いせかるメンバーにナツキ・スバルの人生上映会を観せる   作:リーグロード

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日間ランキング1位を目指して頑張るぞ!!!!
後、幾つかのご都合設定がありますが、物語を進める為に必要な処置なので見逃してね!


ルプスレギナの1人旅 その2

 ルプスレギナが考えた名案は、実に単純なものだった。

 中規模程度の行商人を狙い、荷物を盗む際にこの周辺地域の地図らしきものを手に入れるという計画だ。

 もちろん、ここが異世界であり、自分たちの世界の言葉が通じないことは予想済みだった。そのため、何が書いてあるのか分からない地図ではただのガラクタでしかない。

 試しに解読を試みたものの、全く理解できない文字ばかりだったが、それなら読める人物に解読を頼めばいいだけの話だと思ったのだ。

 

 幸いと言えるのか、この街にもゴロツキが徘徊する裏路地があり、見た目が極上の女性がたった一人で()()()()()()()()

 それを見かけた親切なお兄さんたちが近づいて、()()()()()くれようとするのだ。

 

「いや~、助かったっすよ。これで大体の道順は分かったっす。だ・か・ら、貴方たちはもう用済みってわけ……」

 

「「「ひぃっ!!?」」」

 

 哀れにも羊の皮を被った狼に手を出してしまった愚か者は、誰にも知られずにひっそりと王都から姿を消した。

 たった3人の犠牲で必要な情報は集まった。後は移動方法だが、それも考えはあった。

 

「いや~、普通なら馬車なんかを利用するかもっすけど、このアイテムがあれば移動手段なんてどうにでもなるっすよね~」

 

 そう言いながら手にしているのは、首からぶら下げた小さな鳥の翼を模したネックレスだった。

 それには特別な魔法が込められており、首にかけることで〈飛行(フライ)〉の魔法が発動し、装着者を浮かび上がらせる効果を持つ。

 ちなみにルプスレギナは前の世界でナザリック外のカルネ村で任務を請け負っていたため、アインズが逃走手段の一つとして念のためにこれを彼女に下賜していたのだ。

 さらに維持する指輪(リング・オブ・サステナンス)を指にはめているため、休憩なしでメイザース領を目指すことができる。

 

「これならあっという間に目的地に着けるっすね。下手に行商人を脅してちまちま馬車──いや、この世界じゃ竜車って言ったっすか?それに乗るよりもよっぽど早く到着するっすよ!」

 

 障害物のない空を突き進むルプスレギナの言う通り、この速度で休憩なしに進めば、迂回したとしても半日、遅くても1日でメイザース領に到着できるだろう。

 その間、念のために伝言(メッセージ)でアインズ様やユリ姉達に連絡を試みたが、一切応答はなかった。

 

 空の模様が青空から夜空に移り変わる中、月明かりを頼りに地図を広げて道を確認する。

 空に浮かんでいるおかげで地図と周辺の地形を照らし合わせるのも簡単で、ルプスレギナはそのまま一睡もせずにそのままメイザース領へと向かった。

 

 そうして夜も明け、太陽が頭上にまで昇った頃に、ここまで一切止まることなく突き進んでいたルプスレギナの動きがここで止まる。

 

「……なんすか、この異様な気配は?」

 

 それは人狼という獣のような五感を持つルプスレギナだから感じ取れたのだろう。

 ルプスレギナが今浮かんでいるその場所の下、そこから今まで感じ取った事ない気配を感じ取ったのだ。

 

 地図の上ではここは恐らくだが既にメイザース領の内部、そこで異様な気配を感じたのならば、その正体は自ずと判明する。

 

「──霧は出ていない。なら、これが魔女教の気配っすか」

 

 眼下に広がる森の中から感じ取れる気配に、自分1人だけで突貫しなくて正解だったと安堵する。数は不明、どのような構成で組んでいるのかも不明、おまけにどの程度の強さの者達がいるのかも不明と、これほど多くの不安要素を抱えたまま進むべき場所ではないと、ルプスレギナの本能が強く警鐘を鳴らしている。

 

「自分はユリ姉みたく格闘系の職業じゃなくて、神官系っすからね。多少は戦えても出来るなら格下と戦いたいってのが本音っすから、出来るなら他の皆と合流してから行くべきっすね」

 

 念の為、完全不可視化を発動し、メイザース領にいるであろうエミリアの元へ急ごうとしたその時、ルプスレギナは迫りくるナニカを肌で感じ取り、緊急回避をした。

 そのおかげで目には見えないものの、彼女が直前までいた場所に不自然な風が起こる。恐らくは不可視の攻撃の類で、自分の居場所がバレたのかと焦ったが、続けての攻撃はなかった。

 

「ふむ、上空に何か妙な気配を感じたような気がしましたが、どうやら気のせいだったようデスね……」

 

 森の中にいる黒装束の集団の中で、唯一顔を晒している痩せぎすの男が木々の隙間から見える空を眺めながらそう呟いた。

 周りにいる他の黒装束らはその行為に何も言わず、ただ黙ってその男の行動を見守っていた。

 

「さて、我々に無駄に!怠惰に!!時間を消費している暇はありません!!件の半魔に試練を与えるべく我々はここまで来たのデスから!!!」

 

 先程の違和感をすっかり忘れ去り、その痩せぎすの男は他の黒装束の仲間たちを率いて移動を始めた。

 その様子を誰かに見られているとも知らずに……。

 

「………………ふぅ、あれが魔女教っすか。分かりやすい恰好してくれるのは助かるっすけど、ちょっと厄介そうな相手っすね」

 

 連中が完全に姿を消すまで空の上で息を潜めていたルプスレギナ。そんな彼女が言う『厄介』とは、あの強烈な個性ではなく、彼らの強さを指していた。

 顔を隠した黒装束の者たちは問題なく殲滅できそうだったが、唯一顔を出していた痩せぎすの男からは不気味な雰囲気が漂っていた。おそらく先程の不可視の攻撃も、あの男の仕業だろう。

 だとすれば、あの男がペテルギウスだろうか?標的(ターゲット)となる以上は、ただの雑魚である訳もなし、あの連中の中で最も手強そうな男がそうである可能性が高い。

 

「攻撃手段の1つを先に知ることが出来たのはラッキーだったっすけど、楽に勝てる相手じゃないってのは面倒っすね」

 

 真っ向から戦う選択肢が消えた以上、これ以上長居する必要はないと判断し、ルプスレギナはすぐに地図に記されたロズワール邸へ向かった。

 ただし、魔女教に気づかれないように注意を払いつつ、自分と同じくこの異世界に飛ばされた可能性のある姉妹を探しながらだったため、屋敷に辿り着いた頃には陽が沈みかけ、夜の帳が降り始めていた。

 門の前に立ったルプスレギナだったが、結局のところ、自分以外の姉妹も、敬愛する主の姿も見つけることはできなかった。

 

「はぁ~、結局他の皆は見つからなかったっすね。まあ、なにはともあれ、こうして無事に屋敷には着けた訳っすし、今はエミリア達と合流するっすかね」

 

 屋敷には、エミリア、パック、ラムとレム、ロズワール、それに多分スバルもいるだろうと推測し、いざ合流せんと扉にノックをして少しだけ待つ。

 すると、屋敷の扉が開き、そこから桃色の髪のメイドが姿を現した。

 

「一体どこのどちら様かしら?本日はロズワール様への面会の予定はなかった筈だけど」

 

 半目でこちらを見ながら、煩わしいという雰囲気を隠そうともしないラムに対し、ルプスレギナは笑顔で対応する。

 

「何言っちゃってるんすか。私っすよ、私!隣のクラスだったっすけど、もう忘れちゃったんすか?あっ!もしかして、いつものメイド服じゃないから分からなかったとかっすか?」

 

「あなたが何を言っているのか、ラムにはさっぱり分からないのだけれど?」

 

 首をコテンと傾けるラムに、ルプスレギナは表情には出さないものの、内心でしまったと舌打ちをした。顔見知りの相手とはいえ、不用意に接触するべきではなかったと後悔している。

 

「やだな~、学園の廊下とかイベントなんかで何回か顔を合わせてるじゃないっすか、ルプスレギナっすよ!ル・プ・ス・レ・ギ・ナ!」

 

「何回言われようと、ラムの言葉は変わらないわ。それに学園?ってのも意味が分からないわ」

 

 そこまで聞いて、ルプスレギナはようやく理解した。このラムには学園での記憶がないのだ。

 だからこそ、扉の前にいた自分に対して初対面のような反応を見せたのだろう。

 自分の選択が本格的に誤っていたことに気づき、焦り始めるルプスレギナを見て、ラムの表情は次第に険しくなっていった。

 

「そういえば、今朝に帰ってきたバルスの様子もおかしかったけど、貴方が関係しているのかしら?」

 

 メイド服の中に隠し持っていた杖を即座に装備し、いつでも戦えるように構えるラム。

 同時に警戒心を引き上げ、このまま目の前にいる女と一戦交えることも辞さない姿勢を見せ始める。

 

「あっちゃ~、本格的にマズったっすねこりゃ、どうするっすか?」

 

 下手な挙動を見せれば即座に戦闘が始まると理解してしまったルプスレギナは困ったように頬を掻きながら、森の中で遭遇した魔女教が現在どこまで屋敷に接近しているのかを考えた。

 ここで無意味に時間を浪費するのは得策ではないが、下手にフレンドリーに接してしまったが為に、それに対する説明も考えなければいけない。

 

「う〜ん、なんて説明したものっすかね?」

 

「あら、言い訳作りの真っ最中かしら?随分とマヌケな不審者なことね」

 

 この現状、実のところラムもどうしたものかと考えあぐねていた。

 目の前にいるルプスレギナという女。敵陣営の刺客にしてはやり口が杜撰過ぎる。

 それにこの身に覚えのない好意を向けられるこの感覚、まるでバルスのようだとも感じていた。

 

 そうして睨み合うこと1分程の時が過ぎたその時だった。

 突如として、強大な魔法の発動を感じ取った両者はその発生場所と思われる屋敷の上階に目を向ける。

 

「っく!今のはベアトリス様の!?貴方は──」

 

「私も一緒に行くっすよ!その方が監視下に置けて安全っすよね!」

 

「妙に物分かりがいいのも考えものね。おかしな真似をすれば容赦はしないわよ」

 

 そう脅しを掛けるも、ルプスレギナは大して答えた様子もなく、しれっと視界の端に映る距離感で後ろに着いてくる。

 そうして辿り着いたエミリアの部屋、魔法が発動したと思われるのがここだ。

 意を決することもなく、緊急事態だからとノックもなしに部屋の扉を開けて中へと入る。

 

「失礼いたします――」

 

 そうして入った部屋の中央にはただ1人、ベアトリスが悲しげな様子で立ち尽くしていた。

 

「──ベアトリス様、この部屋で一体何があったのですか?それにエミリア様の姿も見当たりませんが?」

 

「……お前に話すことなんて何もないかしら」

 

 突き放した口調のベアトリスに、ラムは眉間に皺を寄せつつも、メイドとしての矜持か、それとも感情的になったら負けだと思っているのか、声を荒げることなくもう一度問いかけた。

 

「もう一度お伺いします。この部屋で一体何があったのですか?そして、エミリア様は何処に?」

 

「何度も言ってるかしら、今更お前が何をしようと無駄なのよ。だからとっとと出て行くかしら」

 

 再び突き放した言い方でラムの質問に答えないでいるベアトリス。

 

「ん?そこのお前、いったい何者かしら?」

 

 そこでようやくラムの方を見たベアトリスが、背後に立つルプスレギナの存在に気づく。

 どうやら、ラムだけでなく、ベアトリスも学園での記憶がないようだ。

 

「あら、お客様の対応をなさらないベアトリス様が知る必要がございますか?」

 

先程の意趣返しのつもりなのか、慇懃無礼な口調で応じるラムをベアトリスが睨みつける。

 

「お前……!まぁいいわ。どうせもう話すこともないかしら……」

 

 ベアトリスはラムとルプスレギナの間をすり抜けるようにして扉を一度閉めてから部屋を出て行った。

 扉渡りを使ったのだろう。興味本位で閉じた扉を開けたルプスレギナだったが、その先にベアトリスの姿はなく、ラムはため息をつきながらこれからどうすべきかを考え込む。

 

「それで、あなたはこれからどうするつもり?ラムはエミリア様、あとついでにバルスの様子も見に行かなきゃなのだけれども?」

 

「う~ん、私はそもそも味方になってくれるかな~って思ってこっちに来たんすけど。どうにも予想が外れちゃったみたいっすからね」

 

 困ったように頬を掻きながら、次の行動を考えあぐねるルプスレギナの姿を見て、ラムは問題が増えたと言わんばかりに呆れたような溜息を吐いた。

 その瞬間、ラムはふらついて目眩を起こし、その場に崩れ落ちてしまった。

 

「こ……これは……!?」

 

「周囲の気温が下がった?」

 

 周囲の環境が顕著に変わったせいで満足に立てなくなったラムと、人狼の優れた五感で周囲の気温が下がった事を感じ取ったルプスレギナ。

 窓から外を見ると、森の中に周囲の木々よりもデカイ魔獣と思わしき獣がいるのを確認できた。

 

「あれは……!?まさか、大精霊様!!だとしたら、エミリア様は……」

 

「んっと、あんまし状況が理解出来ないんっすけど、要は今寒いのは窓の外にいるアレのせいで、しかもラムっちはあの魔獣と知り合いってことっすか?」

 

「……ええ、そうよ。あれはエミリア様と契約している大精霊様。それが窓の外に見えるアレの正体よ」

 

「えっ!じゃあ、あれってあの灰色の猫助っすか!?」

 

 ルプスレギナがパックの事を知っていることに怪訝な顔をしたラムだったが、それ以上に辛さが勝っているのか、今のラムには追及する余裕がなかった。

 

「ん~、あそこに行けばアインズ様やユリ姉達もいるっすかねえ~?」

 

「……あなたがどういう目的でこの屋敷に来たのかは知らないけれど、あそこに行くのは止めておきなさい。大精霊様があのお姿になっているということはエミリア様に何かがあったということ。そうなっている以上、どこの馬の骨とも知らないあなたじゃ巻き込まれて死ぬのがオチよ──!」

 

「随分とはっきり言ってくれるっすね。もしかして私のこと心配してるっすか?普段のツンツンが影を潜めて、デレが出ちゃってるとか貴重っす!」

 

「──本当にあなたが何を言っているのかラムには理解できないのだけれど。だって、ラムはいつだって優しいもの……」

 

 辛い表情ながらも、いつもと変わらないような軽口を叩いたラムに、ルプスレギナは満面の笑みを浮かべた。

 

「そっすか!――でも、ごめんなさいね。私にも事情ってのがあるの。だから、あなたの忠告は無視させてもらうわ」

 

「────っ!?」

 

 にこやかな笑顔が一転して、妖艶な笑みを浮かべたルプスレギナはラムにそう告げて、窓を開けてそのまま外へと飛び出していった。

 2つの意味で急過ぎる状況に、ラムは止める暇もなく、ただルプスレギナの背中を見送る事しかできなかった。

 

 そうして屋敷を飛び出し怪物と化したパックの元へ、ルプスレギナは急いだ。だが、ラムの忠告がある以上、無暗に近づくのは危険と判断し、いつもの完全不可視を発動して様子を見ながら慎重に接近する。

 無論、レベル60手前の人狼であるルプスレギナにとって、その程度をこなしつつ視界に映る範囲に近づくのは3分と掛からない。

 

「しっかし、寒いっすね~。クレリックの職で良かったっすよ~!」

 

 冷気による環境ダメージを神官の魔法で無効化したおかげで無事ではあるものの、この場に冷気ダメージを防ぐ術を持たない他の姉妹がいたらと思うと、不安な気持ちがよぎる。

 しかし、周囲から姉妹の気配は感じられないため、その心配は杞憂に終わる。

 

「さ~って、随分と近付けたようっすけど、状況の方は~?」

 

 凍りついた森の木々に身を隠しながら、パックの動向をじっと見守る。

 パックの目の前には、死んだように倒れているエミリアがいて、氷漬けになった魔女教と思われる連中のバラバラ死体の山と、凍りかけたペテルギウスとスバルの姿があった。

 

「試練は果たされたのデス! いずれワタシの身は、尊き魔女の身許へ辿り着いて傘下へ加わる。……嗚呼、そのときが、楽しみ、デス……ね!」

 

 それが最後の言葉となって、呆気なくペテルギウスは氷像と化してパックによって粉々に潰された。

 

「おっ、なんか棚ぼたで標的(ターゲット)が勝手に死んだっす。ラッキー!!」

 

 自身が倒すべき標的(ターゲット)がよく分からないうちに倒されてしまったことに、ルプスレギナは喜んだ。

 パックは氷像になりかけのスバルに何か話しかけていたが、盗み聞きをしてみても特に自分には関係なさそうな内容だったので、興味を持たずクエスト画面を開いた。

 

「あれ?」

 




気になる続きはまた5時間後!

4章でのスバル視点外の放送

  • エミリアの試練
  • ラムの告白
  • ガーフィールとエルザのバトル
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