら──魔女教の方を追うってんなら今はいい時期かもな」

 

「いい時期ってどういうことっすか?」

 

 聞き逃せない言葉に、ルプスレギナはそのまま立ち上がった姿勢で、計算したような上目遣いになりながら、前のめりに男へ視線を送った。

 効果は絶大だったようで、男の目尻はだらしなく下がり、ルプスレギナの胸元に視線が釘付けとなった。

 

「んんっ、ゴホン!さっきの話に戻るが、今は次期王を決める王選候補ってのをやってるんだが、その王選候補者の中に半魔がいやがるんだ」

 

「半魔?」

 

「おいおい、半魔も知らねえのか?一体どこから来たんだよ。まあ、半魔っつうのはハーフエルフのことで、しかもそのハーフエルフは銀髪らしくてな、嫉妬の魔女の伝え聞く外見と一緒なんだよ」

 

 そこまで聞くと、確かに魔女教が接触してきそうな気もするが、確実に現れるとは限らない。

 本当にそれで来るのかという視線を向けると、男は慌てるなと言いたげに次の話を始めた。

 

「なんでも昔、鉄壁の軍事力を誇ったヴォラキア帝国の『城塞都市ガークラ』に魔女ゆかりの代物が流れ着いたようでな、そこで魔女教の強欲ってのが闘将クルガンを殺してその都市をたった1人で攻め滅ぼしたらしいぜ」

 

 なるほど、魔女ゆかりのもので攻めてきたのなら、その嫉妬の魔女そのものである容姿の半魔の元に来る可能性は高いかもしれない。

 

「ふ~ん、それは良い情報っすけど、その肝心の半魔は何処にいるんすか?」

 

「そこまで詳しいことは分らんが、噂じゃメイザース領の領主がその半魔を担ぎ上げたって話らしいし、そこに行けばもしかしたらって訳だが……。言っとくけど、マジで止めといた方がいいぞ。魔女教なんて頭のおかしい連中に自分から接触するなんて自殺行為だぞ──」

 

「いや~、いい話が聞けて助かったっす!お兄さんと話せて本当に良かったっすよ!!」

 

「へっ、よせやい。そうだ、ついでにお嬢ちゃんの話も酒のツマミに……って、あれ?何処行ったんだ?」

 

 ほんの一瞬だけ目を離した隙に、隣に座っていたルプスレギナは煙のように姿を消していた。

 まるでキツネにつままれたように、男は目をパチクリと瞬かせた。

 

 既にルプスレギナは酒場を出ており、先程聞いた王選候補という催しについて詳しく調査していた。その過程で、話題となっていた半魔が実はエミリアであることに驚きながらも、ここが何処の異世界なのかを知ることが出来た。

 

「しっかし、ここってエミリア達のいた世界だったんすね。銀髪のハーフエルフって聞いた時にもしかしたらって思ったっすけど。でも、あのエミリアが王選候補者なんてやってるとは、なんか想像できないっすね」

 

 まあ、学園でアインズ様を差し置いて委員長なんてやっていたし、案外、王の器があるのかもとルプスレギナは思ったが、それは今はどうでもいいことだとすぐに思考の隅へ追いやった。

 

 問題となるメイザース領への行き方だが、今の時期は行商人が鉄製品を売りに来ていて、まだ商談が終わっていないため案内は不可能だと突っぱねられる。

 それだけなら武力で脅して道案内させることもできるが、最大の問題はメイザース領へ向かう道に霧が発生しているということだ。ただの自然現象なら問題ないが、それを生み出しているのが白鯨だと聞かされ、脅迫という選択肢は消え、大人しく引き下がることにした。

 

「いや~、この時期に魔女教と白鯨の討伐っすか。完全に狙ってるっすね」

 

 クエスト画面を眺めながら、なんとなしに自分を監視しているかもしれない謎の存在に向けて、そんな軽口を叩いてみる。

 だが、それに返事が返ってくるわけもなく、空は変わらず晴れ渡っていた。

 

「さ~て、一体どうしたもんっすかね?」

 

 標的(ターゲット)との接触方法は見つけた。次なる問題は敵の強さとその撃破方法だ。

 ナザリック外の存在など大した存在じゃないと以前までの彼女であれば油断していただろうが、シャルティアの洗脳に加えて、学園での強者達との接触により、彼女の中に油断は生まれていなかった。

 なにより、こうして自分だけでなく、至高の御方であるアインズ様を異世界へと転生させた存在がいる以上、敵の力を必要以上に過小評価は危険だ。

 だが、いくら考えていたとしても答えが出る問題ではない。ならばどうするかと考えると、答えは一つだ。

 

「うだうだ考えてみても仕方ないっすね!こうなったら、動いてどうにかする方法を見つけなきゃっす!!」

 

 吹っ切れたように、ルプスレギナはその場から動き出した。もしこの世界がエミリアたちが元いた世界だとすれば、今朝からラインハルトたちの姿が見えなかったことから、彼らもこの世界に戻された可能性がある。

 さらに、アインズ様やユリ姉たちもこの世界に飛ばされている可能性がある以上、このクエストの標的(ターゲット)の元に集まる可能性は十分に高いだろう。

 

「そうと決まったら、まずは居場所が分かってるエミリア達から会いに行くっすかね」

 

 メイザース領へと続くリーファウス街道を進めば白鯨に遭遇する可能性があるが、1人で接触するのは危険だろう。多少時間がかかるとしても、迂回路を通った方が安全だと思われる。

 

「そうと決まれば、まずは移動手段の確保っすね。行商人を脅して向かうのも一案っすけど、あのお人好しのエミリアや他の連中が騒ぎ出しそうで面倒っすからね~」

 

 バレなければ問題ないと思うが、殺して乗り捨てるにしても、そういうことに敏感な連中が何人かいそうで、安易に実行には移せない。

 自分だけならまだしも、至高の御方に迷惑をかけるわけにはいかない。

 ――だったらどうするか?

 

「あっ!いいアイデアが浮かんだっす!!」

 

 ルプスレギナの脳裏に稲妻のごとく天啓が舞いおりる。

 それはまさに完璧なアイデアであり、これならば上手くいくと自画自賛せずにはいられない程だった。

 

「むふふ~!これなら何の問題もなくエミリアや魔女教のいるメイザース領って場所に行けるっすね!!」

 

 思い立ったが吉日、ルプスレギナはすぐさま行動を開始した。

 




次回は5時間後ぐらいに投稿します!!

4章でのスバル視点外の放送

  • エミリアの試練
  • ラムの告白
  • ガーフィールとエルザのバトル
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